地方分権について考える 3

2012年4月15日

 今日は橋下さんの主張について1点考えておこうと思います。
 おそらく今回の選挙で橋下さんが一番強く主張しているであろう「二重行政」についてです。
 というのもですね、橋下さんの主張でやえが一番疑問なのが、この「二重行政」というモノなのです。
 大まかに言えば、橋下さんはこの「二重行政」を無くすために大阪都構想を打ち立てていると言っているワケですが、しかしやえにはどうしても分からないコトがあるのです。
 
 簡単に言いますよ。
 いくら「大阪都」にしたところで、二重行政は無くなりませんよ?
 だって、地方自治体としての区にしても、そこには区長がいて区議がいて独立した組織になるのですから、決して大阪都の下部組織・部下になるワケではないからです。
 
 橋下さんの言う「二重行政」というモノが具体的にどのようなモノを指し示すのかいまいち分からないのですが、例えばよく例として出てくる図書館とかのハコモノについてでも、いまでも東京都の中には区立図書館ありますし、区立学校とかもあるワケです。
 また権限の問題にしても、例えば市区町村の教育委員会と都道府県の教育委員会は別組織であって、それぞれに権限があって、教科書の採択問題においては市区町村の方に決定権があったりと、これだけ見ても決して都道府県の方の権限が強いというワケではないコトが分かるでしょう。
 一昔前に「新しい教科書をつくる会」で揉めたのは、東京都教育委員会ではなく、杉並区教育委員会でした。
 ですからもし橋下さんが「大阪区内では全て同じ教科書を使うべきだ」と言ったとしても、それは越権行為になるワケです。
 「大筋」とはどのレベルを言うのかという問題もあろうかと思うのですが、結局地方自治体として別組織が作られるのであれば、それは市でも区でも町でも村でも独立した組織になるというコトは忘れてはいけません。
 
 その上で考えて貰いたいのは、そもそも政令指定都市とは地方分権の理念の元につくられた制度だというコトです。
 政令指定都市は都道府県並みの権限が与えられている上に、ここがポイントなのですが、政令指定都市の下には地方自治体が存在しないというところがミソなのです。
 例えば東京都の区には区長がいて、これは選挙で選ばれた政治家ですから都知事から見ても部下ではありませんが、政令指定都市の区長は、これは市役所の職員の1ポストに過ぎず、よって市長から見れば完全に「部下」なのです。
 政令指定都市は市長が区長に対して一方的に命令するコトができるワケで、こう考えれば都知事よりも政令市の市長の方が権限は強いと言えるでしょう。
 だから政令指定都市は大きな権限をそのまま行使するコトができる、つまり地方自治が進むという考え方なんですね。
 
 以上のコトから、政令指定都市がダメで都構想の方が地方分権に沿うモノだというような言い方の橋下さんの主張には、やえは首をかしげるのです。
 政令指定都市の方がよっぽどのその権限と権力を振るい、自分の理念を実現できる場のハズなのですからね。
 
 だからですね、もし橋下さんが「日本の第二都市をさらに発展させるためには府知事ではなく市長になる必要がある」とだけ言って市長を目指すというのでしたら理解できるのです。
 しかし橋下さんはそうではないですよね。
 やえがいまのところの情報の中で判断するのであれば、橋下さんは、知事という立場から大阪市を好きに動かしたいと、そう思っているように感じるのです。
 大阪都にして、区長を自分の部下のように使いたいと、そのように想像しているのではないかと感じるのです。
 
 さらに言えば、素直に市長になるだけでは済まないように言っているのは、多分仮に市長になったとしても、それでも場合によっては府知事の権限も市内にありますから、それが煩わしいと橋下さんは思っているのでしょう。
 それは自分が府知事として色々とやってきたからこそ感じるコトなんだと思います。
 
 府知事だと大阪市内に十分にタッチ出来ないけど、市長になっても府知事が煩わしい。もっと自分だけが好き勝手できるコトができないだろうか。
 
 端的に言えば橋下さんのやりたいコトはこれなんじゃないでしょうか。
 上からも下からも、自分のやりたいコトに口を出して欲しくない、だからそのようなシステムを作ってやるんだと、その方法として「大阪都構想」を出しているんじゃないかと、やえにはそう感じるワケなのです。
 
 でもですね、それはちょっと違うんじゃないですかと、都にしても区を完全に支配下に置くのは無理ですよと、やえはそう言いたいんですね。
 端的に言ってしまいましたら、そんなのは「わがまま」でしかないです。
 前にも言いましたように、日本では絶対に3段階の行政区分が必要です。
 国と都道府県と市区町村ですね。
 これはおそらく憲法を改正しなければ崩せないシステムです。
 だから橋下さんの考え方はどうやっても無理なんですね。
 どこかで妥協して、他の首長さんや議会議員さんと調整しながら、協力してやってくしかないのです。
 もしくは、総理大臣を目指し、憲法を改正するかですね。
 
 橋下さんは権力だけが欲しい人ではなく、その先に自分の実現したい理念があるというコトは理解しています。
 だから権力のためだけにシステムをいじろうとしていると批判するつもりはありません。
 ですが、主張に矛盾があるというコトは指摘しておきたいのです。
 
 「都にしても二重行政は残りますよ」
 「地方分権の考え方からすれば政令指定都市の方がその理念に沿うシステムですよ」
 「政令指定都市の市長が一番権限を振るう場面が多いですよ」
 「でも、どの首長になったとしても、他の首長や議会議員との調整は絶対に必要ですよ」
 
 この全てをクリアしたいのであれば、やえは憲法を改正するしか手がないと思っています。
 少なくとも、橋下さんと維新の会のマニフェストを見ても、これらはクリア出来ないです。
 やえはそれを指摘しておきたいのです。