内容を見ずして批判をしても

 昨日から参議院でちょっと問題になっている、川口順子環境委員長の騒動についてひとこと言っておこうと思います。
 

 川口委員長の解任決議案、9日に参院で可決へ
 
 参院議院運営委員会(岩城光英委員長)は8日の理事会で、川口順子参院環境委員長(自民)の解任決議案を9日の参院本会議で採決することを決めた。
 参院は野党が多数を占めており、決議案は可決される見通しだ。川口氏は国会法の規定で解任される。常任委員長解任は衆参両院で初めて。
 決議案は、川口氏が中国への出張期間を延長したために環境委が流会となったことを問題とし、民主党など野党7党が7日に共同提出した。
 出張期間の延長は、元外相の川口氏が、中国の外交を統括する楊潔チ(よう・けつち)国務委員(前外相)との会談に出席するためだった。川口氏は延長の了解を求めたが、民主党など野党の反対で許可が得られなかった。

 
 記事にもありますようにこの問題は、先月中国を訪問していた川口順子環境委員長が中国側の都合により日程延長になってしまったコトに対して、野党が「延長は許可していない」と反発している問題です。
 国会のルールでは、衆議院や参議院の委員長が海外を訪問するときには国会の許可が必要になるのですが、当然それは期限付きであり、川口委員長の場合、その渡航自体には許可が出ていたのですが、その期間を超えての延長期間については野党が許可を出さなかったために、形的には「国会のルール違反」となってしまっているという問題なワケです。
 
 この問題には2つの視点があります。
 
 1つはルールは遵守すべきだという視点です。
 まぁ当たり前ですよね。
 法治国家である以上は、定められたルールに従うというのは至極当然の考え方です。
 今回のこの委員長渡航許可のルールも、以前から国会の中でキチンと定められていたルールなのですから、理由はどうであれそれに違反したというのであれば、その行為は責められてしかるべきでしょう。
 これは言うまでもないコトです。
 
 しかしもう1つの視点もキチンと考えなければなりません。
 ルールに違反すれば理由がどうであれ責められてしかるべきですが、しかしその理由を一切考慮すべきではないという意味には全くなりません。
 例えば同じ殺人という罪においても、裁判所においてはその殺人に至った理由によって量刑は大きく違ってきます。
 ニュースでもよく聞きますよね、裁判長が「その犯行は身勝手極まりなく」とか「同情すべき点がある」などと判決理由を述べるシーンを。
 殺人に至った理由が「身勝手」なら刑は重くなりますし、「同情すべき点」なら刑は軽くなるワケです。
 このように、いくら法治国家と言えども、ただ単に結果だけをもって批判の内容が全て決まるというコトではないワケで、よってなぜ批判するのかどう批判するのかという点においては、むしろそこに至った経緯や理由こそが重要視されなければならないのです。
 
 ですから、もし野党が単に「ルール違反だ」という論拠だけで批判しているというのでしたら、あまりにも幼稚である態度としか言いようがありません。
 むしろ批判のタメの批判でしかないのかなと思わざるを得ません。
 まして野党が求めているのは、委員長の職の解任決議案であり、「委員長のルール」を破ったという理由での「罰」としては最も重いモノですから、本来は果たしてそこまでの理由があったのかどうかを議論しなければならないハズなのです。
 特に国民はそうです。
 民主党なんて与党時代から党利党略でしか動かない政党だというコトは分かりきっているコトなのですから、これらの民主党の動きに対して、単に「ルール違反だ」というだけの法治国家の考え方ですらない視点だけで判断するのではなく、キチンと「なぜ日程延長せざるを得なかったのか」という理由の部分を考えなければならないでしょう。
 特に国民としては、国会のルールは法律ではなく国会内の内規ですから国民がこれに縛られる必要は一切ないワケで、だからこそ国民の立場からは「なぜそうなったのか」という点で主権者として考えなければならないのです。
 
 以上をどう判断するかは人それぞれあると思います。
 けど、とりあえず事実を述べておけば、記事にありますように延長の理由は「中国の外交を統括する楊潔チ(よう・けつち)国務委員(前外相)との会談に出席するため」でした。
 またこちらの記事によりますと「楊潔チ国務委員との会談が急きょセットされたため」と、川口委員長の都合では無く、中国側の突然のセットという事情もうかがい知れます。
 ちなみに「楊潔チ(よう・けつち)国務委員(前外相)」という方は、中国においては現在の中華人民共和国外務大臣よりも中国共産党内での序列(地位)は高く、中国という国の性格から見たら、むしろ外務大臣よりも権限は上の人です。
 中国という国は、国家よりも共産党の方が上にある国ですからね。
 そういう人が川口委員長(言うまでもなく日本の元外務大臣です)に会談を申し込んできたっていう事実がまずあったというコトは注目すべき点でしょう。
 
 さらに言えば、川口委員長と自民党側は、ルールを一切無視したのではなく、こういう事情があるからと延長許可の申請をキチンと出しているという点も無視できない事実です。
 こういうコトは、その中身を見て判断すべきだというコトは先程説明した通りですが、その上で野党は申請を拒否しています。
 決して野党は「寝耳に水」ではなかったのです。
 事前に知っていた、丁寧に説明を受けていた上で、「蹴った」のです。
 
 さてこの行為を国民としてはどう判断すべきでしょうか。
 
 何事にも言えますが、内容を見ずして批判しても、それは批判のタメの批判と呼ばれても仕方ありません。
 大切なのは理由です。
 論拠です。
 特に国会なんて結果だけで判断しようモノなら、審議拒否しまくった方が利益になるというごね得になってしまうのですから、主権者たる国民としては「なぜそうなってしまったのか」という理由こそを注視して判断しなければならないのです。