消費税率アップはデフレ脱却の一手か?

 この記事を見てふと思ったコトがあるんですね。
 

 消費税電話相談 多くは税率上回る値上げ
 
 消費税率の引き上げに伴う便乗値上げを防ぐため消費者庁が設けた電話窓口に、先月1100件余りの相談が寄せられたことが分かりました。
 税率を超えて値段が上がったという内容がほとんどで、消費者庁は関係する省庁に連絡するなど便乗値上げ防止に向けた取り組みを進めていくとしています。
 消費税率は先月から8%に引き上げられましたが、消費者庁はこれに伴う便乗値上げを防ぐため専用の電話窓口を設け、相談に応じてきました。
その結果、消費者から寄せられた相談は先月1か月間に1104件に上り、そのほとんどが、税率を超えて物やサービスの値段が上がったという内容でした。

 
 建前として便乗値上げは違法行為ですから、記事の通りやったらダメです。
 それはもうその通りです。
 ただですね、やっぱり雰囲気って変わったじゃないですか。
 今までは値下げ一辺倒だった国内経済も、消費税率が上がってから、なんとなく全体的に値上げが行われている、そしてそれがなんとなく許されてしまっているような雰囲気になっているのではないのでしょうか。
 経済というか景気というモノは雰囲気っていうファクターが非常に大きいですから、この雰囲気は経済全体で言えば良い方向を向いているとは言えるのではないかと思うのです。
 
 ハッキリ言ってしまえば、マスコミが言うほどこの程度の値上げ(税率にしても物品の値上げにしても)では、日本人は「生活は出来ない」なんてなるコトはありません。
 マスコミは必死にアンケートとか取って政府批判の一環にしたいようですが、しかし「値段が高い方がいいか、安い方がいいか」なんて聞かれれば誰だって安い方がいいに決まっているのですから、こんなアンケートは無意味です。
 生活保護を受けている人にスポットを当てようとしても、もはやその人達にはもっと工夫が必要なんじゃないかとネットで批判されるぐらいであり、実は本当に文字通り「明日のご飯すら食べられないかもしれない」までなる人っていうは、皆無とは言いませんが、かなりイレギュラーな存在だというぐらいなのです。
 ましてそれぐらいのイレギュラーな人も、制度としては日本はキチンとセイフティーネットを整備しているワケで、それを受ける側に問題があるのか支給する窓口に問題があるかはともかく、この税率アップによって字面からして強烈なインパクトがある「貧困」に急になるっていうのは、少なくとも日本国内においてはちょっと考えられないワケです。
 
 ですから、便乗値上げは違法行為ですが、値上げ自体は経済にとっては良いコトなんだと思うのです。
 いつもいつもインフレが経済に良いという意味ではありませんが、しかし少なくともここ5年ぐらいリーマンショック以来デフレにあえいでいた日本経済にとっては、むしろ値上げは悲願だとすら言えるのではないのでしょうか。
 自民党政権になってから景気が上向きになっているとは言え、企業が物を売る値段は超デフレ時代のままでしたから、「本来のあるべき姿の日本経済」にはまだまだ手が届かなかったワケですが、消費税増税になったからそれが手に届くようになったとは言えませんが、しかしその光明が見えてきたとは言えるのではないでしょうか。
 おそらく自由主義経済社会というのは「なだらかなインフレ」が最も望ましい形であるハズであり、リーマンショック以来日本だけが経済回復が出来なかった過去から、「ただの景気上向き」ではなく、「経済全体の上昇と成長」に向かって、いまやっと道筋が立てられたと見るコトができるのではないのでしょうか。
 
 ここからは憶測ですが、一部政治家の方々にはこういう見方をしていた人って、いたのではないかと思うのです。
 民主党政権時の消費税増税の三党合意も、その後安倍総理の税率アップ閣議決定も、マスコミを中心とした批判(それは自民党叩きの面もありましたが)が大きくありましたが、それでも時に不可解とも言えるぐらいの強引な決定が成された部分もありました。
 アベノミクスでやっと景気が上向きになっている中でなぜ税率アップという冷や水をかけるのか、という批判にも、なかなか正面切って反論する政治家や有識者はいませんでした。
 しかしいま思うと、もしかしたら「物価上昇」を狙っての消費税増税という面もあったのではないかという気がするのです。
 なぜなら、もしこれが狙いだとしても、実際これを行うコトは「便乗値上げ黙認」なワケですから、口が裂けてもそれを公の場では言えませんよね。
 だから頭の中にはあってもそれをひた隠しにして税率アップを目指した、という一面があるのではないかと、ふとやえは思ったのです。
 
 もちろんこれが税率アップの理由の全てではないでしょう。
 膨れあがる社会保障費をまかなうっていうのは、近年の日本財政にとって一番頭の痛い問題なのは確かです。
 また、税率アップまでは物価の値上げなんて頭によぎるコトすら難しかった雰囲気がちょっと前まではありましたから、全く「値上げを狙った上での増税」なんていうコトを理由として考えられない人も多かったとは思います。
 ただ、いま思うと、こういう効果もあるのではないかと、ふと思うワケです。
 
 さて日本の経済はどうなるでしょうか。
 まだ税率アップしてから一ヶ月ぐらいしか経っていませんので、まだまだ評価は難しいと思います。
 ただひとつ言えるコトは、少なくとも社会保障費の財政問題がある以上はなんらかの税率アップがあったとしても経済を上向きにしなければ、日本はやっていけないという事実です。
 ここの部分について、政治だけでなく日本全体の課題として考えていかなければならないでしょう。