オバマ大統領が広島を訪問した意義

2016年6月8日

 もう説明するまでもないと思いますが、先週末、オバマ大統領の広島訪問、そして何より歴史的な広島平和公園での献花と原爆資料館の視察が行われました。
 広島で生まれた身として、もうその瞬間は言葉にするのが難しく、感無量としか言いようのない気持ちでいっぱいになりました。
 まずは素直に、「オバマ大統領、ようこそ広島にお越しくださいました、ありがとうございました」と言いたいです。
 
 さて。
 核廃絶への道や、外交的な意義については、色んなところで語られていますので、今回はやえはパスします。
 よってここでは、もっと政治的な、他の人はあまり語らないようなコトを指摘してみたいと思います。
 
 というのも、国内的にもやはりこれは大きな支点となったと思うんですね。
 何がかと言えば、それは「もうこれで日本は核武装論を取り上げるコトすらできなくなった」という大きな事実です。
 これは本当に大きいと思っています。
 
 だって、ここ数日のオバマ効果で核廃絶の機運がすごく高まってはいますが、ちょっと前までは日本の核武装論がおおっぴらとまでは言いませんが、くすぶっていたっていうコトは確かだと思うんですね。
 それは安倍さんが総理になったからという点も小さくなく、もちろん安倍総理自身がそんな発言をしたというワケではないのですが、安倍総理に期待する特に過激な方向の保守系から日本の核保有論が増えてきていたコトは確かだったと思います。
 安倍さんなら憲法改正できる、九条改正出来る、ついでに核兵器も持てるようになれると、まぁ願望のようなモノも混じった、そんな期待がそれなりにあったワケです。
 
 でもこれでくさびを打ちつけるコトができました。
 もちろん議論は議論ですから市井で核武装論を主張するコトはダメだとは言いませんが、しかし少なくとも「米国大統領の広島訪問を主導した日本政府」としては、もう可能性が少しでも出てくるようなコト、つまり議論するコトすら不可能となったと言っても過言ではありません。
 特に今回の広島訪問はインパクトが強いです。
 もう世界中でこのニュースが駆け巡っています。
 すなわちこれは、「日本は原爆を投下されたから核武装をする」のではなく、「日本は原爆を投下されたからこそ核廃絶を主導する」と力強く宣言したワケなのです。
 日本は5/27を持って、今後将来にわたって一切の核武装の道を絶ったのです。
 日本政府や国会議員は議論すらもう不可能でしょう。
 
 日本の核武装論の是非は今回はしません。
 やえの核武装に対する評価は過去に散々やってますから、そちらをご覧ください。
 今回はまずこの大きな1点の事実を確認しておこうと思ったのです。
 
 もうちょっと書きますと、今回の件は広島選出の岸田外務大臣の功績が大だと評価するところです。
 もちろん岸田外相を留任し続けたという意味で安倍総理の功績もありますが、しかし逆に言えば、安倍総理が岸田さんを外務大臣に起用しなければ、今回のコトは無かったと思っています。
 日本政府の核廃絶に対する動きは、明らかに岸田さんが外務大臣になってから急加速しました。
 例えるならけっこうあるのですが、第1次安倍内閣では実現できず、第2次内閣で初めて署名した国連の共同ステートメントですとか、日本で初めての開催となった核を持っていない国で組織されている核不拡散イニシアティブ(NPDI)外相会合を広島で開催し、各国外相と被爆者との意見交換会などを行い成功裏に導いたコトですとか、そして外相全員で平和公園・原爆資料館、そして突然の原爆ドーム視察が行われたG7外相会合ですとか、もし安倍総理だけの思いであれば第1次の時にできたハズのコト、または外相マターではなく総理マターでできるコトがたくさんあったにも関わらず、このように基本的に日本の核廃絶政策は全て外相マターで行われてきたんですね。
 すなわち岸田外相がこれらを主導し、環境を作り、お膳立てをしてきたのです。
 
 繰り返しますが、それを是認してきた安倍総理ももちろん功績として挙げられますし、なにより第1次内閣の失敗を反省してバランスの取れた内閣を組織し、外相という要職に自民党の中では反対側に位置する岸田さんを外務大臣に就けたコトは安倍さんの評価を高める要因であって、下げる原因には一切なりません。
 ただ、もしかしたら安倍さんはここまでは予想してなかったかもしれないとは思うのです。
 バランスを取るために起用した岸田外相ですが、ここまで明確にくさびを打たれるとは思っていなかったのではないでしょうか。
 岸田外務大臣は日本にもアメリカにも大きなくさびを打ち込んだのです。
 
 オバマ大統領が広島を訪問した意義、これは日本国内にとっても大きな意味を持ちます。
 これからは、これをどう武器として使っていくのか、したたかに政治的に外交的に考えていかなければならないでしょう。