5月29日、自民党党本部におきまして、かなりひさしぶりに「人権問題等調査会」が開かれました。
今回は、これまでの調査会の流れから大きく転換する内容だったと伺っています。
その辺も含めて、とりあえず今回は事実だけを挙げてレポートしたいと思います。
やえの感想等は、日を改めて更新いたします。
ではいつものです。
以下のレポートは、直接やえが部会を聞いてきたワケではなく、聞いた人にやえがお話を聞いたという伝聞です。
よってその場の雰囲気などはやえには分からないワケで、100%やえのレポートが正しいレポートである保証はありませんし、レポートと銘打つので出来るだけやえの私情を消して書こうと努力していますが、それでも私情が入っている可能性も否定できませんので、その辺はご了承下さい。
また、いわゆるソースも明らかにするつもりは当サイトにはありません。
もし以下のレポートが信じられないと言うのであれば、それで結構です。
当サイトはジャーナリズムをしているワケではありませんので、内容の正当性については、今までやえが行ってきた言論活動を鑑みていただき、また他のジャーナリスト機関が出している記事などを照らし合わせて、読んでいる方ひとりひとりがご自分の判断で断じていただければと思います。
その結果については、当サイトが保証するモノではありません。
こういう事情ですので、ちょっと不自然でも敢えて「なんだそうです」とか「とのことです」といった文体を多用しています。
読みにくい部分もあるかとは思いますが、汲んでいただければ幸いです。
では行きましょう。
まず大きな転換とは、人権問題等調査会の会長でおられる太田誠一先生が「私案」を出されたというところにあります。
人権擁護法案の議論は平成17年からずっと続いているワケですが、その時からおとといまで、その議論の根本にあるのは、平成14年に衆議院に提出された法案でした。
17年の自民党内の議論で法案は、一部修正され、手続きの面での変更はありましたが、基本的な内容は大きくその法案から変わらずに議論の的とされてきたワケですが、ついにここにきて内容についても大きく変更されると、そういう局面になったと言えるでしょう。
法案名も一新されました。
太田私案のタイトルは【「話し合い解決」等による人権救済法(案)】です。
ただし、理由は後日触れる予定ですが、この太田私案も大まかな部分での変更点の列挙のようで、法律の形を成していませんので、正確には「法案」ではなさそうです。
お話を詳しく聞きますと、おそらく今までの「旧法案」の上に太田私案を乗せて、法律(案)としての体裁を取るのではないかと、これはやえの推測ですが、そう感じています。
では、今日はとりあえず、その太田私案の中身を、やえが伺った範囲で紹介させていただきます。
一番大きな点は、この太田私案(以下法案。これまでの法案は「旧法案」と呼びます)で扱う人権侵害事件を明文化して限定しているところです。
書き出しますと
・公務員及び事業者、雇用主が行う差別的取扱い
・公務員が行う虐待、児童虐待、施設内虐待他
・反復して行う差別的言動
・職務上の地位を利用して行う性的な言動のうち、被害者を畏怖困惑させるもの
・差別的取扱いを誘発する差別助長行為及び差別的取扱いの意思表示
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この以上です。
これ以外ではこの法案では取り扱わないというコトになります。
これらの条件というのは、旧法案では「特別救済手続き」に係る人権侵害事件の部分ですね。
つまり旧法案では、もうちょっと範囲が広い人権侵害事件でも一般救済手続きとして法案の守備範囲内としていたワケですが、太田私案ではそこをすっぱり取り除いてしまったという形と言えるでしょう。
また「差別的言動」も、「反復して行う」という条件が付きました。
これは確か以前の調査会で有識者の方(お名前忘れてしまいましたごめんなさい)が指摘された形に合わせたというコトなのではないかと推測されます。
またこれらの条件と共に、その前の前提として、この法案で扱う人権侵害事案を次のように定義しています。
憲法14条が定める人種等による差別、障害疾病による差別、及び職務上の地位を利用して行う性的な言動、優越的な立場においてする虐待などの人権侵害、及び名誉毀損・プライバシー侵害に限定する。
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この条件というのは、人権の定義や人権侵害の定義を行わず、人権侵害の類型を列挙して、それらだけを救済の対象とする、という意図があるようです。
つまり、「この法律に書いてあるコトをしたら救済手続きしちゃいますよ」というコトであり、逆を言えば「それは問題がある行為なのかもしれませんが、この法律には書いていませんから救済手続きは行いません」というコトでもあると言えるでしょう。
さらにこの条件というのは、対等な立場同士の紛争は範囲に含まないという意図もあるようです。
「近隣との紛争」のようにいずれか一方が優越的立場にあるとは言えない類型を除外した、とこのコトで、つまり簡単に言えばご近所間の紛争があったとしても、「先に訴えたもの勝ち」にはならないというコトなのでしょう。
これらの条件の明示は、「定義があいまいだ」という反論に対しての答えでもあるでしょうし、大きな妥協案とも言えるでしょう。
