公職選挙のお話とお金のお話は別問題

 国会改革の特集の途中ですが、小渕経済産業大臣が辞任してしまった件について、ちょっと解説しておこうと思います。
 まずは記事の引用です。
 

 政治資金 進退問われる小渕氏 変わらぬ「贈答文化」
 
 小渕優子経済産業相の政治資金問題は、支援者向けに開いた観劇会をめぐる不明朗な使途が広がり続けている。当初は政治資金収支報告書で約二千六百四十二万円の収支の不一致が指摘されたが、報告書に記載のない観劇会費用も明らかとなった。深まる疑惑は、政治資金を国民のために使うという本来のあり方からかけ離れた、古い政治の体質を浮かび上がらせた。小渕氏は進退も問われている。
 
 観劇会をめぐる収支の不一致は当初、二〇一〇年と一一年の開催分が問題視された。支援者から集めた費用より、入場料や食事代として東京都内の明治座に支払った経費が約二千六百四十二万円多く報告書に記載され、公職選挙法が禁じる寄付行為に当たる疑いが生じた。
 
 小渕氏は、親族の店から贈答品として購入したネクタイやハンカチについて「喜んでくださる人も大勢いる。政治活動内の支出と考えている」と国会答弁した。しかし、贈り物をすることが政治資金の本来のあり方か、問われるところだ。政治資金には税金が原資となる政党交付金が使われる余地がある。

 
 小渕さんの問題の全てを一緒くたにして「政治とカネの問題」と認識している人が多いのではないかと思うのですが、実はこの問題、大きく分けて2つに分けて考える必要があります。
 引用部分の2段目と3段目で問題の内容が違いまして、前者は「選挙の公平性の問題」であり、後者はいわゆる「政治とカネの問題」です。
 まずは後者の「政治とカネの問題」の部分について解説してみましょう。
 
 まず根本的な問題からして多くの人が誤解していると思うのですが、政治資金とはイコールで税金ではありません。
 政治資金とは文字通り政治活動のためのお金であって、もっと言えば「政治活動に使用するためと限定されたお金」です。
 国会議員の場合その収入源は大きく分けて3つでして、ひとつは税金で、もうふたつは献金とパーティー収入です。
 税金の部分については政党交付金などがその原資となるワケですが、ただ注意しなければならないのが、一言「政治資金」と言った場合、その意味とは公金か否かという区分をしているのではなく、あくまで「政治活動限定資金」という位置づけでしかないという点は注意しなければなりません。
 
 ですから今回の小渕さんの政治とカネの問題での視点というのは、「政治資金として使い方が正しいかどうか」という点です。
 よって、公金の横領とか私腹を肥やすためにやったのかっていう批判はちょっと違うと思うんですね。
 政党助成金という税金が含まれているお財布から出された可能性も否定できませんが、まぁ額からしてもパーティーとかで得た「政治資金」から出されたと見る方が可能性が高く、それは引用した記事でも「政党交付金が使われる余地がある」なんてすごい曖昧に濁している書き方をしているので、これは税金は含まれていないと判断するのが妥当でしょう。
 つまり献金やパーティーとかで議員さんが自分で集めた税金ではないお金を、議員さんが自分で使ったというだけであり、もちろんその使い方が問題であるワケですが、そういう視点で整理してキチンと考えれば、この問題とは、例えば「社長さんがお付き合いのある人への贈答品を買って、会社の経費で落とした」という例と構図は同じであると言えるんですね、これ。
 結局は「民間ではともかく、政治家なんだから潔白であるべき」という、そういう視点での批判という類だったりするのです。
 
 どこまでを政治活動と見るかは明確な線引きがありませんから難しい問題です。
 ここについては議論の余地はあるかと思いますし、これはもう法律の問題というか社会通念の問題や道徳の問題になるでしょう。
 それは国民一人ひとりが判断すべきところだと思います。
 ただ、公金を横領したかのような言い方をするのは、それは違うでしょうと言っておきたいと思います。
 
 もうひとつ、小渕さんの後援会の観劇会で、集めたお金より支払ったお金が多いのではないかという問題についてですが、もしこれが事実であれば、どちらかと言えばこちらの方が問題です。
 これはお金の問題ではなく、選挙のための買収行為と見なされるからです。
 簡単なお話、「普通よりも半額で観劇ができるのであれば小渕後援会に入って選挙の際には投票しよう」という「票を金で買う」というお話になりますから、これはもう大問題なんですね。
 ハッキリ言って、もしこれが事実であれば自身の選挙のお話なのですから、大臣職だけではなく衆議院議員の職も辞めなければならない事案だと思います。
 
 ただしこれは「政治とカネ」の問題ではありません。
 なぜなら、この行為は、それが公金だろうが政治資金だろうが、例え小渕さんの私費であろうが、どういうお金であってもダメだからです。
 正直、あの小渕恵三総理の実子で群馬と言えば自民王国の選出である小渕優子さんが、言っちゃ悪いですけどこんなセコいコトをしなくても選挙は問題ないと思うのですが、どうしてこんなコトになってしまったのでしょうか。
 それとも「昔ながらの風習」が未だ色濃く残ってしまっていたのでしょうか。
 
 ですから、政治とカネの問題ではありませんが、民主主義の根幹である公平公正な選挙という観点から「票を金で買う」行為は絶対に許してはならないため、これは大問題です。
 繰り返しますが、これが事実であれば、衆議院議員も辞職しなければスジが立たないでしょう。
 批判とはこういうモノでしょう。
 物事の本質をキチンと見た上で、その本質について批判すべきです。
 なんでもかんでも、よく分からないけど悪いっぽいから批判するっていう姿勢は、それは違うと思います。
 マスコミもこの辺ごちゃまぜにして報道しがちですしね。
 
 というワケで今回の問題、選挙の問題はかなりアウトっぽいですけど、特に政治資金の問題についてはちょっと道徳の方の観点からちょっと考え直してみて欲しい案件ではあります。