外交は国民の溜飲を下げる場ではない
今日はこちらのニュースです。
社説:日露外相会談 領土打開の戦略見えず
岸田文雄外相がこの時期にロシアを訪問する選択は、正しかったのか。そんな疑問の残る会談だった。
岸田氏とロシアのラブロフ外相が会談し、中断していた外務次官級による平和条約締結交渉を来月8日に再開することで合意した。
会談後の記者会見で、岸田氏は「北方領土問題について突っ込んだ議論をした」と成果を強調した。ところが、隣に座っていたラブロフ氏は「ロシア側は北方領土について協議しなかった。議題は平和条約締結交渉だった」とけん制した。岸田氏はぶぜんとした表情を見せた。
平和条約締結問題は領土問題そのものであり、ラブロフ氏の指摘は当たらない。実際、両氏は4時間半の会談の半分を領土問題に費やしたという。岸田氏は会談の翌日、記者団に「要は言い方の問題だ」と食い違いの理由を説明したが、記者会見の場で直ちに反論すべきだった。
これ、ちょっと勘違いしているんじゃないかとよく思うのですが、記者会見が外相会合の場ではないんですよね。
そして同時に、記者会見は外相会合の中身を全て伝えている場でもありません。
記者会見はあくまで記者会見、極端なコトを言えば、自分の国の都合のいいコトを言うだけの場でしかないのです
こういう記事もあります。
【政治クリップ】 日ロ外相会談の成果は?
会談の半分以上の時間を、領土問題を含む平和条約締結交渉に注ぎ込んだと、成果を強調する岸田大臣としては、ラブロフ外相のこの発言はとても看過することはできなかったようで、翌日、記者団に、このように訴えました。
「要は言い方の問題、言葉の使い方の問題ではないかと思っている。4時間あまりのうち、半分は領土問題について議論をしておりました。これが実態であります」(岸田外相)
ラブロフ外相の発言の真意について、外務省幹部は、“ロシア経済が低迷する中、国民の愛国心をかきたてながら政権を運営するロシアとしては、日本と領土問題を議論したとは国内向けにはとても発表できないからだ”と説明します。
もし本当に日本の外務大臣がロシアに行ったのにも関わらず、領土問題を一切協議しなかったのであれば、確かに問題でしょう。
でもそんなコトはあり得ないワケで、それはちょっと取材すれば分かりそうなモノで、結局事実としては違うワケですよね。
で、今回何が問題なのかと言えば、毎日新聞のこの文言
記者会見の場で直ちに反論すべきだった。
これはあまりにも感情論じゃないですか。
繰り返しますが、記者会見というのは外相会合の場ではありません。
記者会見の場で議論してどうするんですか。
そりゃ見ている側はそれで面白いのかもしれません。
長州力と橋本真也のコラタコ会見は確かに面白いです。
でもそんなコトして果たして国家としての利益になるのでしょうか。
外務大臣や政治家には、それぞれの立場による仕事があります。
特に外相会合という場においては、外務大臣は交渉官になるワケじゃないですか。
そして政治家を通じて相手を評価するというのは、それは国民の仕事です。
記者会見では日本は日本の立場を表明し、ロシアはロシアの立場を表明した。
内容に食い違いがありましたが、それは記者会見とは外相会合の中身をつまびらかに明らかにする場ではなく、あくまで自らの主張を表明する場でしかなく、今回も「自らの立場を表明した」からこその違いです。
その上で、そういう態度を見せるロシアをどう評価するのかっていうところが、国民こそがすべきところなんですね。
もしこのロシアの態度を見て、やはりまともに付き合うべきではないと国民が判断すれば、日本政府もそのように動くでしょう。
それが民主主義ってモノじゃないですか。
それなのに、外相会合をした直後の記者会見で無意味なタココラケンカをしてしまえば、そういう判断すら出来なくなってしまうでしょう。
なぜ毎日新聞が社説で「記者会見の場で直ちに反論すべきだった」と書いているのか、やえはそれは、マスコミの傲慢さだと思っています。
マスコミは記者会見こそが外相会合の全てだと勘違いしてしまっているのではないのでしょうか。
政治家は芸能人とは違います。
芸能人はカメラの前が全てかもしれませんが、政治家はむしろカメラがないところこそが本来の仕事です。
マスコミはここをはき違えているのではないのでしょうか。
最もまずいコトは、記者会見の場だけで国家の勝ち負けを決めてしまう行為です。
多くの場合外交に勝ち負けはないハズで、あるのは「自国に利益があるかどうか」であって、他国の利益はあればあれでいいし、なければなけれでいい、出来ればお互い利益があればいいですねって程度であって、「勝ちと負け」じゃないんですよ。
まして正式な外相会合の場ではない記者会見なんかの場でそれが決まるハズもありません。
でもこれ、よくあるパターンだったりしますよね。
「自分が気に入らない発言を相手国がしたから負けだ」と思い込んで、自国政府批判する国民。
よく見ませんか?
でも外交は、国民の溜飲を下げる場ではないのです。
歴史を振り返れば、先の大戦だって一番政府を煽っていたのがマスコミであり国民であったのです。
結局、自分たちの溜飲を下げるために戦争に突っ走ってしまったという部分は否めないでしょう。
戦争の原因をそれだけとは言いませんが、それも確かにあったコトは否定できないハズです。
それなのにまた外交を国民の娯楽にするかのようなこの感情的な一文に、やえは強い違和感を覚えるのです。
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