ぼくは腹が減った蜘蛛

オレは、マッキーこと槇原則之の歌が好きだ。
ちょっと変な(失礼)な顔も好きだったりする。
そのマッキーが出した新曲が「Hungry Spider」という曲だ。
久々にオレはこの一曲を3日間ぶっ通しで聞きまくった。
ちなみに今も聞いている(笑)
この歌は曲もいいのだが、歌詞がいい。
あまりにもいいので全文載せることにする。
本当は著作権違反なんだろうけど、大目に見てちょ。

今日も腹を減らして一匹の蜘が
八つの青い葉に糸をかける
ある朝 露に光る巣を見つけ
きれいと笑ったあの子のため
やっかいな相手を好きになった
彼はその巣で獲物を捕まえる
例えば空を美しく飛ぶ
あの子のような蝶を捕まえる

朝露が乾いた細い網に
ぼんやりしてあの子が 捕まってしまわぬように

I'm a hungry spider
You're a beautiful butterfly
叶わないとこの恋を捨てるなら
この巣にかかる愛だけを食べて
あの子を逃がすと誓おう

今日も腹を減らして一匹の蜘が
八つの青い葉に糸をかけた
その夜 月に光る巣になにか
もがく様な影を見つけた
やっかいなものが巣にかかった
星の様な粉をまくその羽根
おびえないように闇を纏わせた
夜に礼も言わず駆け寄る

今すぐ助けると言うより先に
震えた声であの子が「助けて」と繰り返す

I'm a hungry spider
You're a beautiful butterfly
叶わないならこの恋を捨てて
罠にかかるすべてを食べれば
傷つかないのだろうか

何も言わず逃げるように
飛び去る姿さえ美しいなら
今死んで永遠にしようか

I'm a hungry spider
You're a beautiful butterfly
叶わないとこの恋を捨てるより
この巣にかかる愛だけを食べて
あの子を逃がした

いつもながらマッキーの曲は男がフラれるせつない曲だ。
蜘蛛と蝶を擬人化して、直接的かつ間接的な詩になっている。
蜘蛛が蝶を好きになったきっかけが、
自分が作った巣を見た蝶が「きれいね」と言ったこと。
人間に置き換えてもありそうな話である。
自分は蜘蛛、彼女は蝶。
本来なら食い食われる関係。
だからこそ報われぬ恋ということは蜘蛛にも分かっている。
もし巣に蝶が捕まっても逃がそうと思った。
ある夜彼女が巣にかかってしまった。
蜘蛛はすぐに逃がそうとした。
しかしそれより先に蝶が「助けて」と言ってしまった。
もしそれより先に蜘蛛が蝶を助けていたら、
彼女が彼に対する想いも変わっていたかもしれない。
しかし先に言われてしまったから
蜘蛛は怖がられながらも逃がすしか道が無くなってしまった・・・。
思い切って全てを食べれば忘れることができるのだろうか。
しかし結局蜘蛛は蝶を逃がすことにした。
それしか蜘蛛にはできなかった・・・。
「夜に礼も言わず駆け寄る」というフレーズがいいよね。
夜女性に声をかけるには礼をを言うべき、という
蜘蛛の紳士な姿勢が見える。
蜘蛛なのにね。恋をすると変わるのだろう。
さらにここのフレーズがせつなすぎる想いを表している。
「何も言わず逃げるように、飛び去る姿さえ美しいなら、今死んで永遠にしようか」
これは、死ぬのが自分なのか彼女なのかちょっと悩むところである。
もし自分が死ぬのなら、
彼女には自分は何もできない。
だから自分が死んでこの想いを永遠にしよう。
という意味であろう。
もし彼女のことなら、
もう彼女とは二度と逢えないだろう。
他のヤツに彼女を汚されたくない。
だから今自分が彼女を食べてその美しい姿を、
自分の中で永遠にしよう。
と意味になる。
どちらにしても悲しい想いでしかない。
まだまだ語ろうと思えば語られそうな曲である。
「この巣にかかる愛だけを食べて」や「罠にかかるすべてを食べれば」
というのは、人間に置き換えるとどういう意味になるのだろう。
とか、
「今すぐ助けると言うより先に、震えた声であの子が助けてと繰り返す」
という状況は、人間に置き換えると
その場面が目に浮かんでくるようではないか・・・。
直接的な表現で綴る最近の恋愛曲も悪くはないんだが、
この曲のように、聞く人によって、
せつなくも、悲恋的にも、エロティックにもなるような
こんな曲の方がオレは好きだなぁ。


1999/07/18