着実に外堀を埋めていく岸田外務大臣

 今日はこちらのニュースです。
 

 日米外相会談 ケリー長官、尖閣諸島「安保条約適用範囲」と強調
 
 安倍首相とともにアメリカを訪れている岸田外相は22日、ケリー国務長官と会談した。この中でケリー長官は、中国の挑発行為が続く尖閣諸島に関して、「日米安保条約の適用範囲にあるとの揺るぎない立場をあらためて確認する」と強調した。
岸田外相は「ケリー長官からは、安保条約の適用について、揺るぎないコミットメントをあらためて確認すると」と述べた。
会談で岸田外相は、尖閣諸島について、クリントン前国務長官が「日本の施政権を害するいかなる一方的行為にも反対する」と表明したことに、謝意を示した。
これについてケリー長官は、尖閣諸島が「日米安保条約の適用範囲にあるとの揺るぎない立場をあらためて確認する」と強調し、中国の挑発に対して、「日本が自制的な対応をしていることを評価する」と述べた。

 
 先週末に安倍総理がアメリカに訪問してオバマ大統領と会談したというのは大きなニュースになりましたが、その際、岸田文雄外務大臣も訪米に同行して、この前代わったばかりのケリー国務長官と会って日米外相会談を行っていました。
 この記事はその際の様子を伝える記事ですが、ここでの大きなポイントはやはり対中問題でしょう。
 特に尖閣問題についてはケリー国務長官がこのように発言しています。
 

 尖閣諸島が「日米安保条約の適用範囲にあるとの揺るぎない立場をあらためて確認する」

 
 つまり、仮に中国が尖閣諸島に軍隊を出したら直ちに米軍が日本を助けるために派兵するというコトです。
 領土問題について第三国が直接明言するというのはあまりよろしくないコトですから、「尖閣は日本の領土だ」とアメリカは直接的には言いませんが、しかし軍事同盟の観点から「日本の領土に侵略すれば条約に従って行動する」と言うのは同盟の意義から当然のお話であって、つまり暗にアメリカは「尖閣は日本の領土だ」と言ってるんですね。
 これは日本にとって大きなコトです。
 なぜなら、日本は自衛権が大幅に狭められているからです。
 専守防衛という「攻撃してきたらそれに対処する」という権利は行使出来ますが、その先相手を攻撃するという行為は認められていない、というか自ら縛っているワケですから、ではそのような中途半端な防衛力しか持たない日本にとってはやはり日米同盟に起因する米軍の防衛力に頼るしかないんですね。
 本来は自主防衛するのがあるべき姿だと思いますが、しかし日本人自身が自らの手足を縛っているのですから、外国の助けを借りるしかありません。
 結局いまの日本は、いくら口先だけで勇ましいコトを言ったところで、実際の防衛力は米軍に頼り切っているというのが事実なのですから、この観点から考えれば、アメリカがどう考えているのかというのは日本にとって最も重要であるのは揺るぎのない事実なのです。
 
 この構図がイヤなら早く憲法を変えて、日本も国防軍を作るべきなのです。
 
 で、この問題は今日はこの辺にしておきますが、その上で考えて貰いたいコトは、今回の岸田外務大臣が果たした役割はかなり大きいというコトです。
 というのも、いまのケリー国務長官というのは就任する前から「親中派」と目されていたからです。
 日本国内においても「ケリーは親中派だから、これからのアメリカの対日政策は厳しくなる」と言われていました。
 また、実は岸田外務大臣は先月も訪米して、前のクリントン国務長官と会談して、その時も次のような言葉を引き出していたのですが
 

 中国の尖閣接近「反対」 米国務長官、岸田外相に明言
 
 尖閣問題で岸田氏は「尖閣の領有権は譲歩しない」と表明。クリントン氏は「論争を平和的な手段で解決するよう促したい」と日中両国に冷静な対応を求めた。そのうえで日米安保条約に基づく米国の防衛義務を認め、「日本の施政権を損なおうとするいかなる一方的な行為にも反対する」と明言。岸田氏は「高く評価する」と語った。米政府が尖閣をめぐる他国の行為に具体的に言及したのは初めて。

 
 これも一部では「クリントンはもう辞めるから、こんなコトを言っても無駄になるだけ」と言っている人もけっこういたワケです。
 「どうせケリーになったら親中政策になるんだから、この段階で何を言っても無駄無駄」と。
 しかし岸田外務大臣は、それをいとも簡単にはねのけて、ケリー新国務長官からも「日米安保条約の適用範囲」という言葉を引き出したのです。
 
 これは当然のお話ですが、どこかの3流国であればお話は別ですが、キチンとした民主主義の先進国であれば、前政権がどうだったとしても、前任者が自分と敵対勢力だったとしても、それでも前任者が行ったコトはキチンと踏襲するのが当然の習わしです。
 まして外交ならなおさらです。
 相手のあるコトなのですから、身内の都合で他人との約束を反故にするなんて、まさに二流三流の人間のやるコトです。
 だからこそ岸田外務大臣がクリントンさんの時に、記事にありますように「米政府が尖閣をめぐる他国の行為に具体的に言及したのは初めて」である「日米安保条約に基づく米国の防衛義務を認め」させたのは大きかったのです。
 いつも言ってますように、政治は線であり面なのですから、一部分だけを切り取って見て判断しても意味はありません。
 東南アジア歴訪後の厳しい日程の中でも強行軍でアメリカに行ってクリントン国務長官と会談したという、その実行力がこの成果に繋がったワケなのです。
 
 オバマ大統領との会談でTPP問題について自民党の公約をクリアする形で共同声明を引き出した安倍総理のは、すごい外交手腕だと思います。
 「聖域なき関税撤廃なら交渉参加しない」というのが自民党の先の選挙での公約でしたが、これは100%今回の共同声明でクリアされました。
 その安倍総理の外交手腕は評価されるべきだと思いますが、同時にやえは、岸田外務大臣の外交手腕ももっと高く評価されるべきだと思います。
 むしろやえは、安倍総理よりスゴいコトをやったんじゃないかと思っています。
 クリントン・ケリーと二代続けて「尖閣諸島に軍隊を出したら日米安保が発動される」と公的にアメリカ国務長官に明言させたのですが、これはこの諸課題に対する歴史的転換点になるとも言えるでしょう。
 もちろんこの尖閣を巡る諸課題の最重要戦犯は仙谷官房長官ですが、その後の日本にとってかなり不利な状況になった現状をなんとか押し戻す大きな一手を売ったのが岸田外務大臣と言えるのです。
 
 日本のマスコミは中国におもねっているのかこの問題を大きく報じようとしませんが、こうした評価されるべき事実というのは、もっと国民は知る権利がありますし、マスコミは報道する義務があるハズなのではないでしょうか。
 そうしてこそ公平なのであり、事実を知った上で国民は選択する権利を行使出来るのですからね。