全日本らしさって?

プロレス界に衝撃が走った。
あの「ミスタープロレス」こと天龍源一郎が全日本プロレスのマットに帰ってくるのである。
オレがこのことを聞いたとき、まずはじめにびっくりして、次に悩んでしまった。

天龍源一郎は元は馬場さんの元で修行した、全日本プロレスのレスラーだった。
当時の全日のエースだったジャンボ鶴田のライバルの位置にいたレスラーで、離脱前までは「天龍同盟」というチーム(?)を組んで、鶴田に対抗していた。
しかしある日、天龍は全日のレスラーの半分ほどを引き連れて全日プロを離脱、新団体を作ったのだ。
残ったのレスラーは、トップを離れたレスラーと、鶴田と若手で、中堅クラスがゴソッと抜けてしまい、全日はかなり苦しい状況に追い込まれたのである。

そんな「因縁」がある天龍と全日だったのに、全日がこういう状況で復帰。
確かに当時馬場さんと天龍との間では、ちゃんとした合意の上での離脱だったらしいし、今では馬場夫人の元子さんと天龍との間では過去のことは「過去のこと」として決着済みであるらしい。
天龍はオレも好きだし、ミスタープロレスと呼ばれるぐらいの男である。
すごいレスラーだ。
天龍が全日に居続けたら、今の全日はどうなっていたか分からないが、しかしもう50歳を過ぎているのにも関わらず現役バリバリで、数年前には新日トップのタイトル「IWGPヘビー」までとってしまっている。
この年でまだ最前線にいられるのは、色々な団体を渡り歩いている人間でないとできない。
団体の世代交代を考えなくていいからだ。
だからこそ「ミスタープロレス」であり、そういう意味では天龍個人としては離脱して正解だったとも言える。
しかし、裏切りは裏切りである。
個人としてはよかったが、団体としては裏切り行為以外なにものでもない。
「怪物鶴田」の後に「天才三沢」がいたからこそ全日は建て直しができたと言える。
だから、喉元過ぎれば熱さ忘れる、で済ましていい問題だったのだろうか。
「元子派」新生全日本は、馬場さんらしく、全日本らしく、を貫くと言っているのだが、これのどこが全日本らしさなのだろうか。
分裂して急に新日本との交流戦とかも言い出すし。
ポリシーというものが感じられない。
もし馬場さんが生きていたら、天龍の復帰は無かったであろう。
馬場さんと天龍との個人的な和解はあり得たであろうが、団体のトップとしては和解・復帰はあり得なかったはずだ。
「鎖国」していた馬場全日本が、分裂のどさくさに紛れて「開国」し、全日にあまり縁のない選手もリングに上げ、裏切られた選手もリングに上げる。
節操が無いように映ってしまう・・・。

たしかに天龍の全日マット復帰は楽しみだ。
たまたまオレは最前列のチケットを持っている。
払い戻しも考えたが、このニュースを聞いて一気に見に行く気が出た。
そういう意味では天龍復帰はよいのだろうし、期待も高いから周りも昔のことは忘れて温かい目で見ている。
そういう部分もプロレスファンは素晴らしいと思う。
しかしやっぱり納得いかないのは、新生全日のフロントのやり方だ。
こんな無節操をやって、ではなぜ分裂騒動まで起きてしまったのか、納得できない。
今の全日のどこが馬場さんらしくて、どこが古き良き時代の全日なのだろうか。
ここまでしてしまうのに、なぜ三沢のやり方を認めてあげなかったのか。
三沢新団体「NOAH」を応援している人でも、三沢には全日にいてほしかったと思っている人は多いだろうし、今の全日がやっていることから比べれば、三沢がやろうとしたことなど小さな事で、三沢に全てを任した全日でやれたのなら、その方がよかったと思っているファンはほとんど全員だろう。
一体三沢時代の反三沢派は何を求めていたのか、現在のその旧反三沢派は今何を求めているのだろうか。
過去と現在とで全く矛盾しているようにしかオレは思えない。

オレは悔しい。
ここまで変われる、変わってしまった全日なのに、三沢は飛び出す必要があったのだろうか。
2000/07/16

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