議員定数を減らすとそれだけ独裁に近づく

 今日は議員定数についてお話ししたいと思います。
 キッカケはこの記事です。
 

 橋下氏の「衆院定数半減」公約、各党が批判 「民意反映できない」
 
 大阪市の橋下徹市長が衆院定数(480人)の半減を、自身が代表を務める「大阪維新の会」の公約集に盛り込む方針を表明したことを受け、与野党で27日、疑問や批判の声が相次いだ。
 民主党の輿石東幹事長は「国民の民意が反映できるのか、はなはだ心配だ。一気に半数というのはなかなかできない」と指摘。自民党の石原伸晃幹事長は「何とも言えない」とした上で「過疎地と都市部の配分をどうするか、完全に1票の格差をなくしてから実施するのか」と具体的な内容を示すよう求めた。

 
 国会議員の定数を削減するというお話です。
 特に記事にありますように、大阪の橋下市長はなんと国会議員を半分にすると息巻いています。
 ただ橋下市長が言わずとも、最近の世の中は議員定数を削減するコトが正義だと言う雰囲気になっています。
 正直その論拠はどこにあるのかちょっと分からないのですが、とにかく議員定数を削減するコトが正義で、それを主張するコトが正義だと、今はこういう雰囲気になってしまっていますね。
 
 ではまず、本当の日本の国会議員は数が多すぎるのかどうかという点を考えてみましょう。
 実はこの部分はマスコミがミスリードしますのでよく誤解されているのですが、日本は先進国の中でも特段国会議員数が多いというワケではありません。
 先進諸国の実情をザッと書き出してみます。
 
 アメリカは上院100人、下院435人の、計535人…人口約3億1300万人。
 イギリスは貴族院704人、庶民院650人の、計1354人…人口約6100万人。
 フランスは元老院343人、国民議会577人の、計920人…人口約6500万人。
 ドイツは連邦参議院69人、連邦議会598人の、計667人…人口約8100万人。
 そして日本は、参議院242人、衆議院480人の、計722人…人口約1億2800万人です(全部ウィキペディア調べです)。
 
 イギリスがダントツですが、歴史的経緯から貴族院の性格が他の国の上院とは異なりますし、また同様にドイツの連邦参議院も選挙で選ぶワケではないので除外するにしても、それでも議員1人当たりの人口数というのは、並べるとこうなります。
 
 アメリカ…58万5046人
 日  本…17万7285人
 ド イ ツ…13万5451人。
 イギリス… 9万3846人
 フランス… 7万0652人。
 
 人口比で見ればアメリカがダントツで「議員1人当たりの人口が多い=人口比における国会議員の数が少ない」ですが、日本はなんとその次なのです。
 アメリカの場合は州知事の権力がかなり大きいというコトもありますし、アメリカ上院は一票の格差を完全に無視して全州で同数の定数にしているというのもある(結果的に選挙を経ないドイツを除き上院の中ではかなり少ないですね)のでしょうけど、アメリカがかなり議員数が少ないのは確かです。
 でもそれにしてもむしろこれはアメリカが異常なだけであって、日本は他の先進国と比べれば人口比で考えれば議員数が少ない方だと言える部類というのは、これはもう事実として踏まえなければなりません。
 フランスなんて、人口で考えたら日本の倍以上の国会議員がいるってコトですよ、これ。
 
 よってまず、マスコミの常套句である「海外と比べれば」というセリフには騙されないようにしてください。
 むしろ海外と比べれば日本はかなり議員数は少ない方だと言えるのです。
 海外と比べるのであれば、日本は国会議員の定数を減らす必要は全くありません。
 増やしてもいいぐらいです。
 
 議員数をどれぐらいにすべきかというのは、特に規定や世界基準なんてモノがありませんから、難しい問題です。
 これは二院制と一院制の問題もあって、数だけ見ても二院制の議員数と一院制の議員数を単純に比較するコトはできませんし、いま挙げた先進諸国はそろって二院制を取っているというのも考慮すべき点です。
 それは政治にはある程度慎重さが必要で、コストはかかるかもしれないけどセイフティーネットを置いておいた方が最終的には国家の繁栄に繋がる、という「結果が出ている実例」と言えるのでは無いでしょうか。
 特に巨大な権限を一人で行使出来る大統領がいて一院制を敷き、さらに議会には解散がないという韓国(定数300/人口4800万人=16万0000)の政治がいま大暴走をはじめてブレーキをかけられないという状況にあるコトを鑑みれば、セイフティーネットがいかに大切なのかが見えてくると思います。
 議員定数の問題は、そういうコトも鑑みながら考えなければなりません。
 
 さて大阪の橋下市長が「半分に」と言ってますが、もし半減が成ったら議員一人当たりの人口数は単純に倍になりますから、35万4570人になりますね。
 アメリカには届きませんが、他の先進国と比べれば異常な数字になるとすら言えるでしょう。
 さきほど言いましたように、定数の問題は基準値というモノが無い概念ですから単純に数字だけで善し悪しは言えませんが、でもちょっとこれはどうなんですかね。
 さらに言いますと、アメリカは大統領制ですが、日本は「議院内閣制」であり、議院・議会の力というのは大統領制の議会よりも大きいワケで、なおさら慎重さは求められるのではないでしょうか。
 また別の視点でGDPという観点で考えても、イギリスやフランス一国だけ見ればイギリス「GDP(MER)2兆6,740億ドル」、フランス「2兆8,657億ドル」に対して、日本はなんと「5兆4,589億ドル」ですから、イギリスとフランスを足して日本ぐらいの、日本はそれぐらい大きな規模ですから、そんな大きな規模を支える国会議員というのは、ますますその比率を考えれば日本は少ないとすら言えるのです。
 まぁこう考えるといかにアメリカが化け物だというコトが分かるのですが、でもそれは同時に、日本も同じぐらいとは言いませんがそれに次ぐぐらいの化け物国家だというコトは自覚しておくべきコトでしょう。
 人口も多く、GDPも多く、さらに議院内閣制であるコトを考えれば、果たして本当に議員定数の削減は正しいのかどうか、かなり一考の余地があるようにしか思えません。
 
 ちなみに中国は政治体制が全然違いますし、そもそも公式の数字すら信用出来るのかどうかも分かりませんから、この際考慮には入れません。
 
 では次に、人口と議員数の関係について考えてみたいと思います。
 つまり、人口に対して議員が多いとはどういう意味を持つのか、少ないとどういう意味を持つのか、という観点です。
 
 
(つづく)