地方分権を考える 2

2012年4月15日

 シリーズ「地方分権を考える」の2回目です。
 
 やえの出身地であります広島市も政令指定都市です。
 大阪ほどの規模ではありませんが、政令指定都市としての歴史もそれなりにあって、また地方の中核都市という性格もありますから、政令指定都市としてのモデルとしては申し分ないでしょう。
 さらに今回の問題を考える上で参考になる事例が広島市にはあるのです。
 それは、長年広島市長は特に政令指定都市になってからずーっと革新系の、いわゆるサヨク系の市長が当選し続けていたというコトです。
 前回の選挙でやっと保守系の市長になりましたが、その前の市長は秋葉市長と言いまして、元社会党の衆議院議員というバリバリの左翼系市長でした。
 そして、かたや広島県はわりと保守系に近い人が知事なんですね。
 前の知事もいまの知事も、どちらかと言えば保守系の知事です。
 つまり広島って、もはや首長の基本的性格からしてねじれ現象が起きていた地域なのです。
 大阪よりもねじれの歴史は長いと言えるワケなのです。
 
 結果的に言えば、やえの主観ですが、広島市は長年左翼系の市長であったために、変な平和運動ばっかり進んでしまって、経済などの問題はかなり他の地方中核都市より遅れてしまったと思っています。
 昔は「札仙広福」なんて言いまして、札幌・仙台・広島・福岡と地方中核都市を並べて言っていたモノですが、正直いまの広島は札幌や福岡からは随分離されてしまったように感じます。
 それも、全てとは言いませんが、やはり観念的な問題ばかりに熱心だった革新系の歴代広島市長の責任がかなり大きかったと思うのです。
 
 しかしそれは、結局そういう広島市長を選んできた広島市民の責任でもあります。
 広島市民は、広島県知事の選挙の投票権も同時に持ちながら、広島市長の選挙ではこういう人を選び続けたのです。
 すべては選挙の結果です。
 広島市民が自らの選択によって、知事とは毛色の違う市長を選び続けたのです。
 
 そんな中、やえの考えで言えばいままでの広島市長はあまり良くない市長だったワケですが、仮にですよ、そんな知事がやえと同じ考えだからといって、しかし県知事が市長を乗り越えて直接自分の考えを直接実行させようなんてコトはしてはなりませんよね。
 だって、法的にももちろんですが、さっき言いましたように、結局県知事の選挙権を持ちながらそれでもそのような市長を選んだのは広島市民なのですから、市長の政策は民主主義に乗っ取った民意だからです。
 知事も県民に選ばれた人ですが、同時に市長だって広島市民に選ばれた人なのです。
 広島市での政策は広島市長に委ねると、広島市民本人がそう望んで決めたのです。
 どっちが正しいとかの問題じゃないんですね。
 どちらも尊重すべき民意なのです。
 それを県知事がしゃしゃり出て何かしようとするのは、完全に越権行為と言わざるを得ません。
 
 前回も言いましたように、知事が上で市長が下なんてコトはありません。
 もしそんな理屈が成り立てば、知事は国会議員に平身低頭で命令を聞かなければならないでしょう。
 でもそうではありませんよね。
 だからですよ、結局これは構造的なシステム論ではない問題であって、日本のシステム上、その土地には総理を除いて首長が必ず2人いるコトになっているのですから、どうやったってこの2人の首長の間ですりあわせとか協力態勢が絶対に必要なワケなのです。
 でも橋下さんはそれをしなかったとしか言いようがないんですね。
 他の地域はそれでもそれなりに折り合いをつけていたのです。
 いまの平松大阪市長も言ってましたが、橋下さんの主張を実行しようと思えば、制度で言えばいまの制度でも出来るワケで、結局知事と市長との間のすりあわせや議論や意思疎通が全然出来ていなかっただけなんですね。
 本来どの首長もしなければならないコトを、橋下さんはしなかった、出来なかったのかもしれませんが、政治は結果責任ですから、出来なかったのはしなかったと言うしかありません。
 橋下さんはしなかったのです。
 つまり橋下さんが言っているコトは、こういう前提をあえて無視して、自分の言うコトだけを全ての首長や議員は聞けと、自分だけが命令権を持っていればいいと、そう独善的にも言っているコトにしかならないんですね。
 
 矛盾しているんです。
 もし橋下さんが構造的な問題を解消させたいのであれば、二重行政をシステムの面で直したいと思っているのであれば、例えば首長をひとりにするとか、市長や区長を選挙で選ぶコトにするとしても知事の命令には服従しなければならないと法律にでも明記するかするしかないでしょう。
 そしてもしそういうコトをするのであれば、前回言いましたように、もう国と区だけでいいじゃないですかと、橋下さんの「上がグランドデザインを書いて、下が細かい住民サービスを行う」のであれば、その方がいいじゃないですかと言いたいのです。
 そしてそれを実現するためには、国会議員になって総理大臣になって、法律や憲法を変えるしかないでしょう。
 でも橋下さんは国会議員になるつもりは全くなさそうであり、やえには橋下さんが何がしたいのか分からないのです。
 
 いえ、わからないコトは無いです。
 結局橋下さんは大きな権力が欲しいんですよね。
 特に民主主義における権力とは、1つの場所に集中しないよう工夫がされていて、その最たるモノが三権分立だったりするのですが、橋下さんはそういうのを無視してでも、とにかく自分の権力を集中させたいのでしょう。
 それがどれだけ矛盾であったとしても、そこには目をつむって、それらしい理屈を付けて、国民の支持を得ながら権力を得たいんだと思います。
 まぁ橋下さんには、権力を得た後の先に実現したいなにかがあるのかもしれませんが、ただそうだとしても、橋下さんの言う「大阪都構想」は矛盾しているとやえは指摘しておきたいです。
 
 
 次回は、東京の区について参考にしながら考えてみたいと思います。