3党協議は国会のあとで

2012年4月15日

 まず先に言っておきますが、そもそも民主党は先の衆議院選挙直前に「消費税は議論すらしない」と言って選挙に臨み、そして勝利したのですから、一度これを撤回して選挙をし直さなければ消費税を議論する資格はありません。
 よって今日言う方法をとったとしても、そもそも論として今の民主党には消費税議論をする資格はないというコトはハッキリさせておきたいと思います。
 だって今の与党という地位は、ウソによって得たモノですからね。
 まずそれをリセットしなければ筋が通りません。
 
 右も左も逝ってよし!!
 バーチャルネット思想アイドルのやえです。
 おはろーございます。
 
 さて。
 野田内閣は、消費税増税案に関していくら自民党から「国会で議論しよう」「はやく閣議決定して法案を示してくれ」と言われても、頑なに3党協議しろいう言葉をくり返して、これを無視しています。
 曰く「閣議決定すると柔軟な協議が出来なくなるので、3党協議を先にしたい」とのコトです。
 
 でもこれ、大ウソです。
 
 閣議決定後も修正できますし、3党協議の前に国会審議しても何ら問題はありません。
 むしろ先に国会で審議して、その後に修正すべき点が見つかれば、野党も納得するような法案に作り直して再提出して成立させればいいのです。
 これ、なにも難しいお話しじゃないんですよ。
 なにか野田総理のこの言い方だと、閣議決定すれば一切の修正とかが出来ないかのような言い方ですが、そんなコトは決してありません。
 閣議決定した後に提出した法案を一度撤回して修正した例というのは、過去にも例があります。
 

 第177回国会 議案の一覧
 
 閣法の一覧
 70 東日本大震災復興の基本方針及び組織に関する法律案  撤回  経過  本文
 
 衆法の一覧
  8 東日本大震災復興再生基本法案  撤回  経過  本文
 13 東日本大震災復興基本法案  成立  経過  本文

 
 国会で審議される法案にはいくつか種類がありまして、内閣が提出する「閣法」、衆議院議員が提出する「衆法」、参議院議員が提出する「参法」と、3つの種類があります。
 衆法と参法はいわゆる「議員立法」ですね。
 で、この引用しました各法案ですが、これタイトルからも分かりますように震災復興支援の基本法で、基本的な方向性は全て同じ中身でして、そして全て同じ会期中の国会で提出された法案です。
 最初の閣法は内閣が提出したモノ、次の「再生」が付いている方の法案は「経過」のところを見て貰えれば分かるのですけど石破茂先生が提出した自民党が出した法案でして、最後は、また「経過」を見て貰えればと思いますが、「東日本大震災復興特別委員長」という、これは衆議院の委員会の委員長が提出したという形になっている法案です。
 そして、閣法と自民党提出の法案は「撤回」されており、委員長提出の法案が「成立」しているというワケですね。
 
 衆法・参法といういわゆる議員立法には、大きく分けて2つの種類があります。
 それは一議員さんが提出する法案と、委員会の委員長が提出する法案です。
 何が違うかと言いますと、一議員さんが提出する法案は国会議員なら誰でも提出できる自由な方式ですが、委員長の提出法案というのは、基本的に委員長とは中立という立場になっていますから、どこの政党にも偏らない形で提出しますよという意味を持たせた提出方法になります。
 簡単に言えば、与野党が合意して出したモノが委員長提案と言ってもそう間違いではないでしょう。
 用語解説もありましたから、参照してみてください。
 

委員長提案とは
 国会法では、内閣や国会議員が法案を提出、発議できるほか、衆参両院の各委員会も委員長の名で提出することが出来ると定めている。事前の調整で全会派が提出に合意した法案を委員長提案とするケースが多く、委員会での法案審議は省略されるか、大幅に短縮されるのが通例だ。

 
 で、もう一度さっきの委員長提出の方の「経過」を見てもらいたいのですが、「審査省略」とありますように、実はこの委員長提案された法案というのは、委員会では審議されていないんですね。
 こう言うとけしからんじゃないかと言われそうですが、それはなぜかと言いますと、審議は閣法と自民党法案の2つの法案の方でされているからです。
 閣法と自民党法案が共に「東日本大震災復興特別委員会」に付託されたのが5月20日で、撤回されたのもどちらも6月9日です。
 そして委員長提案の法案の委員会付託日が同じ6月9日ですね。
 つまりこれは、閣法と自民党法案がまず同時に委員会に付託され、そのふたつが同時に審議されて、問題点や相違点が明らかになった後に、与野党で協議をして問題点を潰して相違点を無くした法案を作り直し、以前の2つの法案は取り下げた後に、新しい法案を委員長に提出してもらって即決した、という経緯を表しているワケなのです
 
