こんなコトでは地方分権は達成できない-沖縄米軍基地移転問題-
やえも何度もここで批判しているところですが、地方分権っていまなぜか無条件で正義みたいになっちゃってるじゃないですか。
どういう形にするかっていう部分については色々な意見が出されて、時に議論になる時もありますが、しかしその前の前提の段階での「果たして本当に地方分権は必要なのか」という点についてが議論になるコトはありません。
むしろ「地方分権に反対」と言うだけで批判を受けるような、例えばこんなコトを選挙で言えば当選なんてできないんじゃないかと思われるぐらいの、いまそんな空気に日本はなっています。
でもこれっておかしいんですよね。
今日はここが本題ではないので詳しくはまたにしますが、例えば道州制ひとつとっても、地方分権とは「その地方の特色にマッチしたきめ細かい行政サービスを提供するため」なのですから、つまり行政区分は小さい方がいいワケで、それなのに地方ブロックを一つの行政区分にするっていうのはむしろ逆だと言わざるを得ないんですね。
やえにはそのブロックに何の意味があるのかさっぱり分からないワケで、まぁこのように現在の日本の地方分権に対する議論というのは、「地方分権」という結果だけが無条件無批判無議論のまま正義として先行し、本来本質であるハズの「何を達成すたるめに行うのか」という点がまったく抜け落ちていると批判せざるを得ないのです。
さてそんな歪んだ地方分権論ですが、このニュースもまた大きな矛盾をはらんでいる問題だと首をかしげてしまいます。
沖縄県が対抗措置へ=翁長氏「反対の民意出ている」-作業継続へ知事指示停止・政府
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐり、林芳正農林水産相は30日、翁長雄志知事が防衛省沖縄防衛局に対して出した移設作業停止指示を一時的に無効とすることを決めた。翁長知事は同日、農水相の決定を批判、移設阻止に向けて対抗措置の検討に入った。政府は今夏の本格着工を目指し、海底ボーリング調査などの作業を継続する方針で、政府と県の対立のさらなる激化は不可避な情勢だ。
この記事の内容は主題ではなく、この沖縄県知事が主張する「民意が出てるから止めろ」という主張についてです。
これ、地方分権という観点からは大変にデタラメな論だと言わざるを得ません。
だって、地方分権という形のあり方というのは、地方ができるコトは全て地方がやり、国家全体に関わる問題だけを国が分担するというシステムであり、具体的には外交と国防については国が担当するっていうのが地方分権のあり方のハズです。
おそらくいままでこの地方分権の総論に異論を唱えている人はいないですよね。
むしろ最初に言いましたように、これが無条件に正義だという前提で日本の地方分権論は語られていると言っても過言ではないぐらいです。
例えば全国知事会では、このような資料も公開しています。
2(地方公共団体及び国の事務の範囲等)
① 国が所掌する事務は、原則として、次に掲げる範囲のものに限定するものとする。(1) 天皇及び皇室に関すること。
(2) 外交、防衛及び安全保障に関すること。
(3) 司法に関すること。
(4) 国政選挙に関すること。
それなのに、これ、おかしいですよね。
沖縄の米軍基地問題は、外交問題であり国防問題でもある、完全に国が担当すべき課題です。
確かに基地があれば地元住民には他にはない負担があるとは思いますが、でもそもそもとして「なぜ沖縄なのか」という部分は、これは完全に地政学上の問題であり、安全保障の観点からの理由であって、よってこの基地問題というのはどこからどこまでも外交・国防・安全保障問題という国が担うべき問題でしかなく、地方分権の観点からもむしろ地方がどうこういう問題ではないのです。
よってこの問題には「地元住民の民意」なんてモノが入り込む余地はありません。
やえがおかしいと思うのは、普段地方分権地方分権という人に限って、なぜかこの問題についてはその観点から語ろうとしていないという点です。
地方分権の観点からは、むしろ地方分権を強く主張する人ほど、基地問題では「沖縄県は黙っていろ」と言わなければならないハズなのです。
でもマスコミを始めとして、こういう主張をやえは見たコトも聞いたコトもありません。
これ、矛盾しているんですよね。
こういうところを見ても、やっぱり地方分権というのはただの方便に成り下がっていると思わざるを得ないのです。
都合のいい時だけに絶対正義の盾とするために地方分権という言葉を利用しているだけだと、そう言わざるを得ないのです。
でも実際こんなコトをしていては、本当の地方分権なんて達成できるワケないですよね。
ディスカッション
コメント一覧
>nanakusa 様へ、横やりで失礼します
僕は「歴史的に沖縄には基地がある理由」も「地政学的な理由」だからだと思います
もし沖縄基地が無ければ米国の極東前線基地はハワイかグアムになってしまいます
冷戦時においてソ連の首元である極東は米国にとって今以上に重要な地域でした
