連用制とは民主主義を破壊する制度である

 昨日は民主党が選挙制度改革というお題目を楯に憲法違反状態を本気で改善しようとしていないというコトを説明しましたが、今日はその民主党が導入しようとしている「比例代表連用制」について、そのデタラメさを指摘しておきたいと思います。
 
 まず参考にしましたのはこちらの記事です。
 これだけではなかなか難しいのですが、ザッと目を通して下さい。
 

 「連用制」 得票数に比例せぬ「比例代表」
 
 さて、問題の「連用制」。得票数を「1、2、3…」と割るところまでは「並立制」と同じだが、議席配分の方法が異なる。ブロック内の選挙区の結果を比例代表に「連動」させ、選挙区で当選した人数分の商を除外するのだ。具体的には、選挙区で5人当選した民主党は、比例得票数を6で割った商(約16万票)以降を議席配分の対象とする。同様に、選挙区で8議席を得た自民は9で割った商(約8万票)以降を採用していく。
 公明党は同ブロック内の選挙区に候補者を擁立しておらず、選挙区の当選者はゼロ。比例得票数を1で割った約29万票が1番目の議席となる。

 
 まず今までの比例代表制度について説明します。
 概念的に言えば、文字通り「得票数に比例した数の議席を得られる」という制度でして、ものすごく単純な数字で説明すれば、議席定数が10の時、A党が5万票・B党が3万票・C党が2万票という得票であれば、A党に5議席・B党に3議席・C党に2議席を配分するという考え方の制度です。
 まぁこれは分かりやすいですよね。
 で、考え方としてはこうなんですが、実際の計算ではもうちょっと複雑になります。
 実際の選挙ではこんな綺麗な数字にはならないですからね。
 
 実際の計算はこうなります。
 まず得票数を1から順に整数で割っていきます。
 この整数に特に意味はありません。
 比例数に応じさせるための計算上の数字と思って下さい。
 整数で割って、その答えの数字を出していきます。
 
 先程の例で言えば、まずA党の場合は1で割って「5」、2で割って「2.5」、3で割って「1.6」、4で割って「1.2」、5で割って「1」、6で割って「0.8」ですね。
 どこまで割るのかというのは、議席数によります。
 関東などの議席数が多い比例区では5とか6とか、ヘタしたら10とか、そういう整数まで割らなければいけないかもしれません。
 そしてこれを全ての政党でやります。
 B党だと「3」と「1.5」と「1」と「0.7」、C党だと「2」と「1」と「0.6」と「0.5」ですね。
 
 次にこの整数で割った数字を多い順に並べます。
 
 1番目…5  :A党
 2番目…3  :B党
 3番目…2.5:A党
 4番目…2  :C党
 5番目…1.6:A党
 6番目…1.5:B党
 7番目…1.2:A党
 8番目…1  :A党
 8番目…1  :B党
 8番目…1  :C党
 
 定数は10だと、こうなりますね。
 整数はA党の場合だと5まで必要でしたが、C党の場合は2までで十分でした。
 このように計算上必要なだけの整数なので、その意味は考えなくてもかまいません。
 
 では、当選した議席数を政党ごとに数えてみましょう。
 A党は5議席、B党は3議席、C党は2議席ですね。
 はい、綺麗に比例数に応じた数になりました。
 もちろんこれはおそらく数学的に比例数に応じた分け方の計算方法なのでしょうから、どういう仕組みでこうなってしまうのかはやえにはちょっと理解出来ませんが、とにかく、この「整数で割った数を並べていく」という計算をすると比例数に応じた議席数を獲得出来るというコトを理解していただければ大丈夫です。
 
 ここまでが今現在の比例代表制度の仕組みです。
 では連用制の説明に移りますが、連用制もこの「整数で割る」という作業までは一緒です。
 分かりやすく先程の例で出した「整数で割った後の数字」を政党ごとに並べてみましょう。
 
 A党:「5」「2.5」「1.6」「1.2」「1」「0.8」
 B党:「3」「1.5」「1」「0.7」
 C党:「2」「1」「0.6」
 
 ここからが違います。
 連用制では、ここでそのブロックの小選挙区での当選議席数が関わってきます。
 例えばこのブロックでの小選挙区でのA党の獲得議席が3だった場合、A党は4番目の数字からしか並べるコトが出来なくなります。
 つまりこの場合のA党の「整数で割った時の最も大きい数字」は「1.2」になるんですね。
 よって、仮に他の政党の小選挙区での獲得議席が共に0の場合の順番はこうなります。
 
 1番目…3  :B党
 2番目…2  :C党
 3番目…1.5:B党
 4番目…1.2:A党
 5番目…1  :A党
 5番目…1  :B党
 5番目…1  :C党
 8番目…0.8:A党
 9番目…0.7:B党
 10番目…0.6:C党
 
