借地借家法(抜粋)

第1 総  則
1 目  的

建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の更新、効力等に関し特別の定めをするために制定された。《第1条》

よって、建物の所有を目的としない地上権・賃借権は、民法の規定が適用される。

また、借地借家法に定められていない事項については、民法の規定が適用される。

第3 借  家
1 借家権の存続期間

借家権は、借地権のように最低期間がないので、1年未満であってもよいが、最高期間は20年である(民法の規定が適用される。)。

2 建物賃貸借契約の更新等

(1) 期間の定めのある賃貸借契約の更新《第26条》

‡@ 26条第1項の法定更新
当事者が期間の満了の1年前から6ヵ月前までの間に、相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。
ただし、その期間は定めがないものとする。

要 件
* 期間の定めのある賃貸借であること。
* 期間の満了によって賃貸借が終了したこと。
* 当事者が通知をしないこと。

‡A 26条第2項の法定更新(黙示の更新)

第1項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後、建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。
ただし、その期間は定めがないものとする。

要 件
* 賃貸借が期間満了によって終了していること
* 当事者が通知をしたこと
* 借家人が建物の使用・収益を継続していること
* 賃貸人が遅滞なく異議を述べないこと

(2) 期間の定めのない賃貸借契約の更新

‡@ 期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがないものとみなされる。《第29条》
民法604条の規定(賃借権の存続期間)は、建物の賃貸借については、適用しない。

‡A 解約による建物賃貸借の終了
ア 賃貸人からの解約《第27条》
建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、解約の申入れの日から6ヵ月を経過することによって終了する。

イ 賃借人からの解約
借地借家法には、賃借人の解約申入れについて規定されていないので、民法の賃貸借の規定により、建物の賃貸借は、賃借人の解約申入れから3ヵ月で終了する。

‡B 26条第2項の法定更新(黙示の更新)が準用される。
(3) 解約・更新拒絶の要件《第28条》
更新拒絶の通知又は解約の申入れは、正当事由が必要である。

正当事由
◇建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む)が建物の使用を必要とする事情
◇建物の賃貸借に関する従前の経過
◇建物の利用状況及び建物の現況
◇建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又はこれと引換えに賃借人に対し財産上の給付を提供する旨の申出

(4) 強行規定

(1)〜(3)に規定するもので、建物の賃借人に不利な特約は無効とする。

3 建物賃貸借の効力
(1) 建物賃貸借の対抗力《第31条》
建物の賃貸借の対抗力‥‥建物の引渡
賃借権の登記

(2) 建物の転貸借
‡@ 借家の転貸借
借家人は、建物賃貸人の承諾を得て、借家を第三者に転貸することができ、賃貸人に無断で転貸した場合には、賃貸人は賃貸借契約を解除することができる。《民612条》

‡A 転借人の保護《第34条》

ア 賃貸人は、借家人との賃貸借契約が期間の満了又は解約の申入れによって終了することを転借人に通知しなければ、賃貸借の終了を転借人に対抗することができない。
イ 通知をした場合、通知をした日から6ヵ月経過した時点で、転貸借が終了する。

(3) 借地上の建物の賃借人の保護《第35条》

‡@ 明渡し期限の猶予
借地上の建物の賃借人が借地権の存続期間の満了によって土地を明渡さなければならない場合、賃借人は裁判所に対し、土地の明渡しにつき相当の期限の猶予を請求できる。
請求の要件‥‥賃借人が借地権の存続期間が満了することを、その1年前までに知らなかったこと。
猶予期間‥‥借地権の存続期間が満了することを知った日から1年を超えない範囲内

‡A 期限の猶予をした建物の賃貸借は、その期限が到来するまで存続する。

(4) 強行規定
(1)から(3)に規定するもので、建物の賃借人・転借人に不利な特約は無効とする。

(5) 造作買取請求権《第33条》
建物の賃借人は、賃貸人に対して造作を買取るべきことを請求することができる。
買取請求のできる造作
‡@ 賃貸人の同意を得て建物に付加した畳・建具その他の造作(他は付けられない)
‡A 賃貸人から買受けた造作
請求の時期‥‥建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するとき
ただし、当事者間で「造作買取請求はしない」旨の特約は有効である。(自由に造作を付けられるが、買い取り請求はできない。)

(6) 居住用建物の賃貸借の承継《第36条》

居住用建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合、その当時婚姻又は縁組の届けはしていないが、事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は建物の賃借人の権利義務を承継する。(建物の賃貸借関係に基づき生じた債権又は債務も承継した者に帰属する。)
ただし、その同居者が、死亡したことを知った後1ヵ月以内に、賃貸人に対し反対の(承継しない)意思表示をしたときは承継しない。

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