Q6.結局立ち入り調査はどんな場面で使われるの?
A.立ち入り調査が行われる場面は限られていて、どんな場面でも行われるワケではありません。
人権擁護法案には、立ち入り調査を以下の場合において行えると規定されています。
【虐待】
【公務・業務上において職務における差別的な取扱い】
【特定個人への属性を理由とする差別的言動があり、その相手が不快だと表明した場合】
【特定個人への職務上の地位を利用したセクハラがあり、その相手が不快だと表明した場合】
【部落名鑑やそれに類する文書の公開】
【お店の人などが人種等の属性を理由として不当な取扱いをする意志を表示すること】
では、具体的に詳しく法案を見ていきましょう。
立ち入り調査が規定されている条文は第四十四条です。
(特別調査)
第四十四条
人権委員会は、第四十二条第一項第一号から第三号までに規定する人権侵害(同項第一号中第三条第一項第一号ハに規定する不当な差別的取扱い及び第四十二条第一項第二号中労働者に対する職場における不当な差別的言動等を除く。)又は前条に規定する行為(以下この項において「当該人権侵害等」という。)に係る事件について必要な調査をするため、次に掲げる処分をすることができる。
一 事件の関係者に出頭を求め、質問すること。
二 当該人権侵害等に関係のある文書その他の物件の所持人に対し、その提出を求め、又は提出された文書その他の物件を留め置くこと。
三 当該人権侵害等が現に行われ、又は行われた疑いがあると認める場所に立ち入り、文書その他の物件を検査し、又は関係者に質問すること。
2 人権委員会は、委員又は事務局の職員に、前項の処分を行わせることができる。
3 前項の規定により人権委員会の委員又は事務局の職員に立入検査をさせる場合においては、当該委員又は職員に身分を示す証明書を携帯させ、関係者に提示させなければならない。
4 第一項の規定による処分の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
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発動条件の部分だけを簡単に抜き出しますと「第四十二条第一項第一号から第三号までに規定する人権侵害、又は前条に規定する行為」となります。
なお「前条」とは、43条のコトを指し示します。
では次に「第四十二条第一項第一号から第三号」を見てみましょう。
(不当な差別、虐待等に対する救済措置)
第四十二条
一 第三条第一項第一号に規定する不当な差別的取扱い
二 次に掲げる不当な差別的言動等
イ 第三条第一項第二号イに規定する不当な差別的言動であって、相手方を畏怖させ、困惑させ、又は著しく不快にさせるもの
ロ 第三条第一項第二号ロに規定する性的な言動であって、相手方を畏怖させ、困惑させ、又は著しく不快にさせるもの
三 次に掲げる虐待
イ 国又は地方公共団体の公権力の行使に当たる職員が、その職務を行うについてする次に掲げる虐待
(1) 人の身体に外傷が生じ、又は生ずるおそれのある暴行を加えること。
(2) 人にその意に反してわいせつな行為をすること又は人をしてその意に反してわいせつな行為をさせること。
(3) 人の生命又は身体を保護する責任を負う場合において、その保護を著しく怠り、その生命又は身体の安全を害すること。
(4) 人に著しい心理的外傷を与える言動をすること。
ロ 社会福祉施設、医療施設その他これらに類する施設を管理する者又はその職員その他の従業者が、その施設に入所し、又は入院している者に対してするイ(1)から(4)までに掲げる虐待
ハ 学校その他これに類する施設を管理する者又はその職員その他の従業者が、その学生、生徒、児童若しくは幼児又はその施設に通所し、若しくは入所している者に対してするイ(1)から(4)までに掲げる虐待
ニ 児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号)第二条に規定する児童虐待
ホ 配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。次号において同じ。)の一方が、他方に対してするイ(1)から(4)までに掲げる虐待
ヘ 高齢者(六十五歳以上の者をいう。)若しくは障害を有する者(以下この号において「高齢者・障害者」という。)の同居者又は高齢者・障害者の扶養、介護その他の支援をすべき者が、当該高齢者・障害者に対してするイ(1)から(4)までに掲げる虐待
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とっても長くなりましたが、少しずつ順番に見ていきましょう。
