尖閣に関する諸問題は仙谷官房長官から始まった

 これは歴史的な事実として繰り返して書き残しておきたいと思います。
 
 簡単なお話、仙谷以前の時代は尖閣は「問題」にはなっていませんでした。
 思いだしてみて下さい。
 小泉政権下・第一次安倍政権下・福田政権下・麻生政権下で、中国は尖閣を理由にして外交問題をどうこうしようとしていたでしょうか。
 小泉政権時代には、日中間がかなりギクシャクしていた時期がありました。
 それは小泉総理の靖国神社参拝を中国が理由としていたからです。
 それを理由にするだけでも中国の幼稚さが際立つというモノですが、しかしあの時でさえ「尖閣」なんていう単語は全く表舞台には出てきませんでした。
 そして小泉総理が退陣して安倍さんが総理になり、まず安倍さんは中国との関係改善に乗り出してある一定の改善は見られましたし、それはその後福田政権でも引き継がれましたが、その時も「尖閣」っていう単語が聞かれるコトはほんとんどありませんでした。
 やもすれば、日本人の中にも尖閣ってどこだろうって程度の認識の人は少なくなかったかもしれません。
 麻生政権の時はリーマンショックが大変で外交的にはどうだったのかちょっと記憶に薄いですが、「自由と繁栄の弧」という中国包囲網的なモノを作ろうとしていただけに対中政策はきびしいモノになるんじゃないかと予想はできていましたけど、それでも「尖閣」っていう単語は俎上に全く上がってきませんでした。
 あの時から政治を見ていた人は、簡単に思い出される光景ですよね。
 
 この事実を前にしたら、おかしい点があると思いませんでしょうか。
 だって、小泉政権下・第一次安倍政権下・福田政権下・麻生政権下でも、尖閣諸島に対する日本の立場は一切変わっていないからです。
 簡単に言いますと、もちろん尖閣は今も昔もずっと日本の固有の領土だからです。
 
 もしこれが、小泉政権時の尖閣は「領有権不明」であり、現在は日本政府が「日本の領土だ」と言い出したというのであれば、尖閣諸島が外交問題になってしまうというのも理解出来なくもありません。
 でも違うんですよね。
 尖閣が外交問題として中国が俎上に挙げる前から、ずっと日本政府は変わらず尖閣は日本の固有の領土だと宣言し続けているのです。
 その姿勢は今も昔も一切変わっていません。
 その証拠に、昔中国も尖閣諸島にちょっかいを出そうと漁船とかを派遣していましたけど、日本政府はそれはただの領海侵犯だと、不法侵入だというコトで、日常的な対応をしていました。
 例えばパスポートを持たずに正規の手続きを踏まずに沖縄や東京に外国人が侵入したら、日本政府としては法に則って粛々と対応しますよね、国外退去とか。
 尖閣諸島が事実として日本の領土という何よりの証拠です。
 そしてそれは、それ以上の問題にはなりませんでした。
 日中間がもっとも悪かった小泉政権下ですら、尖閣諸島のコトが外交問題にはなっていませんでした。
 当然です。
 日本の中に不法滞在している中国人がいるからといって、それが日中の外交問題になるでしょうか。
 この時代は尖閣が外交問題になるコトすら想像も出来ないコトでしかなかったのです。
 
 それを一変させたのが民主党政権化での仙谷由人官房長官でした。
 
 あの時何をしたのかは敢えて繰り返しませんが、それまで外交問題の俎上に尖閣諸島を挙げるコトすらバカバカしいモノだったにも関わらず、それを一気に外交問題にまで発展させたのです。
 尖閣諸島はいまも昔も一貫してずーっと日本の領土だと変わりがないのに、仙谷以前と以降では、ここまで違うのです。
 いかにあの時の対応が大失敗だったのか、中国側からすればこれ以上無いクリティカルなアシストだったのか、一目瞭然なのです。
 そして一度俎上に挙げたら、当然中国としてはそれを降ろす必要性なんて一切ありませんよね。
 いくら日本の政権が自民党に戻ったとしても、中国が自らを不利にするようなコトをするワケがありません。
 そうして仙谷官房長官のせいで、尖閣諸島に関する諸問題がここまでの「外交問題」になってしまったのです。
 
 これは、外交はひとつ間違えば未来に対して大きすぎる負債を負わせてしまう、という痛い痛い教訓です。
 まぁ仙谷官房長官は失敗したのではなく、意図して中国のアシストをした可能性も否定できないワケですが、少なくとも政治や政権を自らのおもちゃぐらいにしか思っていなかった民主党のせいでこうなってしまったというのは、否定できない事実です。
 外交というハンドルがいかに重いのか、いまは自民党政権ですが、国民自身もよくよく考えておく必要がある事案でしょう。
 
 事実として踏まえておくべきコトは、尖閣諸島に関する諸問題は、中華人民共和国や中華民国が建国されてから、または第二次世界大戦が終わった直後の昔からある問題ではないというコトです。
 ついつい最近、たった数年の、ましてひとりの政治家、ひとつの政権が原因となってはじまってしまった問題だというコトです。
 そしてそれはなにより、現在では考えも付かないようなコトが、ひとつの外交的失敗で大問題に発展して、未来に大きな負債になってしまうコトもあり得るというコトなのです。