敷金を返せ!!〜体験に基づくアドバイス〜


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5.引き際

 この手の話では必ずと言っていいほど「引き際が肝心だ」とか「退くべきところは退く」という言葉が見られる。それはオレも反対しないが、しかしそれを「早期撤退をせよ」という意味に勘違いしてはいけない。むしろ敷金返還には長期決戦を望む覚悟を持ってしなければならないだろう。なぜなら早期決戦になれば必ず焦って業者のペースに乗せられてしまう。むしろそれは相手の思うツボなのだ。何度も言っているが、敷金というモノは借り主の金であるのだから、元々それを業者が奪い取ること自体がかなり違法的な行為なので、業者が“こちらの合意無くして合法的”に敷金を奪うことは不可能に近い。だから業者はこちらの合意を何とか得ようとしているのだ。それが業者に出来る唯一の方法なのである。そしてその方法として最も手っ取り早いのが「借り手がしびれを切らせて(不本意でも)合意させる」方法なのである。誰でも他人と争うのはイヤなモノである。そこをついて業者は長期戦に持っていき、こちらが「もう闘いたくない」と思うのを待っているのだ
 それをふまえれば簡単である。こちらが「いつまでも闘うぞ」と強い意志を持っていれば勝てるのである。借り主さえがんばって長期戦に耐えれば業者に勝てる見込みも根拠も無いのだから。
 ただしやはりこういう場合は色々なケースが考えられる。例えばオレの実例を見れば、「クリーニング代は契約書に書いてある」「一度は書類にサインしてしまった」という特殊な例がある。もし特約が無かったり煙草に関しての正しい知識がはじめからあれば、オレは敷金を全額返還してくるまで闘っていたことだろう。しかしなぜあの辺りで退いたのか。そこが引き際であり、見極めが大切なのだが、オレ流に考えるのであれば、その引き際を考える上でのラインを「裁判」に置いた。つまり「裁判をやってどこまで金を取り返せるか」であった。闘争記本文の中にも書いたが、もしオレのケースで裁判になった場合、「書類にサインしてしまったこと」が法的に有効となってしまった場合かなりオレに不利な判決が出てしまうだろう。具体的には最悪オレが1万5千ほど支払わなければならなくなるかもしれない。クリーニング代も同様で裁判でオレが勝てるかどうかはちょっと自信がない「書類にサイン」の件は正式なモノではないので不動産屋側も裁判でどうなるかはやってみないと分からないと思っているだろうから、敷金の半分以上取り返すことになるまで条件を出したのであろう。逆に言えば「書類にサイン」があっても裁判をして100%勝てると思っていたのであればオレはあそこで退いてはいなかった。さっき書いた「特約もサインも無ければ全額返還まで闘った」というのはこういう理由からである。それらがなければ裁判では必ず勝てるだろうから。
 よって、引き際の見極め方として「裁判になったらどのような判決が出るだろうか」というものを想定してラインにすれば良いと思う。なかなか素人には裁判というものは難しいが、しかしオレも素人だし敷金返還というものはそんなに複雑な事例ではないので、ちょっと勉強してみればよいと思う。「敷金は全て借り主のモノ」という絶対前提を忘れなければ引き際を見分けることも難しくはないだろう。


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