第二次安倍改造内閣の顔ぶれ (3)

 (つづき)
 
●環境大臣 望月義夫(宏池会(岸田派))
 初入閣の望月さんです。
 過去に環境副大臣をされていますので、環境行政には精通しているモノと思われます。
 
 それより望月さんと言えば、直前まで自民党の行政改革本部長を務めておられたというのが、ひとつ大きなポイントだと思っています。
 この役職というのは文字通り行政を改革する役職なワケですが、特に最近の議題として内閣府や内閣官房の仕事が膨大になりすぎて、もう一度省庁再編が必要だという議論が出ていたので、それの自民党内の責任者として望月さんが本部長に就いていたんですね。
 つまり役所の権限を切り取ったりはり付けたりする仕事であり、これは役人から非常に抵抗されるやくどころなワケですが、望月さんはこれを中間報告としてまとめ上げているのです。
 この辺、政治家としての手腕は確かなモノがあると言えますから、復興関係にも大きく関わってくる環境大臣として期待したいところです。
 
 
●防衛大臣・安保法制担当大臣 江渡聡徳(番町政策研究所(大島派))
 すったもんだのあげく、石破さんが断った安保担当大臣です。
 とは言っても江渡さんは過去に防衛副大臣を務めており、報道でも言われましたように、防衛には詳しい防衛族の議員さんですから、行政の仕事は問題ないかと思われます。
 
 しかし行政と国会答弁とは仕事の質が全然違うワケでして、安保法制担当というだけにその主な仕事は国会答弁になりますから、これまで閣僚経験のない初入閣の江渡さんは、この部分の力量はまだ分からないというのが正直なところです。
 行政手腕は良くても、国会答弁はいまいちっていう人はけっこういたりしますからね。
 まして次の国会においては江渡さんこそが国会の中心になるでしょうから、ある意味、第二次安倍改造内閣の命運を江渡さんが握っていると言っても過言ではないと思います。
 やえとしましては、集団的自衛権っていうのはフルで使えて当然だと思っていますので、変な揚げ足取りにやられないように、もったいないようなコトで失点にならないように、江渡大臣には頑張ってもらいたいところです。
 この意味からも注目の大臣です。
 
 
●復興大臣 竹下亘(平成研究会(額賀派))
 前大臣の根本さんは福島選出でしたが、今度は被災三県とは直接関係のない県選出の竹下さんです。
 かの竹下登元総理の弟さんです。
 と言ってもこの人、ごめんなさい、ちょっと地味で、今回初めて知ったという人も多いのではないでしょうか。
 やえも、参議院議員だったようなイメージを持っていたぐらいで、なんかちょっとごめんなさいな感じです(笑)
 
 ちょっと現地の人には厳しいコトを言うようですが、復興がなかなか進まない原因の一つに、現地のしがらみがどうしてもあるようなんですね。
 例えば建設会社は地場のところしか認めないとか。
 復興ですから被災地の企業を使うっていうのももちろん大切なコトなんですが、しかしそれが原因で復興が遅れれば元も子もないですし、そもそも能力が追いつかないなら地場とかにこだわっている場合じゃないですよね。
 これは建設業に限らず、多くの場面でネックになっていると聞いています。
 根本さんは地元の人ですからもしかしたらその辺に手を出しにくかったのかもしれませんが、今度は全然違うところ選出の竹下さんですから、ここでのリーダーシップには期待したいです。
 
 
●国家公安委員長・拉致担当 山谷えり子(清和政策研究会(町村派))
 拉致問題を昔から取り組んでいたコトで保守系の人には有名な山谷さんです。
 なので拉致担当相への就任には関係者から歓迎されているようですね。
 
 ただやえとしては、このポストにはもっと警察行政に詳しい、もっと言えば警察改革に意欲を持っている人に就いてもらいたいんですよね。
 国家公安委員長と拉致担当は別ですから別の人が就いてもいいんですが、兼任する時はだいたい拉致担当の方に力を入れる人がほとんどで、国会公安の方はおまけ的になってしまうんですよね。
 いま取り調べの可視化が言われている中、国際的にも日本の警察検察は中世だと言われてしまっている中、検察は法務省ですが、ですから法務大臣と連携を密にとって、警察検察改革を進めてほしいんですね。
 でも、なかなか進みません。
 これはどこの役所もそうですが、役所の改革を役人にやらせても前進しないんですね。
 役人とは現状維持こそを正義とする修正があるから仕方ないコトなんですが、だからこそ政治家の力が必要なワケです。
 よって、拉致ももちろん重要ですが、同じように警察改革も重要なワケで、この辺についてもっと内閣全体として考えてもらいたいなぁと思うところです。
 
 
●沖縄及び北方担当大臣 山口俊一(為公会(麻生派))
 衆議院当選8期での初入閣というコトで、まさに待望組中の待望組と言ったところでしょうか。
 でも副大臣2回と総理補佐官も務めていますので、決して行政手腕が低いってワケでもないのでしょう。
 この辺はどうしてもタイミングの問題はありますよねってお話かと思われます。
 