 これで獲得議席数が変わってきますね。
 A党は3議席、B党は4議席、C党は3議席です。
 これが連用制です。
 
 建前は「小政党に配慮する」というモノです。
 この例で言えば、最終的にこのブロックで当選する議員数というのは小選挙区も合わせれば、現在の制度なら「A党8議席・B党3議席、C党2議席」ですが、一方連用制だと「A党6議席・B党4議席、C党3議席」となります。
 確かに小政党に配慮するという形にはなっていますね。
 
 でもこれおかしいですよね。
 結局投票する側としては小選挙区は小選挙区、比例は比例で別々で意識して投票しているハズなのに、しかし連用制だと結果的に小選挙区に投票した結果その議員の政党の議席を減らしてしまうコトに繋がってしまうワケです。
 おかしいですよ、それ。
 さらにおかしくなる場合が、小選挙区の獲得議席と比例での獲得票数が正比例しない場合です。
 つまり、X政党はY政党に対して小選挙区ではたくさん勝ったけど、比例の票数はY政党の方が多かった、という場合です。
 連用制の場合比例の結果は小選挙区には全く影響しませんが、小選挙区の結果は比例に影響しますので、つまり比例だけを考えれば、比例票はたくさん得つつ小選挙区ではあまり勝たないという場合が一番「得」なんですね。
 
 実はこれ、民主党と自民党の関係がまさにこれなワケです。
 
 自民党は選挙区選挙が強い政党です。
 この前の参議院選挙でも、比例は民主党の方が多かったですが、全国の選挙区では圧倒的多数の勝利を得たので、議席数では自民党が勝ったというコトになりました。
 選挙は人を選ぶ行為ですから、人を見ずして適当に入れるから素人集団のいまの民主党の体たらくがあるワケですから、「代議員」を選ぶという意味では、これは至極当然の結果だと思います。
 でも連用制は、これを壊す行為なんですね。
 比例を軽視しろとは言いませんが、でもむしろ連用制とは「選挙区を軽視しろ」という意味にしかなっておらず、これはどう考えてもおかしいと言わざるを得ないワケです。
 
 例えば最初に引用した記事に書かれているんですが、平成21年衆院選の「四国ブロック」(定数6)の結果を連用制で当てはめると、なんと「(従来制度で)比例で2議席を得ていた自民党の議席は、(連用制の場合は)選挙区で勝ちすぎたために消滅」するんですね。
 メチャクチャだと思いませんか?
 結局これも記事で指摘していますが、「(自民党が国民から負託された)比例得票数約72万票は事実上の「死に票」となる」んですよ。
 72万人の方の「自民党に対する期待」は全て無かったコトにされてしまうワケです。
 72万票も得ておいて獲得議席が0ってどう考えても変ですよ。
 しかもその理由が「小選挙区で勝ちすぎたから」っていうのは、ますます変です。
 国民からの支持が多いからこそ議席が減らされる。
 こんなのはもはや民主主義ではありません。
 
 説明が長くなりましたが、この連用制というモノの制度を理解すると、民主党の悪巧みが見えてくると思いませんか?
 つまり民主党は自分達が有利になるような制度に変えてしまおうとしているのです。
 少しでも議席数が多くなるよう、投票結果を変えるコトはできませんが、制度を変えてしまうコトで議席の方の結果をねじ曲げようとしているのです。
 まして先程も言いましたように、この連用制は小政党に出来るだけ配慮するというモノです。
 大政党同士でも小選挙区が弱くて比例が強ければ得をするという制度な上に、小政党になればなるほど「実際に得られる議席よりも多く得られる」ようになりますから、次確実に小さくなる民主党にとっては本当に都合がいいんですね。
 例えば本来100議席が制度変更で101議席になるっていう数字よりも、10議席だったのに制度変更のおかげで11議席になったというのであれば、これはもう意味合いが全然違ってきますから。
 民主党はこれをたくらんでいるのです。
 
 昨日説明しましたように、民主党は本来からめてはならない問題である憲法問題とこれをからめて、強引にコトを進めようとしています。
 またそれが回避されたとしても、二段構えでこんなトラップを仕掛けているんですね。
 民主党としては、それで解散が遠のけばそれはそれで良し、もし自民党が解散を優先して連用制が成立すればそれはそれで良し、という。
 完全に党利党略でしか考えてないワケです。
 全てがデタラメですね。
 
 仮に民主党のデタラメに目をつむったとしても、この「連用制」っておかしいと思いませんでしょうか。
 こんな制度、民主主義を破壊する制度ですよ。
 いま国会が民主党のせいで荒れていますから、これがどう審議されるかは分かりませんが、この法案は本当にデタラメだというコトを今の段階で指摘しておきたいと思います。