「治安が悪い」とは

 
時々変な事を言う人がいる。
「最近日本でも凶悪犯罪が増えてきて治安も欧米並に悪くなってきた」
この発言は大きく間違っている。
凶悪犯罪が増えてきたのはその通りなんだが、
治安というものを基本的に理解していない。
 
はっきりいって日本より治安が良い国なんて存在しない。
日本では”治安”を心配する必要がない。
世界大国のアメリカだって、
「あの地域は治安が悪いから気を付けた方がいい」
「あの地区は治安が悪いから絶対に夜出歩いてはいけない」
こんな会話は日常茶飯事である。
しかし日本ではそんな会話も場所も存在しない。
つまり「治安が悪い」とは、本当に身近に危険を感じる、ということである。
こう書いてもあまりピンと来ない人もいるだろうが、例えを使うならば、
「夜の女の子の一人歩きは危険だから気をつけな」
と言った場合、
日本なら笑いながらほとんどジョークのノリだが、
外国の場所が場所ならシャレじゃ済まされない会話になってくるのだ。
つまりそんな場所は日本には存在しない。
もう一つ例を挙げてみよう。
韓国や香港などに行ったときにガイドさんに
「この辺はスリが多いから荷物には気を付けて歩いてください」
と言われるが、これはシャレでは済まされない。
本当に気を付けながら歩かなければならない。
しかし日本では、電車の構内放送などでは「スリ・置き引きにご注意下さい」とは言われるものの、急に注意深くなって荷物に気を付けるような人はそうはいないだろう。
このスリでも、日本を除いたアジアだけでなく、アメリカでもヨーロッパでも同様である。
 
確かに最近日本でも凶悪犯罪が増えてきた。
しかしだからといって一市民一人一人の生活が急に危なくなったわけではない。
治安が悪い所では普通に生活するだけでも危険という場所は存在する。
日本人はこの日本の普通の感覚が当たり前なので、外国も日本と同じぐらいの「治安」だろうと思ってしまうため、凶悪犯罪が増えたぐらいで治安が悪くなったと勘違いしているのだ。
道を歩くだけの行為が危険かどうか、が本当の治安問題で、
そしてこんなに「治安が良い」国は日本以外あり得ない。
アメリカだって一人で歩くには危険な場所が多く存在しているのだ。


2000/09/16