 しかしこの「待望組」っていうのも恣意的な言い方だと思うんですね。
 だって選挙に何度も当選しているってコトは、それだけ国民の支持を受けているってコトですから、それだけで大臣になる資格を持っていると言えるワケで、ですから待望組の「処分」のための改造だなんて言う人は、その民意を無視しているとすら言えてしまうのではないかと思うワケです。
 もちろん議員としての資質と大臣としての資質は多少違いますから、なかなか大臣になれない人、総理の意思によってしたくない人が出てきてしまうのも仕方ありませんが、だけど「待望組がいるから改造しなければならない。それは自民党の都合だ」と言ってしまうのは、さすがに批判のための批判だと言うしかないのではないのでしょうか。
 今回の報道を見ていてちょっと気になりました。
 山口さんも8回というかなり多い当選回数なのですから、堂々と大臣としての仕事を全うしてもらいたいと思います。
 
 
●女性活躍担当・行政改革担当大臣 有村治子(番町政策研究所(大島派))
 13名という小派閥ながら、3人も党役員と閣僚に送り込んだ大島派の有村さんです。
 やえびっくりしたんですね、有村さんと言えば元マクドナルド社員というイメージが強くて、それ以外の印象がなかったりしてたんですけど、この人もう参議院3回なんですよね。
 参議院の3回って十分上の方なんですよ。
 参議院って任期が6年ありますから、4期続ける方がめずらしいぐらいで、3期というのは十分参議院議員として実績を積み重ねているワケなんです。
 ハッキリ言って、イメージも見た目も、3回生とは思えませんでしたので、大変失礼しましたという感じです。
 
 というコトで、今回の女性枠というコトでの起用という風に見られがちかもしれませんが、しかし議員歴的には決してそうではないと言える起用なのは確かです。
 官邸での記者会見では緊張していたのかちょっと心許ない感じでしたが、これから慣れて頑張ってもらいたいところです。
 
 
●地方創生担当大臣 石破茂(無派閥)
 最後に石破さんです。
 もう石破さんの人柄とかは説明する必要ないですよね。
 ポイントは、この新しい役職である「地方創生」が具体的にどのような仕事になるのか、どんな権限を持つ役職になるのか、でしょう。
 石破さん個人の思惑はともかくとしても、「アベノミクスを地方に波及させる」っていうのは国家にとって重要な仕事になりますから、ここは強力に推進して欲しいですね。
 色々言われはしましたが、石破さんの発信力はピカイチっていうのは否定できない事実でしょうから、その武器を存分に使い、日本全体の景気回復に寄与して欲しいです。
 
 もうちょっと石破さん個人のコトを言えば、石破さん実はかなりまだ議員としては相当若い(57歳)ですから、まだまだ焦る時期じゃないんですよね。
 3年後でも十分若い部類ですから、そこまで焦らなくても、とは思います。
 まぁもちろん他の要素もあって、時間をかければ同年代や次の世代も地場固めをもっと強くしてくる、例えば岸田さんも外務大臣として名を馳せますます足下の宏池会を強固にし、また派閥領袖として横の繋がりも強くしてくるでしょうから、党内基盤の薄い石破さんとしては早い段階で勝負したかったのでしょう。
 そういう事情もありますから石破さんも焦っていたという事情はあったのでしょう。
 しかしまぁもう1年後は無理でしょうから、それをマイナスと考えるのではなく、プラスと考えて、じっくりと目の前の仕事とをこなして欲しいと思います。
 
 やえは石破さんは好きな方の政治家なんですよね。
 なによりその言葉が理路整然としていて筋が立っているんですよ。
 これはかなり高得点でして、仮に結論の部分で考え方が合致しなくても、論拠を理論的にシッカリと説明してくれますので、さらに考えが深まるキッカケになるんですよね。
 少なくとも、論拠も無くただ結論を押しつけるだけの人、結論を大声で怒鳴ればそれで済むと思っている人よりはよっぽど好感が持てます。
 
 というワケで石破さんには、いまは着実に目の前の仕事をこなし、自分のためと思って日本のために頑張ってもらいたいと思います。
 
 
 以上で第二次安倍改造内閣の新任の方達の紹介でした。
 やはり全体的に適材適所の重厚な人選だと思います。
 とりあえず目立つからやらせてみよう的な人はないですからね。
 あとは、国会答弁能力のあたりでしょうか、敢えて心配を言うなら。
 こればっかりはやってみないと分からないですからね、副大臣では国会答弁もちょっとしかしないので、それだけでは大丈夫かどうか分からないですから。
 しかしだからといって人事を硬直させていては、短期的にはともかく、中長期的には困るコトになります。
 人材の育成はどの世界でも重要な視点です。
 ですから、短期的には財相や外相を変えずに政策の一貫性や安定性を保ちながら、ちょっとずつ人事を動かして将来のコトも見据えるっていう今回の人事は、かなり様々な面で考えられた改造だったと思います。
 少なくともマスコミがレッテルを貼っているかのような、自民党の事情だけの人事とは言えないでしょう。
 まぁそういう人達は何をどうやっても文句言うのでしょうしね。