☆国籍法改正に関する動きについて☆

  お題3つ目的のためには手段を選ばない人たちちょっとひとこと国籍法改正についての考え方法案の中身はどこで見れる?全会一致ってなに?国籍法改正案反対論に対してマスコミはミスリードをする生き物です自民党の申し入れ今回の国籍法騒動の問題点国籍法DNA鑑定論と、経済対策の伝え方と、ネット議論の行方

平成20年11月12日

 お題3つ

■政治がコントロールする文民統制が危ういものであることが浮き彫りになりました
 
 宗匠さんのところで、ある意味面白すぎる記事を見つけてしまいましたので、ちょっとご紹介したいと思います。

 ところで、自民党の国防関係合同部会では、冒頭、中谷安全保障調査会長が文民統制の観点から田母神氏を批判し、浜田防衛大臣が謝罪して始まりましたが、議論に入ると、田母神氏の歴史観を擁護する意見が相次ぎました。
 「常識的感覚を持っていれば、田母神氏の歴史認識になる」
 「何を持って侵略というのか」
 「衆議院の先生方、この村山談話のような歴史観で選挙が戦えるんですか」(自民党の国防関係合同部会での発言)
 文民統制をする政治の側にも田母神氏と同じ意見が根強くあることがわかり、政治がコントロールする文民統制が危ういものであることが浮き彫りになりました。

 これTBSの記事なのですが、すごいですね、政治がコントロールする文民統制が危ういって、じゃあ誰が統制するコトが危うくない文民統制なのか、ちょっと教えていただきたいです。
 貴族制とか、武士・幕府制の復活を言っているのでしょうか。
 やえにはさっぱり分かりません。
 
 まぁ多分、これは、「政治は国民ではない」という、もの凄い勘違いから出てきてしまった言葉なのでしょう。
 そしてこう考えている国民も、案外少なくないというところが頭の痛いところですが。
 
 本来言うまでもないコトですが政治家は国民の代表です。
 ですから、「政治家=国民」なのです。
 よく政治家と国民は乖離していると思っている人もいますが、それでは、逆にその国民というモノの主体は一体なんなのかという問いが生まれてきます。
 TBSは上記のように思っているかもしれませんが、ではTBSこそが国民の代表とでも、国民の意見の総意体であると言うのでしょうか。
 やえは、そういうTBSの欺瞞には賛成できません。
 TBSの意見は、あくまでTBSの個人的意見です。
 やえの意見も、もちろん一国民の個人的意見です。
 つまり、こういう一個人は、あくまで国民を構成するごく一部でしかないですから、そういう存在が政治の決定権を持つコトは許されません。
 それが許されれば、それはイコールで独裁になってしまいます。
 しかし議員や首長という存在は違います。
 国会議員は、選挙を通じて国民の附託を得ている国民の代表者です。
 国会議員の意見は、一個人の意見ではなく、多くの国民の声を代弁しているからこそ決定権を持ち得ているのです。
 少なくとも憲法や法律などによって、日本ではそうなっています。
 それが民主主義です。
 
 ですから、「政治家は国民」であるコトを否定するのであれば、それは民主主義の否定に繋がります。
 もちろん民主主義が絶対の正義ではないと意見するコトは自由ですから、そこを否定してもいいんですが、それはつまりTBSは民主主義は正しい国家の在り方ではないとまず言わなければならないでしょう。
 そうしていれば、論の筋は通ります。
 やえにはTBSがそう主張しているとは思えませんけどね。
 
 実際のところは、宗匠さんがおっしゃっているように、記者のレベルがひどすぎるというところなのでしょう。
 自分で自分が何を言ってしまっているのか理解できていないんだと思います。
 ちょっと話がそれますが、この元幕僚長さんの話はこの前2回の更新をかけて語りましたが、それを踏まえれば、議員の先生方がこのような主張をされるコトは大いに結構なコトだと思います。
 全く問題はありません。
 元幕僚長は現役高級官僚だからこそ問題であったワケであって、ですからやえもこの前の更新で、政治が決定したコトを越えたければ政治家になるという手段もあると言っています。
 政治家が政治を変えるコトは普通のコトですから、この自民党の部会での議論は、一点たりとも問題など存在しません。
 結局TBSという左巻きなメディアが、元幕僚長さんの主張の内容を否定したいがために、無茶苦茶な、民主主義さえ否定するかのようなイチャモンをつけてしまったというコトなのでしょう。
 自分の主張のためには手段を問わないという、典型的な例かもしれませんね。
 
 
■国民は何をすべきか
 
 御意見板でのご意見です。

 今回のエントリの話・・・に限らず前からやえたんの意見聞いてて思ってたんだが、いきなり国民の意識を変えるのって難しすぎやしないかい?
 よほど差し迫った状況でないとなかなか「国防が必要」って考えないと思うんだ。さらに全くといっていいほど現在の状況の危険性が国民皆に伝わってないのも問題だと思う。
 国民の努力に期待したかったら「国防の意義をより大勢の人に伝える」という作業と「世界の状況をもっと詳細に伝える」ということがまずもって必要だと思う。存在意義を示さないことには誰も必要だと思わないから。
 問題はそのために取れる手段がなにかってことなんだよな・・・

 今回の問題に限らずですが、ではどうするコトが一番有効な手だてだとお考えでしょうか。
 もっと具体的に狭く考えてみますと、ではどうすれば最も憲法改正に近づける有効な手だてとなるでしょうか。
 
 この問題、このというのは思想・政治などの問題という意味で、この問題、やえはやえなりの考えをもってるつもりではあります。
 それが今現在どれぐらい効果的に進んでいるかは分かりませんが、やえはいまのところ、それが最も有効で、且つ唯一であり、正道であり王道である方法だと思っています。
 しかしもっとよい方法があるかもしれません。
 やえがどう考えているかは、次回お答えするとして、ではどうすれば「国民の意識を変えるコトができるのか」というところのお考えを是非お聞かせいただけますでしょうか。
 批判とかではなく、純粋にやえは聞いてみたいと思います。
 よろしくお願いします。
 
 
■国籍法改正の件
 
 本日最後の話題です。
 ちまたで話題になっているこの国籍法改正の問題については、とりあえず耳にはしているんですが、正直ひとつの法案についてどうこういうのは、特にこういう、なんて言えばいいんでしょうか、民族派系の話題についての法案を取り扱うというのは、人権擁護法でちょっと嫌気がさしているので、やえはこの件について特に何も調べようとはしていません。
 こういう言い方は申し訳ないのですが、今後も詳しく調べようと思いませんので、もし間違いや、やえが疑問を提示した場合、積極的な方は指摘をしていただければうれしいです。
 ただまぁ、何も知らないままで意見を書くのもどうかと思って、いま軽く検索をかけて調べてみたんですが……えーと、なんて言いましょうか、危険性ばかり列挙して、「なぜそうなるのか」という具体的根拠や法案文の引用等が全くないサイトばかり目にしてしまって、かなりイヤな感じでデジャブってます。
 ごめんなさい、やっぱりやる気が出ません。
 
 その上で、ちょっとだけやえのいまの考え方を示しておきます。
 これらはワリと大まかな視点での考え方ですから、あまり具体的な細かい部分は必要ないと思いますし。
 
 国籍法をなぜ改正しなければならないのかと言えば、これは最高裁が違憲判決を出したからです。
 その裁判の詳しくはニュースなどを参照していただければと思いますが、ですからとにかく、今の国籍法を改正しなければならないのは絶対とは言えます。
 ただやえは、必ずしも最高裁の違憲判決が国家の最上位決定だとは思っていませんので、国権の最高機関たる国会が裁判所の判決を無視して、それを選挙の最も重要な争点として国民が賛成すれば、最高裁の違憲判決も覆していいとは思っています。
 が、まぁ、なかなかそれは現実的に難しいですから、ここは国籍法は改正するのが妥当な判断でしょう。
 
 では何が問題なのかと言えば、この改正案に反対している人の理由は、簡単に言えば「日本国籍の安売りになってしまう」というコトを懸念しているようです。
 簡単に言えば、「我々夫婦の間に出来た子供だ」とウソをついて外国人が日本国籍を安易に取得できるようになってしまう、というコトのようです。
 こういう事態を想定した上で、特に国家主義的な考えを持っている保守層から、この改正案に反対している公が出ているというのが今回の経緯のようです。
 
 やえが今のところ認知している、ではどうすれば納得できる改正案になるのかという、対案は
 
 ・親子関係を証明するためのDNA鑑定がない
 ・偽装の場合の罰則が「20万円以下の罰金、懲役1年以下」と軽いので、もっと強化すべき
 
 この2つかと思われます。
 逆に言えば、DNA鑑定をして、罰則を強化すれば、けっこう多くの人が納得する改正案になるんじゃないかと思います。
 
 あまり長くなるとアレですから、簡単に話を進めますが、DNA鑑定については、それは法律に載せるような案件ではないとやえは思います。
 この辺は感覚の問題というか、なんというか、法律とかの問題というのは、不文律で規定する場所というモノがなんとなく決まっていたりします。
 ものすごく簡単な例えを使うと、日本の中で最も大雑把な決まり事は憲法で、その次に法律があって、さらにそれを捕捉するために省令とか訓告とか規定とか続いていきます。
 選挙に関する決まり事で言えば、まず憲法で国会議員は選挙によって選べと規定してあって、その次に法律で具体的な選挙の方法が定められています。
 そしてその下にさらに、運用の方法について、省令などがあります。
 法体系とは、基本的にこのような作り方になっていますから、自然と「法律に書くべきコト」と「その他で定めるべきコト」と分かれるくるワケなんですね。
 
 勘違いしてはいけないコトは、DNA鑑定というのは手段であって目的ではないというコトです。
 国籍法のそもそもの存在理由は、適切な人に正しい国籍を与えるというコトであって、一番の主旨は「国籍を与える」という部分です。
 ですから法で規定する部分というのは、「適切な人に国籍を与える」というところだけでいいワケで、偽装する人をどう見破るかというところまでを法で規定する必要は、必ずしもないんじゃないかと思います。
 
 また、法に明記してしまうと、DNA鑑定に縛られるコトにもなってしまいます。
 例えば将来DNA鑑定よりもっと迅速で確実な鑑定方法が編み出された時でも、法で規定されるとそれに縛られてしまいます。
 この意味からも、DNA鑑定は運用の問題ですから、法に明記する必要性を感じません。
 
 やえは、DNA鑑定をする場面ではするべきだとは思いますが、法に「必ず鑑定書を出さなければいけない」とまで規定するのは、法の趣旨や法体系の観点から、必ずしも適切であるとは思いません。
 まぁ法に書いてはならないという法もありませんから、あってもいいとは思いますが、「無ければ法として片手落ちであり断固反対する」という言い方は適切ではないと思っています。
 
 さっきも言いましたように、これは運用の問題です。
 一言で「認知」と言っても、行政や法律の中では、どの程度の行為のレベルを指すのかやえはちょっとよく知らないのですが、今でも子供の認知という問題はそれなりに存在する問題でしょうから、ある程度の行政の中の一致した「認知という行為の範囲」の見解はあるんじゃないかとは思います。
 それらをよく踏まえた上で、ではどうすれば出来るだけ偽装を防ぐコトができるのか、ここを運用の中で形作っていくコトが必要なのではないでしょうか。
 
 結局、国籍制度を悪用してはならないというのは法律上制度上から当然の話であり、よって運営する行政が悪用されないように運用していくというのが、当然の前提です。
 であるなら、それで悪用されたら、それを運営している行政が失策したというコトであり、それは「行政は何をやっているんだ」という批判になるコトでしょう。
 そしてその批判は当然だと思いますし、そうならないよう行政は細心の注意を払って新しい国籍法を運用していかなければならないと思います。
 行政が全力を尽くすというのは、これはこの法律に限らず、全てのコトに関して言えるコトでしょう。
 
 だいぶ長くなったので、書き出すとなかなか言いたいコトが色々出てくるんですが、今日はこの辺にしておきます。
 罰則の問題については、これも書きだしたら長いんですが、一言で言えば、罰則は他の法律とも比べて、ある程度相対的な側面からも検討しなければなりませんから、他の法律もしっかりと見てからでないと何とも言えません、というところでしょうか。
 例えば万引きが社会的に横行して大問題になったと言っても、さすがに強盗より重い罰則にするコトは無茶な話でしょうからね。
 
 この件、ご意見のある方は、ぜひお聞かせいただければと思います。
 

平成20年11月13日

 目的のためには手段を選ばない人たち

 今日は麻生メルマガの日なんですが、ちょっと今日は、どうしても言っておかなければ気が済まない案件がありますので、また後日というコトにさせていただきます。
 とりあえず麻生メルマガになってからまだ一回もレビューをお休みしていないので、なんとかこの記録は守ろうと思っているんですよね(笑)
 
