ならば調査方法の明記を義務付けろ

 ちょっと珍しい記事を見つけました。
 新聞が自己批判にも近いような記事です。
 

 衆院選世論調査 報道各社で差
 
 衆院解散後、新聞社などは電話による世論調査を実施した。注目されたのは、衆院選の投票先を尋ねる質問に対する回答だ。各社とも自民が民主を上回るという傾向は一致したものの、台風の目となりそうな日本維新の会などの数値は差が出た。これは、質問の仕方の違いが主に影響したのではないか、とみられる。
 世論調査の回答は、質問文の微妙な違い、質問の順番や選択肢、質問の仕方でも影響を受けることがある。例えば、内閣支持率の質問で「かわらない」と答えた人に「どちらかと言えば、支持しますか、支持しませんか」などと重ねて聞くと、「支持する」「支持しない」と答える人の割合は高くなる。
 各社の調査での衆院選の投票先を見ると、維新や太陽の党の数値は産経新聞や毎日新聞が高く、朝日新聞や共同通信が低かった。
 各社の質問文は「比例区」に限定しなかった日経新聞を除き、あまり変わらない。しかし、朝日が、対象となる政党を一つひとつ読み上げなかったのに対し、他社は政党名を読み上げた。共同は選択肢に「まだ決めていない」が含まれており、これが43.0%もあった。
 読み上げない方式では、できたばかりの政党や国会議員の少ない政党は頭に浮かびにくく、数字が低く出る傾向がある。今回でいえば、維新の結党は1ヶ月半前。地域政党の「大阪維新の会」の印象が強く、衆院選に出る政党として、名前が上がりにくいとみられる。ただし、回答者は政党名を聞かないまま答えるので、明確な意志の人が多いと思われる。
 一方、読み上げ方式では、浸透や少数政党でも名前を挙げやすくなるが、それほど強くない意見の人もその中に入っている可能性がある。

 
 11月21日の朝日新聞三面の記事です。
 以前より新聞などの世論調査では質問の仕方によって結果がかなり変わっているというコトはよく指摘されていたところですが、それを新聞社自身が認めた形になっている記事です。
 この記事自体には、特になにか反論とかがあるワケではありません。
 おそらくその通りでしょう。
 調査とかアンケートなんていうモノは、どこで誰がどのようにどんな質問をしたのかによって、一見同じ内容の調査に見えても、全く違う結果が出るというのは想像に容易いでしょう。
 そしてこの記事が具体的に出した例も、結果としてそのようになるというのは、常識感覚としてその通りだとやえも思います。
 
 しかしだからこそ新聞社やテレビや雑誌などのマスコミは、大きな質問と回答をただ垂れ流すだけではなく、キチッと調査方法から設問まで、一字一句違いなく公開しなければならないのではないでしょうか。
 
 最近のマスコミは、電話なのか対面方式なのか、そして総数と有効回答数は出すようになりましたが、最も回答に影響が出ると思われる「質問の方法」はあまり表には出て来ません。
 内閣支持率ひとつとっても、紙面上では「支持」か「不支持」かぐらいしか出て来ませんが、しかしこの記事で明らかになったのは、調査によっては「どちらでもない」と答えた人にさらに「あえて言うならどちらですか」とかぶせて聞いている場合が、実は見えないけどあるっていうコトが判明したワケです。
 これではだいぶ答えが変わってきますよね。
 でもやえは、いままでの世論調査で「さらにかぶせて聞いてみました」なんて質問の実情を記載している記事なんて見たコトがありませんでした。
 つまりいままでやえが目にしてきた世論調査の中には、そういう「ある程度質問者の意図が入り込んでいる結果」の調査もあった可能性があるというコトです。
 これはちょっとフェアとは言えないでしょう。
 
 ある意味この記事は自己批判と言えますが、言い換えればこれは言い訳の記事にも読めます。
 つまり「マスコミによって数字が全然違うじゃないか」っていう声に対して、「質問の方法が違うので数字が違っても当たり前ですよ」と開き直りの態度にも読めるワケです。
 ですから、むしろこういう記事を出すというのは一定の評価が出来ますが、一番の問題はこの後これを踏まえてどうするかです。
 朝日新聞自身が「質問によって回答は変わってくる」と認めるのであれば、当然以降の世論調査では質問を一字一句違わず公開し、また回答に後に「どちらかと言えばどっちですか」みたいな重ねての質問の有無や、そうした時の数字と、そうしなかった時の数字、それぞれキチンと出すべきでしょう。
 
 新聞を始めとするマスコミは、世論を作り出す存在ではありません。
 特に世論調査なんていうモノは、マスコミ自身の意志なんてモノが入り込む余地がゼロの、ただ国民の意志を反映させる鏡でなければならないハズです。
 まして本来は、鏡であったとしてもその結果に対して国民はどうしても影響を受けてしまうのですから、調査をするコト自体も、その時期などは慎重に考えなければならないモノです。
 その中で、ましてこんな「質問者の意図が入り込んでいる可能性」があるのでしたら、それは大変悪質だと言えるでしょう。
 マスコミは、どういう質問をするのかも編集の仕方も自社の自由だと言い張るのでしょうが、しかしであるなら、少なくとも「質問の仕方」は何一つ違いなく隠すコトなく公開するのが義務とさえ言えます。
 朝日新聞も、今回の記事を掲載したコトは評価しますが、一番の問題は今後どうするかですから、まずは自らの襟を正す記事を今後書くように期待します。
 こういう記事を出した後に、しかし意図的な世論調査を載せるのであれば、それは意識して国民を扇動しようとしている確信犯だと言うしかなくなるのですからね。