相手方の同意を得ないで会話を録音することが
違法でないとされた事例

最高裁決定平成12年7月12日裁時1272号6頁
主文
 本件上告を棄却する。

理由

 弁護人桃谷一秀の上告趣意第一点は、違憲をいう点を含め、実質は単なる法令違反の主張であり、同第二点は、判例違反をいうが、所論引用の判例は、対話者の一方が相手方の同意を得ないで会話等を録音することが判示の事情の下では違法ではないとするにとどまり、所論のいうような趣旨まで判示したものではないから、前提を欠き、いずれも適法な上告理由に当たらない。

 なお、所論にかんがみ、職権で判断すると、本件で証拠として取り調べられた録音テープは、被告人から詐欺の被害を受けたと考えた者が、被告人の説明内容に不審を抱き、後日の証拠とするため、被告人との会話を録音したものであるところ、このような場合に、一方の当事者が相手方との会話を録音することは、たとえそれが相手方の同意を得ないで行われたものであっても、違法ではなく、右録音テープの証拠能力を争う所論は、理由がない。

 よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(北川弘治 河合伸一 福田博 亀山継夫 梶谷玄)

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