 当サイトを長年お読み下さっている方は、やえが「目的のために手段を選ばない方法」というモノをかなり嫌っているのをご存じかと思います。
 例えばテロリストなどはまさにその典型ですし、人権擁護法案の多くの反対論も目的を達成するために論が理屈だってないメチャクチャなコトを意図的に言っている人や、この前の元幕僚長さんの行動もそうです。
 やえは、その主張の中身はともかく、中には賛成できる主張があるコトもあるのですが、それでも手段を間違えた方法や人は一切応援しません。
 むしろ、せっかくいい主張しているのに、その方法では逆に主張そのものが白い目で見られかねない、足を引っ張るだけなのでやめていただきたいぐらいに思っています。
 
 右も左も逝ってよし!!
 バーチャルネット思想アイドルのやえです。
 おはろーございます。
 
 最初にも言いましたように、やえはこのお話、どうしても許せません。
 これが、まだ無責任政党民主党の議員さんであれば「また民主党か」ぐらいで終わるのですが、よりによって与党自民党の議員さんであるというコトがなおさら許せません。
 世界トップの強国である日本の、その代表者である国会議員が、まして与党第一党である自民党そのものの信用すらこれでは失いかねない、日本の民主主義を疑わせるかのようなこの書き方は、やえはどうしても許せないのです。

 全く関係ない会合ではなかったですが、きのう出席した自民党法務部会は河野太郎PT座長による重国籍を取上げた会合でした。それとは別に、今回の「国籍法の一部を改正する法律案」は、今週中に衆議院法務委員会で審議され、来週に本会議にかけられるスケジュールになっていることが分かりました。
 「なんでこうなったのだろう」と何人もの議員が首を傾げていました。人権擁護法の反対で一緒に戦った議員です。おそらく、選挙騒ぎで選挙区と国会を行ったり来たりしている間に話が進んでいたようです。
 (中略)
 「近いうちに部会で議論の場が設けられるだろう」と思っていました。ところが、多くの自民党議員が知らないうちに、この改正案の手続きはかなり進んでしまっています。でも、やれることはやってみます。それから、この後に議論されると思われる、重国籍のことについては絶対反対します。

 これは一行でも教えていただきました、自民党の馬渡龍治議員のブログの一節なのです。
 まず該当する文章をパッと読んだら、普通はどのような印象を受けるでしょうか。
 この文章を素直に解釈すれば、「国籍法改正法案が何者かの陰謀によって秘密裏に自民党を通り、もうすぐ衆議院を通って可決成立しそうな情勢である。大変だ」と読むのが自然でしょう。
 確かにこれが本当なら大問題です。
 でも、残念ながら、やえは人権擁護法案の時にもいろいろと調べた身として、このような「秘密裏に自民党内を通過していく」なんてという事実はまず無いと思うしかありません。
 なぜ馬渡議員がこのようなコトを書いてしまったのか、本当に根拠があってそう言っているのか、色々と調べてみました。
 
 これはワリと知られてる話ですが、自民党国会議員さんの事務所には、毎日のように党本部から会議情報のメールが入ってきます。
 いま自民党では、会議情報もサイトで公開していまして、ここでは2日先の会議情報だけですが、さらに国会議員の事務所には、だいたい一週間ぐらい先の確定している会議の情報メールが流されているそうです。
 そのリンク先を見て頂ければ分かりやすいですが、その情報メールには、各部会や調査会・党の委員会などの開始時間や場所、そして予定されている議題まで載っています。
 ですから自民党の議員さんは、それを見て、また本会議や委員会のスケジュールも確認しながら、先々のスケジュールを組んでいくのでしょう。
 たまに緊急に入る会議もあるようですが、その時は緊急情報として、定期メールとは別に個別の情報メールが流されるコトもあるんだそうです。
 
 その上で、では馬渡議員が言う「国籍法の一部を改正する法律案」、つまり政府提出法案のコトですが、これが本当に自民党内で議論されていないのか、部会が開かれていないのかという問題を調べてみました。
 自民党内で議論されずいつの間にか衆議院に本当に提出されていたら、確かに自民党所属の議員としては納得できないモノがありますよね。
 やえ、調べました。

 婚外子にも日本国籍 自民PT、法改正案の骨子了承
 
 自民党は10日の「国籍問題に関するプロジェクトチーム」(河野太郎座長)で、婚姻を国籍取得要件とする国籍法の規定を違憲とした今年6月の最高裁判決を受け、法務省が作成した同法改正案の骨子を了承した。
 最高裁判決は、フィリピン人女性と日本人男性の子どもが出生後、男性に認知されたものの、父母が結婚していないことを理由に日本国籍を取得できなかったことは違憲との判断を示していた。
 改正案は、結婚していなくても子どもの出生後に認知されることで、届け出で日本国籍を取得できるようにする内容。あわせて虚偽の届け出には罰則を設ける。最高裁判決後、90人以上が全国の法務局に国籍取得届を提出しており、政府は改正案の今国会提出を目指している。
 
 中日新聞 http://www.chunichi.co.jp/article/politics/news/CK2008101102000054.html (注リンク切れしてます)

 よく記事を見てください。
 『法務省が作成した同法改正案の骨子を了承した』とあります。
 つまり、二重国籍の河野私案のアレではなく、馬渡議員風で言う『それとは別に、今回の「国籍法の一部を改正する法律案」は、今週中に衆議院法務委員会で審議され、来週に本会議にかけられるスケジュールになっている』法案=政府提出法案は、このように、マスコミが堂々と記事を載せるぐらいオープンに議論され、そして正式な手続きに乗っ取って了承された案件だと確認できるワケです。
 よって、会議そのものが秘密裏だったというのは、あり得ないコトになります。
 
 次に、もしかしたらこの部会の開催にあたって、事前に議員さん達に伝えられていなかったかもしれないという可能性も考えられます。
 また、さっきの記事の会議の開催日は10月10日ですから、これはまぁなかなか議員さんにとっては忙しい時期と言える、いつ選挙になるか分からない、一番解散が叫ばれていた時期ですから、地元の活動も立派なお仕事だと、やえは思っていますので、例えば当日いきなり会議するぞと言われたら、それはちょっと強引だと言われても仕方ないでしょう。
 本当に事前に全く知らされていないという事実があれば、馬渡議員がああ言ってしまうのも仕方ないですね。
 これもやえ、調べました。
 
 さっき、自民党の議員さんところには毎日党本部から会議メールが送られてくると言いましたが、ちょっと調べてみたらですね、やえの聞いた限りの話では最低でも10月10日の国籍会議の情報は、10月7日のメールにて各自民党国会議員さんの事務所に流されていたんだそうです。
 3日前ですね。
 やえの知る限り、3日前の情報というのは自民党の会議においては決して急な知らせとは言えません。
 さらにこれが月曜の朝というならともかく、金曜の朝なのですから、もしこの問題に強い関心を持っておいででしたら、3日前に知れば仮に地元でスケジュールがかぶっていたとしても変更できたでしょう。
 馬渡議員はこの情報をご存じなかったのでしょうか。
 やえは当日どれぐらいの人数の議員さんがご出席されていたのかは知りませんが、しかし出席するための情報は前もってキチンと全自民党議員に連絡が入っていたコトは確かです。
 仮に見落としていたとしても、それは馬渡議員本人の不注意であって、もしくは秘書さんの不注意であって、その責任は全て馬渡議員にあるワケで、それを他人のせいにするのはあまりにも身勝手すぎる主張以外何者でもありません。
 
 さらに、やえがメールの件で調べている途中で偶然知ってしまったある事実があります。
 この政府提出法案はそもそも今年6月に出された最高裁判決がキッカケなワケですが、自民党ではそれを受けて、なんと6月11日に法務部会国籍問題プロジェクトチームを開催し、違憲判決について議論を行っているんですね。
 つまりですね、やえが確認できたのは6月11日だけですが、可能性としてはこの国籍問題について自民党で議論された機会というのは、6月11日と10月10日の少なくとも2日間、多くて約4ヶ月間の間のかなり長い時間をかけて議論された可能性もあると言えるワケなのです。
 このように決してこの国籍問題、いきなり沸いて出てきて不意打ちのように決定され、知らないままに通っていたなんて表現するのは、あまりにも不適切だと言わざるを得ないワケです。
 そもそも最高裁判決のニュースはかなり大々的に報道されましたし、そうなれば責任ある与党自民党としては検討しなければならない事案だというコトは、ちょっと考えれば分かるコトです。
 まして馬渡議員は、現職の国会議員ですよね。
 そういう発想がもし生まれなかったとしたら、それはそれで問題と言わざるを得ません。
 また、前の総理大臣の福田さんが辞任したのが9月ですから、6月というこの時期は、まだ自民党にとっては安定していた時期でもあります。
 この時期をもって選挙は言い訳にはならないでしょう。
 馬渡議員は一体この期間何をしていたというのでしょうか。
 
 まとめますと、国籍問題に関する自民党議論は
 
 1.10月10日、マスコミが堂々と報道するぐらいオープンな部会が開かれて、正式に了承をした
 2.その部会は少なくとも3日前には議員が知るコトの出来る状態にあった
 3.そもそも国籍に関する議論自体は6月から開始されていた
 
 とまとめるコトが出来ます。
 全く秘密裏でも何でもありません。
 いつもの、結構耳を澄ませばオープンな自民党の姿です。
 少なくともやえには普通の自民党の姿として違和感を感じません。
 
 でも馬渡議員はこう言ってます。

多くの自民党議員が知らないうちに、この改正案の手続きはかなり進んでしまっています。

 多くの、と言ってますが、実際どれぐらいの議員さんが知らなかったのかはやえには分かりません。
 分かりませんが、多かろうが少なかろうが、この一連の流れを知らなかった方が悪い、知らないのは議員の不注意だとしか言いようがないと、事実を調べてみてやえは感じました。
 もし本当にそんなに「多くの自民党議員が知らない」のであれば、自民党の質も落ちてしまったですねと言わざるを得ません。
 まぁ馬渡議員は一回生ですから、自民党と言うよりはチルドレンはと言った方がいいかもしれません……頑張っていらっしゃる一回生の先生もいっぱいいらっしゃるんですけどね。
 少なくとも馬渡議員本人は知らなかったというコトなのでしょう、しかしそれは、完全に馬渡議員本人の責任以外何者でもないのです。
 それを他人のせいにしたり、何か陰謀論めいたコトを言ってもいいコトには絶対になりません。
 国会議員としてというより、人としてやってはならないコトだとやえは思います。
 
 国籍法改正に反対されるコトは、まぁいいでしょう。
 馬渡議員のご意見ですから、そう主張されるコトは尊重します。
 しかし、その自分の主張を通すために、他人を貶め、まして自分が所属する団体までをも陰謀論で貶めてしまうその身勝手な言動に、やえは怒りを禁じ得ません。
 自民党がどうだとかではなく、これが馬渡議員が無所属であるならここまで言わないのですが、馬渡議員は自分が所属している団体すらを自分の主張の道具にして、しかも事実と反するコトを言って貶めているのです。
 これはもう人としてどうなんてしょうかと言わざるを得ません。
 
 馬渡議員が今までの会議を知らなかった事情は知りませんが、どのような理由があったとしても、それは誰のせいでもない馬渡議員本人の責任です。
 いくら陰謀論を唱えたところで、この事実はどうやっても否定できないでしょう。
 やえはこういう目的のために手段を選ばない人は大嫌いなのです。
 

平成20年11月14日

 ちょっとひとこと

 認知すれば結婚していない相手との子供であっても日本国籍を与えられるように改正する法案と、二重国籍を認めるようにするという案は、これは全く別モノの法案ですよ?
 前者は、提出者が政府(法務省)であり、10月10日に自民党の部会においてすでに了承されていますが、後者は、提案者が自民党の国籍問題プロジェクトチーム座長の河野太郎さんであり、まだ自民党は法案としては了承していない私案レベルのお話です。
 
 たまに「DNA鑑定無しで国籍を認めようとしている河野私案は許せない」なんて主張をよく見かけたりしますが、これは問題を正しく認識していないメチャクチャな言い方としか言いようがありません。
 法律の問題なのですから正確さは絶対に求められるハズなのですが、気分だけでワッと騒げばいいってもんじゃないコトぐらい分かってもらいたいです。
 

平成20年11月17日

 国籍法改正についての考え方

 国籍法改正問題について、当サイトをリンクしていただいたり、参照していただいたりと、色々話が大きくなってきているようですが、ですのでここでいったん、今のところのやえのこの問題に対する考え方をまとめておこうと思います。
 この前お話ししたコトとかぶるところが多くなると思いますが、ご了承いただければと思います。
 
 右も左も逝ってよし!!
 バーチャルネット思想アイドルのやえです。
 おはろーございます。
 
 さて。
 結局この国籍法の問題の争点は、結婚していない外国人の子であっても日本国籍が取れるようになるコトに関連して、その取得の際に偽装して日本国籍を取ろうとする輩があらわれる可能性があるので、その親子関係を証明するためにDNA鑑定を法律の中に盛り込め、という部分に集約できるかと思います。
 もっと簡単に言うと、法律の中に「DNA鑑定必須」という文言を入れろというのが、この法案に反対している人の主な主張であると言えるでしょう。
 よってやえも、今回は主にここに焦点を当ててお話をしたいと思います。
 
