商売は売り主の自由だから差別をしても許される!?

2015年5月11日

 今日はこちらの記事です。
 記事全体としては、「男子禁制ルール」というモノは性差別に当たるのか?というコトを扱った記事で、まぁ結論としてはこの記事は差別ではないと結論づけているモノですが、とりあえず今日はその結論自体には触れようとは思いません。
 プリクラゾーン男子禁止という取扱いが実際にどうなのかという点は、ひとまず置いておきますが、しかしですね、ただこの引用した部分だけは、どうしても看破できない内容なんですね。
 弁護士の言葉らしいのですが、とてもまともな弁護士とは思えません。
 

 「男性のみの入場禁止!」プリクラコーナーの「男子禁制ルール」は性差別でないのか?
 
●「男性のみの入場禁止は法的に許される」
 「まず『差別にあたるかどうか』ですが、この場合、そもそも法律的な意味で『差別』の問題は生じません」
 尾崎弁護士はこのように切り出した。なぜだろうか?
 「このケースを考えるにあたっては、自分の家に誰かを招き入れる場合のことを考えてみると良いでしょう。自分の家に誰を招くかはその人の自由であって、どんな理由であっても責められる筋合いはありません。
 これは、ゲームセンターにおいても同様です。つまり、本来ゲームセンターがどういった人を客として呼び込むかは営業上の判断であって、それは原則として自由になされるべきです。
 したがって、男性の入場を禁止し、女性のみを入場させることは、法的には許されると考えられます」

 
 この弁護士の主張を一言で書くと、「商売は売り主の自由だから差別をしても許される」というモノです。
 こう書くと誰しも見過ごせないような感じになってくると思うのですが、しかしやえは決して大げさに書いているのではなく、「自分の家に誰かを招き入れる場合」というモノを例に挙げながら理由にして、商売主は自らの店舗に誰を入れるかを自由に選別できるとハッキリと言い、つまり性差を理由にしても全く問題ないと結論づけているワケですから、やっぱりこの弁護士は「商売は売り主の自由だから差別をしても許される」と言ってしまっているコトになるワケですよ。
 おそらくこの弁護士の頭の中では、「商売上の店舗内=個人のプライベートルーム」という前提が成り立っているからでしょう、「店舗内はプライベート空間だから店舗主の自由であり、性差によって差をつけても構わない」となるワケです。
 
 とんでもない間違いです。
 
 この弁護士の頭の中の前提条件が全く間違っているのですが、商売上の店舗というのはかなり公共性の高い空間です。
 店舗はプライベート空間ではありません。
 差別の歴史というモノをこの弁護士は知らないのでしょうか。
 もし店舗はプライベートだから入店条件は店舗主が自由にできると言うのであれば、「黒人禁止レストラン」「黒人専用車両」「黒人専用トイレ」などの差別への闘争の歴史を全て否定してしまうコトになります。
 決して差別は公権力や政府施設の中の取扱いだけを言うモノではありません。
 そんなのは例えばアニメ化して有名になった『ジョジョの奇妙な冒険』第一部のスモーキーという黒人少年がレストランで他の客から黒人であるコトを罵倒されたシーンですとか、つい最近も歌手のGACKTさんがフランスのレストランで差別的な扱いを受けたと話題になった件とか、こういう問題は時代を超えて未だに人間として考えるべき問題として存在しているワケです。
 果たしてこの弁護士という人は、こういう差別の闘争の歴史というモノを本当に知らないのでしょうか。
 
 勘違いしてほしくないのは、今日の議題はあくまで「店舗内は店舗主の自由にできる」という主張の部分についてです。
 黒人差別と男子禁止は違う、と言ってしまうのは筋違いです。
 この弁護士の主張をよく読んでください。
 
 「自分の家に誰を招くかはその人の自由であって、どんな理由であっても責められる筋合いはありません」
 「これは、ゲームセンターにおいても同様」
 「どういった人を客として呼び込むかは営業上の判断」
 「原則として自由になされるべき」
 
 この弁護士の主張は、男子がどうこうという内容ではなく、完全に「自分の店の中に入れるためのルールは店舗主の自由だ」と言っているのです。
 だからここを間違えないでください。
 男子どうこうについてもやえは言いたいコトがいっぱいあるのですが、問題がごちゃ混ぜになっちゃいますので少なくとも今日はまず、「商売は売り主の自由だからその中においては差別をしても許される」という部分についてのみ考えてください。
 
 すでに成立され公布していて来年に施行されるである「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」にはこうあります。
 

第三章 行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置
 
第八条 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。

 
 施行されていないとは言えすでに成立公布されている法律ですら、公的機関の中だけでなく、一般事業者についても同様に差別をしてはならないと明記してあります。
 つまり、店舗内でも「障害者は立ち入り禁止」としてはならないと、ハッキリと法律で決められているんですね。
 
 でもこんなの当たり前なワケですよ。
 
 この記事を書いた人でもその弁護士でもいいですが、じゃあ自分の会社や弁護士事務所で堂々と言ってみればいいんですよ、「黒人は入店禁止だ、出て行け」と。
 もう国際的に大問題となるでしょう。
 でもこの弁護士はちゃんと主張してくださいよ、「自分の事務所なんだから誰を入れるかは自分の自由だ」と。
 なんでこんな簡単な、小学生でも習うような差別の歴史をスルーできてしまうのでしょうか。
 
 よくよく考えてください。
 差別とは何なのかというコトを。
 繰り返しますが、男子禁止がどうこうというのは今回はとりあえず扱いません。
 それはまず忘れた上で、しかし「商売は売り主の自由だから差別をしても許される」というのはあまりにもデタラメだというコトはしっかりと認識してください。
 そしてこんな記事がまかり通ってしまういまの日本の現実には、やえはちょっとこわいモノを感じてしまいます。
 差別とは、意識的なモノよりも、無意識に行ってしまうモノの方がより陰湿で防ぎにくくこわいのです。
 ここをよくよく認識して欲しいと思います。