まず第一号(一の部分です)ですが、なんとここにきて、さらに「第三条第一項第一号」という引用が出てきてしまいます。
この辺が法文の難しさなんですが、まずはここは後回しにしましょう。
そして第二号も同様ですので後回しです。
で、第三号なんですが、ここもいろいろと長ったらしいのですけど、一言で「虐待」と言っておけばいいと思います。
イロハニホヘでは、その具体的な加害者と対象を書いているワケですが、分かりやすいところを例えば、ハやニは教員による学生や児童に対する虐待ですし、ホは配偶者に対する虐待すなわちDVですね、ヘは介護虐待を示していますように、これら全てはいわゆる虐待ですので、そこまで条文を解読する必要はないでしょう。
というワケで、まず立ち入り調査の発動の条件の1つに【虐待】があるとここに定められているコトになります。
では戻りまして、第一号を見てみましょう。
第一号には「第三条第一項第一号に規定する不当な差別的取扱い」とありますので、今度は第三条を見なくてはなりません。
(人権侵害等の禁止)
第三条
何人も、他人に対し、次に掲げる行為その他の人権侵害をしてはならない。
一 次に掲げる不当な差別的取扱い
イ 国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する者としての立場において人種等を理由としてする不当な差別的取扱い
ロ 業として対価を得て物品、不動産、権利又は役務を提供する者としての立場において人種等を理由としてする不当な差別的取扱い
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まず(イ)ですが、これは読めばすぐ分かりますように、公務員に対する規定です。
公務員が公務中に公務上において差別的な取扱いをしてはならないという規定です。
次に(ロ)ですが、今度は「お店の人」に対する規定です。
つまり、仕事中に職務上において差別的な取扱いをしてはならないという規定です。
簡単に言うと、「アナタは黒人ですのでこの商品はお売りできません」という類のコトはやってはならない、という内容です。
以上、2つ目の立ち入り検査発動の条件としては、「第四十二条第一項第一号」である「第三条第一項第一号」の規定により、【公務・業務上において職務における差別的な取扱い】となります。
ではまた42条に戻りまして、最後に残りました第二号について見ていきましょう。
42条の中ではここが一番複雑ですので、もう一度、第四十二条第一項第二号を書き出します。
二 次に掲げる不当な差別的言動等
イ 第三条第一項第二号イに規定する不当な差別的言動であって、相手方を畏怖させ、困惑させ、又は著しく不快にさせるもの
ロ 第三条第一項第二号ロに規定する性的な言動であって、相手方を畏怖させ、困惑させ、又は著しく不快にさせるもの
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この2号は、別の条を引用しつつさらに条件をつけているという文章になっているので、ちょっとややこしいコトになっているんですね。
ですのて、さらに「第三条第一項第二号イ」を引用しなければなりません。
イ 特定の者に対し、その者の有する人種等の属性を理由としてする侮辱、嫌がらせその他の不当な差別的言動
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よって、第四十二条第一項第二号イとつなぎ合わせますと
特定の者に対し、その者の有する人種等の属性を理由としてする侮辱、嫌がらせその他の不当な差別的言動であって、相手方を畏怖させ、困惑させ、又は著しく不快にさせるもの
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という文章になります。
ポイントは「特定の者」と「人種等の属性を理由としてする不当な差別的言動」と「相手方を畏怖させ、困惑させ、又は著しく不快にさせるもの」の3つです。
まず「特定の者」ですが、これはつまり不特定多数への言動は当てはまらないコトになります。
例えば「北朝鮮人は○○だ」というような言い方ではここには該当しません。
次に「属性を理由としてする不当な差別的言動」ですが、これはつまり単に差別と言っても種類を限定しているコトになります。
人権擁護法案における「人種等」というモノにはちゃんと規定がありまして、第二条第五項に当たります。
5 この法律において「人種等」とは、人種、民族、信条、性別、社会的身分、門地、障害、疾病又は性的指向をいう。