 ものすごく根本的なお話をします。
 当たり前すぎるお話ですが、偽装は犯罪です。
 許される行為ではありません。
 これは当然すぎるお話ですね。
 しかし、であるなら、この日本において偽装してもOKなんて言う人は、まぁ犯罪者を除いて、存在はしないと言えるでしょう。
 つまり、今のままの国籍法改正法案でも問題はないと言っている人でも、偽装を許そうなんて思っている人はひとりもいないというコトです。
 この法案は別に偽装が許されるようになるという法案では決してありません。
 どこをどう読んでも、偽装はダメとしか解釈できません。
 偽装は悪で、許してはならない犯罪であるというのは、どんな立場であったとしても当然の話です。
 
 となれば、結局この問題というのは、手段の問題です。
 偽装は許されないというのは当然の話なのですから、ではいかに偽装をさせないかという問題こそが本来の論点であるワケで、よってDNA鑑定を法に盛り込めという主張は、目的ではなく手段の問題を指し示していると言えるワケです。
 変な話、DNA鑑定をしても偽装できてしまったら、本来の「法で想定していない人間に対する国籍の付与を防ぐ」という大目的からは逸脱してしまうコトになるので、よってDNA鑑定そのものが目的ではないと言えるワケです。
 DNA鑑定を行うようにすればそれでちゃんちゃんなのではなく、DNA鑑定そのものが目的ではないというコトを忘れてはいけません。
 
 このDNA鑑定をするしないという問題は、運用の問題です。
 そもそも今回の国籍法改正の本義は、今まで国籍を与えていなかった人に対して条件が整えば与えましょうというところでありますので、偽装を見抜くかどうかという問題は手続き上の手法の問題なのですから、やはりこれは運用の問題であって、つまり行政の問題です。
 行政手続きの中で役所は、悪意を持ってこの制度を悪用しようとする偽装に対して、それを見破るよう努力する義務があります。
 というか、こんなのは国籍法に限らず、当たり前の話ですよね。
 ですからやえは、行政の段階において偽装を極力無くそうとする目的をもってDNA鑑定をするというコトには全く反対ではありません。
 予算や他にも様々な問題があろうかと思いますが、それらをクリアした上でDNA鑑定をするコト自体には、やえは全く問題はないと思っています。
 
 しかしそれを立法行為の中に求めるのが妥当なのかどうかというところが、やえはちょっと疑問なのです。
 これは日本の法律の体系のお話になるのですが、DNA鑑定を法律に記載するコトは、あまり法律というモノにはそぐわないのではないかと思うからです。
 
 一般的に法というと法律のコトを指し示しますが、日本国において国民が生活する上で存在する規則のようなモノは、法律だけに限りません。
 例えば他には憲法がありますが、憲法は法律と比べてかなり大まかな決まり事だけを記載しています。
 憲法には国会議員は選挙によって決めると定められていますが、しかし選挙に関する憲法の記載はこれだけしかなく、では具体的にどのような手続きを経て選挙となるのかというのは、法律である公職選挙法に書かれています。
 衆議院議員の定数は何人とする等ですね。
 しかし実は、公職選挙法だけではまだまだ具体性が足りません。
 これを補完するために、憲法と法律だけではなく、さらにその下に位置づけられている、省令や規則などと呼ばれるモノが存在します。
 そのひとつである内閣(内閣府ではありません)が制定している公職選挙法施行令というモノには、法律である公職選挙法だけではカバーされていない、さらに細かい決まり事がいろいろと書かれています。
 ご興味のある方はこちらを読んでみて下さい
 さらにさらに、その下には各省庁が定める省令(選挙に関することなら総務省が定めている公職選挙法施行規則等)と呼ばれるモノや、もっと下の規則(同様に、各都道府県市町村選挙管理委員会が定める公職選挙法等施行規程等)と呼ばれるモノなどあります。
 日本における公職の選挙におけるルールとは、憲法や法律だけでなく、政令や省令や規則なども合わせ、数多くの法律以外の決まり事が存在するコトで、これら全てによって形作られているワケなのです。
 もちろんこれは選挙に関する決まり事だけではなく、あらゆる決まり事も同様であり、このように日本には様々なレベルによる数多くの決まり事が存在しているのです。
 
 これらの決まり事を、法律を併せてまとめて法令と呼びます。
 
 お役所仕事と言えばそうなのですが、やはり国の仕組みを規定する以上、細かいコトまで規定しなければ巨大な組織は動きませんし、また法網の目をくぐり抜けようとする輩が出てきますので、どこかでなんとかして文章によって規定しなければいけなくなります。
 例えば、選挙によっては選挙期間中にビラを配布するコトができる選挙(国政選挙や知事選挙など)があるのですが、その配布方法は法律と制令によって定められています。
 そして公職選挙法では、ビラの配布方法を新聞の折り込みだけを明言していて、他の方法は政令で定められるコトになっています。

 公職選挙法第142条
 6  第一項第一号から第三号まで及び第五号から第七号まで、第二項並びに第三項のビラは、新聞折込みその他政令で定める方法によらなければ、頒布することができない

 では他にきどのようなビラの配布方法があるのかと言えば、政令を見れば明言されています。

 公職選挙法施行令第109条
 六  法第百四十二条第六項 に規定する政令で定める方法は、次の各号に掲げるビラの区分に応じ、当該各号に定める方法とする。
 一  法第百四十二条第一項第一号 のビラ 次に掲げる方法
 イ 当該ビラに係る候補者の選挙事務所内、個人演説会の会場内又は街頭演説の場所における頒布
 ロ イの候補者を届け出た候補者届出政党の選挙事務所内、政党演説会の会場内又は街頭演説の場所における頒布
 ハ ロの候補者届出政党である衆議院名簿届出政党等の選挙事務所内、政党等演説会の会場内又は街頭演説の場所における頒布
 ニ イの候補者が所属する衆議院名簿届出政党等(法第八十六条第七項 (同条第八項 においてその例によることとされる場合を含む。)の規定により当該候補者が所属するものとして記載された政党その他の政治団体に限る。)の選挙事務所内、政党等演説会の会場内又は街頭演説の場所における頒布

 これだけでなく、この省令にはあとこの3倍ぐらいの文章で、配布方法が定められています。
 正直読む気がしません(笑)
 しかしこのようにキチンと定めておかないと、極端な話、ヘリコプターなどで空からビラをまくなんて迷惑きわまりない方法をとってもOKという解釈になりかねませんから、やはり規定は必要なワケです。
 
 このように、日本の決まり事、法体系とは、憲法と法律だけでなく、その他の方法による法令によって定められており、これら全体でもって日本の国家としての形を作っているワケなのです。
 
 国籍法の話に戻しますが、もしDNA鑑定が必要であるとした場合であっても、それは行政が行う運用の問題であり、すなわちそれは行政の、もっと言うと役人を縛る規則であると言えるでしょう。
 であるならば、これは改正手続きがめんどくさい法律で縛る必要はあまりなく、省令や規則、もっと言うと、厳密には法令ではない訓令でも十分ではないかと思うのです。
 訓令とは省庁等の長、主に大臣とかがその行政機関や職員を対象として業務に関する命令を行うコトで、当然ですが職員はこの訓令に逆らうコトを許されていません。
 ですからもしどうしてもDNA鑑定が偽装防止に必要と結論づけられるなら、この訓令でも十分であると言えるのです。
 
 逆に言えば、法律で定めるのは縛りが強すぎるとも言えます。
 もし科学技術が発展して、DNA鑑定より迅速で正確な親子関係を証明する方法が確立されたとしても、法律で規定されていては、絶対にDNA鑑定を行わなければならなくなります。
 これはちょっと本末転倒ですね。
 またDNA鑑定と一言で言っても、かなり簡易なモノから、それなりに時間をかけて正確性を期すモノまで様々あり、DNA鑑定と一言規定すれば安心とは決してならないでしょう。
 となければどうしてももっと細かい規定が必要になるワケで、やはり法律だけにこれを求めてもあまり意味のないコトだと言えるのではないでしょうか。
 
 行政が禁止事項以外の範囲内で最大限努力するというのは当然の話です。
 例えば、殺人は言うまでもなく犯罪ですが、それを防ぐために警察の行動をどこまで規定するかという話と同じで、場合によっては警官は拳銃を発砲しなければならない場面も出でくるでしょうけど、しかし犯人がどういう行動を取れば拳銃を発砲していいかという問題を法律にまで定める必要があるのかどうかはまた別問題です。
 もし警官が殺人を現場にいながら防げなかったら、何をやっていたんだと批判されて当然でしょう。
 しかしそれを、法律に発砲基準が書かれていなかったからだと言うのは、それはちょっとズレてると言わざるを得ません。
 法に書かれていようがいまいが、犯罪を防ぐとう努力するのは当たり前の話なのです。
 まぁたまにものすごい細かいところまで書いている法律もあるコトはありますので、どうしてもと言うなら法律のDNA鑑定を記載してもいいとは思います。
 思いますが、書かいてないから反対という言い方も、ちょっとどうなのかと思わずにはいらないワケなのです。
 
 最初にも言いましたように、これは運用の問題であって行政の問題ですから、ようは行政がどのように犯罪を食い止めるのかという問題です。
 方法の問題です。
 DNA鑑定はその方法の一手段に過ぎず、他にも数ある鑑定方法のひとつに過ぎないワケです。
 やえは、国籍や戸籍に関する行政手段については詳しくないので具体的に今後どのような方法がとられるかはちょっと分かりませんが、犯罪が起きないよう努力するのは行政として当然の話ですから、今後行政は努力するのは当たり前のコトだと思っています。
 ですから立法行為の問題とはちょっと外れると言えるでしょう。
 やえは、行政に対してこれからどのように偽装を防止していくのかを求めるのは自然だと思いますし、仮に行政が偽装を看破できないという事態がありましたら、役所は何をやっているんだと責められて当然だと思います。
 もし現行のこの手の行政手続きに詳しくてそれでは生ぬるいとお考え方は、ぜひ行政に手段をもっと正確性が高い手段に改めるように主張して頂ければと思います。
 
 繰り返しますが、DNA鑑定は、手段であって目的ではありません。
 DNA鑑定を法律に記載するコトはゴールではありません。
 ゴールは、(どのような手段であっても)偽装されない、妥当な人間だけに妥当に日本国籍を与える仕組みのあり方です。
 本来資格がない人間に国籍を与えるようなコトは許されませんし、そもそもそれを悪意を持って実行しようとする輩が一番言語道断です。
 そういう事態に陥らないように、現実的に冷静に考えていきたいですね。
 

平成20年11月18日

 法案の中身はどこで見れる?

 ご存じの方も多いかと思いますが、本日の衆議院本会議において、国籍法改正法案が全会一致で可決されました。
 まだ参議院での審議が残っていますので法案成立ではありませんが、まぁ各党共産党も含めて賛成しているので、法案成立は時間の問題でしょう。
 前回言いましたように、やえは立法のレベルではこれは問題があるようには思えませんので、別にふつうの国会だったと思います。
 ただまぁ、法案の中身についてはこれ以上手を入れようとは思いませんが、政治や行政の観点から、もうちょっとやえが言えるコトはあると思いますので、もうちょっとだけ引き続きこの問題に関連した更新は続けていこうと思っています。
 よろしくお願いします。
 
 右も左も逝ってよし!!
 バーチャルネット思想アイドルのやえです。
 おはろーございます。
 
 今日は、一行で頂きましたご質問にお答えしようと思います。
 お返事が遅くなってごめんなさい。
 
 自分で国籍法改正案読んでみようかと思ったけど見つからない。こういう情報はどこをあたると良いですか?
 
 で、この手の法案文ですが、まず、正式に議院に法案が提出されれば、必ずサイトに載せるコトになっています。
 法案は衆議院と参議院両方に同時には提出されませんので、まずどちらかに先に提出されます。
 実際のところほとんどは衆議院が先に提出されますから、基本的には衆議院のサイトを見れば早いでしょう。
 そして、衆議院サイトの「議案」というところに、提出された法案の文章と、また現在衆議院ではどのような扱いになっているのかという情報を見るコトが出来ます。
 ちなみに、国籍法改正法案はこちらです。
 
 また、政府提出法案でしたら、その法案を作成した省庁のサイトで法案文を載せているコトもあります。
 今回の国籍法改正案で言えば、これは法務省が所轄ですから、法務省のサイトの「国会提出法案など」で見るコトが出来ます。
 ただし、議員立法の場合は、提出者が役所ではありませんから、役所のサイトを見ても載っていないません。
 もちろんこの場合も、提出されれば議院のサイトに載りますので、衆議院か参議院のサイトで探してみてください。
  
 しかし一点だけ注意がありまして、どの法案にしても、おそらく議院に提出してからのサイト公開となると思います(特に衆議院や参議院のサイトは当然)ので、提出前に法案を見るコトは難しいかと思います。
 
 これはちょっとしたマメ情報ですが、衆議院もしくは参議院のサイトには、提出された法案を載せるというコトですから、必ずしも成立した法案ばかりではなく、提出された法案は全て載っているます。
 例えば人権擁護法案は未だに成立していない案件ですが、しかし実際過去に衆議院に提出されたコトがありましたので、衆議院のサイトにはこの法案の内容が今でも見るコトが出来ます。
 このように成立されなくてもサイトには残り続けていますすから、過去どのような法案がどの政党から提出されたのかというコトを調べる時には便利です。
 さらに、成立した法案を調べると、その法案に賛成した会派(≒政党)と反対した会派も載っていますので、これもちょっと便利です。
 
 法文はかなりややこしい書き方をしているので、最初はちょっと読むのに手間取るかもしれませんが、当サイトの人権擁護法案の特設サイトをご覧になって頂ければ分かるように、頑張れば日本語なのですから読めますので、もし法律に対する主張があるのであれば、ぜひ読んでみて下さい。
 

平成20年11月19日

 全会一致ってなに?