次に、「定義があいまいだ」という反論と共に、大きな批判の的となっていた「濫用の防止・訴えられた側の人権の保護」に対する私案です。
まず旧法案から一番大きく変わっているのは、この法案で扱う事案を「不法行為」に限定したというところです。
不法行為とは、これは法律用語でして、それなりに明確に定義が出来る事案のようで、正直やえもそこまで詳しくないのでここからここまでですとなかなか言いづらいのですが、例えばこちらとかでは詳しく説明していますし、法律家であればキチンと定義できる事案なのでしょう。
また不法行為という言葉も、民法第709条で明記されている言葉でもあります。
調査会での太田会長の説明によりますと、おおざっはに言えば「過去の判例によって導き出されている事案」というコトのようです。
ですから例えばおそらく、「○○という行為は私の心を傷つけた、賠償しろ」とか主張しているだけで裁判では勝てなかったから人権委員会の方に訴えた、という場合は、相手にされないというコトなのでしょう。
また、「特定の歴史観に基づく被害申し立て救済の対象から除外すべき類型を列挙する」という条件も付け加えるそうです。
これは17年当時からから「不開始事由のアウトライン」として修正がなされていると当サイトが伝えてきたところであり、あまり大きな変更点はないかと思うのですが、おそらくこれをわざわざ明記しているというコトは、法律の方に不開始事由を列挙するというコトなのではないかと思われます。
17年に提示されていた「アウトライン」は、これは委員会規則での内部規定で定めるというコトでしたから、より明確になると言えるでしょう。
まぁ実質はあまり変わらないでしょうけどね。
それからもう一点。
ここもとても大きいのですが、申し立てられる側が、申し立て自体を不当として対抗措置をとれるコトとする制度を創設し、同一の救済手続きの中で処理するものとする、というシステムを新たに作るらしいのです。
つまり「反訴」が出来るというコトでしょう。
ここは大きいです。
反訴が出来ないという点は、ずっとやえも問題だと指摘していたところですが、その不公平さが改善されるワケです。
「不当に訴えられるコト自体が人権侵害じゃないか」という意見に対する、明確な答えがここに示されたと言えるでしょう。
では最後に、その他として特に記されているコトを書き出します。
1.「話し合い解決」等は、委員会の責任で行い、随時民間ADRを活用する
2.差別的言動に対する調査については、科料の制裁を除く
3.報道機関については特別な取扱いをせず法の下に平等な扱いとし、「話し合い解決」等の対象とするかについては、将来検討課題とする
4.人権養護委員については現行制度を維持する
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色々と気になる部分もあるのですが、やえの感想はまた後日というコトで、説明の補足だけをします。
1は、補足事項でかなり踏み込んでいまして、「調停仲裁については委員会の責任において民間弁護士に委託してもよいということ」だそうです。
旧法案では、一般救済の際の調査について一部民間に嘱託できる制度はありましたが、決定にかかる部分においての嘱託や委託はありませんでしたから、この法案でそれを認めるというのは大きな変更点だと言えるでしょう。
2も大きな変更点ですね。
色々と大騒ぎになっていた過料に対し、「差別的言動」については無くしてしまうというコトです。
これは「言論の自由を妨げるとする懸案に応えた」とのコトです。
しかし全てにおいて過料を無くさないというのは、おそらく特に虐待などは間接強制をもってある程度の権限を与えないと解決に繋がらないから、という部分に配慮したというコトなのかと思われます。
特に虐待などに対する権限の強化は、かなり多くの専門家から指摘されていたところですからね。
3について、おそらく報道的にはここを大きな部分として報道しそうですが、太田会長の説明によれば、「マスコミだけを特別扱いしない」というコトなんだそうです。
旧法案では、凍結部分ではありますが、いわゆるメディアスクラムなども人権侵害だと定義していたワケですが、この法案では、この法案で扱う事案というモノをかなり限定して定義してしまいましたので、その中にはメディアスクラムは入らないという解釈なのでしょう。
それは、上で書き出しました「その前の前提として、この法案で扱う人権侵害事案の定義」を読み返して頂ければ、理解できるかと思います。
ですから、マスコミと言えども、その立場を利用しての差別やセクハラなどを行えば、当然この法案の対象内となるでしょう。
4については、特にありませんが、わざわざ「外国人は除外される」とされています。
これは現行法(人権擁護委員法)では、その資格を「当該市町村の議会の議員の選挙権を有する住民」と定めているからです。
これも、特定の思想に駆られた外国人が一方的に差別を断定するのではないか、というような批判に対する答えだと言えるでしょう。
太田私案の紹介は、とりあえず以上です。
補足説明や、補足資料、また旧法案とのからみはどうなのか、という部分について、もうちょっと言いたいコトがあるのですが、とりあえず今日はこれだけでかなり長くなってしまいましたので、それは次回に回したいと思います。