「選挙」と言えば何でも国政与野党対決構図に持ってくる愚かな図

 今日はこちらの記事です。
 

 自民が知事選「4連敗」も?! 長野で異例の“不戦敗”
 
 8月10日の長野県知事選投開票まであと1週間。戦況は「無風」ゆえに、中央の政界ではほとんど話題に上らない上、メディアも“素通り”を決め込んでいる。しかし「無風」であっさり片付けるわけにはいかない。平成10年4月の民主党誕生以来初めて、都道府県知事選で自民党が自前候補を立てず、民主党の色がしっかりついた「敵」の現職候補に抱くつくという、事実上の“不戦敗”を決め込んだからだ。
 
 (中略)
 
 むろん今回の知事選で自民党は当初、事実上の「民主党知事」である阿部氏への対抗馬を擁立する方向で動いていた。しかし結局、各種世論調査で時に「80%超」とされる県民の高支持率を維持している阿部氏と手を組むしかないとの判断に傾き、春先には独自候補擁立断念の白旗を掲げざるを得なくなった。
 そして自民党は善後策として阿部氏の推薦を決めた。いわば「昨日の敵」についたのである。うがった見方をすれば、主戦論を貫き通せば敗北は不可避であり、目に見える「1敗」を覆い隠すために弥縫(びほう)策として今回の戦略をとったといえなくもない。

 
 いろいろ長ったらしい文章をこの記事では書いていますが、要は前回の選挙の際には民主党の推薦で通った候補だったけど、実際知事としての手腕は抜群であり、県内の支持率が80%を超えているので、自民党も対立候補を出さずに現職知事にを推薦するコトを決めた、というお話です。
 この記事、長々と自民党の国政の方の党本部の事情ばかりズラズラと書き綴っていますが、しかしよくよくこの現場のコトを考えれば、自民党の対応も、こんなの当たり前なんですよね。
 だって、現職知事が素晴らしいと県民が支持するのであれば、つまりその知事が県のためにもっとも相応しいと判断されれば、その人に今一度知事を任せようと判断するのは当たり前じゃないですか。
 もちろん選挙ですから立候補者を立てるっていうのも自由です。
 しかし立候補者を立てないのも自由であって、県知事選挙なんですからその県知事がそこまで県民に支持されているのでしたら、自民党だ民主党だっていう「ガワ」にこだわる方が間違いなのではないのでしょうか?
 そして自民党は実際そういう判断に至ったのではないのでしょうか。
 
 この産経新聞の記事が間違っているところは、政党のために政治があるかのように構図を決めて付けている点です。
 まず政党があって対立があるから、選挙では必ず対立候補を出さなければならないという前提でなければこんな記事は書けません。
 しかし現実は違いますよ。
 特に地方政治は国政と違ってその政治体系すら違う、国政は議院内閣制ですが、地方は疑似大統領制という点もあって、国政の事情をそのまま地方選挙に当てはめるのは全くの間違いです。
 それなのに地方選挙の結果で国政を計ろうとする、これは産経に限らず全てのメディアは、あまりにも正しく政治を見るコトができていないとしか言いようが無いワケです。
 
 さらに間違っている点は、政治は政党ではなく人である、という点です。
 国政は政党政治ですからそれなりに政党の政策やカラーも重要視されるところではありますが、それでも最後は人ですよ。
 だってそんなの、総理大臣が替わればけっこう政策も変わってくるところを考えれば、簡単に理解できるコトでしょう。
 あの民主党政権だって、鳩山・菅は全然ダメだったけど野田はまだマシだった、という人も結構いますが、しかしこの間は選挙があったワケでもないワケで、つまりマニフェストが変わってワケでもないのですから、結局は人が変わったコトによってそれなりに政治が変わったコトを物語っているワケです。
 特にですよ、県知事というのは疑似大統領ですから、一人に与えられる権限は総理大臣よりももっと大きいのです。
 そういう事情を考えれば、いくら民主党推薦で通った人であったとしても、空前だったとしても必然だったとしてもその人がシッカリしている人であれば、県民にとっては民主党だ自民党だってこだわる必要は一切無く、その人本位で知事としての評価を下すのが、その方がむしろ普通だと言えるでしょう。
 繰り返しますが、議院内閣制における議員と、疑似大統領制における知事とは、求められる政治手腕はかなり違う部分にあるのですからね。
 
 やえは長野県にゆかりがあるワケでもありませんし、この知事さんは全く知らない人ですから、やえの中の知事としての評価を下すコトはできません。
 しかし有権者である長野県民がそういう判断を下すのであれば、それは県民にとっては良い知事なのでしょう。
 そしてその声に従って現職知事を自民党が推薦するのであれば、それはそれでいいんじゃないのでしょうか。
 むしろ80%という数字を見れば普通のコトだと思います。
 自民党が「自主投票」ではなく「推薦」まで出すのですから、おそらく自民党としての政策からもそこまで遠く離れた知事なのではないのでしょうしね。
 
 一番のデタラメは、これをもって国政と安直に結びつけて、勝った負けたで大喜びしているマスコミです。
 滑稽にも程があるでしょう。