よーく考えよー論拠は大事だよー

2012年4月15日

 というワケで、大切なのコトなのでしつこくいきたいと思います。
 論拠って本当に大切なワケです。
 
 「現実的に原発問題を考えよう 2」でのコメントの中に、放射線物質がどのように拡散されているのかを表したような図のアドレスがあるモノをいただいて、それについて
 

 やえはドイツ語が分かりませんので、この表というか色分けがどのような意味を持つのか教えていただければと思います。
 この手の図っていうのは色々なところで出されていて話題になりますが、何が書かれているのかっていうコトを正確に読み取らないと、むしろデマを広めてしまう結果にしかなりません。
 絵だけのイメージで語っていい問題では決してありません。
 多分絵だけで示そうと思ったら、中国の黄砂に含まれる放射性物質の拡散具合なんて、とんでもないコトになりますよ。
 絵は絵です。
 そうではなく、それをデータとして読み取るのであれば、単位や意味などキチンと理解して示さないと意味がないというコトは指摘しておきたいと思います。

 
 とやえは書きました。
 図はこれですね。
 で、そのあとにですね、訳のコメントをいただいたんです。
 

 >ドイツ気象庁の予測データ
 http://www.witheyesclosed.net/post/4169481471/dwd0329
 >>この図は放出される放射性粒子の相対的な分布図(訳注:大気中)と題されており、下部の小文字部分には要注意:放出源の濃度が明らかでないため、この予想図には空気中にある放射性粒子の実際の密度が反映されているとは限りません。発電所からの仮想上の放出が天候条件によってどのように分布し希釈化されていくのかのみが表現されています。との注意書きがあります。
 と、あるので。放射性物質が『放出されたとしたら』どの部分で濃くなるのか程度の情報でしか無い模様です。
 希釈の濃度は、恐らく対数単位なので殆ど誤差の範囲じゃないかと。
 何より重要なのは、『実測データでは無い』と言う点で。本記事でも述べられている様に、民間の実測データに比べて説明力が著しく劣るシロモノであると言えますね。

 

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Relative Verteilung in Fukushima ermittelter radioaktiver Partikel
福島で放出された放射性分子の相対的拡散
 
Konzentration noch relativ hoch
比較的高濃度
 
Konzentration deutlich verdunnt
かなり低下した〔希釈された〕濃度
 
Konzentration stark bis sehr stark verdunnt
きわめて~非常にきわめて低下した濃度
 
Wichtiger Hinweis:
Die Darstellung erlaubt keine Ruckschlusse auf die tatsachliche Konzentration radioaktiver Partikel in der Luft, da die Starke der Quelle unbekannt ist. Es wird lediglich dargestellt, wie sich eine fiktive Emission am Kraftwerk in Abhangigkeit der Wetterlage verteilt und damit verdunnt.
 
重要な注意点:
この図から、実際の放射性分子の大気中濃度を逆に推理することはできません。なぜなら、発生源における〔放射能〕濃度が不明だからです。この図はただ、原子力施設における仮定的な放出量が気象状況によってどのように拡散され、それによって希釈されていくかを示したものです。
 
(出典元)
原子力資料情報室
http://cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=1056
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そんなわけで、あまり有益なものとは言えません。
震災後やたらとネット上で見かけましたが、まだ出回っているんですね。。。

 
 これも震災直後に何度も言ってきたコトなんですが、放射線なんていうモノは原発事故が起こる前から「自然放射」として普通にあるモノで、放射線とはほんのちょっとでも浴びればアウトというモノではありませんから、それは病院とかでレントゲンを浴びたコトのある人がほとんどだと思いますから言うまでもないコトだと思いますし、つまりは大切なのは「どれだけの量」を浴びたかという部分なワケです。
 レントゲンだけでなく、飛行機に乗るだけでも普段より多く浴びますし、ラドン温泉なんていうのは放射線が他より強いからこそ身体に良いという理屈ですし、さらに自然放射線の強さは土地によって違って日本より全然多い地域に住んでいる人もいますけど、そこでは特に健康被害が出ているという統計は出ていないコトも分かっていたりしますように、こんなのは実は原発事故前は日本人全員が普通に理解していたコトのハズなんですね。
 ですからそういうコトも比較しながら、ではどれだけの量を浴びると健康に被害が出てしまうのかというコトを考えなければならないワケで、よってこの手の図を見るには、どこに「どれだけ」飛散したのかというコトが非常に大事なのです。
 
