ちょっと前・・・と言ってももう1年半ぐらい前になってしまうのか、フィギュア萌え族だとか、性犯罪、特に幼年者に対する犯罪について日本中が騒ぎになったコトがあったが、その際オレは当時の世論というモノに真っ向から対する更新を書いた。
あの時はそれなりに取り上げられて、注目を集めましたよね。
うむ。しかしだ、未だに性犯罪に関しては間違った知識や偏見でしかモノを見られない奴が多すぎる。つい先日も同様の更新を書いたが、当サイトにおいてもそんな間違った知識でのコメントがつけられていた。
まぁもう1年半も立つのですから、その頃からずっと読み続けてくださっている方っていうのも、むしろ珍しいかもしれませんしね。
よって、今日は、おそらく長くなるから何回かに分かれてしまうことになるだろうが、性犯罪について分かりやすく問題点を明らかにしていきたいと思う。
はい。では今回は、ちっちゃいおにゃのこへの性犯罪が専門の、プロフェッサーあまおち先生にお越し頂きました。先生よろしくお願いします。
・・・とても誤解されるような言い方はやめなさい。
■「性犯罪は再犯率が高いから特別な刑があって当然だ」
これはマスコミが流したデマゴーグである。全くデタラメな根拠のない流言だ。
未だにこれを信じている人は多いですよね。
全く困ったもんだ。ではどうデタラメかを説明しよう。まず「再犯率」という言葉なのだが、これは非常に曖昧な言葉と言わざるを得ない。何を持って「再犯率」と言うのか、この定義がよく定まってないからだ。
まず再犯率と「率」と言うからには、これは確率の数字であるということが伺える。確率の数字ということは、何かから何かを割り、100を掛けた数字であるのは確かだ。算数の問題だな。
簡単な例を用いよう。ここにあるどこにでも売ってる変哲のないジュースだが、このジュースの缶には「果汁30%」と書いてある。これはどういうことを示しているのかな?
はい。それはですね、この缶に入っている液体の内、30%が果汁で構成されているというコトを示しているんだと思います。
その通り。では次の問題だ。ここに水が100mgある。その中に食塩を20mg入れました。さてこの食塩水には何パーセントの食塩が含まれているでしょうか?
な、なんだか、数学の問題みたいですね。
数学ってレベルじゃねーだろ、こんなの算数だ算数、いいからさっさと答えろ。
ええと・・・・17%です(ドキドキ
ドキドキすんな(笑) 正解だ。ではお前はどのように17%という数字を弾き出したか言ってみろ。
ええとですね、20÷120×100です。
そうだ。100mgから食塩の20mgを足して、その中から食塩20を割って、パーセント表記だからさらに100を掛けるわけだな。パーセント表記でなければ20/120という言い方でも間違いではない。
(ひさしぶりに緊張しました)
おめー、算数苦手か?
い、いや、そ、そんなコトないですよ。
まぁいいけどな。つまりだな、率を出す場合、「全体」から「抽出する物事」を割って最後に100で掛けるという計算をするわけだ。分数表記の場合は、全体が分母、抽出する物事が分子と表現するな。
では「再犯率」を出す場合、どのような計算が求められるだろうか。例えば、「全犯罪における性犯罪の割合」はどうかな?
警察庁が出している資料を見ると、平成15年に前科者数に関する資料(注:pdfファイル)を発表しているのですが、まず交通業務過失以外の刑法犯総数235,198件となっています。で、そのうち性犯罪(強姦とわいせつ)は1,100件+3,769件=4,869件ですから、つまり15年に起きた犯罪のうち性犯罪の占める割合は「4,869÷235,198×100」で2.07%ですね。
おめー、急に計算が素早くなったな。
いや、なんだか教科書的な問題になるとドキドキしちゃいまして。現実的な問題だと頭が働くようです。
・・・変わった奴だ。まぁいいけど、その通りだ。
(ほっ)
では本題だ。性犯罪の再犯率を算出しててみろ。
ええと、再犯率とは、「一度罪を犯した人」の中から「もう一度(もしくは二度三度)また罪を犯した人」を抽出するワケですね。
そうだな。
この場合性犯罪の再犯率ですから、「二度目以降の性犯罪を犯した人/この年の全ての性犯罪者」を出せばいいワケですね。
やってみろ。
さきほどの資料によりますと、3ページ目の「44 罪種別前科数別」に、「同一罪種の前科なし注2)」という覧があります。注目は「註2」です。註2は次の4ページの下にありまして、引用しますと「注2 「同一の罪種の前科」とは、例えば、放火の被疑者が放火の前科を有していた場合のように、被疑者が犯した罪と同一の罪種に属する前科を言う。」となっています。つまりこれが再犯者の数と言っていいでしょう。
ほっといても話が進んでいくな(笑)
よって、例えば「強姦」という犯罪の再犯率は、1犯や2犯を合わせると「(23+15+3)/1100」で0.037…ですから、約3.7%となります。