 昨日、国籍法改正法案が衆議院にして可決されましたが、その際、採決が「全会一致」だったコトに対して、どういう仕組みなのか疑問に思っている人がけっこういるようです。
 また一部自民党議員が採決の前に本会議場を退席したらしく、それも含めて、「一体全会一致ってどういう意味だろう」と思っている人もいるんじゃないでしょうか。
 というワケで、簡単に解説をしたいと思います。
 
 右も左も逝ってよし!!
 バーチャルネット思想アイドルのやえです。
 おはろーこざいます。
 
 まず本会議における採決の方法が実は3種類あるというところから説明しなければなりません。
 これは衆議院と参議院と微妙に違うのですが、今日はとりあえず衆議院だけを説明します。
 その3種類は、以下の通りです。
 
 1.起立採決
 2.記名採決
 3.意義の有無を取る採決
 
 1は分かりやすいですね。
 賛成の人は起立し、反対の人は座ったままで、どちらが多いかを見分けるという採決の方法です。
 この光景は見たコトあるという人も多いのではないでしょうか。
 この採択方法では、一応どの議員さんが賛成もしくは反対したのかというコトは見れば分かりますが、けっこう立っている間の時間は短いため、また過去において立ったり座ったりごまかす議員さんがいたりしたコトもありますので、ちょっとあやふやであるという部分も含みます。
 しかし短時間で採決ができ、与野党で対応か別れても可決か否決かは分かりますので、もしかしたら一番多く使われている採択方法かもしれません。
 
 2もよくテレビで見ると思います。
 賛成の人は「白票」を、反対の人は「青票」を、ひとりずつ本会議場の正面の演壇にいる職員に渡して採決する方法です。
 この採決をとる場合、事前に議員さんには自分の名前が書かれている白い木札=白票と、青い木札=青票が配られていて、そのどちらか1つを投票するコトになります。
 木札には自分の名前が書かれていますので、どの議員さんが賛成を投じたのか反対を投じたのか明確に分かるというシステムです。
 また票を渡すときに、木札の色と、渡す職員が賛成用職員と反対用職員の2人に分かれているためにどちらの職員に木札を渡したかで賛成か反対かが分かりますから、もし“造反”をするとその場で一目瞭然で分かるワケで、郵政法案の時はこれを見て野党側から大きな拍手が巻き起こっていたワケです。
 しかし、衆議院では480人がひとりひとりがわざわざ移動して投票しますので、とても時間がかかってしまうというデメリットがあります。
 このデメリットを悪用したのが、かの牛歩戦術ですね。
 この採択方法は、特に重要な法案などを採択する時に採られる方法です。
 
 3はもしかしたらあまり馴染みがないかもしれません。
 というのも、この場面を見ても採決をとっている風には見えないかもしれないからです。
 そして今回の国籍法改正法案はこの方法で採られました。
 この採択方法は、まず議長が
 
 「この件を可決するにご異議ありませんか?」
 
 と議場に向かって発言します。
 そして基本的には全ての議員さんが
 
 「異議なし」
 
 と言います。
 これで終わりです。
 もちろん異議がないのですから、議長の言う通りに可決した(まずありませんが「否決するにご異議ありませんか」と動議する可能性もあります)コトになります。
 「全会一致」とは、この採択方法により、全ての議員はこの件に関して異議が無いと確認を取るワケですので、これをもって全ての議員が賛成したと言えるワケです。
 これが「異議の有無を採る採決」です。
 だいたい「全会一致」と言われる場合は、この採択方法を採られた時に出る言葉です。
 
 では次に、どうしてこのような3パターンがあるのかを解説します。
 
 その前にちょっとだけ国会の仕組みを説明する必要があります。
 国会の中に設置される会議には、大きく分けて「本会議」と「委員会」があります。
 本会議は全ての議員(もちろん衆議院には衆議院議員、参議院には参議院議員)が出席する会議で、国会の決定は全てのこの本会議の決議を取らなければ可決や否決したコトにはなりません。
 つまり日本における法律は、全て本会議で可決されたモノであるワケです。
 それに対し委員会は、20〜40人ぐらいの議員さんだけで構成されており、少数で専門的かつ具体的に議論する場と言えます。
 衆議院議員の定数は480人ですので、480人全ての議員が出席する本会議ではなかなか時間を掛けて具体的に議論するコトが難しいですので、これに変わって委員会にて少数精鋭で議論するワケです。
 
 この委員会のひとつに「議院運営委員会」というモノがあります。
 呼んで字のごとく、議院を運営するための委員会です。
 本会議が開会される前には必ずこの「議運」が開かれるのですが、実はだいたいここで、その日に採択される法案などに対する各会派(≒政党)の賛否はどうなのかというコトを確認するのです。
 (実際は理事会などもあるんですが、とりあえず今日は省略です)
 すなわち、この段階で与野党の賛否が分かるワケなんですね。
 で、その結果、賛否がバラバラなら記名採決もしくは起立採決を採ろうと議長が決め、もし与党も野党も共産党まで一致で賛成(もしくは反対)であれば、時間短縮のために議長が「異議無し採決」を採ろうと決めるワケです。
 このように、採決方法は法案によって変わってくる、政党の対応によって変わってくるのです。
 
 ちなみに国籍法改正法案の場合は法務委員会でも審議され、全会一致で採択されていますので、全ての会派が賛成であるというのはここの段階でも確認はされているコトになります。
 となれば当然議院運営委員会でも各党全て賛成であるというのが確認されるコトになるワケですから、本会議では「異議無し採決」で採決をしようと決まったというコトなのでしょう。
 「異議無し採択」が採られ、「全会一致」と表現されたのは、このような背景があったからです。
 
 昨日の本会議では、一部自民党議員さんが本会議を退席されたというコトですが、しかしそれぞれの政党は党の正式決定として今回の法案の態度を決めているワケなのですから、反対意見が言えない「異議無し採決」なのはけしからんとか、本会議の前に結論が決まっているようなシステムはけしからんとか言うのは、ちょっとズレている意見と言わざるを得ません。
 退席したコトも、むしろ政党所属議員としては褒められた行為ではないと言えるでしょう。
 これはいわゆる「党議拘束」と呼ばれるモノです。
 この前やえは馬渡議員の行動を批判した更新を書きましたが、あそこで書きましたように、今回のこの法案については少なくとも自民党は、自民党国会議員なら誰でも出席できて誰でも発言できる部会という民主的な手法による党の正式な会議において規則に則って通しているワケで、キチンと党として法案に賛成すると決定しているのですから、これは政党人としては従わなければならないハズです。
 もし通常の党内手続きを経ずして、一部の議員だけで勝手に決めていたのであれば反発するのは理解できますが、しかし今回はそうではありません。
 党に所属する限りは、この決定に従わなければならないワケで、自分だけがそれに従わなくても許されるなんていう行為はただの我が儘だと言わざるを得ません。
 前にも言いましたように、自分のミスは自分のミスでしかなく、それを他人のせいにしたり、陰謀論でごまかそうとするのは、国会議員としてというより、人としてどうなんだと言わざるを得ないのです。
 
 党議拘束については、また後日詳しく取り上げましょう。
 
 まとめますと、「異議無し採決」が採られ、「全会一致」だった背景というのは、議院運営委員会という国会の正式な会議において、各党が党を代表して(=党所属議員全員を代表して)正式に国会に報告した結果であり、本会議の場でもそれを踏襲しただけというコトなのです。
 

平成20年11月21日

 国籍法改正案反対論に対して

 今日はこちらのサイトさんを取り上げようと思うのですが、こちらのサイトさん、シスプリサイトのくせに(褒め言葉です(笑))真面目な話をするコトも少なくなく、しかもその内容が勢いで始めたとしか思えないような自称言論系ブログなんか比べものにならないぐらい筋が通っていて素晴らしいモノばかりで、やえはよく拝見させてもらっています。
 またいつぞやは、あまおちさんがフィギュア萌え族の時にお世話になったコトもあり、個人的にはとても親しみを持っているサイトさんのひとつです。
 けど、まぁ今回の件はちょっとどうかなと、また、その考え方がとても「よくある一般人の考え方の典型」のような感じでしたのでサンプルとしてはちょうどいいので、それで取り上げさせてもらうコトにします。
 特に思想言論サイトでもありませんし、決して個人を攻撃しようとか、どうこうしようとかというワケではないコトだけは、誤解なきようご理解をお願いしたいと思います。
 
 右も左も逝ってよし!!
 バーチャルネット思想アイドルのやえです。
 おはろーございます。
 
 今回取り上げさせていただくサイトさんは、こちら「赤の7号」さんの08/11/20(Thu)の記事です。
 よろしくお願いします。
 今回MAS-Rさんは今回の国籍法改正について以下の3点について「ひどい」と評価しておられます。
 

 1.改正案自体がずさん。
 2.十分に審議がなされていない。
 3.そのことが報道されていない。

 
 この点について、次から具体的に指摘されておられますので、引用しながら、それについてやえの知るうる限りの範囲内でお答えしていきたいと思います。

 まず、1の「ずさん」ということですが、上記の判決を受けて「じゃあ、父母の結婚を要件から外そう」というところまではいいものの、単に「父の認知だけでOK」としている点。
婚姻も必要なし、DNA鑑定も必要なし。単に「父」とされる日本人男性が、外国人女性の連れ子を認知すれば、その子は日本国籍を得ることができ、そしてその女性も「日本人の配偶者等」として、日本の在留資格を容易に得ることができるのです。
 それだけなら大変結構な話ですが、頭の回転の速い方ならもうお分かりのように、こんな仕組みではいくらでも悪用可能で、
 「貴女の子供を認知します。1人1万ドル」
 という商売を、いとも簡単に立ち上げることができます。

 やえは今回様々な事情により、中身について具体的に調べようとする気が起きませんモノで、あまり深くは中身について触れようとは思わないのですが、少なくとも「単に「父の認知だけでOK」としている点」と言ってしまうコトは大きな事実誤認であると言わざるを得ません。
 法とは、単に法律のみを指し示す言葉ではありません。
 日本における法、特にその運営に関わる部分については、決して法律に書かれている文言だけで動くのではなく、もっと具体的に行政の行動範囲を規定した決まり事も存在します。
 それが「法令」です。
 法令の詳しい説明はこちらをご覧下さい
 その上で、では国籍法(改正案ではありません)を見てみてください。

 (省令への委任)
 第十九条  この法律に定めるもののほか、国籍の取得及び離脱に関する手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、法務省令で定める。

 よく法律文は難しいと言われますが、ここはとても簡単な、ごく普通な日本語ですね。
 「手続きについては法務省令で定める」です。
 ですから結局、国籍を与えるにその手続きが簡単すぎて、時に商売すら成り立ってしまいかねない事態に陥るかどうかという判断は、この法務省令を見なければなんとも言えないのです。
 
 また、これは何度も言ってますが、偽装を許していいなんて思っている人は、この法案に賛成している人でも、そんなコトは全く思っていないワケで、どんな人でも偽装は罪であり許してはならない行為だと言うでしょう。
 となれば、偽装が行われないよう、実際にその審査などの業務に当たる行政がシッカリすべきであると、これも全ての人が当然思っています。
 つまりこの問題は、行政の運用の問題であり、立法行為の問題ではないのです。
 この問題の本質は、「偽装されないよう行政はシッカリと働け」と言うところにあるワケです。
 ですから、前提として行政が偽装されないよう努力するのは当然、もし偽装されたらそれは行政の責任として追及するべき問題で、DNA鑑定が法律に記載されていないからといって努力しないというコトにはなりませんし、どのような手段を用いるかは具体的な行政行為を見なければ分かりませんが、出来うる限りの手段を用いて偽装を防ぐ義務が行政にはあるのですから、DNA鑑定という文言がないからという理由では行政は真面目にやらないという結論は、ちょっと結びつかないでしょう。
 国民はですから行政を監視する必要はあります。
 しかし、DNA鑑定を法律に載せてはならない法はありませんが、載ってないから立法に反対と言うのも、論拠がかなり薄い主張だと言わざるを得ないワケです。

