ドイツ軍と従軍慰安婦
コメント欄がおもしろい感じに活発なので、取り上げたいと思います。
コメントくださっている方々ありがとーございまーす。
初めてコメントさせていただきます。
>ドイツは国家管理型ではない軍の勝手にやったこと
何だかドイツ軍が民間団体か何かみたいな言い方ですね。ドイツ軍はれっきとしたドイツ国家の一機関なわけですから、こんな言い訳に何か意味があるんでしょうか?
ドイツ政府が慰安婦管理について軍を処罰でもしていたのならともかく、そうでないなら政府もそれを認めていたと考えるのが当然なんじゃないでしょうか。
>ドイツは国家管理型ではない軍の勝手にやったこと
この表現は私の要約でして、相手の言葉をそのまま抜粋するなら
>国防軍の慰安所なら第一次世界大戦の性病患者大量発生経験からの衛生管理を第一の目的としたもので、ナチに関係なく作ったでしょう。軍命令は確認できますがナチが関与したというなら資料を出してください
ということらしいです。
ドイツ連邦大学教授Franz Seidlerによると
1939年9月9日、ドイツ内相は、国防軍軍人の健康を守るため、街娼を禁じ、売春宿はすべて警察の管理下におき、衛生上の監督を受けるよう指令を発した。
1940年7月、ブラウヒッナュ陸軍総司令官は、フランス、オランダなど西方占領地のドイツ占領軍に対し性病予防のためドイツ軍人の利用に適切な売春宿を指定し、それ以外の利用を禁じる命令を出したが、ポーランド、独ソ 開戦後のソ連などの東方占領地にも同様の措置がとられた。海軍も軍港に軍管理の慰安所を置いた。
http://1st.geocities.jp/korea_ianfu/ianfu/doitu/iansisutemu/iansisutemu.htm
とのことで、ナチの関与は疑いようもないと私は思っていたのですが、「ナチは売春宿を警察の管理下に置くよう指示しただけ。売春宿を指定したのは軍で、ナチの指示があるというなら資料をだせ」と言われたら反論できないので、この点は議論では触れませんでした。
まず整理すべき点が、「国家」という概念と「ナチス」という概念です。
国家は言うまでも無く国家ですが、ナチスとは政党のコト(国家社会主義ドイツ労働者党)を指しますから、もしかしたら抜け道的に敢えて「ナチス」と言っている可能性があります。
つまり、「国家としては関与していたけど、ナチスは関与してない」という意味です。
軍命令は確認できますがナチが関与したというなら資料を出してください
この辺の言い回しがちょっと恣意的な気がして注意すべき点だと思います。
しかしそうであったとしても、当時のナチスはただの一政党ではなく、国家そのものであった点は見逃してはなりません。
1933年7月6日までにナチ党以外の既存政党はすべて解散に追い込まれ、ヒトラーが「党が今や国家となったのだ」と言明する事態となった[14]。7月14日には政党新設禁止法が公布され、唯一の政党であるナチ党以外の政党の設立・存続が禁止された。12月1日には「ナチズム革命の勝利の結果、国家社会主義ドイツ労働者党がドイツ国家思想の担い手となり、党は国家と不可分に結ばれる」ことが法律で定められた(党と国家の統一を保障するための法律)。この法律では党は公法人であるとされたが、1935年4月19日の「統一施行令」では「共同体」(Gemeinschaft)と定義しなおされた。
しかしこれらの条文も1942年12月12日の「ナチス党の法的地位に関する指導者命令」によって削除された[15]。党と国家の役割を定義する試みはしばしば行われたが、結局両者の境界は曖昧なままであった。この党の状態をマルティン・ボルマンは「ナチス党の地位は法律の規定によっては正しく把握しうるものではなかった」としている(ウィキペディアより)
完全に国家と一体とするコトは難しかったようですが、ナチ党以外の政党が存在せず、ヒトラーが総統に就任してからは選挙も一回も行われていないコトからも、当時のナチスというのは言わば現在の中国共産党に近い存在であると言うのが適切な表現になろうかと思います。