同様に計算すると、わいせつは7.2%となるな。
10%いきませんね。
そう。でだな、昔ミーガン法とか騒がれた時期にマスコミが「性犯罪の再犯率は5割」なんて見出しでニュースを流しまくっていた。記憶している人も多いのではないだろうか。
でも実際は数パーセントですよね。
そう。ではなんで5割だとか滅茶苦茶な数字が出たのかと言えば、おそらくさっきの資料の1ページ目にある「再犯者」という項目から出された数字だと思われる。強姦の場合、総数が1342件で、その中の「再犯者」数は666だ。なんと5割に近い数字がここから導き出されてしまう。おそらくマスコミはここから「性犯罪者の再犯率は4割」と書いたのだろう。
でも待ってください。「再犯者」のところに「註1」っていうのがありますよね。そこには「注1 「再犯者」とは、刑法犯、特別法犯(道路交通法違反を除く。)の別を問わず、前科又は前歴を有するものをいう。」と書いてありますように、実際の性犯罪の再犯率とは違いますよね。
そうなんだよ。つまりこの数字は「性犯罪数/今まで性犯罪に関わらず何らかの犯罪を今まで犯した人間」の数なんだよ。だから例えば「殺人犯の5割は再犯を犯す!!」なんて書いて、確かに殺人総数1,456件のうち再犯者の数は724人だから、さっきのロジックならそうなんだろうが、しかしこの中の前回の犯罪の種類は当然殺人だけでなく、窃盗とか詐欺とかもしくは性犯罪もあるかもしれない。
そんなのもはや再犯率とは言えない気がしますね。
結局だな、こんなごった煮な数字なんか出されても、少なくとも「性犯罪の特殊性」を語る際には、クソの役にも立たない数字でしかないわけだ。
ここでまたおかしい事実が判明しました。同じような計算式を使って出されたハズなのに、その出た数字そのものはともかく、強姦も殺人も5割という同じような数字が出てしまいました。それなのに、なぜ性犯罪だけ“再犯率”が「高い」と言われてしまっているのでしょうか。
ここが二つ目のポイント。本来、高いとか低いとかという表現を使う場合、必ず何かと比べなければこの表現は使えない。例えば身長2mの人がいるとして、この人は高いか低いかと言われたら、いま自分と比べたら多くの人は「高い」と言うかもしれないが、ガリバー旅行記の巨人の国で考えたら「低い」ということになるだろう。もし世界にこの人ひとりしかいないのなら、2mだろうが10mだろうが30cmだろうか、高いも低いもへったくれもないわな。よって出された数字である5割が高いか低いかは他の“再犯率”と比べなければ高いも低いも本当は言えないんだよな。
でも実際比べてみると、性犯罪が特別高いとは言えないようですね。
ここがマスコミのいやらしさというか、意図的なデマゴーグであると言わざるを得ないところだ。敢えて「5割」もしくは「5割」というなんとなく高そうな数字を出すだけ出しておいて、しかし比べる対象は出さない。
つまりイメージだけで、想像だけで性犯罪の再犯率が高いと国民に思わせようとしたんですね。
そう。トンデモ再犯率の方はもやは科学的データには全く使えないので捨てておくにしても、資料3頁にあるデータで出された再犯率で比べてみたところで、さっきやえが出した強姦3.7%、わいせつ7.2%に比べ、傷害は8.2%だし、窃盗は8.5%なのである。よくよく見てみると実は傷害や窃盗の方が再犯率が高いではないかと。
あらら。これでは「性犯罪者の再犯率が高い」と記事にする前に、「傷害犯罪者の再犯率が高い」という記事を書かなければウソになってしまいますね。
しかしマスコミはそれをしなかった。警視庁の資料を見れば間違いするわけのないデタラメな計算式を使い、意図的に数字を改ざんし、5割という「なんとなく大きそうな数字」を持ち出してデマを創り出したのだ。
だけど実際は、5割という数字は全く意味を成さない数字であり、なおかつそれをもってしても性犯罪だけが異常に高いとは全く言えないと。二重の意味で意図的にマスコミはデマを広めたというワケですね。
そうだ。以上のことから、いま手に入れられるデータによれば、性犯罪の再犯率が高いというのはまったくのデタラメであるとしか言いようがない。
もちろん性犯罪だけが特異的に再犯率が高いと立証できるデータが出されればそれは認めますけど、今の段階では高いとは言えませんよね。
うむ。であるのだから「性犯罪は再犯率が高いから、特別な刑が必要だ」という論法は間違いである。再犯率は特に高くないから、この理屈による特別な刑を執行する理由が見あたらない。
性犯罪だけを特別視する必要性がないワケですね。
というわけで、これを読んだ人は、もう「性犯罪は再犯率が高い」というデマは口にしないようにしてほしい。決して性犯罪は他の犯罪と比べて再犯率に特異性があるとは認められないのである。
|
|
|
|
(憧れの疑似トラックバック機能を期間限定お試しで付けてみました〜)
|
|
|