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そしてこれらを「理由としてする不当な差別的言動」ですので、その言動にはこれらの属性が発信源となるような物言いでなければなりません。
例えば昨日紹介しましたブログにあった漫画のような「外国人が主人公に勝負で負けるシーンのある漫画の所持」というモノは全く関係がありません。
仮に「外国人が主人公に勝負で負けるシーンのある漫画を“描いた”」であっても、勝負に負けるという行為は外国人という属性には関係ない話ですので、この条項には当てはまりません。
最後に「相手方を畏怖させ、困惑させ、又は著しく不快にさせるもの」ですが、わざわざ第三条の法文だけでなくこれをつけたという意味というのは、おそらく「被害者が申告する必要がある」というコトを示したいのではないかと思われます。
逆に言いますと、相手が不快と思わなければこの条文には当てはまらない、というコトになります。
つまり、該当するためには相手がまず「不快である」と言わなければならない、というコトなんだろうと思います。
よって、人権委員会が独自に判断して、例えば「あまおちはエタヒニンのろくでなしだ」という書き込みがあったとしても、それだけをもって人権委員会が立ち入り調査を始めるというコトはないというコトです。
仮にあまおちさんが「( ´_ゝ`)フーン」と言ってしまえば、少なくともこの条文には当てはまらないコトになり、立ち入り調査を始める口実にはならないコトになりますからね。
以上まとめますと、3つ目の立ち入り調査の発動条件としては【特定個人への属性を理由とする差別的言動があり、その相手が不快だと表明した場合】となります。
では次に(ロ)です。
(イ)と同様に、他の条の条文とくっつけた形で引用します。
特定の者に対し、職務上の地位を利用し、その者の意に反してする性的な言動であって、相手方を畏怖させ、困惑させ、又は著しく不快にさせるもの
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ここのポイントは「職務上の地位を利用し」と「性的な言動」と「相手方を畏怖させ、困惑させ、又は著しく不快にさせるもの」です。
まず一番大切なのは、この(ロ)は「性的な差別」だけを取り扱っているという点です。
つまり、(ロ)だけを見ても、「あまおちはエタヒニンのろくでなしだ」という言葉は該当しないコトになります。
また、「職務上の地位を利用し」というのも大切です。
ただの友達関係での性的な差別は、ここの対象外です。
まとめますと、「職務上の地位を利用した性的な言動差別」ですから、これを簡単に言いますと、セクハラですよね。
例えば、電車の中での痴漢行為は、この条項には当てはまらないコトになります。
当然刑法の法には触れる犯罪ですが。
そしてこちらの方にも「相手を不快にさせるもの」という条文が入っていますように、つまりはですね、セクハラ的な言動であっても相手が嫌がってなければ、少なくとも立ち入り調査は行われないコトになります。
スカートめくりをしても、まいっちんぐマチコ先生のような人相手なら、この条項には該当しないのです。
以上、立ち入り調査の発動条件としては【特定個人への職務上の地位を利用したセクハラがあり、その相手が不快だと表明した場合】となります。
だいぶ長くなりましたが、これでやっと第四十四条に定める発動の2つの項目のうち「第四十二条第一項第一号から第三号」の部分の説明が終わりました。
頑張って次の「前条(43条)に規定する行為」について見ていきましょう。
第四十三条は、あるひとつのモノをねらい打ちした条文です。
まずは引用しましょう。
一 第三条第二項第一号に規定する行為であって、これを放置すれば当該不当な差別的取扱いをすることを助長し、又は誘発するおそれがあることが明らかであるもの
二 第三条第二項第二号に規定する行為であって、これを放置すれば当該不当な差別的取扱いをする意思を表示した者が当該不当な差別的取扱いをするおそれがあることが明らかであるもの
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またまた該当部分の引用が必要になってしまいますね。
第三条第二項の引用です。
一 人種等の共通の属性を有する不特定多数の者に対して当該属性を理由として前項第一号に規定する不当な差別的取扱いをすることを助長し、又は誘発する目的で、当該不特定多数の者が当該属性を有することを容易に識別することを可能とする情報を文書の頒布、掲示その他これらに類する方法で公然と摘示する行為
二 人種等の共通の属性を有する不特定多数の者に対して当該属性を理由として前項第一号に規定する不当な差別的取扱いをする意思を広告、掲示その他これらに類する方法で公然と表示する行為