 100人だろうが200人だろうが、
 「いや、実際、海外で種を蒔きすぎたんで、我が子ですよハッハッハ」
 と言い張れてしまいます。

 現実的に考えてください。
 ここまで極端なコトをすれば、普通の感覚を持っていれば疑問に思うでしょう。
 となれば、捜査対象です。
 刑事事件になれば、それが捜査の段階か裁判の段階かは事案によって変わってくるのでしょうけど、自ずとDNA鑑定というとろこには行き着くでしょう。
 ちょっとこのような極端な、現実的にあり得ない例を持って不安を煽るというのは、いただけない手法だと言わざるを得ません。

 もちろん、虚偽認知の罰則規定もありますが、1年以下の懲役か20万円以下の罰金では、実効性はないでしょう。

 どうもこの件に関する罰則は、最大はもっと大きくなるようです。
 というのも、偽装するコトはイコールで公文書への虚偽記載に必ずなるコトになりますから、公正証書原本不実記載罪と公正証書原本不実記載罪に問われるコトにもなり、それらを合併すると「七年六ヶ月以下の懲役または百二十万円以下の罰金」になるようです。
 また、罪に対する罰が大きいか小さいかは、他の刑罰との比較も重要な要素です。
 というワケで、この罰則が適当であるかどうか、抑止力と共に他の法とも照らし合わせながら考える必要があるでしょう。
 
 では次に2についてです。

 さて、そんな法律改正案ですが、これがまた、どういうわけか、非常に拙速に衆議院を通過しました。
 それが「2.十分に審議がなされていない」です。
 実際は、法案提出から3日、審議に3時間で通過だというから、驚きます。
 私でなくても、
 「なんでそんなに、急いでいるの?」
 と思うに違いありません。
 まあ、そこには、我々庶民には計り知れない上に、知らされない意図があったりなかったりもするのでしょうが、引用元にも記載があるように、どの議員も法案の内容をろくに理解しないまま、ワケもわからず賛成し、見事に全会一致で通過したというのだから、驚きです。
 「ああ、民主主義のなれの果てとは、このことだなぁ」
 と、日本の将来の暗澹たるを思うにつけ、どこかに逃げ出したくなった次第。

 早い遅いという表現は、何かと比べてはじめて表現できる言葉です。
 例えば一般的に亀の歩みは遅いと言われていますが、しかしカタツムリよりは早いでしょう。
 多分亀が遅いと言われるのは、一般的に人間やウサギとを無意識にでも比べているから、遅いと表現しているモノだと思われます。
 では今回のこの法案、一体何と比べて「早い」と言っているのでしょうか。
 
 国会は法律を作るところですが、実際、通常国会(基本的に1月〜6月の間)だけでも成立する法律というのは100本ぐらいはあります。
 この中100本に及ぶ法案には、じっくりと審議されるモノ、あっさりと通るモノ、各々様々あり、何日何時間かけて審議されて議決されるのかというのは、法案によってかなりの差があります。
 そしてこの早さの差というのは、だいたいにおいて与野党の対応が違うかどうかが大きなファクターを占めます。
 すなわち、与党は賛成で野党が反対ならこれは審議に時間がかかり、それなりの長いと表現できるぐらいの審議時間になるワケですが、一方与野党が、さらに共産党までが賛成するような法案の審議時間は、だいたいはこんなもんなのです。
 
 例えば、「発達障害者支援法案」というモノが平成16年に衆議院に提出されて、いまは法律として成立していますが、これもとても早い衆議院の通過でした。
 こちらは衆議院の法案ごとの概要が載っているページですが、よく見てみてください。
 提出日が24日で、議決日も24日です。
 ご丁寧に開会数まで書かれていて、ちゃんと1日ってなってますね。
 時間までは書いてないのでさらに調べましたところ、こちらのページに発言者ごとの時間が載っています。
 一番上の24日の分ですね。
 全部足してみてください。
 だいたい3時間です。
 この法案も、与野党共産党も含めて賛成の「全会一致」の法案ですが、この手の法案はこのように、委員会の審議時間はこんなもんなのです。
 確かに法案の重要度の感じ方によって審議時間の長短の感じ方は人それぞれだとは思いますが、しかしひとつ確実に言えるコトは、
 
 別に国籍法改正法案が他の法案に比べて格段に審議時間が短かったワケではない
 
 というコトです。
 ですから少なくとも「そこには、我々庶民には計り知れない上に、知らされない意図があったりなかったりもするのでしょうが」などと言ってしまうのは、ごめんなさい、根拠の全くない陰謀論を全く越えない陰謀論でありデマゴーグでしかないとしか言いようがありません。
 
 ちなみに、そもそも「法案にDNA鑑定を」という主張がはじめから立法行為に対する議論にはふさわしくないモノでありますので、この法案で全会一致になったコト、そして審議時間がこれぐらいだったコトには、やえは違和感を覚えません。
 まして違憲判決が出た上での改正案です。
 これを受けた民主主義の上に成り立っている全ての政党が可決に向けて努力したコトには、なんら違和感はないでしょう。
 さらに言えば、その違憲判決は6月に出たモノですから、逆に言えばそれから成立に(まだ成立してませんが)半年もかかったというのは、むしろ遅すぎるぐらいだと言われても仕方ないと言えるかもしれません。
 そういう意味において各党の努力によって、いまやっと成立しかけているという状況ではないのでしょうか。
 
 もっと言えば、この時にもお伝えしましたように、自民党自体は、違憲判決が出た直後の6月11日に、党の部会において議論を始めています。
 もちろんこれは、国会の公式な機関での議論ではありませんので、これをもって審議していると言うつもりは毛頭ありませんが、少なくとも与党自民党の国会議員同士の議論という意味においては、結構長い時間かけて議論していた形跡はあるという事実だけは、改めてお伝えしておこうと思います。
 
 最期に3についてです。

 で、まあ、いつものことですが、「3.そのことが報道されていない」と。
 しばらくテレビを見ていましたが、この法案のずさんさや、国会対応のまずさを指摘する番組などなく、ネット上で騒いでいるのは2ちゃんねると、産経新聞くらい。

 さっきも言いましたように、やえは別にこれを取り立てて騒ぐような事件であるとは思えません。
 違憲判決が出た段階で改正されるのは決定事項なワケですし、内容にも変なところはない、ネットで言ってるDNA鑑定は立法段階で騒ぐコトではないですし、それは多くの政治家や官僚やマスコミ関係者も肌で感じる部分でもありますので、「よしじゃあ今回は紙面を割いてこの問題をとりあげよう」というところまでのエネルギーとはならなかったというだけのコトでしょう。
 またこれもさっき言いましたが、一回の国会で成立する法律は100本ぐらいはあります。
 しかしその全てをマスコミは伝えているワケではありません。
 まして今回はまだ衆議院を通過したという段階の話です。
 違憲判決が出た上での改正なので、他の法律とはまた事情が違うという部分を加味しても、成立時に報道するのは理解できますが、衆議院通過だけの段階で、さらに与野党が一致して参加しているので参議院で否決されて衆議院で2/3再可決というモノでもありませんから、いまの段階でニュースバリューがあるとはやえには思えません。
 
 まぁ成立した法律を全て伝えないという態度が、公器であるマスコミの正しい姿かどうかという議論はあるとは思います。
 思いますが、しかしそれは今回の話とは直接関係する話ではありませんね。
 それはマスコミ論として別で議論すべき事柄でしょう。
 
 
 さて、MAS-Rさんが示しました123には直接関係が無い、もっと大きな問題提起だと思うのですが、後半の文章に気になる点がいくつかありますので、指摘しておきたいと思います。

 しかも、与野党ともに大賛成の全会一致で通過だというのだから、救いようがありません。
 どこかの党が反対でもしてくれれば、まだ政権選択の余地はあったのに。

 やえは、必ずしも与野党がぶつかり合う必要はないと思います。
 むしろ民主主義的に言えば、与野党が協力し合う方が理想的だと思っています。
 
 まず、与党と野党というモノは、はじめから決められて分かれているワケではありません。
 ではどうして分かれているのかと言えば、それは選挙によって国民の判断によって与野党が分かれ、その数も決まるワケです。
 天から与えられているモノではないワケです。
 であるなら、国会で与野党が共に賛成であるという法案は、どういう意味を持つと言えるでしょうか。
 これは、国民の全てが賛成している法案、と言えるのです。
 
 もちろんこれは建前です。
 実質はそんなコトあり得ないコトぐらい分かっています。
 でも、建前ですけど、大切なコトです。
 結局ひとり残らず全ての人間が細部にわたるまで反対のない賛成案なんて存在するハズがなく、だからこそ選挙という決められたルールによって多数決が取られて、その結果として国会という場で公的に議論がなされ、こうして国家というモノが形作られているワケです。
 実質どうなのかという部分はどこまでいってもありますが、でも実質的な賛成の割合なんて、現実的にどう形にすればいいのか、マスコミの支持率調査だってアテになりませんし、これは難しい問題です。
 その中での現実的な策としての選挙なのですから、いくら建前でも、これは大切な建前です。
 議席の割合は、国民判断の割合なのです。
 
 その上で、少なくとも与野党が割れる案よりは、合意している案の方が、納得している人も多いというのは確かなコトでしょう。
 ですからこれはやえはいつもよく言っているのですが、本来なら、政党の議席に応じた主張を法案に盛り込んで、それで全会一致で通すコトが、やえはもっとも民主的な議論ではないかと思っています。
 衆議院で言えば、自民党の意見は3/5ぐらい、民主党は1/5ぐらい、あとの1/5を公明党や社民党や共産党などの割合で割るワケで、これぐらいの比率で意見が反映するような法案作りこそ、もっとも民主的な法案と言えるのではないでしょうか。
 これだと少数の意見も取りこぼすコトがほとんどありませんし。
 そして、このように努力しても、どうしても意見の一致が見られないのであれば、仕方ないので多数決を取るという方法を使おうというコトになるワケです。
 ですから多数決は最終手段であると、やえは思っています。
 多数決だと、ざっくりと少数意見がこぼれ落ちるコトにもなるワケですしね。
 
 もうひとつ、これだけは言っておかなければなりません。

 よく「若者は選挙に行かないからケシカラン」などと、テレビで評論家が言ってのけたりしますが、「あんたらジイサン達が選んだ議員は、このザマですよ」と。
 むしろ、「こんなのが当選するようでは、あんたらの投票行動自体が、有害なんじゃないですか」と。
 ともすれば民主主義の否定にもつながるような思いが、脳裏をよぎります。

 MAS-Rさんは「民主主義の否定にもつながるような思いが」とおっしゃっているので、自戒として理解はされておられるのでしょうけど、でもそう言っておいても、この発言はいけません。
 こう思ってしまっている人が多いようですが、投票しなかったコトを「棄権行為」と定義づけるコトが、もう全くもって間違いなのです。
 本当は、投票しないというコトは、「どんな結果になっても無条件に従いますよ」という、結果への委任行為でしかありません。
 つまり、投票率がどうであったとしても、選挙の結果というのは投票しなかった若者も含めての有権者全員が選んだ議員と言えるのです。
 
 政治や選挙は現実的手法です。
 憲法でも定められていますように、必ず議員を選ばなければなりません。
 「議員は存在しなくていい」とは決してなりません。
 であるなら、投票しなくていいとはなりませんし、棄権でもいいともなりません。
 投票しないのであれば、投票した人だけで決まった決定に無条件に従う、という意味にしかならないのです。
 ちなみに、国民にはもうひとつ選択肢があります。
 立候補するという選択肢です。
 もしどうしても誰にも投票したいと思わないのであれば、完全に自分の意見にありとあらゆる分野において考えが一致する人でないと投票したくないと言うのであれば、自分で立候補すべきです。
 しかし、投票しない、立候補もしない、でも結果にも従いたくないというのは、完全に我が儘です。
 それはもう最期の選択肢しか残っていないでしょう。
 日本を出る、という選択肢です。
 
 一回の更新にしてはかなり長い更新になりましたが、最期にこれに触れて終わりたいと思います。

 ただひとつ言えるのは、我々、民主主義国の国民は
 「ワケの分からん法律を、ワケも分からぬまま成立させる権利」
 までは、国会議員に委ねていないということです。

 かと言って、法案を読まずに考えもせずにワケのわからぬまま批判するコトが、果たして責任ある国民の姿かどうかは疑問です。
 国民が騒げばそれが無条件で正義であるとは、やえには思えません。
 
 そして本当に国会議員が全く無理解であるかどうかも、やえには疑問です。
 一回の国会には100本近くの法律が成立する中、その全ての法案の隅々までひとりで熟知しろというのは、人間の能力を超えているとしか言いようがありません。
 ではどうするかと言えば、専門家が専門的に議論したり、全体の大まかな説明で判断したりするワケです。
 実際国会には、少数の人数で具体的に議論する場である委員会というシステムが存在します。
 そしてこんなのは国会だけに限らず、多少大きな会社とかでも同じコトが言えるのではないでしょうか。
 資料無しに大会社の社長が、ごく小さい地方の営業所の住所と従業員の氏名や年齢まで言えるかどうか、そんな人はおそらくいないでしょう。
 人間には分業するという知恵があるハズです。
 
