今日は、御意見板に情報いただいたこちらのブログさんについて取り上げたいと思います。
まずは引用です。
派遣村 産経新聞お得意のねつ造が炸裂
結局の所、利用者の内、無断で出ていって二日以上戻らない人は、10日付記事の通り最大で78人なんです。
じゃあ、「入所者の半分が所在不明」と書いたのは、なに?
「250人の所在不明者が出た問題で、約90人が10日、施設に戻ってきた」と書くのは正確なの?
はっきりいって、ウソですよね。
正確に書くならば、こうなります、
「外出した利用者のうち、いつもは150人程度が夕食に間に合わなかったが、この日はそれが76人に減った。」
「門限を守る人が増えた」ってだけじゃないですか。
産経の記事だと、印象がまるでちがいますね。
産経の記事は、派遣村否定の方向に読者を誘導するものです。
いえ、ウソがまじっているから「誤導」と言わねばなりません。
ウソをまじえて書かれた悪意ある記事なんて、「報道」とよべるのでしょうか。
こういうのって、正しくは「扇動」といいませんか。
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まずですね、だいぶ情報が錯綜しているような気がしてなりません。
この方が引用元としている産経新聞の、特に8日付のモノがこのエントリーではリンクされていないので、ちょっと探してみたのですが、これですかね。
派遣村 所在不明200人 就活費2万円支給後、続出
年末年始に住居がない失業者に宿泊場所や食事を提供する東京都の「公設派遣村」で多数の無断外泊者が出た問題で、当初の利用者562人のうち、7日午後8時現在で200人以上の所在が不明になっていることが同日、都の調査で分かった。所在不明者は都が就活費として現金2万円を支給した6日から続出。都は規則違反者は強制退所にするとしたうえで、18日朝をもって派遣村の閉所を決めた。
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で、エントリーではこう解説しておられます。
どうしてこんなことになるのかといえば、「行方不明」と「所在不明」の違いをちゃんと説明しないで、わざと紛らわしく書いているからなんです。
所在不明とは、夕食のときにいなかったってことです。
届けを出して外出して、夕食に間に合わなかった人が大半です。
行方不明とは、夕食時にいなかった人の内、外出届の出ていない人です。
前夜から無断外泊した人の他、施設内にいて夕食を取らなかった人も含まれます。
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つまり、産経8日付の200人は「届けを出して外出して、夕食に間に合わなかった人」、すなわち全く問題行動を起こした人ではないと言っているワケです。
しかしですね、やえにはこの200人という数字に聞き覚えがあります。
前回の更新で取り上げたこの記事です。
東京都の派遣村200人、無断外泊 交通費2万円受給後
住まいのない求職者を対象に、東京都が昨年末から宿泊場所を無料提供して続けている生活再建支援で、利用者約560人のうち、約200人が6〜7日、都が禁じた無断外泊をした。6日に都は宿泊施設の外へ仕事探しに行く交通費などとして、ほぼ全員に2万円を支給していた。
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これですね。
そしてよくよく記事を読むと、産経では『7日午後8時現在で』とあり、朝日では『6〜7日』と書いてありますから、つまり両者とも6日の夜に出かけた人というコトであり、どちらの記事も全く同じ時期を対象とした記事である、同じ内容の記事と見て間違いないようです。
あれ?
おかしいですね。
朝日ではハッキリと「無断外泊」と書いてあるんですね。
しかもタイトルに。
朝日の記事の下の方には『受給者の多くが6日に外出したが、都が7日朝に確認した利用者数は342人。外泊の連絡は一部しかなかったという』とありますので、200人すべてが無断外泊したのではないのは読み取れますが、しかし常識的に日本語を解釈するなら、キチンと連絡したのは微々たる数で、「約200人」と表現して差し支えないぐらいの人数が無断外泊したと読み取って問題ないと思われます。
どちらが正しいのでしょうか。
もしくはどちらの記事も正しくて、このブログさんの解釈が間違っているのでしょうか。
正直これ以上はやえにはどちらが真実かを判断する材料がないので、なんとも言えないところではありますが、しかし敢えてさらに言いますと、この書き方が産経と朝日で逆ならまだうがった見方をする余地もあるのですが、朝日新聞がタイトルに堂々と「200人無断外泊」と書いてあるだけに、むしろ真実味があるように思えてなりません。
まぁ憶測論を抜けませんけどね。
ただ、その上でさらに考えてもらいたいコトがあります。
結局のところ8日の段階で朝日新聞では200人もの人が『無断外泊』という「ルール違反」をして、また産経新聞+このブログの解釈であっても150人程度の人が『夕食に間に合わなかった』という「ルール違反」をしているのは確かだと言うコトです。
