Q.人権委員会は三権分立から逸脱している。どこにも属していない。
A.人権委員会は行政府の一員です。
どこから出てきたお話なのかさっぱりわからない、最も低次元なデマのひとつとしか言いようがないこの話ですが、ごめんなさい、三権分立を理解しているのか疑問にならざるを得ません。
たまに「人権委員会は法務省の外局で三条委員会となり三権分立から独立している」なんて書き込みを見かけるのですが、すでにここで矛盾しているのに気づかないのでしょうか。
人権擁護法案第五条を見てください。
第五条 国家行政組織法第三条第二項の規定に基づいて、第一条の目的を達成することを任務とする人権委員会を設置する。
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「国家行政組織法」です。
行政です。
三条委員会は、いわゆる中央省庁である国土交通省などの「省」、国税庁などの「庁」、国家公安委員会などの「委員会」の委員会に類する組織であり、これらは全て行政府です。
人権擁護法が施行されるとこれがひとつ増えるだけの話であり、それをもって巨大な権力だとか、どこからも抑制や監視を受けない警察以上の特高のようなモノだとか言っても、それが本当にそうなら、すでに各省庁そして委員会は全てそうなってしまいます。
とにかく、三権分立から逸脱しているなんて、全く理解できないデマです。
Q.「特定の者」は法人も含むのではないか
A.非常に微妙な問題であり、これはもしかしたら最終的に裁判所の判例が必要になる事案かと思います。
ただし、法人を含んだところで、それが問題になるとは考えられません。
具体的に「特定の者」に法人が含むかどうかのお話は、こちらのブログさんをご覧になってください。
非常に勉強になります。
では、ここでは、仮にもし特定の者に法人が含まれる場合を想定してみたいと思います。
もし「特定の者」に法人が含まれたとしても、「特定」であるコトには変わりないコトに気をつけてください。
法人という人格が完全に特定できる形での言動のみが「特定の者」となります。
すなわち、例えば「朝鮮総連」は特定の者と成り得ますが、「北朝鮮人」は特定の者とは成り得ません。
それを踏まえて。
特定の者がかかる立ち入り調査などがある特別救済では、第四十二条第一項第二号のイの規定である
第三条第一項第二号イ(特定の者に対し、その者の有する人種等の属性を理由としてする侮辱、嫌がらせその他の不当な差別的言動)に規定する不当な差別的言動であって、相手方を畏怖させ、困惑させ、又は著しく不快にさせるもの
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の部分が一番気になるところだと思いますが、ここを具体的な例で言うと
『あまおちは北朝鮮人であり、下等民族で生きている価値はない』
という類の言動があたるコトになります。
で、もし「特定の者」が法人である場合は、「あまおち」が法人名になるワケで、例えば
『朝鮮総連は北朝鮮人であり、下等民族で生きている価値はない』
という具合になるでしょう。
ちょっと意味不明な文章になってしまっていますが、しかしでもこれ、普通にダメな言動ですよね。
議論がごっちゃになってしまいがちなこの議論ですが、「法人が含む含まない」の問題と、「特定団体に対する正当な批判ができなくなるのではないか」という問題とは、全く別の議論です。
「特定団体に対する正当な批判ができなくなる」という問題でしたら、それは「法人が含まれるかどうか」の問題ではなく、「言論の自由が阻害される」という問題となるワケで、それについてはこちらでも読んでみていただきたいのですが、つまりもし法人も含んだとしても、正当な批判への担保は別の部分で担保されているワケで、もしその正当な批判を越える、いまの法律のもとでも許されないような言動であれば、それは法人を含んだとしてもが含まないとしても、どっちにしても許されないと解するのが適切でしょう。
「特定の者」は、発動条件の大きな柱であるというコトをここで書いてきましたが、なぜこれが大きな条件となり得るのかと言うと、「特定」という部分があるからです。
不特定ではないという意味が大きいワケです。
簡単に言えば、名指ししているかどうかであり、過去のここの文章も、それが条件的にけっこうきびしいと書いてあるハズです。
「特定の者」の重要なのは「特定」の部分であり、「者」はそんなに重要視する必要性はないと判断します。
よって、この議論の結果によって、この法案全体の解釈的には、何ら影響を耐えるコトはないと言えるでしょう。
Q.「おそれ」だけで、立ち入り調査や過料が下されるなんてとんでもない。
A.その手の処分が含まれている特別救済に定められている「おそれ」とは、ある行為として形に表した後の結果として助長するおそれが出てくる行為であると言っているだけであって、実際に規制しようとしている行為は、最初の「形に表したもの」そのものに対してです。
決して可能性だけをもって未来に渡る予想だけでその人を取り締まろうというモノではありません。
特別救済にかかる「おそれ」は条文の一部であり、一部だけを切り取って拡大解釈せずに、キチンと前後の文章を読んでください。
該当部分は第四十三条ですが、例としてとりあえず、一条一項を書き出します。
一 第三条第二項第一号に規定する行為であって、これを放置すれば当該不当な差別的取扱いをすることを助長し、又は誘発するおそれがあることが明らかであるもの
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当サイトでなんども出てきているここの条文ですが、詳しい解説はこちらを読んでいただくとして、簡単に説明すると、ここは「部落名鑑」のようなモノを規制する条文です。
具体的に言えば、例えば部落名鑑や匿名掲示板などで「○○地域は部落だ」とかいう書き込みがあったとして、これを放置したらそれを見た人が差別心を持ってその地域にあたるかもしれない、つまり「差別的取扱いをすることを助長し、又は誘発するおそれ」が発生するかもしれないので、その書き込みや名鑑を取り締まろう、という意味になるワケです。
よく整理して読んでください。
規制するのは、名鑑や書き込みの方です。
それを見た人ではありません。
それを見た人が、では差別的な取扱いを将来にわたって行う可能性があるから見た人を取り締まろう、というモノでは無いのです。
あくまでここの条文の対象は、部落名鑑を作った人やその手の書き込みをした人です。
もちろんですが、もしその書き込みなどを見て本当に差別的な取扱いをしたら、それはそれで当然特別救済の発動条件となり得ます。
しかしそれは第四十三条ではなく、四十二条第一項第一号に該当する言動です。
しかも当然ですが、規制される時は実際に「差別的な取扱い」を行動として起こした時だけです。
よって「おそれ」や「可能性」とは全く関係のない話なのです。
繰り返しになりますが、可能性だけをもって未来に渡る予想だけで立入調査などの処分が行われるコトはありません。