総理大臣が靖国神社に参拝する意味

 安倍総理が今期の靖国神社例大祭に参拝しないコトが分かり、ネットを中心に騒ぎになっています。
 

 靖国参拝見送った首相「任期中に絶対行きたい」
 
 安倍首相が17日から始まった靖国神社の秋季例大祭に合わせた参拝を見送り、真榊まさかきの奉納にとどめた。
 ただ、首相は周囲に任期中の靖国神社参拝に向けた意欲を漏らしている。
 17日午前6時に開門した靖国神社の本殿前には、「内閣総理大臣 安倍晋三」と記された真榊が供えられた。首相が奉納したもので、4月の春季例大祭の際と同じ対応だ。首相が今回も真榊奉納で対応することを決断したのは、台風で各地に被害が出た16日のことだ。

 
 正直やえとしましては、靖国神社のコトでここまで騒ぎが大きくなるコト自体が本来は良くない事態、靖国神社の本来の意義や意味からしても大騒ぎするコトは本意ではないと思いますので、もうちょっとなんとかならないのかなぁと思わずにはいられないところです。
 で、今回の安倍総理の靖国神社に対する姿勢というモノは、2つの視点があると思うんですね。
 
 1つは、公約という考え方です。
 一部では「安倍総理は総理大臣として靖国神社に参拝するコトを公約として掲げていた」という言説があります。
 確かに公約に掲げていたのであれば、靖国神社に参拝するコト自体の是非はともかくとしても、政治家としては間違いだと言わざるを得ません。
 
 ただし、この安倍さんが公約として掲げたとされる件について、やえはそれがどういう形での公約なのか、ちょっとよく分からないんですよね。 
 少なくとも自民党の政策集「Jファイル」には、靖国神社のコトについては書かれていませんでした。
 またざっと検索してみたのですが、「公約違反だ」という声は載っていても、その公約がいつどういう形で発表されたのかがよく分かりませんでした。
 少なくとも文章化された、政党としての正式な公約ではないのだと思われます。
 もちろんだからといって安倍さん本人が公の場で口にしたコトであればそれは守って当然だと思いますので、もしかしたら自民党の総裁選の時かなとも思うのですが、これについて正確な情報をお持ちの方は、ぜひコメント欄とかで教えて頂ければと思います。
 
 しかしそれを踏まえた上だとしても、あくまで公約というのはその政権中に達成すべき事柄であって、総理になったからとすぐに達成しなければそれで違反だと言えるモノではありません。
 よって、もし本当に安倍さんが靖国参拝を公約として掲げていたのであったとしても、自らの任期中に参拝すれば、少なくとも公約という視点においてはクリアされるとみるべきでしょう。
 これは民主党政権の時にもやえは言っているのですが、「議論すらしない」と言いつつ増税まで踏み切った行為はその瞬間に公約違反ですから違反ですが、「○○を実現する」系の公約については、ある程度の期間を見る必要はあろうかと思います。
 そもそも安倍政権は発足してまだ1年も経っていません。
 ですからこの段階で公約がどうだこうだと言うのは、あまり適切ではないと思います。
 
 靖国神社についてはもうひとつ視点があります。
 これは終戦の日でも言っているコトなんですが、機会がある時に何度も言っておこうと思いうのですけど、それは、総理大臣としては、軍人も含めた全ての戦争犠牲者に公的に慰霊の礼を尽くしている、というコトです。
 
 毎年8月15日には政府主催で戦没者慰霊式典が開催され、そこには天皇皇后両陛下のご臨席もたまわって、三権の長と閣僚全てが出席しての式典が執り行われ、日本国内においてはこれ以上ない格式で正式に公式に慰霊式店を行っているのですから、もちろんそこには軍人も含まれての式典ですから、ここで軍人の慰霊も行われているんですね。
 ですから、靖国神社に総理大臣が参拝しないからと言って、それがイコールで、先人たちのご労苦を蔑ろにしているとか、先の大戦を否定しているとか、そういうコトには一切ならないというコトには注意が必要です。
 繰り返しますが、安倍さん個人が内心で先の大戦についてどう思っているかは別にして、しかし「靖国に参拝しない」というこの事象だけをもって軍人や戦争を否定しているコトにはなりません。
 ここはハッキリと線を引いて自覚すべきコトです。
 
 もちろん、日本の行政の長たる総理大臣が公式的に靖国神社に参拝する意義は大きなモノがあります。
 というのも、靖国神社には「その行政の長が法的拘束力を持つ形で戦場にいけと命令を下した上で死んでいった人たち」が祀られているのですから、現在の行政府の長が、当時のその命令を下した責任のもとに慰霊するというのは、やはり大きな意味があると言えます。
 日本には戦争によって様々な形で犠牲になった人たちがいます。
 戦場に行った人、空襲を受けた人、外地で戦争を目の当たりにした人、都市部での絨毯爆撃を受けた人、原爆を受けた人、沖縄戦で民間人ながら戦った人、いろいろな人がいます。
 それぞれ「戦争で傷を受けた人」というのは変わりませんが、しかしそれぞれ別の側面があるのも確かです。
 やえは広島出身ですが、原爆で犠牲になったコトについては日本政府に責任を求めても仕方ないお話だと思っています。
 原爆を、国際法に背く形で透過したのはアメリカなのですから、本来責めるべきはアメリカですからね。
 日本政府に苦労の支援をお願いするコトは必要なコトだと思いますが、日本政府に責任を求めるのはお門違いでしょう。
 しかし様々な戦争犠牲者・被害者の中で、軍人だけはそういう意味での性格が異なります。
 沖縄戦もちょっとアレですのでまた別個で考える必要がありますが、少なくとも「行政の命令で戦場に行った人」というのは、最後は日本政府に責任があります。
 総理大臣の靖国神社参拝の問題というのは、ここに帰結するんですね。
 総理は慰霊をしてないワケでは決してありませんが、「死ねと命令」という命令を下した責任において、それをさらに重ねて慰霊をするというのは、やはり大切なコトだと思います。 
 ですからやえは、できるなら総理大臣にはそういう意味で重ねて靖国神社に参拝してほしい、そして大変僭越ですが、当時の元首として天皇陛下にも親拝していただきたいと願っています。
 靖国参拝の意義はここにあります。
 
 しかし繰り返しますが、決して今回参拝しないからと言って安倍さんが軍人や軍隊や戦争に対して否定しているというコトではないというコトは確認しておくべきコトです。
 軍人に対しても慰霊の礼は尽くしています。
 ここの線引はキッチリとしておくべきでしょう。