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- 数年前、オレは「自由の森学園」という所に見学に行ったことがある。
- 埼玉にあるその学園は、
- 砕いた言い方をすると、一般の学校には合わない子供が入っている。
- かと言って、暴力事件等で半強制に入れられる学園ではない。
- そこには、暴力事件を起こした者もいるだろうが、
- 不登校の子供なども入園している。
- この学園には中高校生が入園できる。
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- 学園はけっこうな山の奥にあり、タクシーでやれやれと着いたのだが、
- 中に入ってみてオレはびっくりした。
- なんだここわ・・・。
- 今の時間、授業中だというのにけっこうな数の生徒が
- 外でたむろっている。
- まだ、たむろっているだけならいいのだが(あまりよくない)、
- なんと堂々とタバコを吸っているのだ。
- オレは目を見張った。
- まさかこの日本で、学校の中にも関わらず
- 堂々とタバコを吸える所があったなんて。
- 所々吸い殻が落ちている。
- この学園の教室にはけっこう窓が多く、
- ドアにも窓が大きく、中から外が見える。
- 見ようと思えば、教師がタバコを吸っている生徒を見ることが出来る。
- 注意しないのか・・・?
- なんて所だと思いながら、
- 教員が自由の森学園の説明をするまでちょっと時間があったので
- オレはちょっとトイレに行くことにした。
- オレは見た目が若い。
- 年もそんなにいってないが、当時は当然だが今より若かった。
- 外見は高校生に見えなくもなかった。
- その時はわりとラフな格好をしていたこともあるかもしれない。
- トイレから出ると学園の生徒がオレの方に来た。
- 「お前何歳?ここに入るのか?」
- といきなり難癖を付けてきた。
- 「(なんだこのガキは)」
- オレは無視して説明をするという教室に向かった。
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- 数分後、学園の教員が説明を始めた。
- 説明にはオレの他に親子が数組聞きに来ていた。
- 子供の見た目があまりよくない。
- この学園に入れようと思って説明を聞きに来たのだろう。
- パンフレットやプリントなどを配って説明をしている。
- まぁ学校のパンフレットなど綺麗事しか書いてないので
- あまり意味がない。
- そんなパンフレットを見ながらの説明も体面的な綺麗事ばかりなので
- オレは適当にしか聞いていなかった。
- はっきりいってオレの中での印象は最悪。
- こんなところ学校とは認めない。
- 説明が一通り終わって、教員が「質問はありませんか?」と言った。
- 1,2人が適当な事を質問していた。
- その後は質問する人がいなくなった。
- よし言ってやるか、と思い、オレは手を挙げた。
- 「ここには堂々とタバコを吸っている生徒がいますが、それら対して注意はしないのですか?」
- 周りの空気が少し強ばる。
- しかしみんな聞きたいと思っていたはずだ。
- 「注意はしますよ。気づけば。しかしこの学園はどんなことでも強制はしません。注意はしますが無理矢理タバコを取り上げて止めさせることは絶対にしません」
- 数年前のこの頃のオレはまだまだ甘かった。
- だからこんな返ししか出来なかった。
- 「しかし日本の法律では未成年のタバコを禁じられていますよね」
- 「ええ。だからやめるように注意はしていますよ。しかし強制はこの学園ではしません」
- 「法律を破っている責任はどうとらせるのですか?」
- 「責任をとるのは我々大人です。生徒達からタバコをやめさせられなかったという我々大人が責任を負っています」
- 情けない限りだが、当時のオレはこれ以上はつっこめなかった。
- 「さっきですね、私が歩いていたらここの生徒が私に因縁をつけてきたんですよ。一応私は高校生じゃないんですけどね。目上の者に対しての礼儀と、外部からの客に対しての礼儀はどうなっているのですか?」
- 「それは・・・大変申し訳ありませんでした。生徒にはよく言っておきますから」
- 「私がこの学園に入学に来たのだと思ったんでしょう。だから新入生をシメておこうという気だったんじゃないですか?」
- 「多分そうでしょう。」
- オイオイ、なんでそんな軽く言うんだ?
- オレがもし入学するとしていたら、シメられて当然ということなのか?
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- 説明会の後、ずらずらと学園内を案内してもらった。
- 授業風景や工作で作った物など見せてくれた。
- ちゃんと授業受けている生徒は、普通っぽく見えた。
- オレはちょっと気になって、
- 案内してくれているさっきの教員に尋ねてみた。
- 「この学園の中での不登校って起きないんですか?」
- 「ああ、それは少しはやっぱりいますね」
- この学園には学園寮からも通うことが出来る。
- 「その生徒に対してはどうしているんですか?」
- 「登校するようには言っています。しかし強制的に登校させるようなことはしませんよ」
- はぁぁぁ、そうですか。
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- 一通り見学が終わって、これで説明会は終了した。
- この学園には路線バスは通っているが少々遠く、
- 歩いて帰るのもつらすぎる距離なので、
- タクシーを電話で呼び、来るまで待っていた。
- すると何人かの生徒が我々のいる玄関までやってきた。
- オレは説明をしてくれていた教員を色々と話をしていた。
- その時、説明を聞きに来ていたある子供と生徒が睨み合っていて、
- ついにつかみ合いになってしまった。
- おいおいおい・・・。
- 一応オレも大人だから止めに入る。
- 両者を引き離しおさまったかと思ったら今度は
- 「お前もか」
- とオレにつっかかってきた。
- かなりオレもキレ気味だったが、大人だからね(笑)
- それはおさえて、教員達がその生徒を引き離した。
- いい加減、オレはここが嫌になった。
- 向こうの方にタクシーが来ているのが見えたから、
- ずっと説明をしてくれた教員を睨み付けて
- 「なんてところだ」
- と言い、オレはタクシーに向かって歩いていった。
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- 「どうでしたか?ここは」
- 偶然かオレが行きに乗ったタクシーと同じ運転手だった。
- 「はぁ、あんなりよくないですね」
- 「そうでしょ。ここの生徒、卒業して就職しても結局時間とか守れなくて使いものにならないんですよ」
- そうだろうなぁ・・・。
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- はっきりいって自由をはき違えている。
- あれは自由ではなく、野放しだ。
- サル山のサルに劣る。
- 教員も全員あれが本当の自由だと思っているのだろう。
- 心から強制を嫌っているようだ。
- しかし強制・管理・制限を知らない人間など
- それは人間ではなく、タダの獣・・・、
- いや食物連鎖の理を本能で知っている獣より劣る存在かもしれない。
- 自由とは自己管理できる人間にのみ与えられるものである。
- 学園で働いている職員だって、
- 子供の頃から学校や社会の中で
- 管理されながら育ってきたはずなのに
- なぜそれが分からないのだろうか。
- 逆に言えば、野放しに育てられていれば、
- 理想のためにあえて辛い環境での職場を選ぶ、
- なんてことはしなかっただろう。
- なにものにも束縛されない社会や人間など存在しない。
- そんなものタイトルだけの「サルの惑星」だ。
- 自由とは本来どんな意味なのか、
- 自由の森学園はもう一度考え直してみてほしい。
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一部事実誤認がありましたので修正しました。
申し訳ありません。
文章全体としての内容には変わりはありません。
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