自分の都合のいいように選挙制度を好き勝手操作しようとしている民主党

 昨日、民主党は自民党や公明党、共産党など、生活を除く野党の反対を押し切って選挙制度改革法案の審議入りを強行しました。
 昨日から言ってますように、先週からずっと自民党が主張し続けている尖閣諸島や竹島問題に関する予算委員会での集中審議を無視しておいて、自分達の主張だけは強引に推し進めるという、まぁいつもの民主党の姿です。
 ただそれは単に意見の相違というだけではなく、昨日も言いましたようにやろうと思えばもう委員会も終わっていたというタイミングでの未だの拒否……今日やっと衆議院での集中審議がありましたが、これは結局単に民主党が外交に関する集中審議をしたくないという、民主党の外交政策を象徴するかのような対応なワケです。
 実際ひどい政府答弁だったようですしね。
 まして自民党も、憲法問題である一票の格差を是正するタメの法案はすでに提出済みです。
 今回の民主党の暴挙というのは、その提出済みの法案すら無視した蛮行であり、ここも含めて「自民党が言った、民主党が言った、民主党の主張だけが通った」というだけの問題ではないというコトは、キッチリと押さえておくべきコト、中身を見て判断すべきコトだと言えるでしょう。
 
 この問題、ひとことで「選挙制度改革」という言葉に騙されがちですが、よくよく中身を見て、切り離すべきところは切り離して考えなければなりません。
 すなわち、「憲法問題である一票の格差問題」と「票の取扱いをどう考えるべきかという選挙制度の問題」とは、これは全く次元が別の問題だというコトです。
 
 民主党が昨日審議入りを強行した法案は、この2つが一緒になっているモノです。
 ざっくり言いますと、「0増5減」の部分と、「比例代表連用制」の部分です。
 「0増5減」は一票の格差問題是正の内容、つまり憲法問題の内容です。
 「比例代表連用制」は、比例代表制の議席数の取り方を変えようという内容ですから、これは一票の格差とは全く関係がない、「票の取扱いをどう考えるべきかという選挙制度の問題」です。
 
 具体的に説明します。
 「0増5減」は全国の小選挙区の数を5つ減らすという内容のモノです。
 選挙区を無くすというコトは、つまり別の地域と合併させて1つの区にまとめるという意味ですから、これを行った地域は有権者数が増えるんですね。
 一票の格差とは1つの選挙区に有権者数の数の差が開きすぎているから起きる問題ですから、よって有権者数が少ない区を地理的に広くしてそこに住んでいる人の数を増やし=有権者数を多くすればその差は小さくなるワケですから、これでもって格差を是正しようとしているのが、この「0増5減」の法案なのです。
 
 「比例代表連用制」は、比例代表制の議席の取り方を変えようという内容のモノです。
 投票の仕方は今までと変わりませんが、その後、議席の配分の仕方を変えるのです。
 詳しくは後日説明しますが、要は小選挙区でたくさん勝った政党には比例ではあまり議席を与えないようにするという内容でして、これは小政党に配慮するという意味合いで検討されている制度なんですね。
 その是非については次の機会に譲るとして、「比例代表連用制」の法案は比例代表の入れ方は変えないままに、出口部分の「議席数の配分を変える内容だ」という法案なのです。
 
 ですから「比例代表連用制」は、選挙区の問題とは直接は関係がありません。
 「比例代表連用制」にするとその議席の取り方で小選挙区が関連してくるのですが、基本的に比例代表の問題ですから、ここをいじっても全く小選挙区の格差の問題に影響してくるコトはありません。
 よって、「一票の格差問題」とはこれは全く関係がないんですね。
 
 そもそもなんで今「次の選挙までに選挙制度を変えなければならない」とされているのかと言えば、それは最高裁判所が「一票の格差をなんとかしろ」と判決を出したからです。
 間違えてはいけないのが、決して最高裁が「いまの選挙制度全体が違憲状態だ」と言っているワケではないところです。
 最高裁はあくまで「一票の格差をなんとかしろ」と言っているだけで、さらに言えば「0増5減」でなくても、格差さえ無くせばいいと言っているんですね。
 まぁ中身についてはともかくとしましても、最高裁は一票の格差があるからいまのままではダメだと言っているだけで、つまりここの部分をもって「憲法違反状態」だと言っているワケですから、三権分立の中ではこの違憲判決が出た以上は改善する義務があるとさえ言えるぐらいのコトである以上は、まず喫緊の問題としてはこの「一票の格差の問題」をなんとかしなければならないワケなんですね。
 「一票の格差を無くす」という行為だけが「憲法違反状態を改善する」コトになるのです。
 
 こうやって整理するとですね、「比例代表連用制」はいま議論する必要は無いコトが分かります。
 議論するなとは言いません。
 でも、「一票の格差の問題」は「違憲判決」という絶対の重しがあり全ての国会議員が「格差の是正」という目的においては異論を許さない(手段については別意見が合ってしかるべきですが)問題である一方、「比例代表連用制」は票の割り方に関する問題であって、ここは最高裁や憲法が介在していない問題であって、人によって様々な意見が存在すべき問題です。
 つまり「比例代表連用制」は「議論に時間がかかる問題」なんですね。
 そういう意味から、違憲状態は一刻も早く改善しなければならない問題に対し、連用制はむしろ時間をかけて議論して熟慮すべき問題、特に民主主義の根幹に関わる問題なんですからね、時間をかけにかけるべき問題ですから、やっぱり切り離して考えなければならない問題なワケです。
 
 だって民主党はこの2つの案を1つの法案に混ぜ込んでしまっていますが、先程も言いましたように連用制に関しては様々な意見があって議論すべきコトなんですけど、混ぜ込んでしまっている以上、そこの部分で議論が長引けば「一票の格差問題」まで引きづられて成立が遅れるコトになるワケです。
 1つの法案にしてしまっているのですから、これは当然の結果です。
 だからこそ別々の法案にして審議しなければならないんですよ。
 もし別々の法案なら別々に出来る、むしろいまの段階では「0増5減」という手段については元々は自民党案ですが、ここの部分については民主党をはじめとする他の党からも異論は出ていない方法なので、もしこれだけの法案を審議すれば、それこそ衆議院で1日、参議院で1日の、計2日間で成立が可能とすら言えるモノなんですね。
 まぁ実際はそれは難しいとは思いますが、少なくとも今この問題で国会が荒れているのは、ここを一緒にしてしまっているからおかしくなるワケなのです。
 
 結局民主党は「早急に憲法問題を解決する気」がないんです。
 だってそうしておけば、「憲法問題が解決してないから選挙は出来ない。よって解散も出来ない」と言い訳に使えますからね。
 本当に国家を適切に運営しようと思うのであれば、本心から党利党略がないのであれば、まず「0増5減だけの法案」を提出して成立させていたコトでしょう。
 この問題はいったいどれぐらい前から俎上に上がっていたというのでしょうか。
 そうせずに自分達の別の法案だけを審議入りさせるというのは、これはもう完全に党利党略でしかないのです。
 国家の根幹よりも、民主党の利益の方が大切だと、民主党は態度で示しているのです。
 
 実は「連用制」という制度も、その中身を見ればとんでもないモノだというコトが分かります。
 民主党は行動もデタラメですが、法案の中身もデタラメなのです。
 次回、この連用制について詳しく解説しようと思います。