その割合35.6%もしくは26.7%です。
正直これだけでもトンデモナイ話なのではないでしょうか。
このブログさんでは「夕食に間に合わなかった」という書き方をしていますが、やえはそんな軽い問題ではないと思います。
前回のやえの更新でも書きましたように、派遣村というのは「ちょっとずつ我慢しながら社会に適応して生きている人」からの血税によって賄われているモノであって、当然その恩恵を預かる人には普段の生活よりもさらに我慢してもらうのが当然であり、それは普通の社会生活を送るために必要な措置であるのですから、夕食の時間という程度のルールだって、いえそれぐらい小さな基本的なルールだからこそ、キチッと守ってもらう必要があると言えるのではないでしょうか。
それが76人に減ったところでルール違反をしたコトには変わりなく、むしろ200人の「現金をもらった直後にルール無視をやらかした」という事実は、そんな簡単に受け止めてしまっていい問題とは到底思えません。
そもそも逃亡なんていうのは問題外の話でしか無く(一応念のために言っておきますが、前回のやえの更新では逃亡したとかいうコトを思ってもいませんし、書いてもしません)、3割近い人がルール違反をしているというだけで、それが人間性に関する問題なのか運営に関する問題なのかはともかく、もう一度派遣村の存在そのものについて考え直す必要があるレベルの話だと認識すべきなのではないでしょうか。
うがった見方をするなら、別の言い方もできます。
10日の段階で『夕食に間に合わなかった』人が『76人に減った』というコトを『「門限を守る人が増えた」ってだけじゃないですか』とブログでは表現していますが、しかしこれはもしかしたら、「単にお金が無くなったから戻ってきただけ」の可能性も否定できない気がしてなりません。
つまり、6日に現金を手に入れて外出して、その間どういう使い方をしたのか分かりませんが(タバコや酒を買ったり、またパチンコに行ったとかいう情報もありますが)、その結果お金が尽きてしまって戻らざるを得なくなった人が戻ってきただけ、という可能性です。
お金の減り方は人それぞれでしょうから一斉に戻るワケではありませんし、つまり戻らなかった76人は、使い方がよかったのかどうか、まぁ戻る必要のないぐらい現金を持ってる人たちだから単に戻ってこなかっただけだと、そういう解釈も出来ると思います。
もちろん考え方次第なのでなんとも言えませんし、実際のところどうなのかを確認する術がないので断定は出来ませんけど、しかし逆にすべての人が事情がある善意な人たちだと受け止めるのも不自然なのではないかとやえは思います。
その上で考えてもらいたいのは、このブログさんのエントリーの後半です。
「逃亡」だということも断定できた訳ではなく、アパート物件を探していて帰りそびれたケースや、お金を落としてしまって帰れなかったというケースもあり、戻ってきた方もいます。私が実際お話しした方はハローワークに向かう途中でお金を落としてしまったそうで、視覚障害がある方なので寮に連絡もできず、仕方がないので再び野宿をし、その後知り合いのボランティアの方と偶然会って近くの福祉事務所に連れて行ってもらい、交通費を借りて戻ってきたそうです。
また、実際にルールを守れない人が一部にはいるのだろうが、真面目に生活を再建しようとしている人たちもいるのだから、みんな同じように見ないでほしいとおっしゃっていた方もいらっしゃいました。
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「みんな同じように見ないでほしい」という意見は、この手の問題ではいつも出てくる台詞です。
もちろんそれは正しいと思います。
やえはいつも言っていますが、すべての人がとんでもない人ばかりだと言うつもりはなく、中には真面目な…というか本当に困っている人もいるんだろうと思います。
だからこそ正しいデータと情報が必要だと言っているワケです。
本当に困っている人のためにも、正しく現状を把握するコトはとても大切なコトです。
そのために不要なノイズは出来るだけ排除しなければならないと思います。
そしてそれは、不真面目な人をことさら取り上げるという手法だけでなく、特殊な事情な人だけをことさら取り上げるという手法も同じコトが言えるでしょう。
私が実際お話しした方はハローワークに向かう途中でお金を落としてしまったそうで、視覚障害がある方なので寮に連絡もできず、仕方がないので再び野宿をし、その後知り合いのボランティアの方と偶然会って近くの福祉事務所に連れて行ってもらい、交通費を借りて戻ってきたそうです。
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なんていう人は、確かにこの事情を聞けば可哀想だろうとは思いますが、しかしこんなの極々極一部で、もしかしたら500人中この人ひとりだけの特殊な事情ではないかと思うぐらいです。
