図での印象操作にご注意 もう1つ

2013年9月30日

 前回、こちらのページの図について、説明というかツッコミをしたのですが、これについてコメントいただきしまた。
 その際、またオリジナルが直接貼ってあるブログも紹介していただきましたので、今日はそれについてひとこと言っておこうと思います。
 オリジナルとは、つまりこの図を作成した本人である、早川教授ご本人のブログです。
 これで見えなかった情報が見えてきました。
 情報ありがとーございまーす。
 ではこのオリジナルの図についていろいろとコメントしておこうと思いのす。
 
 早速ですが、まず注意すべきコトが、前回とりあつかったページの上段にある福島中心の日本地図だけの図と、いま平成25年9月24日現在で早川教授のブログで見れる図とは、版数が違うところに注意です。
 前回引用した方は五訂版ですが、いま現在は八訂版になっています。
 さらにそれに伴い、説明書きの方もけっこう変わっています。
 八訂版の説明書きを引用します。
 

 この地図は、2011年3月に地表に落ちた放射性物質がそのままの状態で保存されている場所の放射線量率を示しています。2011年9月の値で表現しました。芝生あるいは草地の上1mで計った値(μSv/h)です。土やアスファルトの上は放射性物質が雨風で取り去られやすいので、この地図より低くなりがちです。一方、それらが集積する雨どい・軒下・側溝・路傍などでは局地的にこの地図より何倍も高くなります。

 
 前回(五訂版)の説明書きはこうでしたから
 

 2011年3月に地表に落ちた放射性物質がそのままの状態で保存されている場所の放射線量で色分けしました。芝生など草地で現在計測される数値です。この数値は3年で半分になります。

 
 だいぶ文章も、そして意味合いも変わってきています。
 正直ここまで変えられると、版数の違いだけにとどめていいのかどうかという、放射能問題ではない一般論てきな問題として疑問に思わなくもありません。
 まぁそれはいいとしても、今回の八訂版では、やえが前回指摘したコトがハッキリと明らかになっています。
 すなわち「土やアスファルトの上は放射性物質が雨風で取り去られやすいので、この地図より低くなりがちです」という一文が付け加えられましたので、これで自他共に「実際の状況を表している図ではない」というコトがハッキリしたと言えるでしょう。
 まずここが1つポイントです。
 
 次に、五訂版には無かった表現について、ちょっとよく分からない部分があります。
 この図は「この地図は、2011年3月に地表に落ちた放射性物質がそのままの状態で保存されている場所の放射線量率を示しています」とまず最初に断言しているワケですが、その上で「2011年9月の値で表現しました」と書かれているのですが、これはいったいどういうコトなのでしょうか?
 3月の値なのか9月の値なのか、よく分かりません。
 何度も言いますが「そのままの状態で保存されている場所」という表現が日本語的によく分からない感じになってしまっているのが元凶だろうと思うのですが、頑張って解釈するなら、「雨風で飛ばされる放射性物質を一切考慮しない上で、3月に地表に落ちた状態での9月の値」というコトなのでしょうか。
 正直やえの文章も変になってしまっている自覚があるのですが、これ以上書きようがないので、ごめんなさい。
 こんな風に書くなら普通に「3月に地表に落ちた放射性物質から放射される放射線の強さ」と書いてくれればいいのに、なぜ時間軸をズラすのですかね。
 
 さらに分からないのが次の一文です。
 「芝生あるいは草地の上1mで計った値(μSv/h)です」
 あれ?
 実際に計ったんですか?
 わけがわかりません。
 もし実際に計ったのであれば、その説明は「2011年9月に実際に現地で計った値」と、これだけを書けば事足ります。
 いえ事足りるというよりも、こっちの方が断然説得力が増します。
 この場合、もう「この地図は、2011年3月に地表に落ちた放射性物質がそのままの状態で保存されている場所の放射線量率を示しています」という文章は蛇足であり、むしろ混乱のもとですから、無い方がはるかにマシです。 
 まして「実測値」であれば、それは当然「放射線量」を計った値なのでしょうから、そもそもとして「放射性物質うんぬん」という説明書きは、蛇足というよりも、それをわざわざ書いた根拠が分からないというお話になってしまいます。
 「なぜ書いたのですか?」というレベルを越えて、「その放射性物質量はどこから得たデータなのですか?」という疑問が起こってしまうワケです。
 説明書きのまず最初の書き出しは「2011年3月に地表に落ちた放射性物質がそのままの状態で保存されている場所」ですから、この書き方だと主眼は放射線物質のハズなのですが、後になるとその主眼が放射線になっているのです。
 いったいぜんたいこれはどういうコトなのでしょうか。
 
 主眼が違うというコトは、つまりこの図は「なにを基に書かれたデータなのか」という基本的な部分に疑問が出てしまいます。
 つまり「放射性物質から推定される放射線量」なのか、「9月に実際に現地で計った放射線の値」なのか、です。
 これ全然違うワケです。
 「放射性物質から推定される放射線量」であれば、説明書きにありますように「土やアスファルトの上は放射性物質が雨風で取り去られやすい」ので、そこから計算されて導き出される放射線量は「実測値」ではないコトになります。
 つまり実際はもっと低い値でしょう。
 しかし「9月に実際に現地で計った放射線の値」であれば、そのままズバリ実際の値です。
 これで全然変わってくるワケですね。
 果たしてこれはどっちなのでしょうか。
 
