急に解散風が吹いてきましたが(下)

 急に解散風が吹いてきました。
 ちょっと前まではもはや任期満了で、集散同時選挙だろうみたいに思われていましたが、自民党がここにきて法案を通させる作戦に出て特例公債法案もやると言いだし、これに抗える理屈を持たない民主党も結局今日明日と予算委員会を2日間開催するコトに同意して、いよいよ野田総理が解散の条件として出していた一番の案件が通るのが目前と迫ってきました。
 野田総理と安倍総裁の思惑は本音のところではどうなのかというのは本人にしか分からないのでしょうけど、今後両者はどういうシナリオをその頭の中に描いているのでしょうか。
 
 ただやえは、どうもこの流れには違和感を強く覚えます。
 
 野田総理を言えば、そもそも野田総理は解散するために条件を出せるような立場なのですかと言いたいです。
 「○○をすれば解散してやる」とは、なにか日本史上最低最悪の菅直人総理を思い出されますが、そもそも民主党の一番の悪というのは「自分が言ったコトを自分は実行しない」「他人に投げつけた言葉は自分には適用しない」というところにあります。
 やると言ったマニフェストをやらない、野党時代に自民党に投げつけた言葉を自分はやらない、こういう「口だけ達者だけど実行を伴わない無責任な体質」こそが民主党の癌なワケです。
 例えば「選挙を経ていない総理は認められない」と、議院内閣制を否定するかのような言い方を自民党政権下では言っていたくせに、いざ自分達が政権を取ったら、今度はもう3人目の総理大臣ですよ。
 「選挙を経ていない総理」を堂々と2人も擁しておいて、過去の発言に対する総括を一切しない、むしろそんな発言なんて無かったかのような態度を民主党はとっているワケです。
 こんなデタラメなお話はありませんよ。
 ですから、民主党は「自らの発言を履行するため」と「過去の発言を破った」という2つの点で解散は義務であるのです。
 本来なら、鳩山総理退陣時に解散しなければならなかったのです。
 解散のための条件を出せるような立場にはありません。
 そんな民主党政権がいまさら解散の条件を提示するとは、一体自分達の立場をどう勘違いしているのですかと言うしかないワケなんですね。
 
 政権は4年間キッチリやらせるべきだっていう意見もあります。
 それはやえもそう思います。
 しかしそれはあくまで、「選挙の際に国民と約束したコトを履行し続けている場合」に限ります。
 本来こんなのは当たり前すぎて議論の俎上にすら上がらなかった案件ですが、しかし民主党のせいで見事に問題化してしまいました。
 質が下がっているんですね。
 民主党は4年間かけて出来なかった、という状態ではありません。
 4年かける前段階でストップをする方向転換をする真逆のコトをする、こういうデタラメをやってるワケです。
 いまはこの行為をどう判断するのですかって段階なのです。
 もし選挙の際に言ったコトと真逆のコトをしだしたら、果たして民主主義というモノはどうなってしまうのでしょうか。
 有権者は何を信じて投票すればいいのでしょうか。
 本来「書いてないコトをやる」のはいいんです。
 政治も現実も常に動き続けているのですから、その時に実行しなければならない案件が出てくれば、それを議論して実行するのはむしろ政治の責任、そうするために人間が政治を担っているのですから、それはいいんです。
 でも「書いてないコトはやらないと言ったのにやる」とか「言っていたコトと真逆のコトをする」は論外です。
 言ってみればそれは「投票した先と違う人間が政治をやっている」という状況なワケで、これでは民主主義の崩壊ですよね。
 だからこその解散なワケです。
 民主党がダメだから解散しろというよりも、民主主義の崩壊に繋がるから解散しろっていうのが、いまの解散理由では一番大きいのです。
 
 解散というと常に党利党略と結びつけてしか考えられない党利党略脳の人が少なくありませんが、なんのために解散するのか、どういう理由で解散するのかっていう部分は常に考えておかなければならないでしょう。
 なにごとにも理由があって論拠があるのです。
 なんとなく解散するっていうモノではないのです。
 

 (つづき)

 こう考えていくと、やえは自民党にも一言言っておきたいコトがあります。
 自民党というよりは、安倍総裁に対してと言った方がいいかもしれません。
 ひとことで言えば「解散させるための太陽政策には、自民党としての筋の理屈がどこにあるのですか」という点です。
 
 民主党政権が解散しなければならないのはさっき言いましたように民主党自身の言動に起因するモノですから、自民党がとにかく解散を求めるのは野党としての責任として当然なのですが、ただ自民党も自らの言動には筋を通さなければなりません。
 例えば自民党は消費税増税に賛成して成立させましたが、これは自民党はもともと消費税増税は自らの口で主張していたコトであり、参議院選挙の公約としても掲げてきたからこそであるワケで、つまり自民党にもこれを通す筋道というモノはキチンとありましたね。
 だからこそ説得力があるワケで、しかしもし自民党も「消費税増税は絶対にやらない」と選挙時に言っていたとしたら、いくら「解散させるため」というお題目があるとは言え増税を推進させる行動を取るというのは、さすがに筋が通っていないと言わざるを得ないところでしょう。
 解散のためなら自らの過去の言動を反故にしていいなんて言い出したら、これは民主党と同じコトになってしまいます。
 ここが大切なのです。
 建前としての筋としての自らの主張にどう説得力を与えるのか、解散は解散としても、自らの政策や言動は責任ある政党として筋を通さなければならないというのは、むしろ言うまでもないコトなのです。
 
 ここを谷垣前総裁はうまく筋を通していました。
 さっき言いましたように消費税はもともと自民党の公約だったワケですし、その他の様々な政策などについてはやえもここでずっと紹介・解説してきましたように、キチンと谷垣総裁は自民党としての理屈を立てて筋を通してきました。
 しかしやえは、今回の安倍総裁の特例公債法案に対する筋道というのはどうなっているのかという点が気になるのです。
 谷垣総裁時代には、それはそもそもバラマキ予算が是だという前提での法案だから認められないという理屈を立てていました。
 なるほど筋が通っています。
 しかし安倍総裁になってからというモノ、ここの点に関する言及が一切聞かれなくなってしまったんです。
 よもや「解散のためなら中身は目をつむる」と言ってしまってはいないでしょうか。
 大変に気になる点なのです。
 
 もちろんこれはこれからの案件です。
 今日で予算委員会は終わりましたが、これは特例公債法案を審議する委員会ではありませんから、それぞれの法案に対する個別の委員会も開かれて、そこで具体位的な議論もされるでしょう。
 その中で、例えば自民党が予算に対して主張していたような中身を盛り込んで法案を修正させるという方法もありますから、今の段階で「安倍自民党は筋を通していない」と言うつもりはありません。
 だからぜひですね、この筋の通し方をやえは安倍さんに見せてほしいんですね。
 谷垣さんは時に官僚的だとか迫力がないとか頭でっかちだとか言われていましたが、しかしその頭の良さこその理屈建てはとても納得できるモノばかりでしたし、本当に素晴らしかったと言えます。
 安倍さんは迫力はありますし、自らが実現したいという政策もよく分かるのですが、しかしやりたいやりたいと言うだけでは、下手をすれば民主党になりかねません。
 議論とは論拠です。
 ぜひ安倍総裁におかれましては、この論拠の部分である筋をどう通すのか、そこにどんな理屈をもってくるのかという部分を見せてもらいたいと思っています。