一時的にと言えども「党は国家と不可分」と法律でもって定められていましたし、それが削除されてからも、実質的にナチ党以外がドイツ国家と政治に関与するコトは不可能だったというのは誰しもが認めるところですから、それは中国にも衛星政党があるようなモノで、実質的には「中国国家=中国共産党」と同じように、「ドイツ国家=ナチス」と認識するのが当然でしょう。
となれば、
軍命令は確認できますがナチが関与したというなら資料を出してください
というのが詭弁であるコトは一目瞭然です。
これは言い換えれば、「中国警察命令は確認できますが、中国共産党は関与したという資料はない」と言っているようなモノで、そんなのは詭弁以外何者でもない言い方です。
そもそもこの人は何が言いたいんでしょうかというのはあります。
仮にナチ党が関与していないとしたとしても、軍命令がある以上は、「ドイツ国家が関与していた」のは確定なのですから、これだけですでに「日本は特異」とは言えないのです。
ちょっと支離滅裂な発言になっています。
最初に引用させてもらいました方が「何だかドイツ軍が民間団体か何かみたいな言い方ですね」とおっしゃっていますが、まさにその通りです。
ドイツ軍はれっきとした国家の一機関であり、もちろん警察もそうです、そうである以上はドイツ軍の動きは国家の動きなのです。
仮にコメントをして下さっている方の議論相手が、ドイツ軍やドイツ国家はどうでもよくて、とにかくナチスだけを擁護したいと思っているのでしたら、まぁ言い分も分からなくもない(それでも論理破綻してますが)ですが、その行為にどこまでの意味があるのかは不明です。
少なくとも、多くの日本国民にはまったく意味の無い擁護論でしょう。
そしてなにより、いくらナチス擁護をしたところで、それがイコールで「日本は特異」である論拠には一切なり得ません。
もうひとつのコメントを読んでいたらこんな一文が出てきたのですが
軍の組織的関与と(内務省や総督府も関与しているような)国家的関与は異なりますよ
これはどのような根拠で言っているのか謎です。
もはやここまでくると「俺ルール」ですね。
自分だけの中の自分ルールです。
これを証明するためには、少なくともヒトラー総統の権限の中に軍が入っていないコトを証明しなければなりません。
例えばアメリカ大統領の権限の中に米軍への命令が入ってなく、国防長官が大統領と「同列」であるとなっているのであれば、かなり苦しい言い訳ですが「軍の関与は国家的関与ではない」と言えるかもしれません。
いやまぁこれでも軍は「アメリカ国家の中の公組織」ですから、「国家的関与」であるコトは違いありません。
「ヒトラー総統と国防大臣が同列」であれば、そしてその国防大臣がナチ党でなければ、「ナチスは関与してない」とは言えるかもしれませんけどね。
でも「ドイツ国家の公組織」である以上は「国家的関与」です。
もはやこれは詭弁中の詭弁としか言いようがありません。
実はこれ言いだしたら、日本の方が「軍だけの独断」と言えるんですよね。
実は戦前の日本の内閣というのは「天皇の元に全ての大臣は同列」となっているからです。
総理大臣と陸海軍大臣は同列同等であって、総理大臣と言えども軍には命令は下せないのです。
有名ですよね、「統帥権は天皇にある」となっていたという事実は。
ですから、まぁ天皇の元に日本国家の公的機関であるというコトはもちろん言えるワケですが、少なくとも「(内務省や総督府も関与しているような)国家的関与」だけが「国家的関与」であると言えてしまうのであれば、日本こそがその通りであり、日本軍の行いは一切日本国家の関与ではなく、そうなれば従軍慰安婦も日本国家の行いではなくなってしまうでしょう。
詭弁ですね。
あと吉見教授の本は一切の証拠にはなりません。