やえはこの人個人に対しては責めようとは全く思いませんが、しかしこんな特殊な人を取り上げて『実際にルールを守れない人が一部にはいるのだろうが、真面目に生活を再建しようとしている人たちもいるのだから、みんな同じように見ないでほしい』と言ってしまうのは、ちょっと違うのではないでしょうか。
それこそ、一部の人をことさらに取り上げて全体への印象へミスリードする手法の最たるモノと言わざるを得ないでしょう。
前回の更新でも言いましたように、派遣村の利用者の意識という問題も、重要なポイントとなります。
例えば『アパート物件を探していて帰りそびれたケース』と言って無断外泊は仕方ないなんというニュアンスでこのエントリーは伝えていますが、一般社会常識的に考えたらこれは「仕方ない」で済まされるコトでもない気がします。
もし何らかの事情で時間が間に合わないというのであれば、一本電話でもして事前に伝えるというのは、社会では当たり前の常識です。
一時期に比べれば減りましたが、それでもちょっと探せば公衆電話ぐらい見つかるでしょう。
そして10円ぐらいは持っていたハズです。
『アパート物件を探していて帰りそびれたケース』がいったい何件ぐらいあったのか、もしくは1件しかなかったのかどうかは分かりませんが、どちらにしてもこのケースに対しては、常識が欠如していたコトに対する批判は免れないでしょう。
まさか義務教育を終えて一回も社会に出たコトが無いという人ではないでしょう、だって「派遣村」なのですからね、一度は必ず社会に出ているハズです。
また、仮にもともとはホームレスだったとしても、それでも義務教育を終えて一度も働くコト無く急にホームレスになったという人がいるとは、ちょっと想像しにくいモノがあります。
もしかしたら派遣村の職員が「間に合いそうにないときは電話連絡するように」と言わなかった可能性もあり、その場合は職員も反省しなければなりませんが、しかしだとしても、連絡先は控えておきこういう場合は連絡するというコトは今派遣村で教えてもらわなくとも、そもそも最低限の社会常識なのですから、それはもう利用者の意識が低すぎたと言われても仕方ないと思います。
視覚障害者の人だって、どうも解せないんですよね。
どうしてこのような人が派遣村にいるのでしょうか。
この人は本来は派遣村のようなところにいるのではなく、もっと違った施設や相談場所がある気がしてなりません。
自力で連絡が出来ないぐらいの人なのですから、派遣村にたどり着く前の人生の段階でもっとやりようがあったのではないかと思わずにはいられません。
もちろんそれは両親や家族、周りの人たちなどの環境や運みたいな部分もありますから、この人個人を責めるつもりは毛頭ありませんが、しかしこの人をもって派遣村の問題として見るのはそぐわないのではないでしょうか。
職員やNPOの人たちは、派遣村ではなく他の役所の窓口や施設を紹介してあげてほしいと思います。
これは前回にも言いましたが、どうしても派遣村の人たちは受け身なんですよね。
ハローワークからの求人票が並べられているのは私は今日初めてみました。
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なんて言ってますが、1月9日という年始というコトもあって求人自体が少ないという事情もあるでしょうし、そもそも本来は自分からハローワークに足を運んで仕事を探すのが普通のコトであって、寝っ転がっているところに求人が舞い込んでこないと「求人がない」と言ってしまうのは、かなり違う気がしてなりません。
そして、6日に支給された現金は、仕事や住むところを探すための移動費などのためなのですから、やはり派遣村の施設だけで仕事がない仕事がないと言うのは、本来あるべき姿ではないと言うべきでしょう。
社会に普通に生きている人は、ちょっとずつ我慢をしながら自分で今の生活を得てきている人なのですから、それを思えばずいぶん贅沢な文句だなぁと思わざるを得ません。
このように知れば知るほど、そして考えれば考えるほど、様々な問題が出てきます。
そしてそれ以上に、さらなる可能性が出てきます。
しかし何度も何度も言っていますが、本当に手を差し伸べなければならない人に光をあてるためも、また経済対策の必要性を議論するためにも、最も大切なのは「正しい事実」です。
正しい事実があってこそ、正しい対策がとれるのです。
一部の問題ある人たちの行為によって手助けが必要な人まで白い目で見られるのは避けなければなりませんし、同時に特殊すぎる人の例をことさらに挙げて問題ある人までをも不当に過剰に優遇するコトも避けなければなりません。
そのために、事実を事実として明らかにしなければならないのです。
ウソの事実で世間に派遣村という虚構の悲劇のヒロインを作り上げ、それを原動力にして政治を動かすなど、言語道断です。
現場の人は頑張っていると信じたいですが、であるなら、本当に困っている人のためにも、キチンと問題があるならその情報も公開して、公明正大にやってほしいと思います。
少なくとも「派遣村に集まったすべての人が可哀想な人たちだ」と言わんばかりの物語は、もはや幻想でしかないとバレてしまっているんですからね。
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