大臣は法的根拠があって権限を揮える

2012年4月15日

 最近マスコミの中では、自民党の国会での質疑の大臣の法的根拠を問う質問に向かって、「国会でクイズするのはやめろ」と言うのが流行っているようです。
 過去マスコミは、麻生内閣の時に民主党と一緒になって満面の笑みで漢字クイズをお得意のフリップを使ってテレビ番組でやっていたくせに、いまになって何を言っているのですかというところですが、さらにそれは中身を全く見ていない、批判のための批判、いつも通りの民主応援団をやっているだけとしか言いようがありません。
 
 国会で「○○を知っていますか?」という質問をするだけで「クイズだ」と揶揄するコトは、それは果たして正しいコトでしょうか。
 というかこの書き方だけでそれが不適切だと分かりますよね。
 いつも言ってます。
 批判というモノは論拠があってこそ成り立つモノですと。
 つまりこの場合、この質問が適切かどうかを論評するのであれば「○○」という部分について触れなければなりません。
 でもこの場合「○○」って書いてありますように、論拠についてははじめから触れていないんですね。
 これでは何を言ったって批判にはなりません。
 それはただの罵詈雑言、誹謗中傷です。
 マスコミはいま堂々と他人を誹謗中傷する罵詈雑言を他人に投げかけているのです。
 
 中身を見ます。
 麻生総理に対する「クイズ」は、漢字テストやらカップラーメンの値段当てでした。
 これ、大臣の職責になんの意味があるのでしょうか?
 知らなければ総理大臣の職になにかの不都合があるでしょうか。
 誰かに教えて貰うのでは何か問題があるのでしょうか。
 こんなのはどう考えてもクイズです。
 国会でする必要の全くない、バカバカしい揚げ足取りです。
 
 ではいま自民党が行っている質問はどうでしょうか。
 それは大臣に法的根拠を問う質問です。
 これ果たして本当に「クイズ」と読んで揶揄していい質問なのでしょうか?
 
 大臣って、大臣だから権限を持っているワケじゃないんですよ。
 大臣って、様々な法律に「大臣は~~できる」と書いてあるから権限を持っているのです。
 逆に言えば、法律に書いていないコトは大臣でも出来ないのです。
 
 自衛隊の最高指揮官は誰かと言いますと、それは総理大臣ですね。
 でもですね、この1文だけでもその根拠を求めるべきモノです。
 「なぜ総理大臣なんですか?」と。
 そしてその答えは、法律に書いてあるから、です。
 

 自衛隊法
 (内閣総理大臣の指揮監督権)
 第七条  内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する。

 
 他にも、統合幕僚長や陸上幕僚長や海上幕僚長や航空幕僚長などの自衛隊最高幹部は、防衛大臣の指揮監督を受けなければならないコトになっているのですが、ではなぜそれが防衛大臣なんですかと問われたとします。
 お金を出しているのは財務省なのに、なぜ財務大臣からは指揮監督出来ないのですかと聞かれたら、どう答えるでしょうか。
 答えは、それも法律に書かれているからです。
 

 (幕僚長の職務)
 第九条  統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長又は航空幕僚長(以下「幕僚長」という。)は、防衛大臣の指揮監督を受け、それぞれ前条各号に掲げる隊務及び統合幕僚監部、陸上自衛隊、海上自衛隊又は航空自衛隊の隊員の服務を監督する。

 
 大臣だからっていう理由だけで全ての大臣が自衛隊に命令できるワケではありません。
 命令できるのは総理大臣と防衛大臣だけです。
 でもそれも、法律でそう明記されているからです。
 防衛大臣が自衛隊に命令できる事実は、世界的な人間的な普遍的価値だからという理由ではありません。
 常識とかなんとかとかいうあやふやな理由ではなく、ただ単にシンプルに唯一の答えとして「法律に書かれているから」なのです。
 逆に言えば、法律を改正すれば財務大臣だって指揮権を持つコトは可能です。
 ただ「いまはそうなっていないだけ」というだけのお話しなのです。
 
 もう1つ例を出しましょう。
 例えばいきなり貴方のお家に突然警察が踏み込んで、書類やらなんやらを持ち出したとしましょう。
 これは許される行為でしょうか。
 違いますね。
 これは許されない行為です。
 なぜなら、そんな行為を警官が行っていいなんて、どの法律にも書かれていないからです。
 ただし、裁判所からの捜査令状があれば、それは可能です。
 なぜなら、そのように法律に書いてあるからです。
 この例から見ても分かりますように、強制権を持つ捜査権というモノは、決して「警察官だから」という理由で与えられているのではなく、法律に書いてあるから権限を与えられているだけというのが明確に分かるでしょう。
 法律に書いてあれば警察が突然踏み込んでもいいですし、法律に書いてあるからこそ裁判所の令状があれば突然踏み込んでもいいコトになっているのです。
 全ての根拠は法律なのです。
 
 公務員が公務として行動するためには、全て法的根拠が必要です。
 自衛官や警官が武器を携帯しているのも法令に定められているからこそ、役所の窓口で手数料を盗られるのも法令に定められているからこそ、大臣が命令を下すのも法令に定められているからこそなのです。
 
 自衛隊の装備によって敵の攻撃を打ち落とすにも、これは全て法的根拠があってこそです。
 北朝鮮から長距離弾道ミサイルが撃ち込まれた場合、果たして誰が打ち落とすという決定を下して、現場に命令を下すコトになるでしょうか。
 これは重要な問題です。
 もしこういう法令を蔑ろにしていては、権限のない人間が勝手に命令を下していては、それは軍部が暴走して勝手に戦線が拡大してしまった同じ轍を踏んでしまうコトになりますし、非常事態だからとか言いながら警官が民間の食料を勝手に接収するとか、そういう行為を許すコトになってしまいます。
 どんな場面であっても、法律によって国民の利益になるように公務員の行動を定めているのです。
 正解は、自衛隊法第八十二条の三に基づいて総理大臣の承認を得て防衛大臣が命令を下す、です。
 

自衛隊法第八十二条の三
防衛大臣は、弾道ミサイル等(弾道ミサイルその他その落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体であつて航空機以外のものをいう。以下同じ。)が我が国に飛来するおそれがあり、その落下による我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため必要があると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に対し、我が国に向けて現に飛来する弾道ミサイル等を我が国領域又は公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。)の上空において破壊する措置をとるべき旨を命ずることができる。

 
 もしこの事実を防衛大臣が知らなかったらどうなってしまうでしょうか。
 確認に時間がかかってしまって、結果的に打ち落とせませんでしたとかなったら、どう責任を取るというのでしょうか。
 大臣を含めた全ての公務員は、法的根拠があって行動するのであり、法的根拠もなく行動するコトは許されないのです。
 だからこそ、大臣は何が出来るのかというコトを、その根拠と併せて知っておくコトは、それは大臣の職にある者としての基本中の基本と言うしかありません。
 
 そしてこの事実を確認するコトが、「クイズ」と揶揄されるようなコトでしょうか。
 
 
 (つづく)