自分は嫌韓だと言いながら、韓国と全く同じ主張を広げる愚

 上手い下手というのは相対評価ですから、何かと比べなければそれを表現するコトはできませんが、もし本当に日本が外交下手なのであれば、それは国民性に寄るところが大きいのではないかと思わざるを得ません。
 
 世界遺産の件です。
 
 もしくは日本人の、政府に対する万能信仰があるのかもしれませんが、基本的に国家間の交渉というモノは、国内問題と違いそれを履行させる手段、簡単に言えば物理的暴力的な手段、国内で言えば警察力ですよ、これが国家間では存在しないワケですから、結局政府という機関が出来るコトというのは、様々なレベルで約束を取り交わすコトだけとなります。
 そして、その約束を破ったらどうなるのかと言えば、国際社会で信用を無くすだけぐらいしかデメリットはありません。
 もしそれ以上を望むのであれば、国家を取り締まる警察力が現代の世界には存在しない以上は、片方の国家が自らが持つ軍事力で無理やり言うコトを聞かせる行為、すなわち戦争をするぐらいしかなくなってしまいます。
 しかし現代においてはそう簡単に戦争なんかできるワケもなく、国際的信用なんてモノを考慮しないのであればいくらでも約束なんて破り放題であるっていうのが、哀しい現実でもあります。
 それは中国や北朝鮮を見れば分かるコトでしょう。
 でも日本がそんな国家になっていいというワケもなく、つまりは政府が行う国家間交渉・外交交渉というのは、結局のところ約束を取り付けるコトに尽きると言えるのです。
 
 世界遺産のお話ですが、日本は政府間交渉においては、敢えて大げさな表現を使いますが、ほぼ完璧な対応をしてのけました。
 韓国のカツ…外相が世界遺産の会議の前に各国を回って悪口を言って歩いていたところを、しかし最後は日本に呼んで岸田外相と会談を行って、「共に協力し合う」とその態度を転換させるコトに成功しました。
 これまで韓国は「反対する」と言いまわっていたところを「賛成する」とさせたのですから、これ以上の成果はありません。
 まして外相会談での結果ですからね、国家間の約束のレベルは条約締結を最上位として様々なレベルがありますが、外相会談の結果というのはかなり上位に来る約束レベルなワケです。
 物理的に韓国を叩き潰すコトができない以上は、こうやって約束を取り付けるコトしかできないのですからね。
 
 しかし韓国は裏切ったのです。
 
 先ほども言いましたように、国家間の約束を破っても明確なペナルティを与えるコトは出来ません。
 それを理由に戦争を仕掛けるのは自由ですが、この程度では決して国連決議を得るコトは出来ないでしょうし、そうなれば下手すれば逆に国連加盟国から武力制裁を受けるというところまで発展してしまいかねません。
 政府が出来るコトっていうのは、ここまででしょう。
 ですから、国家間の約束を破ったらどうなるか、それは国際社会での信用を無くすコトになるワケで、では破られた方はどうするのかと言えば、その信用問題をどう国際社会に訴えるかになるのではないかと思うのです。
 
 でも日本国民はそれでどうしたのでしょうか。
 なぜか政府批判に躍起になってしまいました。
 安倍総理も岸田外相も国際法的には全く問題ないと言い、それは国際会議の場でも説明していると言い、ましてこの点は韓国政府自身も認めていると言っているのに、当の日本人本人がそれを聞こうともせず日本政府叩きに腐心してしまったのです。
 それは、まったくもって韓国メディアとまったく同じ言い分です。
 韓国のコトを嫌いと普段言っている人に限って、韓国と同じ主張を声高に叫んでいたのです。
 おかしくないですか?
 
 本来、ここの問題は「韓国が裏切った」という点にあります。
 日本としてはここを争点にすべきでした。
 韓国が国連加盟国であり民主主義国家の体をとり、アメリカとは軍事同盟を結んでいる以上は、好き嫌い以前の問題として隣人として付き合っていかなければならないのは現実問題として受け入れなければなりません。
 そして政府という機関が出来るコトは、約束を取り交わすコトになります。
 その上で日本は韓国の態度を方向転換させるコトに成功したのですから、それを履行しなかったのであれば、それは韓国に非があると国際社会に訴えるしかないでしょう。
 そうしてこそ、日本の明確な立場というモノがハッキリするというモノです。
 それはもちろん政府も様々な外交の場でそういう主張をしていくべきでしょうけど、おそらくこの部分に関しては政府外の国民が負うべき部分が大きいハズなのです。
 結局「国家のイメージ」なんていうモノは、政府という機関以外が背負っている部分の方がむしろ大きいと思われるからです。
 
 特に外国の事情なんて、基本的にはその国のマスコミを通じた情報が大部分です。
 アメリカの情報を得るとき、それは日本のマスコミも結局はアメリカ国内の記事を紹介する形が多いと思います。
 結局はこうなんですよ。
 だから外国から見た日本のイメージも、日本のマスコミが負うところが大きいワケです。
 そう考えたとき、もし日本国中が「韓国が裏切った」という怒りで一色だったとしたら、果たして国際的なこの問題の印象はどうなっていたでしょうか。
 まして「外相会談の結果」という証拠が日本にはあるワケです。
 これはもうifの問題ですから断言は出来ませんが、日本国内が韓国の裏切り一色だったのであれば、「日本が韓国の裏切りに激怒」という外国の記事も少なからず見るコトができたのではないかと思うのです。
 
 この辺のコト、よくよく日本人は冷静に見るべきです。
 これって韓国にも現在進行形でやられているんですよね。
 韓国発の記事をよくよく見れば、実は「韓国政府」の言動の記事っていうのはあまり多くはありません。
 韓国の学者がこう言ったとか、マスコミ自身がこう言ったとか、一般国民がこう言っているとか、そういうモノが多いんですね、特に過激なモノは。
 でもいまネットを中心に広がっている嫌韓な人たちというのは、それらを全てまとめて「韓国への印象」としているワケです。
 その善し悪しはともかくとしても、つまりは「その国のイメージというモノは、政府以外の言動の方が大きい」という事実があるワケです。
 嫌韓な人たちをもってそれを証明されているんですね。
 
 しかしそれを日本としてどうすべきだったのかという考え方には至らなかったのです。
 残念ながら、ネットを中心として韓国と全く同じ主張をする人がとても多かったです。
 でもこんなの、韓国の尻馬に乗って日本政府叩きするというのは下策も下策ですし、単に韓国を喜ばせるだけしょう。
 いや実際喜んでいたかもしれません。
 果たして日本政府叩きをしていた人たちというのは、何のためにそのような行為をしていたのでしょうか。
 本当にそれは日本のためになっていると言えるのでしょうか。
 
 問題の本質的なお話、また法的なお話は、完全に日本に理があります。
 これまでの歴代内閣の見解を覆したワケではありません。
 この辺、また機会がありましたら解説しますが、よって日本はなんら後ろめたさを感じる必要はないのです。
 
 堂々と韓国の裏切りを訴えるべきだったのです。
 
 なぜ日本人はすぐに内向きになってしまうのでしょうか。
 そんなに政府のコトを万能機関だと思っているのでしょうか。
 しかし仮にそう思っていたとしても、決して外交や国際社会に対する印象というモノは政府だけで決まるモノではないのです。
 ここのところをよくよく日本人は考えてみるべきだと思います。