敷金を返せ!!〜体験に基づくアドバイス〜


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4.交渉術

 他の民事裁判等と違って、この敷金返還についてはほとんど借り主に分がある。バブルがはじけたドサクサと、法律的にはしっかりと整備されていないことを不動産業界が逆手に取っているだけなのだ。また、オレもはじめはそうだったのだが、多くの人間が「敷金は返ってこないモノ」という認識を持っているため、そこを不動産業者が突いて来ているワケだ。
 法的に言っても「慣習」というものが法に近い効力を持つ場合がある。だからここで消費者が退いてしまって敷金が返ってこないことが慣習になってしまったら終わりである。そのためにも敷金については全員が立ち上がって欲しいと思う。
 前置きが長くなったが、とにかく敷金返還については自分の方が正しく有利であると思っていればよい。敷金の全額返還を求めるのが自然であり当然なのである。相手がどんな屁理屈をカマそうが、こちらはそんなモノ気にせず全く強気に要求することが交渉のポイントである。逆に言えば、業者は屁理屈をカマしたり長引かせることによって相手(こちら)が“折れる”のを待つという戦略なので、そんなものには屈せず主張し続ければ必ずこちらが勝つのだ。業者は法的には不利なので、なんとかしてこちらに金を出すことを「合意」させるしか金を奪い取る手段がないのだから。
 オレが送った3通のFAXを見ても分かると思うが、全て全額返還を求めている。特に「清掃代」など契約書に盛り込まれているのにも関わらず半ば強引に主張を続けた。これは、の裁判についてのことに通じるモノがあるのだが、はじめからこちらが一部でも負担すると認めてしまうと、それは交渉材料とならず全くカヤの外にされてしまうからだ。つまり、仮にオレが「清掃代」を交渉カードに使わなかったら、T◎HT◎不動産(もしくはセ○ワ不動産)は「“洋間とキッチン”のクロス張替代を50%」というラインを固持していたかもしれない。「清掃代」はカヤの外なのでこれが「ウチとアンタと半分ずつね」とされてしまうのだ。これでは敷金全額を見た場合での負担割合はオレの方が多い。しかしオレは強引に「清掃代」を交渉の土俵に上げていたからこそ金額的に約半分となる「清掃代100%+洋室のみ張替代50%」というラインまでこぎつけられたのだと思う。自分で強引とは言っているが、しかしそういう主張は違法でもなんでもないし、借地借家法に基づいた根拠も存在しているので、それなりに説得力もある。自分の方から「悪いなぁ」なんて思ってはいけない。いや思ってもよいのだがそれを表面に出してはいけない相手に弱みを見せてはいけないし、相手の弱みがあればそれを突いていくのが本当の真剣勝負なのである
 敷金返還については全て「ガイドライン」と「借地借家法」でカタが付く。つまり、ヘコミや汚れ等はガイドラインでカタが付くし、特約は借地借家法第16条《借地権者に不利な特約は無効とする》で根拠を持たせることが出来る。特約の方は裁判になるとどうなるか結構微妙なとこだが、しかし交渉時にはカードにすることは可能である。よって、相当酷い(柱が折れてる等)場合を除き、そのほとんどの場合は全額返金を求めることが出来るのだ。それが交渉のスタートとも言える。
 そしてこちらが譲歩してはいけない。譲歩するのは業者の仕事である。何度も言っているが敷金は全額借り主のモノなので、一円でも業者に渡ればそれは全て業者にとっては儲けとなるのだ。だからこちらから譲歩はしてはいけない。こちらが「○○円でどうですか」と言ってしまうと、業者はその金額をラインに、例えばその金額の中間を取る可能性もある。「○○円」というのは、言ってみれば「その辺りまでは自分の過失」と認めていることで、弱点となってしまうので、そこを突かれてしまう。交渉には絶対に弱点を見せてはならないのだ。もう耳にタコかもしれないが、業者が敷金を取ろうとしていること自体が変な話で、それがすでに弱点となっているのだから、こちらが全額返金を求めるのは当然なのであり、相手の弱点を突き、強気に妥協しない方が良いだろう。こちらは向こうが金額提示してくるのを悠々と眺めていればいいのだ。


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