昨日から民主党鳩山内閣において目玉とされていた行政刷新会議において事業仕分けが始まり、各マスコミにおいて大きく取り上げられているところです。
この作業というのは、基本的に政府に入っていない国会議員や民間人の有識者が「仕分け人」という肩書きのもと、政府が先日出した概算要求を検討し、その中身について事業ひとつひとつを必要であるかどうか判断する作業なんだそうです。
これについては先日も更新で取り上げ、手段と目的が変わってしまっているんじゃないですかと指摘したばかりですね。
昨日は、聖域に切り込むコトそのものが目的となっていて、それは民主党のアピールのためにしかなっていないのではと指摘しましたが、今日はこの作業そのものについて疑問を呈したと思います。
「事業仕分け」 予算削減規模、初日は700億円
政府の行政刷新会議(議長・鳩山由紀夫首相)は11日、2010年度予算の概算要求の無駄を公開で洗い出す「事業仕分け」を始めた。都内の国立印刷局市ケ谷センターで3グループに分かれて23項目、50事業を議論し、農林水産省の農道整備事業などを廃止と判定。焦点の診療報酬では、勤務医に比べ開業医に有利な現状の是正に向けて見直すよう求めた。政府は約95兆円の概算要求から3兆円超削りたい意向だ。
首相は11日夜、首相官邸で記者団に「滑り出し好調だ。1円でも無駄はなくす」と語った。
廃止と判定したのは国土交通省の国土・景観形成事業推進調整費(10年度概算要求額約200億円)など。農水省所管では農道整備事業(同168億円)や、里山エリア再生交付金(同84億円)、田園整備事業(同6億円)が廃止となった。診療報酬明細書(レセプト)をオンライン請求する機器の補助金(同215億円)は、来年度の予算計上を見送るとした。灌漑(かんがい)排水事業(同1930億円)は「予算要求の縮減」とした。廃止は10事業で、予算計上見送りと合わせると700億円規模の削減となる。
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先日もお伝えしましたように、来年度の政府が出した概算要求はなんと約95兆円という過去最大の規模となっているワケですが、しかしこれに対し、この仕分け作業というのはたった9日間しか設けられていません。
こういう時間の制約がありますので、この事業仕分けでは、一項目に対し議論する時間が約1時間程度なんだそうです。
しかもその中には、その事業に対する役所側からの説明も含まれるワケで、本当に仕分け人が議論できる時間というのは、かなり限られていると言えるでしょう。
果たしてこんな短い時間に結論が出せるほど有意義な議論ができるのでしょうか。
議論の中身についてこのような記事もあります。
仕分け人の統括役の枝野幸男衆院議員は「目的を話したい気持ちはわかるが、(事業としての)効果があるかどうかだ」と切り捨てた。
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つまり費用対効果しか見ていない、考えていないのでしょう。
例えば道路にしても、作った費用に対してモトがとれるぐらいの通行量があるかどうか、ここだけを見ているというコトだと思われます。
これはいつもやえが批判している従来型の公共工事叩きでしかない考え方ですね。
確かに、実質的に議論する時間が少ないと結局この程度の議論しかできないのでしょう。
しかしだからといってそれが認められるワケでは決して無く、例えば災害の時のための施設とか、緊急車両がすぐに通れるぐらいの道路とか、すぐに効果を形として表せられるモノではない“目的”が全く考慮されていない、ないがしろにされているというのは、あまりにも問題があると言えるでしょう。
もちろん目的が立派でも、その効果が全く0であれば、それは無駄といわざるを得ません。
しかしだからこそ、目的もキチンと聞いた上で、それに見合う効果はどの辺までと考えるべきなのか、それは当然「民間レベル」で考えるのではなく、政府がやるからこそ公的機関がやるからこそという視点で、目に見えない効果も考えた上での費用対効果を考えなければならないでしょう。
民間がやっても公がやるのと全く遜色がない、将来にわたっても全く問題がないというのであれば、それは逆に、いくら効果が上がっていても民間がやる方が様々な場面で有益ですからそうすべきでしょう。
これこそが真の「政治の判断」なのではないでしょうか。
このように一つの事業だけでも考えるコトは無数にあり、これを説明も含めてたった1時間程度で結論が得られるような議論が出来るとは、やえには到底思えません。
やっぱりこれはパフォーマンスなんだろうと言わざるを得ません。
民主党の蓮舫議員が役所側に対して「その法人には天下りがいるのか?」とキツイ口調で質問していた様子が繰り返しテレビでは流されていましたが、やっぱり時間がない中での判断は、そういう中身の無い、見た目的なパフォーマンス的な基準で決めているのでしょう。
会議って部外者がいると集中できませんから、一般民間企業でも会議は普通関係者だけがしか部屋に入れないようにするモノですが、ネット公開だけならまだしも、普通に会場に一般人が入れるようにして、しかも説明側には説明と答弁しか許さず一切話を聞かないという態度は、はじめから「役所側=悪」と仕立てて公開リンチしようとしているようにしか思えません。
悪趣味なショーです。
はじめからパフォーマンスありきなのでしょう。
もしですね、民主党がある一分野のみに限って、「政権が発足したばかりで時間がないので、来年度はこの分野だけを集中的に審議して、中身を精査します」と言ったのであれば、やえは大いに評価したコトでしょう。
例えば、「今期はODAについて集中的に審議し、制度そのモノの議論に始まり、相手国や額、その効果などを検証して、必要なモノは必要と、不要なモノは不要と、もし全てが不要であると判断されれば制度そのものを廃止するよう議論していきたい」と言えば、大変に評価できる姿勢だったといえるでしょう。
むしろそれだけの議論を必要とする議題であるとも言え、それをたった1時間で終わらせようとする方が、政治を軽く見ている姿勢でしかないとしか言いようがないのです。
もし本当に政治を良くしたいと思い、予算の使い方を真摯に正面から考えるのであれば、こういう方法しかないと思いますし、そうしていたのでしたらやえも民主党政権だからというだけで批判するつもりは全くありませんから、大いに評価していたところです。
でも、やっぱり民主党は民主党なんですね。
聖域なしとかなんとか言っても、どうせ「子ども手当て」ですとか「高速道路無料化」ですとか「農家への戸別所得補償」は、議論もせずに導入するのでしょう。
民主党のこの仕分け人達は、政府側の人間ではないのですから、ここも切り込んで無駄だと主張すれば評価も出来るモノですが、絶対にそれはないでしょうし、だからこそ最初からパフォーマンスありきの「政治ショー」でしかないのです、この事業仕分けは。
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