 また、これは感覚の問題ですが、熟知していなくても、だいたい法案を流し読みして、概要を役人から聞けば、それに問題があれば気付くモノです。
 それが政治家の感覚というか、嗅覚みたいなもんです。
 まして今回の騒ぎの発端は、DNA鑑定をしろという、立法に求めるべきコトと行政に求めるべきコトとをごっちゃにしてしまっている、ある意味的はずれな意見です。
 やえも一番最初にこの問題を取り上げた時に言いましたけど、感覚としてこの法案が問題として大騒ぎになるコトの方がよく理解できませんでした。
 そしてそれが長年政治家をされている議員さんであればなおさらでしょう。
 つまり、言葉の上で「全部を理解している人」と、政治家としての「問題があるかどうかのバランス感覚」は別なのです。
 もちろん感覚だけでOKと言うつもりはありませんし、議論するためには中身を知るべきなのは当然ですから所属委員は中身を知っておくべきだと思いますが、全ての国会議員が中身の1から10まで熟知しておかなければならないというような言い方は適切ではないと思います。
 そして結果としては、政治家の感覚としてこの法案にはたいした問題はないと通しているコトは、間違いではなかったと言えるでしょう。
 
 
 もの凄く長くなって恐縮ですが、やえの考え方を反論という形でまとめさせていただきました。
 部分によっては厳しい言い方になったかもしれませんが、これは個人宛の文章ではなく、広く一般的な、引用はひとつの例に過ぎないと思って読んでいただければ、そして参考にしていただければ幸いです。
 今回のお話というのは、国会の仕組みや、法の仕組みというモノを、あまり理解していないが故の誤解が多い気がします。
 デマに騙されずに、冷静に自分の頭で、そして常識で考えてもらいたいと思います。
 

平成20年11月25日

 マスコミはミスリードをする生き物です

 なんだか各地で大人気の以下の記事ですが、えーと、この前も言いましたように、もうちょっと冷静に常識で考えられませんでしょうか。
 もちろんこれはこの記事を書いた記者と産経新聞が煽りすぎで、ほぼデマゴーグの様相を呈しているせいなのですが、普段から、マスコミは信用できないとか、悪意で記事をミスリードしているとか、マスゴミだとか言っている人は、どんな記事だって一歩身構えて記事を読もうと思わないのでしょうか。
 その記事の内容が自分の考え方にあってるからミスリードじゃない、自分の意見にそぐわないからミスリードだ、なんて言っているようでは、マスコミのコトをゴミと言う資格はないでしょう。
 冷静に、自分の頭で、そして常識で考えてください。
 
 右も左も逝ってよし!!
 バーチャルネット思想アイドルのやえです。
 おはろーございます。
 
 まずその記事の引用です。

 国籍法改正 誰も理解せぬまま参院も審議入り
 
 「この中で、国籍法改正案を全部理解している人は手を挙げてください」
 20日昼の自民党津島派の総会で、戸井田徹衆院議員はこう呼びかけたが、手を挙げた議員は1人もいなかった。改正案は国会議員も内容をよく把握しないまま、成立へと向かって突き進んでいるようだ。

 担当の役人じゃあるまいし「全部を理解している人」と言われて、そう簡単に手があげられるモノでもないでしょう。
 やえだって、こんな風に言われても、人権擁護法案ならまだ手をあげる自信もありますが、国籍法も含めて他の法案では手を挙げようとは思いません。
 だってもし手を挙げてたら、戸井田議員に質問攻めにあうんでしょうからね。
 だいたい、手前みそで申し訳ありませんが、やえぐらい人権擁護法案を詳しく知っている人は、日本でもおそらく数人しかないと思いますし、今回の国籍法改正法案に反対している議員さんの中には人権擁護法案にも反対しておられる方がかなり重なっていると思いますが、正直、人権擁護法案に強固に反対している議員さんが、ものすごく詳しく法案の中身を知り尽くしているとは、やえにはちょっと思えません。
 やえはあの時相当の時間と労力をかけて調べて勉強しましたが、それぐらい調べきって、理解して、どんな質問にもすぐに反応できるようになるには、「全部を理解している人」と言われて堂々と手を挙げるぐらいになるには、それだけに集中するぐらいの相当の苦労と時間をかなければ人間には無理です。
 ちょっと不意打ちに近いような形で挙手を求め、手が上がらなかったからといって「理解している議員はいない」なんて言ってしまうのは、かなり卑怯なのではないかとやえは思います。
 
 また、国会議員さんが、一回の国会で100本近く提出される法案の全てに精通している必要があるのかどうかという点もあります。
 この辺はこの前の更新を読んでいただければと思いますが、では戸井田議員は、今国会で審議中の「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律等の一部を改正する法律案」に、全ての事柄に関してどのような質問でもその場で瞬時に100%回答が出来る自信があるぐらい精通しているとでも言うのでしょうか。
 世間でも注目の法案である消費者庁設置法案もありますが、この法案に対して「全部を理解している人」と言われてすぐに手を挙げるだけの自信が、例えばどの法律がこれから消費者庁に移管・共管されるようになるのか、いきなり質問されて今すぐその場でその全てを答えられるとでも言うのでしょうか。
 今国会で審議されている議案はなんとこれだけあるのですが、この全てに対して、やえの人権擁護法案と同じぐらいの詳細さで戸井田議員は回答出来るとでも言うのでしょうか。
 もし出来るのでしたら、やえは戸井田議員をこれから大注目して追っていきたいと思います。
 
 また誤解をおそれず言うなら、戸井田議員のこの派閥でのこの発言は、ちょっとKYな気がしてなりません。
 派閥の総会って、ひとつの法案に対して議論する場じゃないですからね。
 そもそも、おそらく今回の一部議員の行動に対して、自民党では正式に通過しているという点も含めて、冷ややかに見ている議員さんも少なくないでしょう。
 だって、「自分達の主張のためにルールを破って、自分の言うコトだけを聞いてくれ」と、戸井田議員や馬渡議員は言っているコトになるワケですからね。
 そんな中、まだ当選2回の戸井田議員の突拍子もない発言に対して、それをまともに取り上げるかどうかなんて、かなり疑問と言わざるを得ません。
 それは、この法案が審議されるべき場の法務部会で言うべきでしたと言ったところでしょうか。
 戸井田議員がどうしてその部会にいなかったのかは知りませんが、もしかしたらいらっしゃったのかもしれませんが、それでもその場で正式な手続きとして通ってしまっているのは事実です。
 どちらかと言えば、まともに取り上げる方が筋が通らない行為と言えるワケなのですから、むしろ他の議員さん達の反応の方が当然とも言えるでしょう。
 しかも、これは自民党での発言ではなく、党から一歩離れた派閥の総会という場での発言です。
 戸井田議員はいったい派閥の総会という場で何がしたかったのか、何を求めていたのか、よく分かりませんが、ちょっとこれは「場違い」な発言だったと言わざるを得ません。
 
 この程度のコトで「誰も理解せぬまま」なんてタイトルを付ける記者もどうかと思います。
 戸井田議員のこの発言で、派閥の総会の場が国籍法の議論になるとでも思っていたのでしょうか。
 しかし派閥の総会を取材する記者であれば、普段の派閥に出入りしている、いわゆる「派閥番」(津島派なら「平成研番」などと呼ばれます)の記者なのでしょうから、普段の雰囲気をよく知っている人のハズです。
 そんな人が、2回生議員の発言で紛糾するぐらいの雰囲気に派閥の総会がなると思っていたなんて、ちょっとやえには想像が付きません。
 そして、戸井田議員の発言に反応しなかったからというこの事実だけをもって、「他の議員は法案を理解していない」と言えてしまう神経には、かなり違和感しか覚えません。
 実際どうなのかはともかく、この程度の事実であれば、法案をよく知っていてもただ単に戸井田議員の発言をスルーしただけっていう議員がいる可能性を全く否定できないワケで、その程度ではこのようなタイトルを付けようとは思わない、そもそも記事にしようとも思わないというのが普通ではないのでしょうか。
 よくこの程度で「誰も理解せぬまま」なんてタイトルを付けたと、逆に感心してしまいます。
 やえには、悪意を持ってミスリードしているようにしか思えません。
 
 記事では他にも、なにやら現役閣僚が、保守層の支持を失いたくないためなのかどうなのか、国の仕事を貶めてまで保身に走っているとしか思えないみっともない発言をしているようですが、平沼さんの発言が事実であればですけど、なんとまぁ、お粗末としか表現しようがないですね。
 結局、議員も記者も読者も、冷静に自分の頭でそして常識で物事を考えてもらいたい、といったところでしょう。
 

平成20年11月26日

 自民党の申し入れ

 メールいただきました。

 こんにちは。
 国家公務員で法律を作っているものです。といっても、今回の法律を所管している省庁じゃないので、騒動に関しては傍観していました。
 深く調べなかったので、なぜこの騒動が起こっているのかよくわかりませんでしたが、やえさんのブログを見て納得しました。
 法令の仕組みが一般に浸透していないために起こった勘違いである可能性もあるのですね。
 とてもわかりやすく私たちの仕事を説明されているので、感激のあまりメッセージを送ってしまいました。
 ありがとうございます。

 なんと現役官僚さんのようです。
 しかもどうやら今国会ではちょうどあたってしまった部署のようで、大変そうです。
 ちゃんと寝れてますか? お家に帰れてますか? お体には気をつけてくださいね。
 
 しかし今回の騒動は、これは一番最初にやえも言いましたように、こういう法令や立法や行政にそれなりに詳しいと、今回の騒動が理解できなかったりするんですよね。
 DNA鑑定というモノが法律に記載するようなモノではないというのが、雰囲気というか感覚で分かっているので、法案を見てもどうしてこれが問題になるのか理解できないワケです。
 一部の議員さんが今問題化させていますが、そもそも自民党の部会でこの法案が通っているというのも、まずこの辺の感覚があるのだと思われます。
 パッと法案を読んでも、この辺の感覚が身に付いている議員さんなら問題だと思いませんからね。
 つまり、この騒動ははじめからかなり歪んだ形での騒動と言えるでしょう。

 国籍法について調べてみたんですが、申請手続きに関しては第十九条があるんですね・・・
 
 (省令への委任)
 第十九条  この法律に定めるもののほか、国籍の取得及び離脱に関する手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、法務省令で定める。
 
 法律からいきなり省令に委任するとは知りませんでしたが、やえさんのおっしゃるとおり、この省令を改正することによって日本人と実際に血がつながっているか否かを検査する手段を記載するのでしょうね。
 これは、法律の段階でどうのこうの運動するより、省令案が公表され、パブリックコメントを募集する際、DNAおよびその他血がつながっているかの確認手段が示されていなかったときに、特に運動を行うべきでしょうか。
 (おそらくは何らかの方法で確認するんだとおもいますが)

 今のところ省令がどういう形になるかはやえは分かりませんが、今日はちょっと見方を変えて、では行政にどのような形でアクションを起こせるのか、テクニックと言うほどでもないですけど、ひとつの永田町の手法というモノを紹介しようと思います。
 ただし、これは後日詳しく書こうと思っているのですが、本来国民が政治に与える影響というモノは、思想や言論といった、大きな意味での世論で変えるというのが、本来の道だと思っていますので、ある種の抜け道であるというコトは忘れないでいてほしいと思います。
 例えば仮に誓願署名が1万通集まったとしても、確かに1万通は多いように見えますが、しかし選挙においては1万なんて衆議院小選挙区では当選に全然足りません。
 まして一地方の選挙区からだけではなく全国から1万では、ますますその力の大きさというのは小さいとしか言いようがないでしょう。
 ですからそういう意味で、署名やメールで集まった1万という数は、決して多いと呼べるシロモノではなく、やはり本来は、世論によって政治に国民は影響を与えるべきなのです。
 拉致問題であれだけ小泉さんが頑張れたのは世論の力ですし、しかし過去朝鮮問題が政治においてもアンタッチャブルになっていたのも世論の力です。
 世論とは、政治をどんな方向にもコロッとひっくり返すコトの出来る力を持っている、それこそが民主主義政治の本道であるというコトを忘れてはいけません。
 
 よって、今回ご紹介する方法は、ある意味裏技というコトを念頭に置いておいてください。
 最近流行っているメール攻撃FAX攻撃も、確かに政治を動かす力にはある程度なっていますが、しかしその場合というのは、内容の正偽が問われないという大きな欠陥をはらんでいます。
 もちろん最終的にはそれを受ける議員の良心によるワケですが、しかしだからといって国民も無責任のままでいいとはやえは全く思いません。
 全く法案の中身を読んでいない人が、全然筋違いの要望を直接議員に送るコトは、それで議員が動いたら議員の責任は大ですが、国民の責任も皆無とは決して言えないでしょう。
 まずそのコトを認識しておいてほしいと思います。
 
 では本題です。
 
 行政と立法って、行政の方が国民にとっては身近のように感じるかもしれませんが、役所の窓口とかで接する機会がありますからね、でも実際のところ、行政の行動そのものに対してどうこう言う場合は、案外壁が高いと言えます。
 なぜなら役人に意見を言っても、行政全体の行動を変えるコトは役人には出来ませんから、実際役人や役所に文句を言う人はおそらくいるんでしょうけど、これはほとんど無意味と言ってもいいです。
 ではだれが行動を変えれる権限を持っているかと言えば、そうです、大臣です。
 しかし大臣という存在は、やっぱりどうしても一般人からすれば遠い存在ですから、直接アクションを起こすのも大変です。
 