ですから「日本は米国に基地提供する代わりに一方的に守ってもらえる」
という内容の新日米安保条約による日米同盟体制が50年以上も続いたのです
昔からあった理由も「地政学的理由」なのですから「完全」と断言してもそこまで間違いでもないでしょう
個人にはより対等な日米同盟を作って沖縄基地を減らすべきだと思ってますが
すみません、訂正です。
× ⇒ などの理由(他にも様々な理由があると思いますが)はないのでしょうか? とその点をお尋ねしているので、この点をお伺いしているのです。
○ ⇒ などの理由(他にも様々な理由があると思いますが)はないのでしょうか? とその点をお伺いしているのです。
>S.S様
まず、ご丁重なご返答いただきましたことに心より感謝申し上げます。
>軍事面からすると、戦力の分散は愚の骨頂
これに関してはまったく同意見であり、先日の書込でこの点を見逃していたことを謝罪いたします。
申し訳ありませんでした。
>集中させるに相応しい場所は何処かになれば、沖縄しか事実上選択肢がないという状態
この点も同意いたします。
ただそれは、
『歴史的に基地があるから』
という理由もあるのではないのかと思えてならないのです。
しかし、やえさんは
『”完全に”地政学上の問題であり、安全保障の観点からの理由』
と仰られているので
『歴史的に基地があるから、動かすのにコストがかかる』
などの理由(他にも様々な理由があると思いますが)はないのでしょうか? とその点をお尋ねしているので、この点をお伺いしているのです。
何が言いたいかというと、この非常に繊細で、複雑な問題を『”完全に”地政学上の問題であり、安全保障の観点からの理由』と言い切られていることに違和感を覚えたということです。
nanakusa様へ
「また、『安全保障上の問題』を考えるのであれば、むしろ他の都道府県にももっと『基地』が必要であるという意見もありえると思いますが、この点についても是非ご見解をいただきたいと思います。」
……やえさんではない、自分が見解を言うとすれば、「基地を置くに有効的な場所」ではないかと。
つまり、人も金も限られている以上、密林の中よりは都市に近い方が補給の面で有利といった具合ではないでしょうか。例えば屋久島は、地政学的には重要な場所ですが、基地を敷設するには不便な地形でしょう。
あと、軍事面からすると、戦力の分散は愚の骨頂です。では集中させるに相応しい場所は何処かになれば、沖縄しか事実上選択肢がないという状態でしょう。某国が南シナ海に「砂の長城」を作っている理由は、南西諸島にある日米の監視の目から逃れるためであると考えている次第です。
余談ですが、もしかすると、福岡県(対馬?)が第2の沖縄になる可能性になるかも?もっとも、在韓米軍の動向次第ですが。
非常に興味深い観点からの記事だと思います。
確かに、地方自治を理由に基地問題を語るのはずれていると思います。
>沖縄の米軍基地問題は、外交問題であり国防問題でもある、完全に国が担当すべき課題です。
その通りだと思います。
地方自治と国のあり方の基本です。
ただし、そのご意見は当然『国が間違っていない』ということが前提だとおもいます。
もしもやえさんが、国(=現在与党である自公政権)が間違っていることはありえないと無条件で信じているいうご意見なのであれば、それはもう何も言うことはないのですが、これまでのログをよんで、まさかそんなことをおっしゃられる方ではないと信じているので、話を進めます。
>「なぜ沖縄なのか」という部分は、これは完全に地政学上の問題であり、安全保障の観点からの理由
これが正しい(大前提)とやえさんは考えていらっしゃられるように思います。
しかし、私には『沖縄だけにここまでの基地を置かなければならない理由』が『地政学』と『安全保障の観点』だけで決まっているのかを自問するという視点が不足しているのではないかなと考えます。
『歴史』上、沖縄が米国の下にあった時期があり、米国の基地が元々あったから、沖縄返還後も基地を他県(ほとんど)に移さなかった(移せば他県が反発するから)という事情もあるのではないかという疑念がぬぐえないのです。
勘違いしないで欲しいのは、僕は沖縄に基地が必要ないと思っているわけではありません。また、沖縄県民でもありません。
『沖縄にも』基地は必要だと思います。なにしろ、尖閣諸島でああいうことになっているわけですから。
ただ、『沖縄だけ』に基地を集中させる理由を『地政学』と『安全保障上の問題』だけでは説明できないのではないかと疑問に思っているだけです。
また、『安全保障上の問題』を考えるのであれば、むしろ他の都道府県にももっと『基地』が必要であるという意見もありえると思いますが、この点についても是非ご見解をいただきたいと思います。
なにぶん、私は理系人間でして、『地政学』には疎いうので、もしかすると見当違いなことを書いているかもしれません。本当に『地政学』的に沖縄でなければならない理由があるのであれば、無学な私のために教えてはいただけないでしょうかというお願いをしているしだいです。