「戦略的核廃絶論」の位置づけ

 これからキチンと形作っていこうと思っているのですが、「日本の軍事上においては核兵器が廃絶された世界の方が優位に立てるからこそ核廃絶を訴えていくべきだ」という考え方をまとめた、題して「戦略的核廃絶論」というモノをこれから徐々に提唱していこうと思っています。
 これまでも前から同趣旨はここでもちょくちょく書いてはいたのですけど、それに名前を付けたのは今回の一連の議論ではじめてですし、キチンと論として固めて発表すべきだと今回の議論で思ったのです。
 最初は「草論」として皆さんのご意見も聞きながら、よりよい論にしていきたいと考えています。
 
 で、今日はですね、多分突っ込みがあるならこれは必ず出るだろうなと思っていた内容のツッコミが、予想以上に早く来ましたモノで、まずはそちらにレスしておきたいと思います。
 

>核がなくなれば通常兵器だけの比較になり、それは経済力と技術力に比例するコトになり、完全に日本の得意分野での勝負となるからです。
 
 どうやって核兵器廃絶を訴えていくのかな・・・
 廃止した後も核兵器を持たないってことをお互いに担保しなきゃならんがそこもどうするのかな?
 そこが現実的じゃないと戦略的核廃絶論も絵にかいた餅だよね。
 「核兵器は非人道的な兵器だから廃止すべきだ」といってる人たちと大差ないってことになる。

 
 匿名さんがこれまでの一連の更新やレスなどを読んで下っているのかどうか分からないのですが、「戦略的核廃絶論」というのは、あくまで核武装する必要性はないというコトを訴える「論拠」であって、核を廃絶した世界だけがバラ色の世界だとか、逆に廃絶した世界にならなければ全くの無意味であるとか、そういうコトを指摘する論ではありません。
 ですからこれまでの更新や議論もちゃんと読んで欲しいところなんですが、憲法九条の改正は必要条件ですけど、それが達成されればある程度の、いえ相当の抑止力を日本だけで持ち得るコトになるんですね。
 例えば北朝鮮の核に対する抑止力は、結局金王国が一番何に恐怖を感じるのかというコトを考えれば、「金王国の崩壊」こそが恐怖なのであって、その手段は核しかあり得ないなんてという結論には絶対にならないワケですよ。
 もうこのお話は数え切れないぐらいしてきたハズです。
 よって、「核が廃絶された世界でなければ日本は北朝鮮に対する抑止力を持つコトができない」が事実であれば「現実的ではない」と言えるかもしれませんが、しかし実際のところはそうではないワケであって、憲法九条さえ改正すればそれで済むワケですから、全然現実的ではないコトはないお話なのです。
 北朝鮮の核兵器で言えば、別に日本がアメリカと軍事同盟を結んでいなかったとしても北朝鮮は日本に核兵器は撃ってこなかったでしょう。
 北朝鮮の恐怖とは、核兵器を撃ち込まれるコトではなく、手段は問わない上での金王国の滅亡なのですから。
 
 戦略的核廃絶論とは、その「先」を見据えた時に、核がない方がさらに日本は有利になるじゃないかっていうコトを明らかにした論です。
 手前味噌になりますが、いままでそんなコト考えたコトありますか?
 「核がない世界の方が日本は軍事的優位に立てる」なんて想像したコトありますか?
 「非人道的だ」などの感情論だけでなく、物理的に日本自身こそが核兵器を持たない方が「利益になる」というコトに気づくコトこそがこの論の大切なところです。
 
 ですからこの論は日本国民自身にも向けられた論なんですよ。
 日本自身が核武装してしまえば、ますます核不拡散が後退し、よってますます日本は不利になってしまうのです。
 ですからむしろまずは日本国民自身に戦略的核廃絶論を理解してもらい、日本こそが核武装をしないっていう結論を得られるコトも、すでに戦略的核廃絶論の前進となるのです。
 そしてそれは日本の利益となるのです。
 よってここでやえがこう主張するコトがすでに全くもって現実的なお話ですし、絵に描いた餅ではないのです。
 
 さらに言えば、実際NPDIという枠組みが出来ていて何度も会合が開かれているという現実を前にして、ましてむしろ日本は消極的だとNPDI加盟国の他の国から批判されるぐらいなのですから、全然これだけでも非現実的ではありませんよね。
 もしこれが日本だけでわーわー言っているのはまだしも、もはや国際的な枠組も出来ているんですよ。
 さらに言えば、この前の広島で行われたNPDI外相会合には、オブザーバーとしてアメリカの政府高官まで出席しているのです。
 実際に政治が動いている、他国を交えた外交すら動いている、こういう現実を目の前にして「廃絶を訴えるのは非現実的」と言ってしまうのは、むしろその方が現実が見えていないと言わざるを得ないのではないのでしょうか。
 そもそも米ソ冷戦時代から核軍縮のお話はあるのです。
 核保有国さえ核軍縮には現実的な問題として存在しているのですから、日本としては「この流れを加速していく」という外交的方向付けは大変に意義のある現実的外交政治だと思います。
 
 というワケで、匿名さんは、現実出来るのかどうかではなく、戦略的核廃絶論を正しいと思うのかどうか、間違っているとするとどこに穴があるのか、それを是非指摘していただければと思います。
 この論はまだまだしっかりと組み立てていく必要のある論だと思っていますので、ぜひよろしくお願いします。