不良と小渕

どの学校にも不良と呼ばれる生徒がいる。
一般的に、先生の言うことを聞かず、 他の生徒にもあまりよい存在とは言えない。
クラス替えで一見恐そうな外見の生徒と同じクラスになると いやだなぁ、と思うものである。
しかし、数週間が経ち、新しいクラスメートとも親しくなっていく。
その不良とも一言二言ぐらいは会話もした。
そうしてみると、その不良生徒は、一見外見は恐そうだが、 他の生徒に暴力を振るうわけでもなく、授業を妨害するわけでもない。
すると、一般の生徒は不良生徒のことを、
「おっ、こいつ実はいい奴じゃん」
と思うのである。
しかし実際は、暴力を振るわないのも、授業妨害しないのも、 全く普通のことであり、 この不良生徒は「いいやつ」ではなくただ普通の生徒である。
いや、しかし外見は恐くしているのだから、 一般生徒よりは「いいやつ」にはならないだろう。

現在の日本の総理大臣は小渕という人だ。
先の参議院選挙で自民党が大敗したために 前総理の橋本元首相が辞任して、後任に小渕が就任したのだ。
しかし、その後任を決めるために行われた自民党党首選挙での、 各マスコミの世論調査では、小渕は大不人気。
それでも党派の理論により、世論を無視して小渕が選ばれた。
小渕内閣が発足しても世論は、
「早く解散すべき」とか「小渕では何もできない」とか さんざん言われたものだ。
しかし最近の世論調査では小渕内閣の支持率が高くなっているらしい。
小渕は何もしていないのに支持率がアップしているのだ。
やったといえば、わけのわからん人気取りぐらいなものだろう。
いや、何もしてないからこそ支持率がアップしているのかもしれない。
内閣発足当初は全く人気が無かったのだが、 無難に何事もなく仕事をこなしていき、時間が経つと
「お、小渕、実はよくやるじゃん」
と思うのだ。
しかしこれは、不良の”実はいい奴じゃん”理論と同じではないだろうか。
もちろん無難に仕事をこなしていく事は重要だし、 それこそを求める時代もあるだろう。
しかし今の日本の総理には、そんなもの求められていないはずである。
どの政治家が総理になっても同じような気がしないこともないが、 とりあえず国民が、
「こいつなら何かしてくれそう」
と思える人が総理になってくれれば、 少しは景気が回復するかもしれない。
景気など、国民全員が好景気と思えばその時代は好景気なのだから。

不良も総理も”実はいい奴じゃん理論”に騙されないように 本質を見抜かなければならないと思う。
1999/07/10

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