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2013-08-30

憲法解釈の最終判断は司法府


 『はだしのゲン』の話題が続きましたので、今日はちょっと別の話題にしましょう。
 今日はこちらのニュースです。
 

 「法制局に決定権」は不正確 小松長官インタビュー要旨
 
 意見を述べるにあたっては、法治国家としての法的安定性、整合性、継続性を十分に勘案しなければならない。(集団的自衛権の行使には)歴代長官も有力な学者も極めて慎重にすべきだ、と述べている。今までの政府見解もそう書いている。それを総合的に勘案して、最後は内閣が決定する問題だ。内閣法制局が最終的な決定権を持っているという認識は法的に正確ではない。「内閣が『右』と考えているのに、法制局が勝手に『左だ』と決めている」という認識は正しくない。政府見解は何度も閣議決定されている。

 
 「法制局」という言葉を最近よく耳にすると思います。
 憲法改正や、集団的自衛権の憲法解釈に関する話題でよく聞く、特に安倍総理が内閣法制局長に「容認派の人」を据えたというコトでよく話題になっているところです。
 ではですね、そもそもこの「法制局」とはどんな機関なのかというところを考えてみましょう。
 
 まず日本において「法制局」と言うと、2つの種類が挙げられます。
 正確に言えば3つの「法制局」がありまして、1つは「内閣法制局」、もう2つは「衆議院法制局」と「参議院法制局」になります。
 どちらも仕事の大まかな内容は一緒なのですが、この3つの一番の違いは、それぞれの所属する組織です。
 内閣法制局は内閣(内閣府ではありません。総理以下全大臣としての「内閣」です)に所属する機関、衆議院法制局は衆議院に、参議院法制局は参議院に所属する機関となります。
 よって、内閣法制局と衆参法制局は、微妙に立ち位置が変わってきます。
 
 立ち位置を説明する前に、では法制局とは何をする部署なのかを説明しましょう。
 法制局とは、法案化する前、つまり国会に提出する前の法案を審査する機関です。
 簡単に言えば、「その法案草案は法案として適切な形に整っているかどうか」を審査する機関なのです。
 
 なぜこんな審査が必要なのかと言えば、理由はいろいろとあるのですが、1つは、国会に正式に提出した法案が成立したら、その法案の文章は1文字も変えられるコトなく法律となるため、逆に言えば、国会での審議段階で1文字でも訂正するコトは不可能、もしどうしても修正したいのであれば改めて「修正案」として提出しなおさなければならないため、国会の提出する法案は法律化される前の段階でも法律として過不足ない文章となっていなければならないからです。
 簡単に言えば、法案を法案として提出する段階においてすでに「法律としての文章」になってなければならないから、です。
 当サイトでも何度か法律解釈については取り上げてしますが、法律とは一般的な文章よりも多少書き方に難解なルールがあったりします。
 ですから、法案化させる段階においても、そのルールをキチンと適合させておかなければならないんですね。
 政治家が理念だけ書いてもそれを国会に法案として提出するコトはできないので、法制局は、その提出される文章が法律文章として適切かどうか、キチッと整っているのかどうかの審査をしているワケなんです。
 
 また法制局の仕事はこれだけでなく、例えば他の法律との兼ね合いも調べなければならなかったり、書き方によっては本来の理念とは別の運用がされてしまわないかという、法律文章の文法チェックという点もあります。
 例えば、新法を制定しようとする場合、しかし他の既存の法律とかぶってしまったり矛盾してしまったりすると、社会秩序に大きな害悪となってしまいますから、その辺の整合性をとらなければならないのです。
 また、ちょっとした表現や文章の書き方によって、法案を立案している人の意図からかけ離れた運用がされてしまう可能性も考えなければなりません。
 先程言いましたように、法律の文章というのは多少一般的な文章と文化が違いますから、表現の仕方をちょっと間違えるだけで運用が180度変わってしまうなんてコトもあり得るコトです。
 ですからそうならないよう、法制局は事前にその辺の審査をしているワケなんですね。
 
