なんのために議論をするのか

 議論ってなんのためにするのかと言えば、当たり前ですが、結論を得るためです。
 いつもいつも結論が出る議論が出来るワケではありませんが、しかし議論する以上は、結論に向かって議論するっていうのは、前提条件として当然の認識でしょう。
 わーわー一報通行で叫ぶだけなら、別に「議論」する必要はありません。
 相手なしに一人でわーわー言えばいいんですからね。
 議論とは相手がいて相手に対して意見を主張する以上、相手に自分の考えを、できれば全てを、それが無理でも1%でも理解してもらおうという気概を持って臨むべきモノであるワケです。
 そしてその結果、もしお互いが理解し合って納得すれば、それが「結論」となるのですからね。
 
 はじめからマスコミに乗っかって廃案闘争しか頭に無かった民主・共産・社民はともかくとしても、今回の特定秘密保護法案で最も醜悪な対応をしたのは日本維新の会でしょう。
 やえ、衆議院の委員会でこの法案が通過する前に、こういうエントリーをあげました。
 

 与野党の修正協議は評価すべき
 
 もちろんその国民の意思というモノは、議席数と全く同じとは言いませんし、また投票した政党と全ての意見が合致している人の割合でもないコトはその通りですが、しかし間接民主主義を採っている以上は、投票した先に政治を委託しているのは確かなのですから、そういう意味から議席数というのは国民の意見の割合を表しているという一面もあるとは言えるワケです。
 今回の件で言えば、自民党・公明党・維新の会・みんなの党の4党がそれぞれの意見を出しつつ修正した上で法案賛成に回るというのは、その議席数に応じた割合だけ国民の意思を反映していると言えるでしょう。

 
 この頃はまだこの法案に対する各党の反応は、かなり浅いモノでした。
 よく覚えています。
 やえのエントリー記事のリンク先にもあるのですが、一時は民主党も自民党との修正協議に乗ろうという雰囲気すらあったぐらい(結局「政府・与党と戦った方がいい」という反対のための反対の闘争路線に回帰しましたが)で、この頃はマスコミだけがわーわー言ってて、まさに国民とマスコミの間に大きな壁がある温度差をまざまざと見せつけていた象徴的な法案でした。
 それがつい先日からこの雰囲気です。
 元祖反対のための反対党である民主党はともかくとしても、いつの間にかマスコミに引っ張られる形で、維新の会やみんなの党まで反対的な立場に回ってしまいました。
 それでもみんなの党は修正法案提出者として答弁席側に座り続けたので一定の筋は通しましたが、最悪なのが維新の会です。
 参議院での動きは混乱しすぎて、どの党が賛成したのか反対したのかちょっと分かりづらいので衆議院で言いますが、衆議院の委員会での採決の際には維新の会は「退席」をしたのです。
 
 維新の会は、その前の段階ですでに自民党と修正合意を結んだんですよ。
 こちらの記事にもハッキリと書いてあります。
 

 自民、公明両党と日本維新の会は20日夜、機密を漏らした公務員らへの罰則を強める特定秘密保護法案をめぐる修正協議で、特定秘密の指定期間を原則「最長60年」とすることなどで合意した。

 
 ここまでやっておいて、ではどういう理由で維新の会は退席や反対闘争にまわってしまったのでしょうか。
 維新の会は人によって言うコトがバラバラなので統一見解を探すのが難しいのですが、だいたい多くの人が言っているのが「審議時間が短い」です。
 もっと慎重審議をすべきだ、審議が尽くされていない、こういうセリフをよく聞くところです。
 つまり維新の会という政党の態度をまとめるなら、「自民党と修正合意をし、本来共同提出者となって法案賛成すべきところまで態勢を整えたのに、審議時間が短いという理由で退席、もしくは反対の立場をとっている」というコトになります。
 
 意味不明です。
 
 維新の会はいったいぜんたい何のために議論をしているのでしょうか。
 議論というモノを維新の会はどういう位置づけと考えてるのでしょうか。
 維新の会は、自分達は法案には異議がもうないワケです。
 いえ本心を言えば維新の会だけの案っていうモノもあるのでしょうけど、でも維新の会は国民から与えられた議席数に応じた分の主張を法案に盛り込むコトで、妥協するコトで、自らの国民への責任を果たそうとしたのです。
 もし維新の会だけの意見が100%通らなければならないと言うのであれば、それは維新の会以外へ投票した人を封殺するコトになりますからね。
 この辺は自民党も同じなワケです。
 自民党は国民から与えられた議席数をもって与党を形成しているワケで、その責任の上で大もとの法案を作り、そして自民党以外へ投票した人達の声も反映させる形で公明党やみんなの党や維新の会などの意見も法案に盛り込んで、修正案として提出し直したのです。
 まさに民主主義の王道でしょう。
 ですから、本心は100%でなくても、民主主義の原則に則る形で、自民党も公明党もみんなの党も維新の会も、その修正案に対して「異議が無い」姿勢を整えたのです。
 アレな民主党と違い、維新の会はキチンと「合意をした」という結果を出して責任を果たしたのです。
 
 それなのにこの体たらくです。
 
 責任を果たしたと思ったら、最悪のちゃぶ台返しです。
 ましてその理由が「審議時間が足りないから」?
 この人達はいったい何を言っているのでしょうか?
 
 異議が無いなら議論する必要はないハズです。
 果たして「自分達が作り上げた法案」に対して、つまり「もう異議のない法案」に対して、いったいなにを議論するっていうのでしょうか。
 国会審議はまだそれでも「法案の内容を国民に知らせる」という意味合いもありますから、一切審議無しで成立でも構わないとは言いません。
 とは言っても、全党賛成での全会一致で可決される法案の審議は一日しか無いなんて法案も実は調べれば簡単に見つかったりしますから、決して「審議時間が長い」が正義ではないコトは、共産党ですら分かっているハズなんですよ。
 その中で、まぁ注目される法案ではありますから、「国民に内容を知らせる」という意味での質疑があってもかまわないでしょう。
 でもこの法案ではそれは十分行っていますよね?
 衆議院での審議は40時間を越えていると聞きましたよ?
 40時間っていうのは国会の相場観では十分な審議時間です。
 長い短いっていうのはあくまで相対評価ですから何かと比べる必要があるワケですが、平均的な法案審議時間で考えれば40時間は十分でしょう。
 ちょっと調べたところ、40時間ぐらいの法案としては、イラク復興支援特措法案や個人情報保護法案があるようです。
 十分ですよね。
 廃案闘争がしたい民主・共産・社民は100時間かけても時間が足りないというのでしょうけど、そういうアレな人達はおいておくにしても、果たして維新の会はこれだけ時間をかけて何が足りないというのでしょうか。
 全く理解に苦しみます。
 
 いったい維新の会は、何を議論するっていうのでしょうか?
 何のために議論するっていうのでしょうか?
 維新の会が言っているコトは、つまりは「議論するための議論」をしろって言ってるだけで、「時間さえかければ議論の内容なんてどうでもいい」と言ってしまっているワケなのです。
 なんという本末転倒でしょうか。 
 それともアリバイづくりしか頭に無いのでしょうか。
 もう一度言います。
 いったい維新の会は、何のために議論をしろって言うつもりなのでしょうか?
 
 とここまで書いておいてなんですが、みんなの党も欠席なんですね。
 維新の会と同じ穴の狢だったようです。
 日本政治の最大の不幸は、全ての野党がマスコミの手に踊らされる存在でしか無い、すぐにその程度に堕してしまうというところでしょう。