中国外交に惑わされないように

 日本国内のニュースだけ見ていると、ややもすれば中国は日本にだけ強行的な外交政策を行っているように感じてしまいがちですが、実際は違います。
 先日も尖閣諸島に何十隻もの中国船が不法侵入した事件がありましたが、それも決して日本に対してだけではなく、いま中国は不法的領土拡張路線を周辺国全てで行っています。
 それは例のフィリピンの国際仲裁裁判所の判決の件を見ればすぐ分かるコトですよね。
 またASEANの会議においても、反中国と新中国の国で対応が分かれ、突然議長国が声明を発表したと思ったら、その後すぐに撤回したなどの混乱もありました
 これらのコトを考えても、決して中国の不法行為の被害を被っている国は少なくないというのが、いまの東アジアの状況だと言えるワケです。
 
 その上で考えてもらいたいのは、この前もお話ししましたように、本来外交交渉の中身をベラベラ話してしまうコトは自らの弱点をさらけ出す、国益を失わせる行為だというコトです。。
 今回も中国の王外相が日本の再三にわたる抗議に対して強い反発を口にしていましたが、こんなの言えば言うほど「日本の抗議はイヤだ」と言っているようなモノなんですね。
 昔から日本外交に対して「弱腰だ」と言う人は多いですが、しかし言葉だけ強くすればそれで解決するかどうかというのは全くの別問題、いえ中国を反面教師にすれば全く無意味か、このようにむしろ弱点をさらけ出す結果にしかなりません。
 外交は国民のカタルシスを得るためのショーではないのです。
 むしろキチンと相手国の本音を見極め、中長期的にどう国益に繋げるのかを見極める必要があるモノなのです。
 
 これも最近よく言っているコトですが、外交っていうモノは二国間だけで考えるべき問題ではありません。
 例えそれが二国間外交での声明だったり交渉だったりしたとしても、その発言は様々な国が見聞きしますし、結果は周辺国をはじめ多くの国に影響を与えます。
 ましてそれが日本という先進国ならなおさらですし、中国だってもはや大国ですから、その両国であれば二国外交はもはや国際社会の関心事です。
 
 そうした中、日本が再三再四中国に抗議するコト、また岸田外務大臣が中国大使を外務省に呼んでしかも待たせて怒ったコト、何より国際仲裁裁判所の判決に対する日本の反応は、よほど中国にとっては都合の悪いコトなんだと想像できます。
 どれも、もはや我を忘れているのではないかと言いたくなるほどの中国の過剰反応が見て取れます。
 これってやっぱり、日本の言動が国際社会に大きな影響を与えていると見ていいでしょう。
 中国にとっては理由がどうあれ、「日本が中国に抗議をした」という事実が世界のニュースになるコト自体に脅威を感じているのだと思われます。
 まして国際仲裁裁判所の判決に対する岸田外務大臣の反応は、こちらの記事によると「世界で一番早い発表」だったようで、それだけに中国の危機感というのは相当なモノだと想像に難しくありません。。
 言わば先日の何十隻もの不法侵入は、その“報復措置”だったとすら言えるのではないでしょうか。
 
 しかし、当たり前ですが、こんなコトしても逆効果にしかなりません。
 結局日本としても大使にを待たせる形での抗議にまで発展し、また中国としてもいつの間にかすごすごと船を引き上げさせただけとなり、むしろ国際社会に対して「また中国がやらかした」という事実を突き付けた格好になっただけでした。
 もちろんこれは中国にとって失点にしかなりません。
 領土問題というのは多くの国で様々抱えている案件ですが、しかしだからといってこんな強引な手段を使って良しとする国なんてありません。
 やればやるほどロシアのように追い詰められるだけです。
 でも中国はそれが分からない、というか、いまだ古代帝国時代の気分が抜けないのでしょうね。
 「周辺国は帝国皇帝の言うコトを聞くハズだ」という、時代錯誤も甚だしい気分が。
 そうやっている以上、現代の国際社会の中では反発を招くだけなんですが、彼らは気づかない、いや気づきたくないのかもしれません。
 
 日本としては中国のこういう考え方に付き合う必要はありません。
 一番マズいコトは、中国の反応に日本国民の方が真に受けるコトです。
 「中国が怒っているじゃないか」は論外ですが、「中国に対抗してもっと強気に出ろ」も論外です。
 どうして国際社会の中で失点を重ねる中国と同じ行動をしなければならないのでしょうか。
 この辺は冷静に考える必要があります。
 
 日本政府を背中から撃って誰が一番得をするのか、そこをよくよく考えてもらいたいです。