 一方立法府は、あまりなじみがないようで、しかし三権の中では最も身近な存在だと言えます。
 なぜなら、立法府を構成するのは国会議員だからです。
 もちろん国会議員もあまり身近でないというのは確かですが、しかし大臣と違って、必ず自分の住んでいるところに1人は代表者としての国会議員がいるのですから、日本にたった十数人しかいない大臣よりはよっぽど身近と言えます。
 ですから、政治になんらかのアクションを起こしたいのであれば、議員にお願いするというのが一番近道だと言えます。
 
 今回は行政に対しての行為ですが、しかし幸いなコトに日本は議院内閣制です。
 大統領制のアメリカとかだと、そもそも議員が行政にアクションをするコト自体が禁じられていますが、日本の場合は両者が結構密接ですので、議員や政党に行政に対する要望をするのは、けっこう有効だと言えるでしょう。
 
 では具体的にどうするかですが、永田町の手法で、自分達とは違う組織に何かのアクションを期待するための要望方法のひとつに、「申し入れ」というモノがあります。
 例えばこのようなモノです。

 事故米の食用への横流し事件について決議、政府へ申し入れ 動植物検疫及び消費安全に関する小委員会
 
 工業用途に限定して政府が売却した事故米が食用に横流しされた事件について、動植物検疫及び消費安全に関する小委員会は16日、再発防止と安全・安心なシステムの確立のための具体策を取りまとめた。同日午後、総理官邸で太田誠一農林、舛添要一厚生労働、野田聖子消費者担当、町村信孝官房の各大臣に申し入れた。

 「動植物検疫及び消費安全に関する小委員会」というのは、自民党の会議機関の一つなのですが、この記事はその小委員会がひとつの結論を小委員会としてまとめ、それを各大臣に申し入れた、という記事です。
 自民党では、部会や調査会などいった会議がありますが、それらもよくこのような申し入れ活動はよく行っています。
 今回の国籍法の件で言えば、「法務部会として法務大臣に申し入れをする」または、「国籍問題プロジェクトチームとして法務大臣に申し入れをする」という形になると思います。
 
 ではどうすれば申し入れを行えるようになるのかと言えば、当然部会やプロジェクトチーム(PT)として申し入れを行うのですから、一度会議を開いて決議を採らなければなりません。
 部会やPTは党の正式な機関ですから、その手続きはキチンと行わなければなりません。
 手続きを踏まなければ、ただの1議員としての申し入れ程度ですが、ここでちゃんと手続きを踏めれば「党を代表したPTとして申し入れを行う」と言えるので、これはかなり重みが違うと言えます。
 そしてPTで決議を取れれば、それをPTの幹部やメンバーが大臣に直接会って、決議文を渡すという流れになります。
 
 一連の流れを分かりやすく書きますと
 
 自民党の国会議員が国籍問題PTに対して動議を行う(座長(PTの議長のようなモノです)でも可)
  ↓
 PTとして取り扱うことを座長が決める
  ↓
 PTを開催して議論を行う
  ↓
 会議で異議無しとなれば正式にPTの決議となる
  ↓
 PTの幹部や議員が大臣を訪れ、決議文を渡す
 
 こういう流れです。
 ほとんどの大臣は、自民党に所属する議員なワケですから、党として出された決議を申し入れられると、そう簡単には無視できないと、こうなるワケです。
 
 ただし、これらは特に法的拘束力があるワケでありませんので、必ず実行されるという保障はありません。
 ただ、現実的に出来るコトというのは、この辺が限度な気がします。
 法務大臣にメール攻撃をしても、法務大臣一人の一存で法律や省令を好き勝手に出来るモノでありませんし、場合によっては「法律を知らない人の感情論」程度で流される可能性だってあります。
 まぁ事実そんな意見はかなり多いですし。
 しかしPTの決議であれば、それは国会議員の議論を経た意見ですから、これは全然重みが違うと言えます。
 ですから行政を動かしたいのであれば、やえは政党として働きかけるという方法が一番スマートではないかとやえは思います。
 
 やえが疑問なのが、どうして馬渡議員や戸井田議員は、この手法を使おうとしていないのか、というところです。
 法案に反対し、成立を阻止するコトばかりに目がいって、いかに制度としてよりよいモノを作り出そうかという視点が全く抜け落ちているようにしか見えません。
 反対だ反対だと騒ぎ立てれば確かに注目されて、選挙のためにはいいんでしょうけど、でもそれは、責任ある政治家、まして責任与党自民党としての議員の行動ではないと思います。
 
 この申し入れという手法は、最初にやえが表明した懸念をある程度緩和できるという利点もあります。
 一議員の申し入れならともかく、党の機関を通しての申し入れであるなら、必ず国会議員同士の議論が不可欠です。
 ですから、一般人からの感情論が出発点であったとしても、決議に至るまではそれだけではない論として筋の通っている意見になるコトでしょう。
 そういう意味でもこの手法はとても有効だと思っています。
 もちろん、馬渡議員や戸井田議員がPTで動議して、PTで議論しても、他の議員から同意が得られないというのであれば、それは仕方のないコトです。
 結局それは、尖った人の一部の意見でしかなかったという意味になるワケですからね。
 人権擁護法案の時に自民党の部会の様子を色々と聞かせてもらった身として、いくら世間が騒いでも、国会議員の良心として、ただの感情論ではない筋の通った意見を言う先生もたくさんおられるのをやえは実感していますので、ひとつの結論を出すのであれば、こういう正式な場でシッカリとまずは議論してもらいたいと思います。
 
 身近な国会議員さんに、「自民党PTで慎重な運営を法務省に求めるよう決議文を申し入れしてください」とお願いしてみるのも一つの手かもしれません。
 

平成20年11月27日

 今回の国籍法騒動の問題点

 まず御意見板のツッコミに対する捕捉からいきます。

 >やえぐらい人権擁護法案を詳しく知っている人は、日本でもおそらく数人しかない
 
 工エエェェ(´д`)ェェエエ工工
 つまり、実際にこの法律の運用に関わる人の殆どはやえたん未満の理解レベルであると。
 行政だけでなく、司法すら怪しいのか…
 そんな危なっかしい法律、とても運用させられないってば。

 まず司法ですが、これは次の書き込みでも捕捉していただいていますけど、裁判官が全ての法律を端から端まで事細かに知り尽くしているワケではありませんので、この法案の専門家という裁判官はまだいないでしょう。
 というか、それはちょっと人間の能力を超えています。
 この問題で訴訟が起こされると担当官は詳しく調べるのでしょうけど、今の段階ではそのような人はいないと思います。
 そもそも人権擁護法案はまだ成立していない法律ではない存在ですから、裁判官が今の段階で詳細に知っておく必要性がないというか、そんなコトをしても無駄だとしか言えないワケなんですね。
 さらに言いますと、人権擁護法案は行政の行動のための法律であり、新たな罪が増えるなどのような刑法や、新たな概念が発生して損害賠償訴訟が増えるような類の法律ではありませんので、さらに裁判官とはあまり関係のないモノと言えます。
 
 次に行政の方ですが、例えばこの法案は法務省の管轄ではありますけど、法務省職員が全てこの法案に精通しているかと言えば、まぁしてないでしょう。
 というか、する必要はありません。
 人権担当部署じゃなければ、自分の仕事の方が大切なのは当然ですから、いちいち仕事に関係ないコトで時間を費やすよりは、目の前の仕事をした方が、個人のためにも国家のためにもなるでしょう。
 また担当部署の役人さんですが、さっきも言いましたようにこれはまだ法案レベルですから、担当官であっても熟知しておく必要はまだありません。
 自民党での審議の中で、法案の中身が変わる可能性も十分あるワケですしね。
 さらに、現場の人というのも、そこまで法律に精通している必要はあまりない気がします。
 現場の人は、上から「こういう手法でやれ、こういうやり方はダメだ」と言われれば、それで十分ですからね。
 もちろん知っているコトに越したコトはないですから、知っておいてもらいたいとは思いますが、今の段階では、まずは目の前の仕事が最優先であり、中身が変わる可能性のある法案というレベルで精通しておく必要はないと思います。
 
 では誰が詳しいのかと言いますと、まずこの法案を、文字通り書いた人です。
 当然この人達は精通しています。
 この作業を何人ぐらいでされているのか分かりませんが、まぁそんなに多くはないハズです。
 そして、この担当の人の直接の上司で、自民党や議員さんに説明して回られる課長や審議官レベルの人たちは、当然議員さんからの質問に答えなければならないので、詳しくなっておかなければ仕事になりません。
 
 あとは、ネットの中でもほんの僅かな人数ですが、とても詳しく調べておられた方がいらっしゃいました。
 基本的にやえはこの辺の人たちを想定して「数人」と表現しました。
 おそらく合わせても10人いくかいかないか程度なのではないでしょうか。
 これが法律として正式に成立すれば、この数は増えていくでしょう。
 人権委員さんやその職員さん達が中心ですね。
 でも今はそうではないという段階です。
 
 よって、「そんな危なっかしい法律、とても運用させられないってば」というのは、今の段階で詳しく法案を知っている人が少ないのはむしろ当然ですから、それをもって危なっかしいと表現するのは適切ではないというコトなのです。
 
 右も左も逝ってよし!!
 バーチャルネット思想アイドルのやえです。
 おはろーございます。
 
 もの凄い長い前置きでした(笑)
 では本題です。
 
 結局今回のこの国籍法改正の騒動、何が良くなかったのかと言いますと、
 
 ・デマを鵜呑みにして、自分の頭で考えようとも、調べようとすらせず、騒ぎまくるネット住人
 ・自分の主張のために他人を貶めた一部議員
 
 この2点です。
 御意見板でも「けれどその間違いを認めて見直しを行おうという動きがあるのは評価すべき点ではないかと思う」と書き込みがあって、それはもちろんその通りだとは思いますが、しかし特に他人を貶めようとした一部の議員は、結局自分の行為に対して撤回も謝罪もしていないワケで、そうであるなら、いくらこれから筋を通した行動をしたとしても、やえの中では「ああいうコトをしても、開き直っている議員なんですね」と思い続けるしかないワケです。
 やえは今回、もう議論するなとは一言も言っていませんでして、言っているのは、その主張は自分勝手すぎると指摘しているだけなんですね。
 
 そしてそれは、ネットの動きもそうです。
 散々やえは人権法の時にうんざりきていたハズなのですが、なぜか今回もそれなりに取り上げてしまっていて、自分でもなんだかなぁと思っていたりもするんですけど、やっぱりため息しか出ないというのが本音です。
 いまだにいるワケです、
 「麻生総理が外遊に出ている隙を突いて、不意打ち的に河野太郎がDNA鑑定無しのザル法を通そうとしている」
 なんて言ってる人が。
 もうツッコミどころが多すぎて、ツッコむ気が起きませんよね。
 
 今回の件で一番被害を被ったのは、やはり河野太郎さんでしょう。
 河野さん、自分のブログでなにかやらかしたそうですけど、少なくとも本業である政治の場においてはやえの知る限り一切問題のある行為はしていません。
 
 DNA鑑定無しの法案は政府提出の閣法であり、河野さんは関係ありません。
 政府提出なんですから、総理が全く知らぬ存ぜぬ状態なんてあり得ません。
 総理が外遊しているときの法案提出なんてよくあるありふれた話です。
 自民党国籍PT座長として、政府から提出された法案を、ルール通りに党内会議で扱っただけです。
 当然、通常のルール通り告知していました。
 そしてその職責において通常のルール通り、法案の決議を採って通しただけです。
 
 よくネットでは河野さんのコトを、国を売ろうとしている売国議員なんて言い方をしていたりしますが、やえは河野さんの本心なんて知るよしもありませんので本当のところは知りませんけど、でも仮に本当にそうだとしても、今回の件に限って言えば、その職責の中において全く通常の動きと変わらない、特殊な行動など一切していない、いつも通りの議員活動だったと思っています。
 自分のブログでの不始末はどうしようもありませんが、しかしそれは個人の問題で、それで読者が批判するは勝手だと思うのでやえはその件に関しては特段何も言うコトはありませんが、政治の場においては河野さんは何も変なコトはしていません。
 ですから中傷される謂われはないでしょうし、売国議員と言ってしまうのも、ただの誹謗だとしか表現できません。
 自分の頭で考えようとせず、相手を誹謗すれば問題が解決すると勘違いして騒ぐだけ騒ぐ人間が、日本にはいっぱいいるんだというコトが分かっただけでも、やえはとってもイヤな気分です。
 