 さらにつっこめば、「9月に実際に現地で計った放射線の値」の場合であれば、これはさっきと同じようなお話なのですが、説明文が完全に蛇足というか、邪魔にしかなっていないんですよね。
 「2011年3月に地表に落ちた放射性物質がそのままの状態で保存されている場所の放射線量率を示しています」も「土やアスファルトの上は放射性物質が雨風で取り去られやすいので、この地図より低くなりがちです。一方、それらが集積する雨どい・軒下・側溝・路傍などでは局地的にこの地図より何倍も高くなります」もいりません。
 これらはどちらも、放射性物質に対する説明書きですから、実際に計って放射線量を計測しているのでしたら、この説明書きの事実は一切なんら実測値には影響しないのですから、こんな説明書きは一切不要なのです。
 むしろ書こうとしたコト自体が不思議でなりません。
 なにを思ってわざわざこのような筆の走らせ方をしたのでしょうか。
 
 ただしここでひとつの推測ができます。
 この前の版である五訂版では「2011年9月の値で表現しました。芝生あるいは草地の上1mで計った値(μSv/h)です」という文言はありませんでした。
 これはおかしいです。
 前の版であったとしても、そのデータの摂り方というのは同じハズです。
 というか、図を作るにあたっては、まず図が先にあるのではなく、なんらかの「放射線量を導き出す実際の事象」があってからそれを積み重ねて図にまとめるワケですから、それが放射性物質であれ放射線であれ、図を作る前に計測や計算という作業があったハズでしょう。
 つまり8版であっても5版であっても1版であっても、その「計測(計算)作業」は図を作る前に行っているモノであり、その数値も直接計った対象物(放射性物質か放射線かのどちらか)は変わるハズがないのです。
 当たり前ですよね。
 よって、もしこの図の数値が本当に実測値(放射線を直接計った値)であれば、五訂版の時点で、いえ1版の時点で「2011年9月の値で表現しました。芝生あるいは草地の上1mで計った値(μSv/h)です」という文言がなければならないハズなのです。
 それなのに五訂版には、放射性物質を主眼とした説明書きしかありません。
 これは明らかに不自然なのです。
 果たして本当に実測値なのかどうか、疑問に思わざるを得ません。
 うがった見方をするのであれば、後から後からいろんなツッコミがあったので、とりあえず「2011年9月の値で表現しました。芝生あるいは草地の上1mで計った値(μSv/h)です」という文言を言い訳のように入れただけであって、しかし実際は「放射性物質がそのままの状態で保存されている場所の放射線量率」だからこれを消すコトも出来ず、結果的に後から無理矢理入れるようなコトをするのでちぐはぐな文章が出来上がってしまった、という想像も出来てしまうでしょう。
 それぐらい不自然な日本語なのです。
 
 もうこれだけでも散々なワケなのですが、さらにもっとつっこめば、放射線量の実測値であれば、このような面を塗りつぶすような図は作れないハズない、というコトも言えてしまいます。
 出来るのは、測定場所の印とその実測値でしょう。
 「○○地点では○○シーベルト」「××地点では××シーベルト」と、放射線の強さを計って歩いたのであれば、これの積み重ねであるのですから、何万人という単位で、文字通りしらみつぶしに数メートルごとに計ったのであれば別ですが、普通はそんなコトが出来るワケもないし、そんなコトをしたら何らかの話題になっていたコトでしょうから、そうでないなら、こんな綺麗な湾曲が描けるような「面」を画けるハズがないのです。
 よって実測値であれば、面ではなく点で表現されなければおかしいのです。
 ここから考えても、結局これは、風向きなどのデータから推測される放射性物質の飛散推測図ではないかと想像するしかないワケです。

 
 ※この部分につきましては、ペーパーの裏側に参考資料が載っており、面で画ける可能性が出ましたので、この部分に限り撤回させていただきます。ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。
 
 もうこれだけでも自己矛盾にあふれた図であるワケです。
 よって前回と同じ結論になるのですが、これでは「何らかの論拠として使える図ではない」と言うしかありません。
 大変申し訳ない言い方ですが、これはとてもじゃないですけど大学教授の書いた文章とは思えません。
 理系畑の人なのかもしれませんが、これでは「データとして使えない」のですから、理系だったとしても言い訳になりません。
 
 もうこれだけでかなり長くなってしまいましたので、もうこの辺で終わりにしようと思うのですが、最後に1つだけツッコミをしておきたいと思います。
 前回の更新で「チェルノブイリとの比較の説明書きが全く読めない」というコトを書いたのですが、早川教授ご本人のブログの方には、それが読める大きさで図をアップされています。
 ので読んでみたのですが、ええと、ひとつだけツッコミさせてください。
 

 1μSv/h=480kBq/m^2を仮定すると

 
 仮定じゃダメだと思います……。
 時間軸も分からないので、それによって「住居禁止区域」などの意味合いも変わってきますから、その辺も含めたツッコミもあるのですが、それにしても仮定じゃダメですよね。
 少なくとも比較するのであれば、シッカリと単位と時間軸を揃えてから比較してほしいと思います。