 なにより、その「どれだけ」の部分によって、この図の意味合いは全く変わってきます。
 例えば、この図の一番薄い部分だけでも50年人が住めない土地に変わってしまうぐらいの量であれば、とんでもないコトを示す図になりますが、逆に一番濃い部分でも全く健康に害のない量であれば、この図はむしろ安心を促す意味合いが出てくる図となるでしょう。
 同じであっても、色の意味合い1つだけで正反対の図になってしまうのです。
 このように、大切なのは図ではなく、正確なデータなのです。
 
 で、この図って「震災後やたらとネット上で見かけましたが」とご指摘いただいたので、たぶんけっこう有名なモノなんだろうと思うんですが、ごめんなさい、やえ見たコトありませんでした。
 似たような図はいっぱい見てきたんですが、これドイツ語ですから、もしかしたら見たコトもあったけど記憶の中に留められなかったというモノなのかもしれません。
 だからですね、やえ、この図を知っていたから、この図はアテにはならないって言ったワケじゃないんですよ。
 もともとこれはダメな図だって知っていたから、ああ言ったワケではないのです。
 そうではなくて、図の訳とか、図の他の人の評価とかを知らなくても、この図はこれだけでは論評する段階のモノではないと思ったんです。
 それはなぜかと言うと、これこそが「論拠」なワケなのです。
 この図には論拠が無いんですね。
 
 最初この図のアドレスを出した人というのは
 

 …えっと、福島原発の事故が「あの程度」で済んだのは偏西風の風下に海しかなかったためですからね?
 この地図を見れば浜松の辺りで福島と同等の原発事故が起きたらどんな事態になるか大体想像がつくと思われるのですが。

 
 とコメントしているように、この図を見ればいかに大変なコトに日本がなっているかやえの認識を改めろという趣旨としてこの図を使っているワケですが、でもそれだけ言われても、「どう大変なのか」という論拠がないので、それだけではやえは結論を出すコトが出来なかったんですね。
 「原発事故は大変だ」というだけでは、なにが大変なのか分かりません。
 例えば「明日あまおちさんが大変なコトになる」と書いただけでは、なんのコトやら分かりませんよね。
 ほとんどの人が間違いなく「どう大変なんだ」と思うコトでしょう。
 だって想定できる答えがたくさんあるからです。
 もしかしたら明日スケジュールがつまり過ぎて大変なのかもしれませんし、もしかしたら会いたくない人に会わなければならないから大変なのかもしれませんし、もしかしたら格闘技の試合にでるので大変なのかもしれませんし、もしかしたら小さい女の子に手を出してしまって逮捕されるから大変なのかもしれません。
 「大変だ」と言うだけでは、全然分からないんですね。
 論拠がないからです。
 「大変だ」というのは結果でしかなく、本来他人に物事を伝える場合というのは結果ではなく論拠こそが重要であって、論拠がない限り本来は他人には物事は伝わらないのです。
 
 そしてこの図というのは、論拠が全然ないんですね。
 少なくともですよ、ドイツ語が理解できない人にとっては論拠には絶対にならないのです。
 ましてドイツ語を翻訳してみても、論拠には全くならない図だったコトが判明したワケで、
 
 いま世の中には放射能に関する色々なお話しが出回っています。
 中には明らかにデマだと言うべきモノもあります。
 未だに奇形児が生まれるから結婚できないとか平然と言ってしまっているツイートもよく見るワケですが、こういう情報を目の当たりにしたら、まずは論拠を考えるようにしてください。
 論拠はなんだと、そう思ってください。
 世の中、残念なコトに論拠や根拠がまともに存在しないのに、結果だけを抜き出して拡散しようとする人がたくさんいます。
 特にネットではそれが顕著です。
 だから、なんにしても論拠を考えるようにしてください。
 そうすれば、デマに踊らされるコトもなくなりますし、少しずつ真実に近づくコトも出来ます。
 
 もちろんやえが言っているコトだって、論拠薄弱と思えば遠慮無く指摘してください。