 まして、責任ある国会議員がデマの流布に一躍買っているというのも、かなり最悪です。
 今回の国籍法改正案、悪意ある意図を持って秘密裏に成立させようとしている動きがある、なんて言われていたところですが、そのデマの発生源の大きなひとつが、馬渡議員のブログです。
 結局これは、全く根拠のないガセでありデマであるコトはやえがお伝えしたところですが、こんなコトを国会議員がしてしまうと、もう信用も何もないですよね。
 これで謝罪なりされたのであればまだ見方も変わりますが、いまのところ一切ありません。
 他人を貶めて、自分が所属する政党すら自分の主張のために貶めて利用する。
 国会議員としてというより、人としてどうなんだと思わざるを得ません。
 
 結局、ネット独特の閉鎖された空間での考え無しの大騒ぎに、国会議員という立場ある人間から発せられたデマが融合して、この騒ぎはさらにイヤな方向に大きくなったワケです。
 昨日も書きましたように、まだちゃんとしたやり方、法律の運営について国会議員の立場として、正式に筋の通ったやり方はいくらでもあります。
 でもそれをせずに、ただただ騒ぎ立て、いえ騒ぐだけならまだしも、身内すら売って騒ぎのネタにするというのは、それは本当に国を良くしようとしている行為ですか、それとも選挙活動ですか売名行為ですかと聞きたくなりますし、やえにはどうしても許せないのです。
 今回やえはあまり中身については触れませんけど、それはやはり、それ以外の騒動について見ていられないと思ったせいなんだと自分で思っています。
 一応ありがたいコトに当サイトは一日1000件ぐらいアクセスをいただいていますし、騒動の中でいろんなところからリンクされて4000ぐらいいった日もありましたので、何もしないよりはやってよかったとは思っていますので、少しでもほんの僅かでも風向きを変えられたのなら、バーチャルネットアイドル冥利に尽きるというモノです。
 でも、なんて言いましょうか、もうちょっと、冷静に自分の頭で常識で考えられる人がいてほしいなぁと思わずにはいられないのです。
 
 もちろん主張の中身を問わず、キチンと筋を通して理屈のあった議論をするのであれば、それはとても良いコトだと思います。
 決してやえは、今回の件で法案反対している人全てがメチャクチャだとは思っていません。
 そもそもやえは中身についてあまり触れていませんので、人権擁護法案の時と違って、そこまで言える立場でもないと思っていますし。
 どうか今後は、そういったキチンとした議論として成り立つ議論になってほしい、自分の意見をどんな形であっても他人が見るコトの出来る公共の場で表明するなら、それぐらいの最低限の責任を背負ってからしてほしいと、そう願わずにはいられません。
 
 やえも時には間違ったコトを言うかもしれません。
 その時はどうぞご指摘ください。
 ご批判下さい。
 間違いであれば、訂正をしますし、ご迷惑をかければ謝罪もします。
 公の場で発言をするというのは、そういう責任を背負っているというのが当然だと思っていますから。
 

平成20年12月2日

 国籍法DNA鑑定論と、経済対策の伝え方と、ネット議論の行方

■国籍法DNA鑑定論に対する慎重論
 
 国籍法に関してDNA鑑定を法令に入れるかどうかの問題ですが、やえはいまのところあまり中身については触れてはいません。
 しかし全く調べていない考えていないというワケではないのですが、ただ、ひとつの論として整理できるぐらいまでの結論を得られていないので、ちゃんと書くコトにためらっているという状況なのです。
 まぁ何度か言ってますが、実際のところはあってもなくてもいいぐらいに思っているというのが今のところの心境ではありますが。
 
 そんな中で、なかなか筋の通った論を見つけたのでちょっとご紹介したいと思います。
 実はわりとこの手の騒動の時にはよく名前が出てくる、人権法の時にはやえは顔をしかめ続けていたのですが、自民党の稲田朋美議員の新聞でのインタビューです。
 この論、国籍法だけの視点ではなく、広く法律や法令、また近代国家としての日本における法令の考え方などを踏まえた上でのご意見とやえは感じたので、一読する価値はあるかと思います。
 一回じっくり読んでみてください。

 【正論】衆議院議員弁護士・稲田朋美 「国籍付与」は国会の重い課題
 
≪DNA鑑定は慎重に≫
 今回改正について多くの反対意見が寄せられた。ほとんどが偽装認知の横行への不安から、DNA鑑定を必須条件にせよというものだ。偽装認知は防がなければならない。だがDNA鑑定を要件とするのは、日本の家族法制度に変容をきたす恐れがないか慎重に検討しなければならない。
 昨年自民党内で民法772条の300日規定が見直されようとしたとき、私はDNA鑑定を法制度にもちこむことの危険性を主張した(昨年4月17日本欄)。民法は「親子関係=生物学的親子」という考え方をとっておらず、法的親子関係は子の安全な成長を確保するための法制度である。安易にDNA鑑定を取り入れることは、生物学的親子関係をすべてとする風潮につながりかねない。
 これに対し、国籍付与の前提としての認知にDNA鑑定を行うことは「血統主義」をとる我が国では当然であり、民法の親子関係に直接影響を与えるものではないと主張する人もいる。
 しかし仮にDNA鑑定を要件とすれば、今までなら父の認知後、父母が婚姻をして準正により当然に国籍を付与した場合にも鑑定を要件としなければ平仄(ひょうそく)が合わない。なぜなら最高裁は「父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かは、子にとっては自らの意思や努力では変えることのできない身分行為」である。これによって区別することは憲法14条の差別としたのだから、認知しただけの非嫡出子にDNA鑑定を要件とするのなら、父母が結婚した嫡出子にも鑑定を要件としなければ再度憲法違反をいわれる恐れが大きいからだ。
 
≪血統主義にも誤解が≫ 
 しかし、父母が結婚している場合にまでDNA鑑定を要件とすることは、婚姻中に妻が懐胎した子を夫の子と推定している民法772条についても、真実の父を確定するためのDNA鑑定を持ち込まないとつじつまがあわなくなる恐れがある。
 そもそも国籍法上の「血統主義」は子の出生時に母または父が日本国籍であることを要求することである。そこにいう「父」は生物学上の父ではなく法律上の親子関係の発生した父を指す。つまり血統主義だから鑑定を義務付けるのが当然とはならない。
 むしろ国籍付与の条件としての父子関係と民法上の父子関係とは違うとして、国籍付与の場合にのみ鑑定を要件とするという考え方は、法的父子関係を複雑にし、理論上はありえても法制度として妥当とは言いがたい。
 DNA鑑定を要件とすることによる偽装の防止と、民法の家族制度のあり方への影響は慎重に検討しなければならない。衆議院の付帯決議には課題として『父子関係の科学的確認を導入することの要否、当否を検討する』との文言が入った。現時点では届け出の際認知した日本人男性との面談を義務付け、母と知り合った経過を確認するなどして運用面での偽装防止策を充実させる方途を模索すべきである。(いなだ ともみ)

 かなり長い引用になってしまいましたが、なるほどと頷くところの多い論です。
 人権法の時には弁護士とは思えぬ論理のふっとび方でしたけど(笑)、稲田議員は弁護士資格を持っておいでですから、もしかしたら弁護士時代に親子関係の訴訟を扱ったか、そもそもその関係の専門でいらっしゃったのかもしれません。
 特に民法との絡みや、今までの日本独特の親子関係のあり方にまで触れなければならいなという点の指摘は、納得せざるを得ないところだと言えるのではないでしょうか。
 その上でもしどうしても法律上にDNA鑑定を載せろと言うのであれば、これは民法の部分も含めた、ものすごく大きな、そして明治以来の近代日本法律上での考え方を一転されるぐらいの大改革をしなければならなくなると言えるでしょう。
 ちょっとこれは、現実的ではない気がします。
 
 これらを踏まえた上で、やえは、結局これは、「親子関係を証明するためにDNA鑑定する」というのが、まずいという考え方になるのではないかと思いました。
 これを言い換えると、「自分ではないモノの力を借りなければ「親子ではない」と言われているようなモノ」となりますので、この辺が日本人感覚的にそぐわないのでしょう。
 「疑っているのか」と文句の一つでも言いたくなるという心境です。
 ですから、これが「偽装の捜査のため」であれば、DNA鑑定は受け入れられるワケです。
 実際裁判でも取り入れられていますよね。
 ただ「偽装の捜査のため」であれば、頭ごなしに一律で全ての人にというワケにはいかない、つまり国籍法の中に義務として盛り込むコトは出来ない、というコトです。
 
 こういうコトを言うと必ず諸善説とか諸悪説とかいう話になるのですけど、しかし法律と一言で言っても、アメリカのような人工国家と、日本のような歴史が作ってきた自然発生的な国家とでは、国の決まり事の考え方も違ってきますから、二元論的に「諸善説か諸悪説か」みたいな議論は無意味でしょう。
 偽装はもちろん許してはならないですが、日本の風土にあった方法で最大限努力するというのも、それはそれで日本人としての美徳なのではないかとやえは思います。
 様々なところに歪みが出てしまうのに安易な方法にすぐに走るのではなく、みんなが知恵を出し合うコトも大切なのではないでしょうか。
 
 
■経済対策のマスコミの伝え方
 
 なんだか最近のマスコミの、麻生さんの経済対策の伝え方は、二次補正を出すか出さないかばかり伝えているような気がしてなりません。
 しかしこれ、本来はかなりおかしいですよね。
 変な話、もし一次補正で日本の景気が、麻生さんが予測していた以上に良くなっていたら、無理して対策する必要はないのですから、出すか出さないかだけであれこれいうのは間違っていると言えます。
 つまり結局、一次補正は結果的にどうだったのか、まずここを議論しなければ何も始まらないワケです。
 まして今はまだ一次補正の中身の一部である金融機能強化法すら成立していないワケで、どうしてこの段階で二次補正の「出すか出さないか」を議論できると言うのでしょうか。
 
 議論すべきは、まずは一次補正の中身だと思います。
 具体的にどのような中身があって、それを通した結果の予想としてはどうなるのか、そして実際はどうなのか、この辺を議論すべきでしょう。
 中には中長期的な対策もあるのでしょうけど、例えば信用保証協会の100%保証で借りられる枠を大幅に増やした対策などは、実際現場はどうなのか取材すればかなり分かるワケで、マスコミはこういうコトこそをすべきなんじゃないのでしょうか。
 というかこれは職業として報道に携わっているマスコミにしか出来ないコトですよね。
 よくテレビなんかは、政府批判する企業や人の1、2社ぐらい画面に映して印象操作しようとしますが、そうではなくて、全体としてどうなのか分かるぐらいの企業数を取材して、それで結果としてはどうなっているのかというコトを伝えるコトが、真の意味での報道だと思います。
 もしそれで本当に対策がうまくいってないなら、それを是正するのが国のためになりますし、良くなっていたら、この対策は有効なのでもしまた次必要な機会が出てきてしまったら使おうと、こう言えるようになるワケです。
 
 結局マスコミは、政府批判がまず報道の第一動機になってしまっていると言わざるを得ません。
 これは、結果ありきの議論そのものです。
 こんなのでは正しい日本の現状を国民が知るコトはできないでしょうし、日本を良くするコトもできません。
 二次補正を出すか出さないか、そんな政局論に終始するのではなく、日本のために何を伝えるべきなのか、マスコミこそが目を覚まさなければならないでしょう。
 
 
■ネット議論の行方
 
 最初に紹介しました稲田議員ですが、どうもネットの一部では、稲田議員を「国籍法改正賛成派」というレッテルを貼って攻撃している人もいるようなのです。
 特に人権法の時の反対派の急先鋒だったコトもあるので、期待してた分裏切られたという思いからなのか、てのひら返し方はけっこうすごいコトになっている場合も多々あったりします。
 一言、非常に醜いです。
 
 「自分の結論と合わないから全否定」
 こんな低レベルな態度をとる人がとても多い査証とも言えるでしょう。
 本来ならば、保守系議員の意見だからこそ、その主張には真摯に耳を傾けて、知らなかった事実があれば反省して今後の糧とし、相容れない意見だったとしても尊重して参考にするのが、本当の意味での言論・議論と言うべきモノではないのでしょうか。
 やえは正直稲田議員のコトを、人権法の時は「弁護士とは思えぬ理論なき感情論者」と思っていたのですが、今回のこの記事を見てこの考え方は改めなければならないと思っています。
 まぁ是非ですね、もしまた人権法の議論が出てきてしまったら、稲田先生、ぜひ今回のような筋の通った論によって主張をしてもらいたいと思います。
 
 それにしても、ネットはこんなのでいいのかと思わざるを得ません。
 昨日も同じようなコトを言いましたが、自分の都合のいい意見だけを取り入れ、都合の悪い意見は存在すら認めず排斥すらするという態度は、既存マスコミと全く変わりません。
 ネットは既存マスコミのライバルになれると言われて久しいですが、仮にネットがマスコミを凌駕する日が来たとしても、言論の質そのものはたいして変わらないのではないか、むしろ下がるだけなのではないかと言わざるを得ません。
 ネットはひとりひとりが自分の言葉で世界を作っていく場です。
 ひとりひとりが高い意識と責任を持たなければ、質の高い場として認められるようにはならないでしょう。
 
 今回の騒ぎを見ていると、やえは心配にしかなりません。