偽装の連鎖

 悪い予感が当たったというか、予想通りというか、やっぱり表示偽造の問題が大阪のホテルだけにとどまらず、日本全国の有名店で発覚しはじめました。
 

 食材偽装:全主要百貨店で…三越伊勢丹、そごう・西武も
 
 三越伊勢丹ホールディングスは6日、新宿伊勢丹や日本橋三越など9施設のレストランの一部で、メニュー表示と異なる食材を使った料理を提供していたと発表した。バナメイエビを「芝海老(えび)」としたり、ケーキのモンブランのクリが中国産なのに「欧州産」と偽ったりした例もあった。1996年から22万1000食を販売、総額は約3億円に上るという。そごう・西武も同日、レストランなどで虚偽の食材を表示した料理を提供していたと発表。高島屋や大丸松坂屋、小田急、京王、東武の各百貨店などでも食材の虚偽表示が判明しており、問題は主要百貨店全体に広がった。百貨店は商品やサービスの品質が売り物だけに、消費者に不信感が広がりそうだ。
 新たに虚偽表示が見つかったのは、新宿伊勢丹「維新號」▽日本橋三越「特別食堂」「カフェウィーン」「グリル満天星」▽府中伊勢丹「桃源酒家」「カオヤ」「新宿つな八」▽浦和伊勢丹「南国酒家」「新宿つな八」▽相模原伊勢丹「南国酒家」▽札幌三越、仙台三越「銀座トリコロール」▽高松三越「カフェウィーン」▽伊勢丹会館(東京都新宿区)「グリル満天星」の計14レストランの計52メニュー。「芝海老」とうたいながら「バナメイエビ」を使ったり、結着材で結合した肉を「加工肉」と表示していなかったりした。利用者に代金を返還する方針。赤松憲常務は6日の記者会見で「お客様におわびする」と陳謝した。
 また、そごう・西武も6日、そごう横浜店など7店舗に入るレストランや食品売り場の一部で「芝海老」と表記しながら「バナメイエビ」を使っていたなどと発表。小田急百貨店も同日、新宿店のレストラン「麦星byグリル満天星」で表示と異なる食材を使用していたと発表した。

 
 発覚というか、記事にも「発表した」とありますように自ら公表したようですが、それこそがまさに景品表示法の穴をついた行為そのものだと断じざるを得ません。
 すなわち、景表法の罰則の部分は「表示を正しくするよう勧告する」のと「偽装していたと社名を公開する」の2つですから、いま自発的に公表してしまえば景表法による罰則はこれ以上はないと判断されるためです。
 まして、一番最初に問題となった阪急阪神ホテルズとは違い、二番煎じ三番煎じとなってしまったこの時期でのこの話題では、阪急阪神ホテルよりは話題性が低くなり、つまり批判のトーンも落ちるので、後から発覚するよりはいまの「ブーム」のウチに発表しておこうと、その方が「ダメージが少ない」という判断からの、この大量の一斉発表があったのでしょう。
 さらに言えば、その二番煎じ三番煎じが自分だけではなく、他の大企業もほぼ同時に行っているコトで、ますます「自分にくるダメージ」が小さくなるワケです。
 まさに「赤信号、みんなで渡れば怖くない」そのものの考え方が、今回のこの発表なのです。
 
 これはもう悪質とひとことで言い表せられるモノではありません。
 完全の法の網の目をくぐり抜ける行為そのものです。
 もはやここまできたのですから、もちろんこれら偽装表示をしてきた企業に対しては猛省を促すしかありませんが、やはりここまで問題が発覚したのですから、法改正は必要でしょうか。
 ハッキリ言って、このままではまた同じコトの繰り返しにしかなりません。
 いま偽装を発表した企業は、いまのところは大変だと思っているのかもしれませんが、数年も経てば「あのときは大変だったよね」程度の思い出話にしかならないでしょう。
 なぜなら、罪に対する罰があまりにも軽すぎるからです。
 記憶が鮮明なウチは同じ過ちを繰り返すコトはおバカがやるコトですからやらないよう努力するでしょうけど、しかしその過ちを犯してもたいした罰がない以上、それに対する恐れがないのですから、記憶はどんどん薄らいでいくワケです。
 そうしていつの間にかまたなぁなぁになって偽装が蔓延してしまう、そんな未来も否定できないのではないのでしょうか。
 そもそも普段からちゃんとしていれば、今回のようなコトにはならなかったのですからね。
 
 だから、法に明記するコトで罰を明確にするコトで、抑止力として常に食品の提供者に緊張感を持たせなければならないのです。
 前回も書きましたように、これまでは「市場原理」と「性善説」によって偽装はしないだろう、しても公表さえすれば大きな罰になるだろう、それが抑止力になるだろうというコトで、この景表法は運営されてきたのだと思います。
 しかしもうそれは通用しないコトは、今回の件でハッキリと証明されました。
 よっていまこそ法改正が絶対に必要なのです。
 少なくとも、景表法に営業停止処分と罰金刑は新たに設けるべきです。
 もし本当に悪質で悪質で仕方ない場合は、これは刑事事件である詐欺罪で立件すればいいのです。
 でも刑事事件は悪質な故意であるというコトを立証しなければならないので、なかなかそこまで至るのは希です。
 ですから、結果に対して罰を与えるコトのできる行政処分が適切です。
 例えば交通違反なんて多くが行政処分ですが、あれも故意かどうかは問わずに、スピードをオーバーしたっていう結果のみに対して罰を与えていますよね。
 これらと同じように、悪意や故意性があるかどうかではなく、「書いてあるモノとは違うモノが提供された」という結果に対して罰を与えられるようにすべきなのです。
 でなければ、このての問題はもう解決しないと言っても過言ではないと思います。
 
 これはマスコミにも言えるコトですが、結果としてどのような影響がもたらされたのかという結果そのものに対する責任への意識が最近とても弱くなってきている気がしてなりません。
 
 
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