戦略的核廃絶論2022

 やえはだいぶ昔から「戦略的核廃絶論」を唱えています。
 そしてそれは、ロシアによるウクライナ侵略によって、より正しい論だと確証を得ています。

 「戦略的核廃絶論」とは、核兵器とは「貧者の武器」であって、経済力の高い国家ほど核兵器の無い世界の方が軍事的優位に立てるのであって、世界3位の経済大国日本にとっては核兵器の無い世界の方が望ましい、だから日本は核廃絶を訴え続けるべきだという論です。

 核保有論を唱えている人は、大きな勘違いをしています。
 核兵器とは、経済力・科学技術力が下支えしている通常兵器の国家間の差をたった一発で埋めてしまうという兵器です。
 北朝鮮で考えれば分かりやすいです。
 通常兵器だけでのアメリカvs北朝鮮の戦争であれば、おそらく勝敗は短期間で付くでしょう。
 もちろんアメリカの勝ちですね。
 しかし核兵器の存在によって、その計算が大きく狂います。
 アメリカとしても核兵器を撃ち込まれるデメリットは常に考えなければならなず、そのたった一発によって戦局が大きく変わってしまう、言わばたった一発によって世界最高レベルの通常兵器と同等の抑止力を持ってしまう存在が核兵器なのです。

 そして今回のロシアが、これをまざまざと見せつけました。
 通常兵器だけによる軍事力の弱さをいま、ロシアは世界中に晒してしまっています。
 通常兵器だけではウクライナをいつまで経っても制圧するコトができない、その程度の軍事力しか持っていないコトが露呈してしまっています。
 でもロシアは負けないワケです。
 それはなぜかと言えば、ロシアが核兵器を持っているからです。
 このロシアの通常兵器による軍事力程度であれば、いわゆる西側諸国、イコールNATOと言ってもいいかもしれません、これらがロシアを通常兵器で制圧しようとすれば可能でしょう。
 でもそれをするコトができないのは、ひとえにロシアが核兵器を持っているからです。
 中国の参戦を考えない場合の「ロシアvsNATO(+日本)」を想像しても、世界大戦とすら呼称できないぐらいの短期間戦争で終わると思われるロシアの弱小っぷりですが、それでもロシアに攻め入るコトができない、つまりロシアが負けるコトがない理由は、全てはロシアが核兵器を持っているからです。
 つまりは、通常兵器の差を核兵器が埋めてしまっているからであり、まさに「貧者の武器」ぶりを、今まざまざと見せつけられていると言えるワケなのです。

 通常兵器の強さとは、ほぼイコールで経済力です。
 とは言えロシアは経済力11位とは思えない弱さを露呈しているので、もちろんその他にも様々な要因はあるワケですが、しかし大まかに言えば経済力とそれに基づく科学力こそが通常兵器の強さです。
 そして最も重要視すべきコトは、「経済力は一朝一夕では伸ばすコトができない」という事実です。
 日本が高度成長を成し遂げ、ソ連が崩壊し、中国が台頭するなどの世界の中での経済力の変動はありましたが、これらはむしろイレギュラーな出来事で、それ以外では大きな動きはありません。
 南北問題とか経済力の固定化階級化など言われはじめて久しいように、経済力はそう簡単に変えるコトはできないワケです。

 だから経済3位の日本としては、通常兵器だけの世界を目指すべきなのです。

 通常兵器だけの世界であれば、日本は常に強国としての地位にいられるからです。
 まして核兵器は、国家と地球にとって「上限値の兵器」です。
 仮に核兵器以上の兵器を持ったとしても、国家に与える結果としては核兵器と同等の力しか持ち得ません。
 ではそんな核兵器を全ての国が持ったとしたらどうなるか。
 つまりは、全ての国が軍事的に対等になってしまう世界になってしまいます。

 貧者はそれでいいでしょう。
 でも日本は貧者ではありません。
 むしろ日本は大国なのです。
 この地位を自ら捨てる必要はありません。
 なにより核兵器の無い世界にしてしまった方が、いま核兵器を持っている国よりも日本は上位に立てるようになるのですから、日本としては積極的に「核なき世界」を実現した方が国益に資するのです。

 繰り返しになりますが、今回のロシアの暴力によって、よりこの論が正しかったコトが証明されたと思っています。
 核兵器があるからロシア程度の弱小国でもこんな暴挙が可能になってしまっているのです。
 核兵器が認められる世界にしてはなりません。
 日本は日本がいかに強くいられるか、それを考えて行動しなければなりません。

 核兵器の問題、これはぜひ現実的に考えてもらいたいと思います。