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ごめんなさい、さらに「前項第一号」という指定が入ってしまいました。
前項第一号とは、第三条第一項第一号の部分であり、最初の方に引用しました「公務員とお店の人が業務上に差別的な取扱いをしてはならない」という条項です。
第四十三条一項の部分をまとめますと
人種等の共通の属性を有する不特定多数の者に対して当該属性を理由として、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する者、業として対価を得て物品、不動産、権利又は役務を提供する者としての立場において人種等を理由としてする不当な差別的取扱いをすることを助長し、又は誘発する目的で、当該不特定多数の者が当該属性を有することを容易に識別することを可能とする情報を文書の頒布、掲示その他これらに類する方法で公然と摘示する行為を助長し、又は誘発するおそれがあることが明らかであるもの
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というコトになります。
ちょっと難しい文章になってしまいました。
しかし、さっき言いましたように、この部分はある存在をねらい打ちにした条文です。
それは「部落名鑑」などと呼ばれるモノです。
ひとつひとつ分解して解説していきましょう。
まず「人種等の共通の属性を有する不特定多数の者に対して当該属性を理由として」ですが、ポイントは「共通の属性を有する不特定多数の者に対して」という部分です。
これは「部落民だ」というような感じの言動を指します。
ただ「バカ」とか「アホ」といったような言葉ではなく、共通の属性を有する理由ですから、このようなあるカテゴリーを理由とする必要があるワケで、ここだけでかなり範囲が狭められていると言えるでしょう。
次に「国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する者、業として対価を得て物品、不動産、権利又は役務を提供する者としての立場において人種等を理由としてする不当な差別的取扱いをすることを助長し」ですが、これはもう説明しましたからいいですね。
「公務員とお店の人が業務上に差別的な取扱いをしてはならない」という意味です。
最後に「不当な差別的取扱いをすることを助長し、又は誘発する目的で、当該不特定多数の者が当該属性を有することを容易に識別することを可能とする情報を文書の頒布、掲示その他これらに類する方法で公然と摘示する行為を助長し、又は誘発するおそれがあることが明らかであるもの」を見てみましょう。
長いですが、よく読んでみてください。
「当該不特定多数の者が当該属性を有することを容易に識別することを可能とする情報を文書」とありますように、この条項では「文書のようなモノ」で「公然と摘示する行為」が該当するコトになっています。
では何を文章によって表明する行為がダメなのかと言えば、「当該不特定多数の者が当該属性を有することを容易に識別することを可能とする情報」です。
これは「あそこの地域は○○という差別されている属性をもっている人の集まりだ」という情報の公開であるワケです。
むしろそれ以外にはほとんど当てはまらない条文ですよね。
このようなコトから、この条項に当てはまる存在というのは、まず部落名鑑ぐらいしか当てはまらないと言えます。
他には「朝鮮人地域名鑑」なんてモノも、場合によっては当てはまる可能性はあります。
そのためには、「公務員とお店の人が業務上に差別的な取扱いをしてしまいかねない文章」という条件が必要になってくるワケで、差別が明らかに目的な場合、例えば「この名簿を参考にしてここに住んでいるヤツは商品の売買を禁止しよう」などとまですれば、ここに該当するかと思います。
結局は「不当な取扱い」をするかどうか、助長するかどうか、がポイントです。
また、これら以外であり得るとしたら、人種等には性的指向も含まれますので、「痴漢ビデオ所持者指名住所顔写真一覧表」なんてものがあったらアウトかもしれません。
少なくとも現行法では「痴漢ビデオ」の所持そのものは合法であるワケですから、そのような性的指向を持っているという理由だけで、もしこの一覧表を見てJRや私鉄に「乗車拒否」をされそうなコトが明らかであれば、この文書の存在はこの条文に該当するコトになります。
なお、間違えてはいけないのが、「痴漢犯罪者一覧表」ではないコトです。
犯罪者は、これは犯罪を犯した者というカテゴリーであって、すでに「性的指向」を越えてますので、ここには該当しないと考えられます。