なぜなら、その全ては吉見教授という個人の妄想しか書かれていないからです。
彼の本の中には彼が言う主張を証明する証拠が一切無いんです。
唯一証拠のような新聞記事を使っていますが、それもこの前言いましたように「違法な民間業者を取り締まるように」という軍の通達だけで、あとはなんら証拠を示していません。
証拠を示さず、ただただ「日本軍は強制した」とか書いているだけで、これは個人の妄想日記としか言いようのないシロモノなんですね。
吉見教授自身は「軍の施設として組織的に慰安所を作った国はほかになかった」と断言してる
とありますが、この人が断言したところで、それが事実であるコトにはなりません。
断言すればそれが事実となるのであれば、世の中裁判所なんて必要ないですからね。
この人の本にはこのような妄想しかないのです。
ですから、もはやこの詐話師の本を論拠に持ってくる時点で「お話にならない」と言うしかありません。
コメントをいただきましたPさんに、僭越ながらアドバイスをするのであれば、詭弁にだまされないようにしましょうというコトと、吉見教授なんてモノは一切論拠にならないというコトを覚えておいていただきたいと思います。
またもちろん、やえの言うコトも自分で論拠を確認するっていう姿勢も大切だろうと思います。
もしお時間あれば、吉見教授のデタラメさを、ご自分の目で確認していただければと思います。
このようなコメントも頂きました。
横槍ですみません。
国家管理よる慰安婦施設は問題があるというのが一般的な意見だと思いますが、一概にそうなのかという疑問があります。
国家管理=現地の女性に強制的な売春を強いるというイメージですが、自由意志による国家管理型の晩春なら軍組織直接、兵士よる慰安婦の犯罪抑止や性病予防、健康状態を国として管理もできますし、考え方によっては、民営による売春街を利用させるよりも兵士を組織として管理出来、治安をコントロールしやすいかと思います。
人権問題を考えたら国家管理型は避難が出るのは当たり前ですが、現場の女性の事を考えると民営の方が戦時中では無法状態とも言えるわけで危険ではないかと考えます。
沖縄の八重島の飲食街の米軍の為の売春の件もアメリカ軍じゃなく沖縄が性病予防などの管理(アメリカ兵の為ですが結果として女性の為になると考えます)をしていた歴史は、正しいのかと感じます。
つまり当時は国として責任を果たすとしたら国家管理型の方が本来、誠意ある行為でもあるのかと思います。
勿論、建前として自由意志よる国家管理型に限定されますか。
問題は国による強制的な売春があったかどうかだと考えます。
まさにその通りです。
前回言いましたように、現代でも様々な面で民間企業に国家からの規制や関与はあるワケですが、それは全て国民生活のためにあるワケですよね。
飲食店の営業許可も、国民の食生活の安全のためにあるワケです。
ですからなんでもなんでも「国家関与があるから悪」と言ってしまうのは、もはや陰謀論も超えた子供の妄想でしかないと言うしかありません。
そして同様に、「国家管理=国営」ではありません。
やえはいまのところ、戦前の日本においても従軍慰安婦が国営経営されていたという証拠は見たコトがありません。
軍が様々な形で関与管理していたのは事実です。
否定できるモノではありません。
しかし、国営であったという当時の証拠は見たコトがないのです。
当時の新聞広告を見ても、広告主は全て民間業者ですしね。
ですから、おそらく日本軍においても民間業者の運営のもとに従軍させていたんだろうと思われます。
イメージとしては、現在の衆議院参議院や中央省庁にセブンイレブンや吉野家が入っているっていう感じで考えるのが一番近いのではないでしょうか。
もしくはテレビによく出るとてもゆっくりお話をされる戦場カメラマンさんとかですね。
彼らはあくまで民間人です。
民間人として活動するため、自らの利益のために、政府機関に協力を得て行動を共にしているだけなのです。