 さてここまで説明すると、内閣法制局と衆参法制局となぜ2つ(厳密には3つですが)あるのかが見えてくるのではないでしょうか。
 この2つの一番の違いは、「法案提出者」の違いであり、もっと言えば「法案提出者の立場の違い」でもあるワケです。
 すなわち、内閣法制局は、行政府である内閣が提出したい法案草案を審議する機関。
 そして衆参法制局は、立法府である国会議員が提出したい法案草案を審議す機関なのです。
 ここが両者の一番大きな違いです。
 
 では最初の記事の話題に戻りましょう。
 特に記事のタイトルを見て下さい。
 「「法制局に決定権」は不正確」とあるのですが、ここまですれば、こんなのは本来は今さら言うまでのコトもない当たり前のコトだというコトが分かるでしょう。
 だって内閣法制局にしても衆参法制局にしても、それらはあくまでそれぞれが属する組織の一機関でしかないのですから、決定権は、閣議決定や国会の議決というそれぞれの決定にあるからです。
 しかし最近マスコミの報道の仕方によって、さも法制局長が(解釈変更の)GOサインを出せば日本国家としての決定になるかのような言い方をしてしまっているので、前法制局長がわざわざこんな言い方をしたのでしょう。
 「法制局はそういう機関ではありません」と、これはその組織の最終決定機関ではない機関の人間としてはごくごく当たり前の、民間会社で言えば「部長の決定はあくまで内部決定でしかなく、会社としての最終決定は取締役会にあります」ぐらいの、当然すぎるコトを言っているに過ぎないのです。
 新聞は散々ミスリードを誘うようなコトを書いた上で、敢えて白々しくもこんな記事を載せるワケなんですね。
 
 で、これまでの説明を振り返ると、つまり内閣法制局は内閣所属の機関で、衆参法制局は立法府所属の機関だというコトですから、よって三権分立の観点から考えれば、日本国家としての憲法の最終判断はどこにあるのかという問題については、これまた中学校レベルで習う社会科の授業に出てくる程度の知識で簡単に分かると思います。
 当然、内閣法制局も衆参法制局もその法律(や憲法解釈)の成否を最終的に判断する立場にはありません。
 そして既存憲法の判断という点においては、法律を作る立場の立法府である国会でも、既存の法律の範囲内で権限を振るう立場の行政府である政府(総理大臣)でもありません。
 憲法をどう解釈して判断するのかという国家としての最終判断は、司法府である裁判所の権限にあるのです。
 
 各法制局は、確かに法案草案を審査する機関ですが、しかし言うならば内部審査に過ぎないワケです。
 ですから、法制局が通ったからと言って、絶対に裁判所が合法だと判断するという保証はありませんし、法的根拠も当然ありません。
 もしそんなモノがあったら、裁判所の違憲立法審査権は形骸化しますし、過去に出された違憲判決っていうモノはなんなのかっていうお話になっちゃいますよね。
 全ての法律は法制局のOKが出ているのに、なぜ裁判所がそれにNOを出したのか?ってお話です。
 この「違憲判決」という部分だけ持ってしても、法制局の権限の限界や、憲法法律の最終判断者の権限はどこにあるのかっていう問題は、簡単に分かるハズです。
 ここは統治機構のお話として、主権者たる国民は知っておく事項でしょう。
 
 特にマスコミが変な印象操作をしようとしますから、注意が必要です。
 さっきも言いましたように、さも法制局がGOサインを出したら国家としてのOKだという印象を与え、その上で「安倍総理は自分の意向に従う人を法制局長に据えた」と報じ、つまり「安倍は独裁政治を仕様としている」という印象操作をしようとしているワケです。
 でもキチンと統治機構のシステムを知っていれば、それがいかにデタラメなのか簡単に分かりますよね。
 最終的な憲法判断は当然として裁判所の権限であり、これは三権分立のシステムであって、誰かが独裁できるシロモノではないのです。
 国民全員が支えている日本国家のシステムなのです。
 マスコミには騙されないようにしましょう。
 

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