ちょっと旬が過ぎてしまった感がないコトもないんですが、立場上扱っておきたいと思います。
不正認知で子供に日本国籍、中国人逮捕…服役男性の名前悪用
外国人女性が妊娠した子供を日本人の父親が認知すれば日本国籍を取得できる「胎児認知制度」を悪用し、中国人男女の間にできた子供を不正に認知させたとして、警視庁は13日、いずれも中国籍で、東京都豊島区池袋、無職沈楠(28)と無職王宗(29)、ブローカーの足立区西新井本町、郭清清(34)の3容疑者を有印私文書偽造・同行使などの疑いで逮捕したと発表した。
同庁は、父子の血縁関係の真偽確認に初めてDNA鑑定を活用、日本人の子供ではなかったことを特定した。
同庁幹部によると、3人は昨年1月22日、王容疑者と沈容疑者との間にできた子供について、別の傷害事件で服役中だった川崎市の日本人男性(56)を子供の父親と偽り、この男性が認知したとする偽の認知届を東久留米市役所に提出するなど、子供に日本国籍を不正に取得させた疑い。
|
まず最初に注意しなければならないコトは、この事件というのはあくまで「胎児認知制度」の悪用であって、ちょっと前に流行った「国籍法改正問題」とは直接は関係ない事件だというコトです。
この前改正された国籍法というのは、生まれた後の子供についても認めようという改正であり、しかしこっちの胎児認知制度は、改正がされる前から存在していた制度ですので、国籍法改正問題とは別問題です。
どうもこの事件をもって「ホレ見たことか。国籍法を改悪するからこんな事件が起きたんだ。こんなの氷山の一角で、これから日本が滅亡するぐらいエセ日本人が増えるぞ」とか言っている人がいるようですが、これはもう的外れもいいところなワケです。
むしろ国籍法を改正する前の制度でこのような事件が起きているワケですから、日本が壊滅するならもうしてなければおかしいとさえ言えるでしょう。
さて、では本題です。
まずこれは、国籍法に限らず全ての法律や制度に言えるコトなのですが、どのような法律や制度を持ってしても「犯罪を犯そうと企む人間」を0にするコトは不可能です。
海外に比べれば日本は凶悪犯罪発生率は低いと言われていますが、それでも犯罪は0にならない、つまり犯罪を犯そうと企む輩は残念ながらいっぱいいます。
出来るだけ犯罪が起こらないよう法律や制度を整えても、例え過去において死刑よりも厳しい刑罰を用意した国家もありましたが、人間の歴史の中で犯罪を0にした国家はついぞあらわれませんでした。
人間の業と言えばいいんでしょうか、どんな法律や制度を用いたとしても、犯罪を犯そうとする人間は0には出来ないのです。
こういう人間の根源的な部分を見つめた上でこのニュースをみてもらいたいのですが、ですから、犯罪を犯そうと企む人間が表れたという事実をもって、その責任を制度に押しつけるのは間違いです。
犯罪というモノは、悲しいコトですが結局は取り締まる側と取り締まられる側の永遠のいたちごっこ、ルパン3世と銭形警部の追いかけっこにしかならないのです。
認知制度に関わらず、個人でも組織でも犯罪を犯そうとする輩は0には出来ないのであって、政治があるから犯罪が起きたかのような言い方は、甚だ不適切としか言いようがありません。
また国家というモノは複雑です。
もし1つの事象だけを狙い打ちにして、他のコトにどのような影響が出ても気にしないというのでしたら出来るコトも多いのでしょうが、それはなかなか現実問題としては選択できない方法です。
何が言いたいのかと言いますと、例えば外国人犯罪というモノが近年良く取りざたされますが、これを0にするコトは簡単です。
今日本国内にいる外国人を全て退去させ、鎖国してしまえばいいのです。
そうすれば限りなく外国人犯罪という部分だけに関しては0に近づけるコトが出来るでしょう。
しかしこんなコトは現実不可能であるなんて、誰にでも分かるコトですよね。
これは分かりやすい例ではありますが、このように国家はいろいろと複雑なのです。