つまり、そのような一覧を作って配布しても、少なくともこの法案には当てはまらないのではないかと思います。
ただし、やえの考えでは、いくら犯罪者と言えども、刑に服し刑期を終えた後であれば、もはや犯罪者ではないのですから、痴漢的な性的指向を持っていたとしてもそれはやはり性的指向でしかないワケで、前科者というだけで差別的な取扱いをしてはならないと考えます。
おそらく世論はそう考えないかもしれませんが。
ちょっと話がそれましたが、まとめますと、立ち入り調査の発動条件としては、【部落名鑑やそれに類する文書の公開】となります。
ついに最後です。
残りの第四十三条第一項第二号の
二 第三条第二項第二号に規定する行為であって、これを放置すれば当該不当な差別的取扱いをする意思を表示した者が当該不当な差別的取扱いをするおそれがあることが明らかであるもの
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です。
では最初から、他の条を引用した形で引用します。
人種等の共通の属性を有する不特定多数の者に対して当該属性を理由として公務員とお店の人が業務上において差別的な取扱いをする意思を広告、掲示その他これらに類する方法で公然と表示する行為であって、これを放置すれば当該不当な差別的取扱いをする意思を表示した者が当該不当な差別的取扱いをするおそれがあることが明らかであるもの
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前号と似ている部分が多い文章ですが、違うところは「差別的取扱いをする意思を表示した者が当該不当な差別的取扱いをするおそれがあることが明らか」という、表示した人が実際に行動するという部分です。
前号の場合は、「文書の頒布、掲示その他これらに類する方法で公然と摘示する行為」を禁止している、つまり部落名鑑を公開する行為を禁止しているワケですが、当号の場合は実際に「差別的取扱いをする意思を表示した者が差別的取扱いをするおそれがあることが明らかな場合」に該当するコトになります。
簡単に言うと、「部落の人は入店お断り」という張り紙を貼り実際に入店させない、という場合が考えられるワケです。
ここについて「では『朝鮮人お断り』はダメなのか」という意見がよくあるのですが、これはやえはダメだと思います。
人権擁護法案の中でダメという意味ではなく、現在の憲法法律の中においてダメだと思います。
つまりそれは差別だという意味です。
と言うと「朝鮮人は部屋を滅茶苦茶にして貸し主が被害を被る」と実例を出したりする人がいるのですが、しかしそれは「朝鮮人がやった」のではなく「朝鮮籍を持っている、ある人間がやった」のです。
悪いのはその個人です。
ですので、当然その個人に対し損害賠償やもしくは刑事訴訟も視野に入れて対処すればいいと思いますが、しかしその例だけを持って朝鮮人全体に当てはめて不当な取扱いをしていいというコトにはなりません。
また「キムチ臭い」という理由を挙げる人もいるようですが、ならば契約書に「キムチを漬けるコトの禁止」とでもつければいいでしょう。
悪いのは朝鮮人ではなくキムチ臭なのですから。
また、キムチには人権擁護法の定める「人種等」には該当しませんので、この法案だけを考えれば問題はないと言えます。
まとめますと、立ち会い調査の発動条件としては、【お店の人などが人種等の属性を理由として不当な取扱いをする意志を表示すること】となります。
これで以上です。
では最後に、もう一度条件をまとめましょう。
立ち入り調査が発動するためには、以下のどれかに該当する必要があります。
【虐待】
【公務・業務上において職務における差別的な取扱い】
【特定個人への属性を理由とする差別的言動があり、その相手が不快だと表明した場合】
【特定個人への職務上の地位を利用したセクハラがあり、その相手が不快だと表明した場合】
【部落名鑑やそれに類する文書の公開】
【お店の人などが人種等の属性を理由として不当な取扱いをする意志を表示すること】
よくこの法案の反対論として、「人権委員会が差別だと認定だけで立ち入り調査が行われる」という感じのコトを言っているところがありますが、これはかなり恣意的な書き方です。
少なくとも立ち入り調査が行われる場合というのは、かなり“限定的な差別行為”だけを対象としています。
そしてどれも、現行法下においてもかなり厳しい差別行為ですから、「この法案が通るととんでもない世の中になってしまう」と表現するのは、適切ではないと思います。
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