放射能というモノの本質

 まずは「放射能」と呼ばれるモノの本質をゆっくり丁寧に考えて行こうと思います。
 
 その前に、これは何度も言ってますがやえは放射能の専門家でも学者でもありませんから、もしかしたら間違っている部分もあるかもしれません。
 ですから、もし間違っている部分があれば、どうぞご遠慮なく指摘して下さい。
 やえも万全を期すために色々と調べて書いてはいますが、もし間違っていた時はご指摘下さる方が、ここを読んで下さっている方にとっても、やえにとっても有益なコトですので、疑問でも構いませんので、なにかあればご指摘下されば幸いです。
 
 かなり基本的なお話になるのですが、やえもよく色々ひっくるめて一言で「放射能」と言う場合があるのですけど、厳密に言えば「放射能」と「放射性物質」と「放射線」は別の概念です。
 特に「放射能」というのは、時に「放射線」を示す文脈においても使われるコトがあったりするのですが、まぁほとんど「放射能」は一般名詞化してしまっていますのでそこまで神経質にならなくてもいいのかなとは思うんですけど、ただ厳密な解釈が必要な時はやえはこれらの言葉を区別して使うように注意しています。
 で、これらがどう違うのかと言うと、箇条書きにしますと
 
「放射性物質」-ウランやプルトニウムなど、放射線を放出する能力を持つ物質。形があるモノです。
「放射線」-アルファ線やベータ線などの電磁波。エネルギーなので自然の状態では溜まりません。
「放射能」-放射性物質が持つ放射線を出す“能力”。概念的な言葉です。
 
 こうなります。
 よって、ここが重要なのですが、直接的に人体に影響を与えるモノという視点で考えると、この中では「放射線」だけがそれに該当するコトになります。
 例えば「放射性を出さない放射性物質(これを放射性物質とは呼べなくなるワケですが、仮のお話として)」というモノをいくら体内に吸収しても、放射線に関する害悪は無いと呼べるコトになります。
 この場合、放射性物質の質量自体は人体に比べて微量も微量ですから(ウランを体内と同じ量摂取するとなんらかの放射能とは関係ない別の害はあろうかと思いますが)、基本的には「放射性を出さない放射性物質」というモノが存在する場合において、その放射性物質をいくら体内に取り入れても害はないと言えるコトになります。
 まぁこれは概念的にあり得ないお話ですから、単純に、放射性物質とはどういうモノかというコトを理解するためだけの説明として捉えていただければと思います。
 すなわち、最後に「人体にどういう影響があるのか」というところを考えるのであれば、これは「放射線」を考えるべきだ、というお話なワケです。
 
 例えば放射線の強さの単位としてシーベルトというモノがあるのですが(厳密には「人体が吸収した放射線の影響度を数値化した単位」だそうです。ウィキペディアより)、一般的にはただ「シーベルト」という単位で表すのでは無く、ほぼ必ず「一時間あたり」という単位で表します。
 「Sv/h」という書き方を見たコトがあると思いますが、この「/h」の部分ですね。
 つまりこれは、「一時間あたりの放射線の強さ」を表すモノであり、もうちょっと厳密に言うなら、「一時間の間浴び続けた場合の放射線の強さ」というコトになります。
 よって例えば「0.1μSv/h」の強さの浴びたと一言で言ったとしても、それが6分間だけのお話であれば、実際にその人が浴びた放射線というのは「0.01μSv」というコトになります。
 逆に二時間浴びたら「0.2μSv」ですね。
 ですから、実際に人体に浴びた放射線の総量では無く、その空間の放射線の強さを表す場合には、まず間違いなく「/h」が入っていなければおかしいですので、もし入っていない図や資料を見た時には、その資料そのものを疑って下さい。
 また同時に、この「/h」の意味をよく分かっていない人も少なくありません、特に放射能と放射線の違いをよく理解していない人なんかは数字しか目に行かないようで、「実際に人体に浴びた放射線の総量」というコトでの資料があったとしても、場合によっては「1分間しか浴びていないハズなのに、μSv/hの数値をそのまま流用してしまっている場合」というコトもままありますので、ここも注意して下さい。
 
 「内部被曝」という言葉も、この辺に関わってきます。
 「内部被曝は大変だ」というセリフはよく目にしたコトがあるのではないかと思うのですが、さっき説明しましたように、「その空間で浴びる放射線」というのは、そのまま簡単に「その空間」から逃げれば放射線からも逃げられるコトにワケですけど、内部被曝とは放射性物質を体内に取り込んでしまった状態であり、この場合人体がどこに逃げたとしても放射線を放出する放射性物質が体内にあるために逃げられなくなり、常に放射線を浴び続けるという状態になるので大変なワケです。
 仮に「0.1μSv/h」の放射能を持つ放射性物質を体内に取り入れてしまった場合(つまり「内部被曝」している場合」)、これは一日での被曝量は「2.4μSv」という計算になります。
 数字で出すと内部被曝の大変さが分かりますよね。
 よって、放射線の強さの数字をパッと見ても、状態によってかなり変わってくるというコトは冷静に見て判断しなければならないのです。
 
 ちなみに体内に入り込んだ放射性物質も、一生体内に入っているというコトではありません。
 色々な形によって、例えばトイレとかで一緒に体内から排出される場合もありますので、「「0.1μSv/h」の放射能を持つ放射性物質を体内に取り入れてしまった」と言っても、そこから一生分の放射線を計算して「こんなに浴びてしまうんだ」と言ってしまうのは適切ではありません。
 さらに言えば放射性物質には「半減期」というモノがあって、放射性物質によってその時間は変わってくるのですが、年月によって放射性物質は減っていきますので、そこも含めて単純に年月の総量を「μSv/h」だけで計算するコトは難しいのです。
 
 
 では今日はこのぐらいにして、次回は「放射線による人体への害がどこから出るのか、その線引きは難しい」というお話をしたいと思います。