 この様子は、民主党のツルネン参議院議員のブログでも伝えられています。
 

6月9日号
 震災復興基本法案は、本日の衆議院本会議で閣法(内閣が提出したもの)を撤回し、新たに提出された議員立法(与野党合意のもの)が明日衆議院(災害復興特別委員会と本会議)で採決、可決され参議院に送付されます。参議院では、来週月曜日の本会議で「参議院災害復興特別委員会」が設置され審議が始まります。

 
 この人は民主党の議員ですから自民党が法案を提出していたコトを書いていませんが、衆議院のサイトを見ればそんなのは一目瞭然であり、この事実だけを見ても自民党は批判ばかりで対案を出さないという批判が大ウソだというコトが分かるのですけど、まぁそれは別のお話なので今日は触れません。
 
 ここでのポイントは2つあります。
 1つは「閣議決定した後に出された法案でも修正できる」というコト。
 もう1つは「法案を審議した後に撤回し、与野党で合意して修正して作り直した法案を提出するコトが出来る」というコトです。
 
 最初にも言いましたよね。
 「閣議決定すると柔軟な対応が出来なくなる」と言っている野田総理の言葉は大ウソだと。
 それはこの前例で明らかなワケです。
 
 なぜ閣議決定しないのでしょうかね。
 本来なら、このように閣議決定して内閣が閣法として国会に提出して、事前に3党で密室で協議するのではなく国会の場で全ての国民が見るコトのできる場で審議して、その上で問題点が明らかになったとすればその後にそこで与野党で協議してそれを潰した法案を作り直して、委員会に提出し直して可決成立させればいいのです。
 もしですよ、法案提出の前に3党で協議してしまえば、そこは密室ですから、民主党と自民党と公明党の考え方の違いが分からないままに、玉虫色の法案が作られてしまいます。
 この方法だと、国民が各党の考え方の違いを知るコトが出来ないのです。
 それは民主主義にとっては致命的と言ってもいいコトでしょう。
 ですから、まずは国会の場で審議するのです。
 そうすれば各党の違いが国民の前に明らかになり、それは選挙の際の大きな選択材料となって、その上で協議をして法案を成立させるのですから、結果的に「選択材料が増える」「法案が成立する」という2つの点で国民にとって大きな利益となると言えるのです。

 繰り返します。
 なぜ野田総理は消費税増税案を閣議決定して法案を国会に提出しないのでしょうか。
 それを拒否する理由は1つとしてありません。
 そしてなぜ国会審議の前に3党協議を要求するのでしょうか。
 事前の3党協議なんていうモノは、1つも国民の利益になりません。
 むしろ国民の不利益にしかなりません。
 もし成立させるための与野党の協議が必要というコトであれば、それは国会審議の後にすればいいのです。
 
 まず法案を国会に提出し、それを国会の場で委員会の場で国民の目の前で審議する、そこで問題点や相違点が明らかになれば、その時になってから与野党で協議して、問題点を潰し相違点が無い法案を作り直す、そして古い法案を撤回し、新しい法案を提出し直して、与野党一致で可決成立させる。
 
 決して難しいお話ではありません。
 提出法案を撤回して新しい法案を提出し直すというのは前例のある方法であって、日本の政治においてはよく使われる手法です。
 閣法が撤回されて委員長提出法案が可決された例も実際にあるワケです。
 なぜこの方法を使わないのでしょうか。
 
 この事実を前にすれば、野田総理の「逃げ」の答弁は、一切の説得力を持ちません。
 もし本当に消費税増税を国民の利益のために行おうとするのであれば、まずはこの手法を採るべきです。
 これしかありません。
 まぁそもそも民主党には消費税増税を議論する資格がありませんからこれを持ってしてもダメなのですが、それすらせずして自民党に責任を押しつけようとする態度を繰り返しているのであれば、それはもはや自己の権力欲のコトしか考えていないとしか表現できないでしょう。
 自民党に責任を押しつけて、民主党の責任逃れにしたいだけなのです。
 
 特に消費税増税なんて大きな議論は、国会で議論すべきなのです。
 本来こんな基本中の基本のお話は、言うまでもないコトのハズなのです。