そんな複雑な国家運営の中で苦心して作られた法律の一つに国籍法というモノがあるワケです。
例えば、単純に「日本人と日本人の間に生まれた子供だけが日本人」という風にすれば明確ではありますが、しかしこれでは現代国家の制度としては甚だ不適切です。
なぜ日本人と外国人との子供ではダメなのかとか、私生児にも(他の権利はともかく)国籍という人間の根源に関わる部分についてはキチッと認めるべきだとか、そもそも何を持って日本人と呼ぶべきなのか、生まれてすぐに全ての日本国内で生まれた赤ちゃんはDNA鑑定をすべきとまで言うのか等、パッと考えても問題は様々出てきます。
そういう現実的な問題や人間の感情などを考慮した上で色々と折り合いを付けて国籍法というモノがあるワケで、この前の改正も現実問題との折り合いの中で生まれたモノです。
そもそも政府としてはこの改正には本来は消極的というか反対でした。
なぜなら、この改正の直接のキッカケとなったのは最高裁の判決ですが、つまり政府としては最高裁に持ち込むぐらい、改正前の国籍法で問題ないと主張していたワケなのです。
でも最高裁では政府側の主張は認められず、改正するしかないというコトになってしまったというのが、そもそもの改正の事情です。
最高裁判決によって改正しなければならないかったという事情は、改正される前の大騒ぎになった時でも、大半の人が理解していた事情だったとやえは記憶しています。
一部最高裁判決の方がおかしいんだというようなコトを言っている人もいたみたいですが、全体としては少数派でしたし、そもそも現実的な政治論の中でそんなコトを言ってもムダとしか言いようがありません。
ですので、改正に反対している人の主張というのは、「DNA鑑定を法律の中に盛り込め」というモノが大きな柱となっていました。
大騒ぎになっていた当時やえも、
もっと簡単に言うと、法律の中に「DNA鑑定必須」という文言を入れろというのが、この法案に反対している人の主な主張であると言えるでしょう。
|
と書いてますから、当時の雰囲気(と言ってもまだ数ヶ月しか経ってませんが…)はこういう感じでした。
つまり当時の論点は、DNA鑑定を法律に書くべきかどうか、もっと言えばDNA鑑定が行われるかどうかだったと言えるでしょう。
その上で今回の記事を読むと、ひとつのコトが分かります。
やえの国籍法改正問題に対する考え方をの一部を端的に書き出しますと
DNA鑑定というモノを法律に書くのは法の性格からしてそぐわない。
不正が行われるコトを許すなんて誰も思っていないのだから、不正が起こらないよう行政がシッカリと対応するのが筋であり、その対応の中で警察などの捜査対象になればDNA鑑定が行われるコトもあるだろう。
|
と言っていたワケですが、どうでしょうか。
警視庁(行政)はそのようにシッカリと対応したと言えるのではないでしょうか。
DNA鑑定というモノを今回の事件では真偽反対に用いられていたというコトが、この記事で読み取るコトができます。
DNA鑑定というモノを法律に書くのはそぐいませんが、しかしそれは、行政がDNA鑑定という手段を一切用いてはならないという意味では決してありません。
時と場合、条件などが整えば、DNA鑑定鑑定は行われるのです。
そしてそれは、今回の記事で証明されたワケなのです。
今回この記事が出されたコトによって、一部の人が悪い方向に騒いでいるようですが、この記事はむしろ「DNA鑑定鑑定を行政が実施した」という意味において、本来の主張からすれば喜ばしい記事ではないかと思います。
もちろん犯罪者が出てしまったコトに対しては喜ばしいコトではありませんが、少なくともDNA鑑定が実施されているというコトは肯定的に捉えるべきニュースなのだと思います。
騒げばそれで日本が良くなる方向に進むワケではない、無責任な言動、ましてデマゴーグなんて害悪以外何者でもない、というコトが端的に表されている問題と言えるのかもしれません。