今日はちょっと短めになるかもしれませんが、前回理由を書けなかった、太田私案と旧法案との関係について、やえの考えを書きたいと思います。
前回にも言いましたように、おそらく太田私案は、旧法案の上に被さるように存在するモノになるんじゃないかと思われます。
太田私案は法案・法律の形を成していませんから、まずベースとしては旧法案があって、その上から太田私案を被せ、もし太田私案と旧法案が重なる部分があれば太田私案を最優先させる、そういう形になるんだと思います。
例えば太田私案には、「現在でも行っている援助などの任意の人権救済の対象を、憲法14条が定める人種等による差別、(中略)に限定する」という文言がありますので、旧法案で定められていた、一般救済手続きでも扱うような広い範囲での人権侵害問題は、この法案では取り扱わないというコトになります。
逆に、太田私案で特に書かれていないような事柄は、旧法案のままであると思われます。
例えば3条委員会で組織される人権委員会の存在ですとか、特別救済手続きそのものですとかです。
そういう形で太田私案を優先させながらお互いを補完して法案・法律の形を作っていくコトになるんだと思います。
なぜそう思うのかと言いますと、いくつか理由があるのですが、例えばペーパーで配られた太田私案に次の文言があります。
差別的言動に対する調査については、過料の制裁を除く。
|
これを逆に読めば、差別的言動以外の調査については過料が存在する、というコトに他ならないワケですが、しかし太田私案には「過料」に関する記述はありません。
ですからこれは、旧法案にあった過料に関する部分が、太田私案の中でも存在すると読み取るのが一番自然だと言えるでしょう。
すなわち、先日お伝えしました太田私案で定められた具体的な人権侵害に対しては、全て旧法案で言う特別救済手続きが存在し、一番重い措置である指名公開を含めた制裁があって、それを行うために調査が行われる場合もあり、その場合もし調査に非協力的であれば、差別的言動に関する人権侵害事件以外なら過料などの制裁も存在する、とこういうコトでしょう。
ですからこの書き方では、旧法案が太田私案の中に含まれていると考えなければ、むしろ不自然だとも言えるわけです。
また他にも、これはペーパーの中ではなく人権問題等調査会の議論の中で出てきた話なんだそうですが、「なぜ3条委員会なのか」という話もあったそうなので、これも同じように、それは旧法案で言う人権委員会のコトを指すモノだと解釈するのが自然でしょう。
それから、引き続き人権養護委員を存続させるというコトを明記したコトも、旧法案がベースにあるというコトが伺えると思います。
まぁ、これはもう完全のイメージの問題ですが、旧法案を引きずっていると言ってしまうと反発を受けるので、前回の調査会では、太田私案の話だけをしたのでしょう。
ですから執行部の意識としては、太田私案がまずあり、それを補完する形で足りない部分を旧法案から借りて肉付けして、法案・法律の体裁をとると、そういうコトなのかと思われます。
そもそも旧法案も、既存の法案、人権擁護法案の場合は、公正取引委員会の独占禁止法や公害等調整委員会の公害等調整委員会設置法を参考にして骨格となって人権問題に即した形にしていったのでしょうし、法案とはだいたいどれもそんなようなモノですから、これは決して間違ったやり方ではありません。
というワケで、人権擁護法案・太田私案はこのような位置づけで今後議論が進んでいくモノと思われます。
太田私案の登場で、もしかして17年からずっとやえがやってきたあれだけ膨大な文章が全部ムダになってしまうのかと一瞬びっくりしたのですが、そういうコトではないようでちょっとほっとしました(笑)
まぁそれは冗談としましても、パリ原則を尊重させるためには「政府からある程度独立した人権関係の機関」が必要不可欠ですから、日本の法体系からしてある程度旧法案のような形になるのは当たり前であり、それが自然とも言えるワケです。
中身こそが一番大切であるというのは言うまでもありませんから、しっかりと中身について、結果ありきではなく、検証していってほしいと思います。
これから調査会もコンスタントに開かれるのでしょうし、太田私案について、今までにないコトでやえも言いたいコトがありますから、引き続きこの問題は追っていきたいと思います。