もし日本軍が国営として従軍慰安婦を経営していたという証拠があれば、ぜひとも見せていただきたいと思います。
さらに言っておくべきは、国家運営であったとしても、それがイコール悪ではないというコトです。
国家運営が悪であれば、ちょっと前までの郵政も悪だというコトになってしまいます。
そして現在では売春は違法行為ですが、当時の法律や常識では悪ではなかったのですから、それをいまの常識で裁くべきではありません。
それはたいへんに野蛮な行為です。
ここもひとつシッカリと確認しておくべき点でしょう。
ディスカッション
コメント一覧
アドバイスありがとうございました。
>「ドイツ国家の公組織」である以上は「国家的関与」です。
というのはとても分かりやすかったです。
>詭弁にだまされないように
なかなかこれが難しいもので、特に「証拠を出せ」なんてこちらが言うと膨大な数の資料を挙げてきて「それを全部読め」というのがあちら側との議論の定番でして、これを読まない以上はそこから議論が進まない→証拠を出してるのにそれを見ようともしない歴史修正主義者、で対話が終わらせられてしまうのが常なのですね。
いざ資料を読んでみると「強姦を犯した兵士の処分に対する通達」を「このような通達を出さねばならぬほど兵士の強姦が日常的だった証拠→慰安所があっても強姦が横行してた証拠だ」なんてケースもあったりするので、不勉強を自覚して口をつぐむことがなかなかできないのですが、金と時間に限りある素人があたれる資料なんて限りがありますし、話が未読の資料に及んでしまうと「お前は不勉強だ」でいつも対話が終わってしまうのでした。
特に今回の議論は、
ttp://www.47news.jp/CN/201306/CN2013060401002072.html
こちらの記事の吉見教授の「軍の施設として組織的に慰安所を作った国はほかにない。日本の慰安婦制度は特異だった」の発言に対し、私が「ドイツもフランスもやらかしてた」と主張したことに端を発してます。
これに対し二名の方が「吉見教授の著書の該当ページを読め」と反論してきたのですが、ここで「吉見教授の書籍は論拠にならない」では対話にもならないために、該当ページを読んでみたところ、吉見教授はアメリカ、イギリス、ドイツ、ソ連の4つのケースを挙げ、
>以上の例からすると、アメリカ軍、イギリス軍に、ともに専用慰安所設置またはその試みがあったことがわかる。ほとんどがすぐに閉鎖されているが、それは本国の反発をおそれたためだった。社会運動・世論・議会など女性の人権を擁護する声がないかぎり、軍隊そのものが慰安所類似の施設を生み出していくという傾向がうかがわれる。この点では、日本が特殊だったということはできない。
>重要な問題は、女性の強制連行・強制使役、未成年者の使役などがあったかどうかであり、また問題が明らかになったとき、その閉鎖命令を出したかどうか、という点である。これらは今後の研究で明らかにされていくだろう。しかし、何より軍の中央が計画し、推進したという点で、イギリス軍やアメリカ軍と日本軍では、決定的に異なっていた。
と主張されてるわけで、フランスの例は挙げていない、ドイツとの類似性は認めている、決定的に違うのはアメリカとイギリスだけ、という文章を挙げて
>「軍の施設として組織的に慰安所を作った国はほかにない。日本の慰安婦制度は特異だった」
の反論にはなってないじゃないか、というやり取りの末に相手から出てきた言葉が
>軍の組織的関与と(内務省や総督府も関与しているような)国家的関与は異なりますよ
だったのでした。
(もう一名の方は「あくまで資料を読むのを拒むのか」と言い続けましたが…。)
資料を読んでるはずの側が噛み砕いて自分自身の言葉で語ってくれるのが一番助かるんですが、詭弁に対抗するには相手の挙げた資料を実際に読んでみなければそれが詭弁かどうかの判断もできず、延々と資料を挙げられると素人には限界がある、ってのが詭弁への対抗の難しいところですね…。